美琴「……Get Backers?」 > 6

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――第七学区 バス停前 蛮「はぁはぁ、ここまで来りゃ……」 銀次「はぁはぁ、ねぇ蛮ちゃん」 蛮「あ?」 銀次「やっぱり……使ったの? 『邪眼』」 蛮「まぁな……」シュボッ 『邪眼』。人の天命をも動かす法術といわれるほどの強力な力である。 その能力は、相手に一分間の幻影を見せるというもので、(瞬きをするまでなら)複数人でも、動物にもかける事が出来る。 24時間の内に3回までしか使用することができず、その時間内は同じ人物に二度使用することもできない。 この禁を破ってはならず、『邪眼』を持つものは不現の瞳を持ち、生まれる者は己(おの)が運命に従わねばならない。 銀次「別に、そこまで必死になって逃げなくても……。話してみれば……」 蛮「アホかお前は……。アイツ等を巻き込みてぇのか?」 銀次「そういうわけじゃないけど……。何か手助けして貰えたかもしれないし……」 蛮「あの女……特に白井ってのは、『レムナント』について何か知ってたかもな……」 銀次「だったら……」 蛮「『レムナント』について知ってるってこたぁ、以前あった事件に関わってる可能性が高いだろ?」スパー 銀次「あの結標って子が言ってた?」 蛮「あぁ、解決出来たと思ってたものがそうじゃねぇとわかれば、アイツは動くだろうさ」 銀次「うん……だったらなおさら……」 蛮「あの女が、ホストもどきと戦えると思うか?」 銀次「あっ!」 蛮「アイツがいくら空間移動能力者でも、その上であるだろうあのさらし女が軽くあしらわれたんだ」 銀次「それについて説明すれば……」 蛮「聞きゃしねぇよ。アイツは『レムナント』についてってより、別の何かを気にしてるみてぇだったしな。なんにでも頭を突っ込みそうだ」スパー 銀次「そうか……。たしかに、巻き込むには危険な内容だしね……」 蛮「こんなことに、不用意にこの街の人間を巻き込めねぇよ……」 蛮は、吸い終わった煙草を踵に押し付け火を消した。 蛮「ふぅ、無駄なとこで使っちまった気もするが……」 銀次「ゴメンね。俺が不用意に口にしたから……」 蛮「いや、どっちみち使うしかなかっただろうよ。無理矢理寝かせるのも気が引けるしな」 銀次「それは可哀想だからねぇ……。そういえば、お茶飲まなかったから喉渇いちゃったよ」 蛮「あ? だったらそこに自販機が……」 ???「不幸だぁーーー!!」 蛮が視線を向けた先には、自動販売機に手を着きながらうなだれているツンツン頭の少年がいた。 蛮「なんだ?」 銀次「不幸?」 二人は、顔を見合わせてからゆっくりと自動販売機へと近付いていく。 ???「はぁ……。いつもビリビリと会う公園じゃないから大丈夫だと油断していましたよ。しかもちゃんと千円だったのに……上条さんの何が悪かったのでせうか? しかもなんでこんなところに……」 蛮「なにしてんだお前?」 上条「はは、上条さんはたった今この自販機に千円飲み込まれたところですよ……」 銀次「あぁ、それで叫んでたのかぁ」 上条「貴重な千円が……」ガクッ そういうと上条は膝を着きうなだれる。 銀次「う~ん……えい」ピリ 銀次が自動販売機に軽く手を添え、電気を流す。すると、千円札が一枚投入口からするすると吐き出された。 銀次「はい」スッ 上条「え? い、いいんですか!? 上条さんにこんな幸運が起きても本当にいいんでせうか!?」 銀次「いいんじゃない? 奪られたものを奪り返しただけだからね」 蛮(千円返ってくるだけで幸運なのかよ……) ガチャン 上条「どうぞ」スッ 銀次「いいの?」 蛮「俺はなにもしてないけどな……」 上条「千円失うよりも安いから大丈夫ですよ」 蛮「じゃ、遠慮なく…………」 銀次「ヤシの実サイダー? 美味しいのかな?」 蛮「まだマシだろ……俺は黒豆だぞ……」 上条「苺おでんよりはマシですよ」カシュッ 蛮「変わったラインナップばっかだな、おい」 上条「なんか理由があるらしいですよ? あ、そういえば人を待たせてたんだった……それじゃ」 蛮「おう、悪かったな」 銀次「ありがとね」 上条「いえいえ、こちらこそ」 上条は二人に手を振り、公園の奥へと向かっていった。 