【深夜・公園】
草むらの影から御坂美琴を先頭に五人の人影が出てくる。その内の一人、上条当麻は運悪く白井黒子の盾となった(盾にさせられた?)せいで痛む額に手を当てている。上条「いててて」禁書「大丈夫?とうま」上条「あぁ、お前と姫神は下がってろ」 気遣うインデックスを尻目に姫神秋沙とインデックスの二人を後ろに下がらせ、SOS団に目を向ける。こんな時間に集まって何事か密会をしていた彼ら。いくら上条当麻がお人好しでもこれでは流石に怪しまずにはいられない。彼は御坂達の予想が当たってしまった事に内心溜め息を吐いた。黒子「皆様こんばんわ。こんな夜分遅くに公園で密会とは随分と仲がよろしいのですわね? よければ、わたくし達も仲間に入れていただけませんか?」美琴「なんだか随分と怪しい会話だったわね?」白井黒子と御坂美琴が前に立ち、SOS団の面々に問う。彼らは彼らで長門有希、朝倉凉子、喜緑恵美里の三人がキョン達を守るかのように前に出る。黒子「あらあら、婦女子の後ろに隠れるだなんて。随分と情けない殿方達ですわね?」 白井黒子が挑発するように問うが喜緑「その言葉、そのままお返ししましょうか?」 ニッコリ笑って返された。美琴「アンタもこっち来る!」上条「わかったわかった。お前ら危ないと思ったらすぐ逃げろよ」
彼の言葉に素直に頷くインデックスと姫神秋沙。本当ならすぐにでもここから避難して欲しい所だが一触即発のこの状態では無闇に退避させるわけにはいかない。彼らが何かしらの能力で攻撃でもしてくれば守るのが困難になる。ならば最初から近くにいてもらったほうが守り手側としてはやりやすかった。 それにこちらには「第三位」と「レベル4」がいる。相手が第一位級でも無い限り、そうそう危険な事態にはならないはずだと上条当麻は考える。 さて、一方のSOS団の面々はというと……キョン「いや、これはその……そう! SOS団の打合せだったんだ!」美琴「団長もいないのに?」キョン「あーそのなんだ、ハルヒはちょっとヘソ曲げててな……」 なんとか誤魔化せないかとキョンが頑張っていた。しかし……黒子「では『閉鎖空間』と『古泉さんの能力』、『彼女の能力』、『我々にとっては面白くない事態』、『神人』とはなんでしょうか?」キョン「それは……」 白井黒子の突っ込んだ質問に口を濁らす。どうやらこれ以上彼が何を言おうと誤魔化すことは不可能らしい。朝倉「最初から全部聞かれてたみたいね?」上条「まぁ、な」 それまで事の推移を見ていた無口な少女、長門有希が一歩前にでる。その意を酌んだのか朝倉凉子、喜緑恵美里も彼女に並ぶ。長門「そこまで聞かれていたのなら、もうごまかせない」キョン「おい長門! どうする気だ?」長門「問題無い。彼らの記憶を情報操作する」 その言葉に御坂美琴と白井黒子が体を緊張させる。不意に攻撃されても対処できるように。 辺りにピンと張り詰めた空気が漂う。上条「おいおい「記憶を操作する」なんて穏やかじゃねぇな」喜緑「私達の会話を他人に漏らされるワケにはいきませんから」美琴「それは『ハルヒの能力』に関係してるのかしら?」喜緑「ええ」 アッサリと答えられ、拍子抜けする御坂美琴。
美琴「……随分ハッキリと肯定するのね」喜緑「この場の記憶は全て抹消させてもらいますから」朝倉「キョン君達はそこにいてね? すぐに終わるから」 その挑発するかのような言葉に御坂美琴は内心腹を立てる。美琴「へぇ? あたし達も随分と舐められたもんね。昼間の「アレ」を見てそんなコトが言えるなんて」彼女は既に臨戦体制だ。周囲には昼間彼女がそうしたように、火花がバチバチと爆ぜている。朝倉「自分達だけが「特別」だなんて思わない方がいいわよ?」朝倉(長門さん、この公園の周辺だけ「情報の遮断」は可能?) 彼女達に目を向けながら小声で朝倉凉子は長門有希に話しかける。このまま戦闘を開始しては周囲の人間が集まってくるかもしれない。