怒声が飛び、ダカダカと複数のブーツが行き交う音が響く。黄泉川「よーし、そろそろいいじゃん」某学区にある山の麓。そこに、黄泉川たちアンチスキルの部隊が完全武装で待機していた。警備員「隊長!」黄泉川「ん?」警備員「北側にある道も、無事第5班と第6班による展開が終わりました!」黄泉川「了解じゃん」報告してきた部下にそう告げ、黄泉川は後部扉が開いたトレーラー型の装甲車の方へ振り向く。黄泉川「この山にある尾根は北と南に2つ。そこに通じる山道を全て我々で包囲してしまえば奴らの脱出口は無くなるじゃん」黒子「そう上手くいけばいいですわね」装甲車の側に立っていた黒子が答えた。黄泉川「この山は麓からしばらく登った地点に、山の周りを1周するように舗装された道がついてるんだ。例え山中で迷っていても、下っていればいずれその道に辿り着く。後はその道に沿って歩けば、やがて北か、もしくは南のここに通じている道に合流できるってわけじゃん」黒子「つまり、どこで迷っていても奇跡的に生き残っていれば、いずれはこの南か北の出入り口に彼奴らが現れると?」黄泉川「まあ、生きていればの話だがな」黄泉川はまるでゲームに興じる子供のように笑う。黒子「ま、どの道生きていても御坂美琴を仕留めるのは私ですの」言って山の方に顔を向ける黒子。黒子「さて、山中での垂れ死んでいるか、それとも再び黒子の前に姿を現すのか。今から楽しみですの。 お 姉 さ ま 」ニヤァ
上条「行ったか?」美琴「ええ!」部屋の中から聞こえる上条の声。上条「よし、今だ。逃げるぞ!」彼は美琴が寝ていたベッドの後ろからその姿を現した。御坂妹が小屋の後ろに回っている間に、戻ってきて隠れていたのだ。美琴「でもどこに?」上条「とにかく逃げれる場所までだ!」御坂妹「ミサカから逃げれる場所なんてどこにもありませんよ、とミサカは釘を刺しておきます」上条美琴「!!!???」驚き、正面を見る2人。小屋の前に、御坂妹が立っていた。御坂妹「どうせこんなことだろうと思っていました。それでミサカの目を欺いたつもりですか? とミサカは思わず失笑を零します」美琴「あんた……っ」御坂妹「………」チャキッ美琴にライフルを向ける御坂妹。上条「!!」バッが、すぐに美琴を守るように上条が前に躍り出た。
上条「………………」御坂妹「今すぐにこんなバカなことは止めてミサカと一緒になりましょう。……ミサカなら、お姉さまとは違って素直になれないからと言って電撃を浴びせたりなどしません。ただ、貴方の望む女性として、共に歩むことが出来ます、とミサカは生まれて初めて本気で想いを告げてみます」美琴「…………っ」上条「………………」そう言って御坂妹は上条に手を差し出している。彼女の目は、無感情で生気の無いものではなく、一途に恋をする少女のそれだった。御坂妹「このままお姉さまといても貴方は幸せにはなれません。ですが、ミサカなら……ミサカなら共に一生を幸せに過ごすことが出来ます」上条「………………」美琴「…………っ」不安げに御坂妹と上条の顔を交互に見る美琴。御坂妹「さあ」促す御坂妹。上条「……………………」美琴「……………………」御坂妹「……………………」しばらくの間、沈黙が漂っていた。そして………上条「御坂妹」美琴「!」ビクッ御坂妹「はい」上条「ごめん」
御坂妹「さよなら」上条に美琴より自分を選ぶよう迫り、断られた御坂妹。彼女は全てを終わりにするため、アサルトライフルの銃口を上条たちに向ける。が………上条「!!!!????」ライフルの銃口は何故か上条たちをスルーし、そのまま御坂妹自身の顎に添えられ………美琴「はっ!!??」美琴「やめてえええええええええええ!!!!!!」パァァン!!!銃声が轟いた。美琴「…………っ」それは一瞬の出来事だった。
御坂妹「!!!???」上条「…………………」美琴「…………え?」顔を両手で覆っていた美琴が恐る恐る目を開いた。御坂妹「…………何故」が、そこには、美琴が予測していたような惨劇は繰り広げられていなかった。驚き、固まる御坂妹と、前へ踏み出しだ上条、そして床には銃口から硝煙を登らせ黒光りするライフルが一丁。上条「勝手に死のうとしてんじゃねぇよ」美琴「………………」御坂妹「…………っ」呆然としていた御坂妹。彼女の表情が代わり、上条を睨みつける。御坂妹「どうして!? どうして止めたのですか!?」上条「お前には死んでほしくないからだ」御坂妹の顔を見つめ、上条は静かに答える。
美琴「あの……ごめんね。姉としてあんたを悲しませちゃって……」御坂妹「…………」そう、美琴は言ってきた。どこか寂しげな表情で。美琴「幸せになってね」苦しげな笑みを見せる美琴。御坂妹「……………………」美琴「………………」御坂妹「………彼に感謝することですね、とミサカは嫌々ながらも最後に特別にアドバイスしてみます」美琴「うん……。そうだよね……。ありがとう妹。今まで楽しかったよ」手を振り、踵を返す美琴。そんな彼女の目に何か光るものが浮かんでいたのを、御坂妹は見逃さなかった。御坂妹「………………」上条「ありがとなー!」美琴「ありがとうー!」最後にもう1度だけ手を振ると、やがて上条と美琴は御坂妹の視界から消えていった。御坂妹「………………」それを確認し、御坂妹は1度だけ深く両目を閉じた。御坂妹「………しかし、“今の状態の”お姉さまだと学園都市から脱出するのは難しそうですね。本人はそれに気付いているのでしょうか、とミサカは推測してみます」独り言を吐きつつ、御坂妹は踵を返す。御坂妹「………ま、ミサカの知ったことではありませんが」その言葉を最後に、御坂妹は上条たちが去っていったのとは反対の道を歩き始めた。
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