上条「それにしてもなんでこんなところに……『忘却香』は嗅いでないし……」 蛮「『忘却香』!?」 銀次「それってたしか……」 二人は去っていく上条の後を追いかける。 蛮「おい」ガシッ 上条「うわっ!? な、なんでせうか!?」 銀次「キミ、卑弥呼ちゃんの知り合い?」 上条「卑弥呼……あぁ、さっきちょっとしたことでお知り合いになりましたが……」 蛮「『忘却香』を嗅いだのか?」 上条「いや、嗅いでない……はず……」 蛮「曖昧だな……」 上条「嗅いではいないんですが……何故ここにいるのかがわからなくて……」 %0
――第七学区 バス停前 蛮「はぁはぁ、ここまで来りゃ……」 銀次「はぁはぁ、ねぇ蛮ちゃん」 蛮「あ?」 銀次「やっぱり……使ったの? 『邪眼』」 蛮「まぁな……」シュボッ 『邪眼』。人の天命をも動かす法術といわれるほどの強力な力である。 その能力は、相手に一分間の幻影を見せるというもので、(瞬きをするまでなら)複数人でも、動物にもかける事が出来る。 24時間の内に3回までしか使用することができず、その時間内は同じ人物に二度使用することもできない。 この禁を破ってはならず、『邪眼』を持つものは不現の瞳を持ち、生まれる者は己(おの)が運命に従わねばならない。 銀次「別に、そこまで必死になって逃げなくても……。話してみれば……」 蛮「アホかお前は……。アイツ等を巻き込みてぇのか?」 銀次「そういうわけじゃないけど……。何か手助けして貰えたかもしれないし……」 蛮「あの女……特に白井ってのは、『レムナント』について何か知ってたかもな……」 銀次「だったら……」 蛮「『レムナント』について知ってるってこたぁ、以前あった事件に関わってる可能性が高いだろ?」スパー 銀次「あの結標って子が言ってた?」 蛮「あぁ、解決出来たと思ってたものがそうじゃねぇとわかれば、アイツは動くだろうさ」 銀次「うん……だったらなおさら……」 蛮「あの女が、ホストもどきと戦えると思うか?」 銀次「あっ!」 蛮「アイツがいくら空間移動能力者でも、その上であるだろうあのさらし女が軽くあしらわれたんだ」 銀次「それについて説明すれば……」 蛮「聞きゃしねぇよ。アイツは『レムナント』についてってより、別の何かを気にしてるみてぇだったしな。なんにでも頭を突っ込みそうだ」スパー 銀次「そうか……。たしかに、巻き込むには危険な内容だしね……」 蛮「こんなことに、不用意にこの街の人間を巻き込めねぇよ……」 蛮は、吸い終わった煙草を踵に押し付け火を消した。 蛮「ふぅ、無駄なとこで使っちまった気もするが……」 銀次「ゴメンね。俺が不用意に口にしたから……」 蛮「いや、どっちみち使うしかなかっただろうよ。無理矢理寝かせるのも気が引けるしな」 銀次「それは可哀想だからねぇ……。そういえば、お茶飲まなかったから喉渇いちゃったよ」 蛮「あ? だったらそこに自販機が……」 ???「不幸だぁーーー!!」 蛮が視線を向けた先には、自動販売機に手を着きながらうなだれているツンツン頭の少年がいた。 蛮「なんだ?」 銀次「不幸?」 二人は、顔を見合わせてからゆっくりと自動販売機へと近付いていく。 ???「はぁ……。いつもビリビリと会う公園じゃないから大丈夫だと油断していましたよ。しかもちゃんと千円だったのに……上条さんの何が悪かったのでせうか? しかもなんでこんなところに……」 蛮「なにしてんだお前?」 上条「はは、上条さんはたった今この自販機に千円飲み込まれたところですよ……」 銀次「あぁ、それで叫んでたのかぁ」 上条「貴重な千円が……」ガクッ そういうと上条は膝を着きうなだれる。 銀次「う~ん……えい」ピリ 銀次が自動販売機に軽く手を添え、電気を流す。すると、千円札が一枚投入口からするすると吐き出された。 銀次「はい」スッ 上条「え? い、いいんですか!? 上条さんにこんな幸運が起きても本当にいいんでせうか!?」 銀次「いいんじゃない? 奪られたものを奪り返しただけだからね」 蛮(千円返ってくるだけで幸運なのかよ……) ガチャン 上条「どうぞ」スッ 銀次「いいの?」 