口ではああ言ったが昼間見た彼女達の「能力」鑑みれば、そうそう簡単にコトは進まないことくらいすぐ判る。そうなれば「交換留学」どころでは無い。長門(現在作業中。しかし作業に支障がきたされている。彼女達を取り押さえながらの作業は不可能と思われる)喜緑(彼女達の力は未知数。戦いながらの作業は諦めたほうがよさそうですね)朝倉(とはいえ彼女の「超電磁砲」はやっかいよ。騒ぎになる前にカタをつけたいトコロだけど……簡単にはいかなそうね?)長門(同意する。まずは彼女達の主力を封じることを提案する)喜緑(そうですね。それが一番よさそうです。とりあえず最小限の情報操作の許可が通ったので最初に彼女を抑えましょう)朝倉・長門((了解))
美琴「「特別」ね。その言い方だとアンタ達も何かしら「特別」を持ってるように聞こえるけど?」 朝倉凉子に応えながら彼女達も小声で作戦を練る。美琴(黒子、全力で行くわよ)黒子(ですがお姉様!?)美琴(わかってる、加減くらいするわよ。でもあいつらの能力が何かわかんない以上こっちも本気でやらないと足元すくわれるわよ……アンタは援護に回って)上条(おい! 二人で大丈夫なのかよ!?)美琴(相手が何なのかわかんない以上アンタは後手に回るしかないでしょ! 拳銃とか出されたらどうすんのよ?)上条(う……わかった)黒子(了解しました。ではわたくしとお姉様が前衛、上条さんは状況を見て援護を)美琴(可愛いからって手ぇ抜くんじゃないわよ?)上条(わーってるよ。んなこと)美琴(……どうだか。二人ともOKね? 行くわよッ!)
朝倉「フフフ、さぁ? どうかしらね?」 クスクスと笑いながら朝倉凉子達も構える。いつでも対処できるように。美琴「あっそう。そんじゃとっとと大人しくなさいっ!」先手必勝。そう言って彼女から電撃の槍が放たれる。しかし、朝倉凉子もそれは予測していたのかヒラリと見事な後方宙返りで避ける。その動きは常人がするように小さなモノではない、軽く二、三メートルはあろうかの大ジャンプだった。驚く御坂美琴と白井黒子。だがそれも一瞬。美琴「黒子ッ!」 御坂美琴が叫び、意を汲んだ白井黒子がその隙を狙って瞬間移動で朝倉凉子の背後に現われる。普通の人間なら空中で身動きなどとれる筈が無い。しかし朝倉「ざんねーん。それも予測済み♪」黒子「ッ!?」 ジャンプした朝倉凉子を背後からそのまま組み伏せようと手を伸ばした白井黒子だったが、彼女は「もう一度空中で後方宙返りをして」白井の背後をとる。ありえない動きに一瞬固まる白井黒子。このままでは逆に組み伏せられてしまう。だが美琴「させるかぁ!」 御坂美琴が朝倉凉子目掛けてもう一度電撃の槍を飛ばす。だがそれもさらなる空中ジャンプで避けられてしまう。朝倉「長門さん今よ!」 それと同時に朝倉凉子が叫び、それまで機を窺っていた長門有希と喜緑恵美里が恐ろしい速さで突っ込んでくる。こちらも常人ではありえないスピードだ。美琴「なめ、るなぁッッッ!」喜緑「ッ!?」長門「ッ!」 間を詰める二人に対して放射状に電撃を放つ。捕えた! と思いきや喜緑恵美里はとっさにしゃがんで回避。長門有希はクルリと前方宙返りで避ける。その距離五メートル。十メートル以上の開きがあった筈なのに彼女達は一瞬で五メートル以上の距離を詰めてきたのだ。 だが驚いている暇は無い。一瞬の隙をついて続けざまに電撃を打ちつけようとする。が、二人は止まらない。長門有希はまるで空中に壁があるかのように中空を蹴り、そのまま彼女に向かって突っ込んでくる。喜緑恵美里は低い姿勢のまま地を這うように間合いを詰める。 空中から襲いかかる長門有希の拳を真横にステップして紙一重でなんとか避ける。美琴「くっ!」 だが避けた先には喜緑恵美里。真正面から彼女が突っ込んでくる。回避は不可能。喜緑「あなたは少々やっかいなので先に眠っていてくださいね」