蛮「俺はなにもしてないけどな……」 上条「千円失うよりも安いから大丈夫ですよ」 蛮「じゃ、遠慮なく…………」 銀次「ヤシの実サイダー? 美味しいのかな?」 蛮「まだマシだろ……俺は黒豆だぞ……」 上条「苺おでんよりはマシですよ」カシュッ 蛮「変わったラインナップばっかだな、おい」 上条「なんか理由があるらしいですよ? あ、そういえば人を待たせてたんだった……それじゃ」 蛮「おう、悪かったな」 銀次「ありがとね」 上条「いえいえ、こちらこそ」 上条は二人に手を振り、公園の奥へと向かっていった。 上条「それにしてもなんでこんなところに……『忘却香』は嗅いでないし……」 蛮「『忘却香』!?」 銀次「それってたしか……」 二人は去っていく上条の後を追いかける。 蛮「おい」ガシッ 上条「うわっ!? な、なんでせうか!?」 銀次「キミ、卑弥呼ちゃんの知り合い?」 上条「卑弥呼……あぁ、さっきちょっとしたことでお知り合いになりましたが……」 蛮「『忘却香』を嗅いだのか?」 上条「いや、嗅いでない……はず……」 蛮「曖昧だな……」 上条「嗅いではいないんですが……何故ここにいるのかがわからなくて……」 銀次「記憶喪失?」 上条「い、いい、いえいえ! そんなことはありませんよ!」 銀次「ん?」 蛮「……たしか『忘却香』は嗅いだら、24時間の記憶を失うはずだったな……。ってことは、『忘却香』以外で記憶を飛ばされてる可能性のが高いか……」 銀次「そうか……。何か些細なことでも思い出せない?」 上条「気が付いたら公園のブランコに乗ってて……そういえば、同じこと言ってる知り合いがいるんです」 蛮「じゃあ、そいつのとこにも行くか……」 上条(この人達は知り合いじゃなさそうだな……。にしても、こんなに真剣になってどうしたんだ? やっぱりこの街でなにか起きてるのか? ……あ) 上条「……」 蛮「あ? どうした?」 上条「卑弥呼さんの言ってたウニ頭って……」 蛮「誰がウニ頭だコラッ!?」バコッ 上条「あだっ!」 銀次「ちょっと、蛮ちゃん」 上条は蛮に叩かれた頭を右手で押さえた。 上条「いっつぅ……っ!?」 パキン、と何かを砕いたような音がした。 上条「……」 銀次「大丈夫?」 蛮「そんなに強く叩いてねぇよ」 上条「そうか……」 ――『ここで起きた事は全て忘れろ』 上条「くそっ!!」ダッ 銀次「あ、ちょっと!?」 蛮「なんだっつーんだ、おい!?」 上条は、真剣な表情を作ると、おもむろに公園の奥へと駆けていった。 銀次「どうするの?」 蛮「そりゃあ、追いかけるに決まってんだろ!」ダッ 上条の後を追う二人。 銀次「でもさ、彼は『レムナント』とは関係ない気がするんだけど」 蛮「まぁ、だろうな。ただ、卑弥呼が関わったんだ、なんかあるかもしれねぇだろ? それに、今は割と暇だしな!」 銀次「暇って……。彼らを追わなくちゃいけないでしょ!?」 蛮「そっちはしばらく大丈夫だろ!」 銀次「どこにそんな根拠が……」 上条「祝! よくも人様を囮に使って逃げ延びやがったな記念!」 ブランコの前で赤髪の神父にアッパーカットを放つ上条を二人は見付けた。 蛮「なにやってんだ?」 銀次「うわぁ……」 上条「はぁはぁ……あ、二人共」 上条の前には口元を押さえて倒れこんでいる男がいる。 蛮「それが知り合いか?」 銀次「仲が良いようには見えないね」 上条「こいつは人を囮に使ったんです」 蛮「よくわからんのだが……。どう見ても学生じゃねぇな、そいつは」 上条「え? あぁ、まぁ……色々と」 銀次「大丈夫?」 ???「痛ぅ……おのれ上条当麻……。……キミ等はなんだい?」 蛮「おぅ、割かし大丈夫そうだな。さて、色々と聞かせてもらいたいんだが……」 ???「キミ達に聞かせることは何も無いよ」 上条「ステイル、思い出したか?」 ステイル「おかげ様でね」スッ 上条「怪しげなものを取り出さないで下さい!」 蛮「ルーン文字か……それに、見覚えのないのもあるな……。自ら生み出したのか……」 ステイル「っ!?」バッ ゴウッ! と勢いよくステイルの手中から炎が上がり、炎剣が生み出された。 上条「ステイル!? なにやってんだ!?」 ステイル「この男は危険だよ……。この街にいながら魔術についての知識を持っているんだ。あの子を狙っている可能性が高い」 上条「なっ!?」 銀次「あの子?」 蛮「わけありか……」 上条「っ!! そうだ、インデックス!! あの野郎、インデックスを手に入れたようなこと言ってやがった!!」 ステイル「っ!? くそ、僕の魔翌力を辿って来てしまったのか!?」 銀次「そのインデックスっていうのが、さっきから言ってたあの子? 変わった名前だね」 蛮「インデックス……」 ステイル「キミ達の狙いもそうだろう?」スッ 炎剣を構えるステイル。 蛮「なるほど……」 銀次「どうしたの?」 蛮「インデックス。Index-Librorum-Prohibitorumか……」 銀次「な、なにそれ?」 蛮「禁書目録ってのに、聞き覚えはあるよな」 銀次「それって……ドレス姿の子が言ってた……」 蛮「魔道図書館とも呼ばれてるんだが、10万3000冊に及ぶ魔道書の原典を記憶しているらしい。イギリス清教に所属してるもんだと思ったんだが……まさかこんな所にいるとはな」 銀次「よくわかんないんだけど……」 蛮「まぁ、そうだろうな。恐らく、10万3000もの魔道書の原典があれば、世界は滅ぼせるんじゃないか?」 銀次「えぇ!?」 ステイル「……流石、彼女を狙うだけはあるね……よく知っている」 蛮「狙ってねぇよ。知っちまっただけだよ。昔は色々あったからな……」 銀次「俺はそもそもインデックスって子を知らないしねぇ」 上条「ステイル、いい加減それ仕舞えよ! 怖いんだけど!? ってか、焦ってるの俺だけ!?」 ステイル「ちっ。まぁいい。なら、キミ達は関係ないんだろ? そろそろ僕らは彼女と『吸血殺し(ディープブラッド)』を助け出す必要があるんだ」 蛮「それが、そうでもねぇんだよ」 ステイル「なに?」 蛮は、インデックスが学園都市の暗部組織に狙われていることを伝えた。 ステイル「あの子がこの街の人間に狙われるなんて……」 銀次(『レムナント』については伏せといてよかったの?)ボソッ 蛮(あれは伝える必要ねぇだろ。上条も巻き込みかねねぇしな……。こんな事に首突っ込んでんだ、白井並みにしつこい可能性がある) 上条「まずは、インデックスを助け出さないと! アイツがインデックスを使ってなにをする気かもわかんねぇし」 蛮「あぁ、その方がいいだろ。原典使ってなにしでかすか……」 銀次「ところで、アイツって?」 ステイル「知ったところで意味がないよ。キミ達にはね」 蛮「あん? これからやりあう奴だぜ?」 ステイル「なんで来るつもりでいるんだい?」 銀次「俺達はGet Backersだからね」 蛮「奪られたものは奪り返す。禁書目録もディープなんとかってのも奪り返す。安心しろ、禁書目録を使ってどうこうするつもりはねぇよ」 ステイル「……」 銀次「その人以外にもインデックスちゃんを狙ってる人がいるんだよ? 一先ず助けてから、信頼できる人に託しておけば俺達も安心して戦えるし」 ステイル「……ちっ」 蛮「さっさと行くぞ、時間がねぇんだ」 蛮「アウレオルス=イザード?」 ステイル「あぁ、錬金術師さ。まさか黄金練成(アルス=マグナ)が完成しているとは思わなかったよ」 銀次「言葉の通りのことが起きる……。それって、対処のしようがないんじゃないの?」 蛮「確かにな……。忘れろと言われたら忘れる……。動くなと言われれば動けない……。近づくこともできねぇな」 四人はインデックス、『吸血殺し(ディープブラッド)』姫神秋沙を救出するために、彼女達が捕らわれている『三沢塾』へと向かっていた。 蛮「ただ、その右手なら話が別か……」 蛮は上条の右手へと視線を送った。 彼の右手には超能力・魔術問わず、あらゆる異能の力を打ち消す能力、『 幻想殺し(イマジンブレイカー) 』が秘められている。 銀次「俺の電撃も打ち消してたしねぇ」 上条「まぁ、上条さんにもよくわかっていないんですけどね……」 蛮「扱いづらそうな右手だな」 ステイル「まぁ、彼を打ち倒すにはキミの右手が必要だ。頑張ってくれたまえ」 上条「上条さんに全部任せるつもりでせうか!?」 蛮「にしても、黄金練成(アルス=マグナ)なんてもんが完成していながら、なんで禁書目録を欲するんだ?」 