上条「させるか、よっ!」 それまで驚いているばかりだった彼だが仲間の危機を見るやいなや、とっさに御坂美琴をかばうように前に出る。突っ込んできた喜緑恵美里の勢いそのままにカウンターで殴りかかるが……上条「ぶはっ!?」 それも寸前で避けられ腹にひざ蹴りを入れられる。そのまま崩れ落ちる上条当麻。美琴「ッ!こん、のッ!!」 御坂美琴は喜緑恵美里に向かって至近距離から電撃をもう一度放つが既に喜緑恵美里と長門有希は距離をとっていた。美琴「大丈夫!?」 正面の三人から目を話さずに上条当麻の様子を窺う。上条「あぁ何とか、な……しかし、なんつー動きするんだよコイツら」黒子「おそらく彼女達の能力は「肉体強化」のレベル4クラスなのでしょうが……それではあの「空中ジャンプ」の説明がつきませんわ。いったいどういうことですの?」 先程の攻防から離脱した白井黒子も彼らの元に戻ってきていた。若干混乱気味である。 後輩のその言葉を聞いて御坂美琴は考える。肉体強化能力を持っているのなら、あのありえない運動量の説明はつく。だが彼女が言うように肉体強化能力では「空中ジャンプ」の説明がつかない。美琴「考えられるのはあいつらの中にもう一人能力者がいて、影からサポートしているってくらいだけど……」 そう言って三人の後から遠巻きに今の攻防を見ていた残りの面々を見据えるがキョン「古泉! しっかりしろ! 古泉ぃぃぃいいい!」古泉「フフ、僕としたことが流れ弾ならぬ流れ電撃に当たるとは……どうか墓前には「紅のスーパーボール ここに眠る」と添えて下さい」朝比奈「ほえ~」キョン「よし。大丈夫みたいだな」古泉「んっふ」 流れ電撃を避けるのに必死でこちらの攻防を気にしている暇は無いように見える。黒子「……どうにも緊張感が削がれますわね。あの方達を見る限りとてもこちらに割って入ってる様には見えませんわ」美琴「だとすると……「多重能力者」なのかもね」黒子「まさか!?ありえませんわ!」 多重能力者。言ってしまえば一人の能力者が複数の能力を操ることだ。元来能力は一人につき一つなのがこの都市での常識だ。詳しい説明は省くがコレは人間の脳の性質上どうあっても克服できないコトだと言われている。だが美琴「黒子忘れたの?木山先生のこと」 彼女の言葉で白井黒子は思い出す。以前、御坂美琴が木山春生を止めるために彼女と戦った時の話を。 その話によれば木山春生はまるで「多重能力者」のように風を、電気を操り、更には能力で爆弾まで作り出したそうだ。だがそれは「多重能力」ではなく「幻想御手」の副産物を応用した「多才能力」だった。
黒子「……「多才能力者」ですか。確かにそんな事件もありましたがアレは」美琴「そう「幻想御手」はもう無いし、ここじゃ能力者達が意識不明なんてニュースも流れてない。でもね黒子、あいつらは「外」の人間なのよ」黒子「まさか他でも「幻想御手」が使われているとでも!?」美琴「かもしれない」黒子「……だとすれば、ますますあの方達を放って置くわけにはいきませんわね」 白井黒子は思い出す。「幻想御手」の事件を。あの時は親友まで巻き込まれ、危うく学園都市が崩壊するところだったのだ。あんな事件をもう一度起こさせるわけにはいかない。決意を新たに気合を入れなおす。上条「なぁ「マルチスキル」だとか「レベルアッパー」ってなんのことだ?」 それまで二人の会話に口を挟めなかった上条当麻が疑問を口にする。彼は「幻想御手事件」には関っていないのだからこの疑問も当然である。美琴「その話は後よ。とりあえずアイツらが複数の能力を使ってくるってことだけ頭に置いといて。「多才能力者」だとしたらまだ何か隠してるかもしれないわ」上条「お、おお。わかった」 その言葉に上条当麻もまた油断無く三人に目を向ける。朝倉「二人とも大丈夫?」長門「問題無い」喜緑「ええ、大丈夫よ……でも恐ろしい子達ね。仕方ありません、更なる情報操作の申請を許可します」朝倉「了解。これで全力で行けるわね。降参するなら今のうちよ?」美琴「ハッ冗談! アンタ達こそ降参したら? 次は手加減なし、よ」朝倉「強情ねぇ。あんまりツンだと彼に嫌われちゃうわよ?」上条「へ?」美琴「だれがツンよッ! 誰がッ!! 大体誰がコイツなんかを!」 顔を真っ赤にして反論する御坂美琴。その姿を見て朝倉凉子はクスクス笑いながら何事か呟き、右手にサバイバルナイフを左手には光の槍のような物を出現させる。上条「おいおい、なんだよアレ」黒子「肉体強化に念動、瞬間移動能力もありますわね。あれは……インデックスさんが言ってた魔法…?」
それまで離れた場所から推移を見ていたインデックスだが白井黒子の声を聞いて思わず答える。禁書「違うと思う。彼女達からは魔力より短髪達と同じような感じがするし。なによりあんな詠唱聞いたことがない。……三人とも気をつけて」黒子「魔法でもないとすると、ますます「多才能力者」のセンが強くなってきましたわね」上条「どっちにしろ『異能』には変わりないんだろ?だったら今度は俺が前にでる」美琴「あいつらの動き、人間技じゃないわよ? 大丈夫なの?」上条「……ま、なんとかなるさ」美琴「…気をつけてね」上条「ああ」 そう言って今度は上条当麻が一歩前に出る。二人は彼の援護に回るよう下がる。朝倉「あら? 今度は上条君がお相手してくれるの?」上条「そんな「物騒なモン」持ったヤツ女の子に相手させるワケにはいかないだろ?」朝倉「あたし達も「女の子」なんだけどなぁ? それに心配しなくても大丈夫。ナイフも「コレ」も気絶させるくらいの威力しかないから」 そう言って朝倉凉子は左手の『光の槍』を軽く振る上条「……正直手を上げたくない。大人しく話してくれないか? なんか困ってる事があるなら相談に乗るぞ」朝倉「うん、それ無理♪」上条「そーかよ。だったら仕方が無い(こっちも「また」記憶を消されるなんて嫌だしな)」朝倉「(また?)でも、上条君って『無』能力者じゃなかったっけ? いいの?」上条「さぁ、な」朝倉「ふーん。男の子の意地ってヤツかしら?……それじゃあ行くわよ!」 瞬間、朝倉凉子が『槍』を掲げて上条当麻に、喜緑恵美里は御坂美琴に突っ込んでくる。確かに恐ろしいスピードだが幾多の修羅場を潜り抜けてきた彼にとって反応出来ない速度では無かった。正面からのナイフの一撃をなんとか避ける。体勢を崩す朝倉凉子。チャンスとばかりに拳を殴りつけようとするが朝倉「さっすが男の子。やるわね! でも……」 そう言って朝倉凉子は上条の背後に目だけ向ける。圧迫感を感じた上条当麻が顔だけ後に向けると長門「……」
いつの間にか長門有希が彼の後ろに回りこんでいた。彼女は手に持った槍を彼目掛けてなぎ払うように水平に振り回す。とっさにしゃがんでやり過ごす上条当麻。だが今度は目の前の朝倉凉子が光の槍を叩きつけるように襲い掛かる。こちらはしゃがんだ体勢から転がってなんとか回避する。それを追って長門有希が追撃しようとするが黒子「させませんわっ!」長門「!?」 白井黒子がいつの間にか手にしていた彼女の武器、複数の鉛筆状の金属棒を瞬間移動させる。上条「っておい! そんなの喰らったら死ぬだろ!」黒子「体になんて当てませんわよッ!」 宣言どおり長門の両足の甲と地面を縫い付けるかのように金属矢を交差させ、地面に向けて瞬間移動させる。ガクンと長門有希の足が止まり、体勢を崩す美琴「よくやった黒子っ!」 そこへ喜緑恵美里と相対していた御坂美琴が電撃を走らせるが、驚くことに長門有希は地面ごと張り付いた足を引き抜き、コレを回避する。さっきまで彼女がいた地面を見るとアスファルトが抉れ、金属棒が散乱している。上条「どんだけ無茶苦茶な脚力してんだよ! お前ら!!」朝倉「余所見は危ないわよ?」 思わず余所見をした上条当麻の隙をついて朝倉凉子が『光の槍』を彼目掛けて横薙ぎに振るう。今度はさっきのように避けられない。手で受け止めることは出来るが、この『槍』は情報操作で作った特別製だ。対象が触れただけで気絶するように出来ている。勝利を確信した朝倉凉子だが……朝倉「えっ!?」 上条当麻は朝倉凉子の『光の槍』目掛けて右手で『光の槍』ごと殴る。『光の槍』は右手に触れた瞬間消え去り、そのままの勢いで朝倉の顔面を殴りつけた。朝倉「きゃう!」 カウンター気味に入り、そのまま朝倉凉子は派手に吹っ飛んだ。 ありえない。そんな顔で長門有希と喜緑恵美里が動きを止める。黒子「いただきですわ!」長門「ッ!?」 そこへ白井黒子が瞬間移動で突っ込んできて長門有希を組み伏せる。今度は簡単に引き抜かれないように手と足の全体を縫い付け、どこから持ってきたのかバス停まで長門の上に乗せる。長門「……不覚」 さしもの長門有希もコレでは動きようが無かった。
美琴「どう? これでもまだやるってのなら今度は「コイツ」をお見舞いすることになるわよ?」 勝利を確信した御坂美琴が「コイン」を見せつける。喜緑「くっ!」 喜緑恵美里が逡巡する。そこへキョン「いや、降参だ」 さっきまでコトの推移を見守っていたキョンが降伏宣言をした。朝倉「ちょっと!まだやれるわよ!?」 聞き捨てならないと言った風で朝倉凉子が即座に反発する。その姿は土埃まみれだが、どこにもダメージを受けた形跡は無い。上条(全力殴ったのに効いてないのかよ!?) 彼女のタフさに内心驚愕する上条当麻。だがそんなことはおくびにも出さないよう必死で努める。そんな葛藤をしているとキョンが朝倉凉子を鎮めるように話を続けた。キョン「長門がこのありさまだ。2対3じゃ勝ち目は無いだろ? 大体世話になった人間に危害を加える趣味なんて俺には無いしそれに……」朝倉「それになによ」 そう言って彼は自分の背後に指を向ける。そこには騒ぎを聞きつけたのか何人かの野次馬達が集まっている。必死に古泉一樹と朝比奈みくるが古泉「心配しないで下さい。これは映画の撮影ですので」朝比奈「そ、そうでしゅ! け、喧嘩なんかじゃありませ~ん」 野次馬達を抑えていた。朝倉「……えーと、これってマズイ?」キョン「かなりな」朝倉「ア、アハハハ!……わかったわよ! こーさん! 降参すればいいんでしょ!」
黒子「それでは、あなた方の正体と涼宮ハルヒの『能力』について…聞かせていただけますわね?」 あの後なんとか野次馬達を追い返し、場所を移動した俺たちは現在攻める様な目で黒子ちゃん達に質問されている。しかし……そんなトコまで当たりを付けられていたのか。こりゃ、遅かれ早かれハルヒの力はばれてたのかもな。 しかしなんでこんなに早くバレたんだ……黒子「簡単ですわ。この『学園都市』は機密の塊。そんなところに警備も監視も付いていない『交換留学生』なんて怪しすぎます。それに…」姫神「キョン君は隠し事。下手だよね」キョン「……そんな事…ない、よな?」古泉「……」長門「……」朝倉「ノーコメントで」みくる「あ、あはは」 みんな何故目を逸らすか古泉(どうしますか?さすがに全てを語るわけには……)黒子「あら、今語らないのなら本部に連行して「サイコメトリー」に心を読んでいただきますわよ?」 だそうだ、古泉古泉「仕方ありませんね……」黒子「どうされます? わたくしとしては「連行」したほうが手っ取り早いのですけども?」キョン「わかった、わかった。全部隠さず話すから「連行」は勘弁してくれ」黒子「内容、によりますわね」キョン「やれやれ」
上条「宇宙人~!?」美琴「未来人~!?」黒子「『願望実現能力』~!?」 まぁ普通こういう反応だよな。ただ、インデックスちゃんだけは禁書「ねぇねぇ!宇宙から来たってホントなの!?」長門「ホント」フンス禁書「すごーい!」 簡単に信じてくれたようだ しかしお前ら『超能力者』には驚かないんだな…って当たり前か古泉「……んっふ」美琴「しかし未来人ねぇ……(ねぇねぇ、やっぱりその胸って未来人だからなの?)」みくる「ふぇッ!? そ、それはどうでしょう?」上条「お前、何聞いてんだよ……」美琴「う、うっさいわね!別にいいじゃないのよッ!」黒子「お姉さまはそのままでも魅力的でs……コホン。まぁ、信じましょう。嘘をついてるようにも見えませんし……何より「アレ」があるのがその証拠でしょう」 そう言って『閉鎖空間』に目を向ける黒子ちゃん姫神「でも。涼宮さんの『能力』…その『願望実現能力』だけどなんで。それが二人の力を増幅させたの?」古泉「それは多分涼宮さんが「もっと凄い能力が見たい」と強く願った結果かと」美琴「なるほどね。確かにハルヒすごい喜びようだったしねぇ。そうとう期待してたんでしょうね」
上条「…しっかし『増幅能力』じゃなくて、『願望実現能力』ねぇ…なぁインデックス。そんな魔術に心当たりあるか?」キョン「は?魔術?」姫神「上条君。そんなことキョン君達の前で言っていいの?」上条「あ。………あー、ま、まぁいいだろ。キョン達はここの「機密」や、インデックスを狙ってきたワケじゃないみたい、だし?」禁書「とうま、なんかごまかしてない?」上条「そ、そんな事は無いヨ?」禁書「ほー」上条「……な、なんだよ?」禁書「べっつにぃー?」キョン「上条、魔術って正気か?」上条「お前がソレを言うかね……まぁ気持ちはわかるけどな」禁書「キョン。魔術はちゃんと「ある」よ? ただ一般の世界には広まってないだけ」キョン「まじかよ……」古泉「驚きですね」長門「初耳。朝倉涼子、喜緑江美里は?」喜緑「……情報統合思念体にもそんな情報は出回っていません」朝倉「おかしいわね。そんな当たり前にあるものなら私達が知らないハズないのに……」みくる「魔法ですかぁ。素敵ですねぇ」禁書「みくる、なんか違うの想像してない?」みくる「ふぇ?」キョン「しかし上条。インデックスちゃんを狙うってのはどういうことだ?」上条「あ~まぁコッチの事情も説明しとくか」キョン「そうしてくれると助かる」
キョン「……天使とか、吸血鬼とかホントかよ」禁書「うん、本当だよ。世界はキョン達が知っているよりずっと広くて深いんだよ?」 こんな女の子の頭の中に10万3000冊もの「魔道書」の情報が詰まってるってのも信じ難いぞ……みくる「天使様にはあってみたいですねぇ」上条「やめといた方がいいですよ……」美琴「アンタそんなことひとっことも言わなかったじゃないの!」上条「そだっけ?」美琴「そうよっ!」黒子「上条さんの話も、にわかには信じられませんわね……」禁書「でもホントのコトだよ?」古泉「インデックスさんの言動を見ていると、信じるしかありませんね」上条「それで? どうなんだインデックス」禁書「……そこに「ある」モノを一定の法則にしたがって「変化」させるコトは魔術師なら可能だけど……はるひみたいに『強く思うだけで実現する力』なんて初めて聞いたかも」禁書「それに『無』から『有』を作り出す魔術なんてどんな魔術師にも不可能なんだよ。私の頭の中の「魔道書」にだってそんな魔術は無い。でも……」上条「でも?」禁書「『神様』なら可能」キョン「おいおい、待ってくれ。なら何か? ハルヒは古泉の言う通り「神様」だとでも言うのか?」禁書「それは無い……と思うよ。神が人の身に宿ることはあるけど、そういう人は、その、オーラとか気配とか、その人そのものが神格化しちゃうモノだし…何より「イギリス聖教」が黙ってないとおもう」禁書「はるひにそういう雰囲気が出たこと今までにあった?」キョン「『神様』の雰囲気、なんてわからんが俺が知る限りアイツは普通の女子高生だ」 頭に「破天荒」がつくがな禁書「より高位の神でも神格化もせずに『世界を変えるくらいの大きな力』を顕現させることは不可能だと思うから、はるひが神様ってことは無いと思うよ」
ハルヒが神様じゃなくて残念だったな古泉。ふぅ、少しほっとした………なんで「ほっ」としたんだ俺は?禁書「今、安心したでしょ?キョン」 ニヤニヤしながらインデックスちゃんが話しかけてくるキョン「そりゃ、あんなとんでもないのが『神様』なんて勘弁してほしいからな」禁書「……キョンは自分の気持ちにも「鈍感」なんだね」キョン「え? そりゃどういう……」朝倉「やっぱりインデックスちゃんもそう思う?」美琴「そんなの見てればわかるわよ。コッチにも似たようなのがいるし……」朝倉「やっぱりそうよねぇ」姫神「二人とも。どうして「こう」なんだろうね」上条「な、なんだよお前ら」四人「………はぁ~」キョン・上条「「だから何だってんだ?」」 あ、ハモった 何が言いたいんだこいつらは古泉「……結局、涼宮さんの力は謎のまま、ということですね」キョン「当面の問題は…「アレ」だな」黒子「ですわねぇ…とは言っても「消し方」が無いのではどうしようもありません。わたくし達も単独で入れる、というのなら話は別でしょうが…」古泉「それは無理かと思います。『閉鎖空間』に入れるのは、多分「僕達」の能力でしょうから」黒子「種類が違う、ということですわね」古泉「そうです。一応僕が一緒にいれば入れるとは思いますが……」
キョン「なぁ、上条の「右手」で消せないのか?」古泉「それも無理でしょう。彼の能力で「根本から断つ」には涼宮さんに触れ続けていなければ、ならないかと…」朝倉「さすがにそれは不自然、ね」黒子「ホント、上条さんは肝心な時に役に立ちませんわね…」上条「えーえーそうですとも。どーせ、上条さんは役に立ちませんよ」キョン「あらゆる『異能』を消せる、なんて便利だと思うんだがなぁ」上条「どこがだよ……上条さんは幸運だって消しちまう能力より、白井さんみたいな使える能力の方がよかったですよ」黒子「無いものねだりしても仕方がありませんわ。わたくしだったら上条さんの能力が欲しいくらいですのに」上条「こんなもんどうするんだよ」黒子「当然!お姉様に触り放題、抱きつき放題ですわっ!」美琴「ほーアンタまた、そんなコト考えてたんだ?」黒子「お、お姉様」 つつつ、と美琴ちゃんの腕に抱きつく黒子ちゃん黒子「その、これは場をなごます冗談であって、決してわたくしの本音と言うわけでは……」美琴「……そう言いつつ、どこ触ってんのかしら?」 俺は見た。黒子ちゃん思いっきり胸もんでたな美琴「アンタは一回、体に教え込まないといけないのかしらね?」黒子「いやですわお姉様。わたくしの愛は永遠不滅ですわよ?」美琴「アンタの愛は色欲に偏りすぎなのよっ!!」 二人の追いかけっこが始まる黒子「ホラホラ、お姉様。捕まえてごらんなさ~い」美琴「待ちなさい!黒子っ!」 …まぁ、あの二人はほっといてキョン「で?どうするよ」
上条「消し方が無いんじゃ涼宮の機嫌をとるしか無いんじゃないか?機嫌悪いと「アレ」が出るんだろ?」古泉「現状ではそうするしかありませんね…」キョン「しかしどうしたもんかね」禁書「そんなの簡単なんだよ。今回のことはキョンが悪いんだから、キョンが謝ればいいんだよ?」上条「え、でも涼宮が拗ねてるのって、朝倉が原因じゃ…」 そうそう。それにもう朝倉と長門から説明はしたはずだし。今更俺が謝ったところで機嫌が直るとも思えん コレ以上どうしろと?禁書「その考えがそもそもの間違いなんだけど……二人には説明してもきっとわかんないと思うんだよ」長門「同意する」朝倉「同感ね」喜緑「同意見です」姫神「私もそう思う」 ……お前らさっきから何なんだ。その一体感はみくる「あ、あははは」禁書「とにかく!「キョン」の口から説明することが重要なんだよ!!」キョン「わかったわかった。俺の口から説明すればいいんだな?」姫神「あと。ちゃんと謝ること」キョン「いや、でも何て言って謝ればいいのか……」朝倉「そのくらい自分で考えないとダメよ?」 ……わかったよ ふぅ、やれやれだ
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