ステイル「……」 三沢塾の前に到着した四人は、辺りの光景に違和感を覚えた。 銀次「誰もいないね……」 蛮「学生ばっかりっつってもたしかにおかしいな……」 ステイル「この感覚は、結界か……」 上条「なぁ、あれって何だ?」 上条が指差す方には、銀の鎧に身を包んだ集団が三沢塾を囲むように立っている。 ステイル「あれは、ローマ正教の一三騎士団か!?」 銀次「このビルを囲んでるみたいだけど……」 騎士「ヨハネ黙示録第八章第七節より抜粋――」 ステイル「まさか……奴らそこまで!?」 上条「な、なんだよ……」 蛮「これは……『グレゴリオの聖歌隊』か!? この辺一帯を灰にする気かよ!!」 銀次を除いた三人は戦慄を覚える。魔術師であるステイル、魔術に詳しい蛮はもちろん、上条はレプリカの威力を知っているため、オリジナルがどれほどの威力を持つのかはわからないが、レプリカを超える力があるだろうと想像できた。 上条「ふ、ふざけんな!! あの中には関係ない学生や姫神、インデックスがいるかもしれないんだぞ!?」 上条は、騎士団へと駆け寄っていく。もちろん、止めるためである。しかし、その願いは叶わず。 騎士「――第一の御使、その手に持つ滅びの管楽器の音をここに再現せよ!」 辺り一帯にラッパの様な音が響く。そして、あらゆる音が消えた。 天上から現れた巨大な光の柱は三沢塾のビルを押し潰す。 それにより四棟ある内の一棟が、完全に崩壊した。それに続くように残りの三棟も崩れ落ち始めた。 銀次「なっ……」 蛮「くそっ……これじゃ……」 ビルの崩壊によって生じた粉塵に行く手を遮られる四人。それでも、上条は走る。 蛮「おい、それ以上近付くな!! 巻き込まれ――っ!?」 突如異変が起きた。ビルの崩壊が止まったのだ。四人は辺りの時間が止まったのかと錯覚を起こした。 しかし、実際に止まったのはビルの崩壊のみ。そして、巻き戻された。 銀次「なに……が」 崩壊の始まっていたビルが徐々に復元されていく。 蛮「『邪眼』……かよ」 完全に崩れ去った一棟も、まるで何事も無かったかのようにそこにある。 ステイル「これが……」 ステイルの口から煙草が落ちる。 ビルへと向かっていた上条の足は止まっていた。そこで彼は呟く。 上条「アルス……マグナの力……」 ――北棟 最上階 校長室と名づけられた豪奢な部屋。その窓際に男は立っていた。純白のスーツに身を包んだ彼の名はアウレオルス。 二メートルに届く細身の体に、緑の髪。緑は五大元素の一つ『土』を表す。 彼は、窓の外を眺めている。いや、実際には窓に映る自身の顔を。 言葉一つでビルの崩壊を止め、元に戻したにも関わらず、表情の変わらない自身の顔を。 彼は振り返り、黒檀の机の上で寝ている少女を見る。 Index-Librorum-Prohibitorum。インデックスと呼ばれる少女は、金刺繍の真白い修道服に身を包んでいる。 部屋には、『吸血殺し(ディープブラッド)』と呼ばれる少女。姫神 秋沙はその能力により多くの吸血鬼を殺してきた。己の意思とは関係なく。 彼女が、錬金術師といるのには理由があった。 姫神「この子を。助けたいのね」 アウレオルス「……」 姫神「助けられるの?」 自分の力で誰かを救えるかもしれない。 アウレオルス「当然。禁書目録は人の手では救えん。だが、カインの末裔の力を使えば救うこともできよう」 彼は禁書目録を見る。彼女を救うためならば、彼は手段を選ばない。 その時、大きく開かれていた扉から、人影が現れた。 蛮「救う……ねぇ。テメェ、何してるかわかってんのか?」 彼らも錬金術師と同じで、人を救うために。無論、それはたった一人ではなく、このビルにいる者達を。 ――とある倉庫 垣根「よし。これでいいだろ」カチャカチャ 麦野「だいぶコンパクトになったわね」 垣根「さすが学園都市だな。発展の仕方が異常だ」 絹旗「『ピンセット』って呼ぶには超違和感がありますね。どちらかと言うとグローブに超見えますね」 垣根「重要なのはこの部分なんだよ」 そう言って垣根は手にはめている金属製のグローブの人差し指と中指の二本を動かす。 その二本にはガラスでできた長い爪のようなものがついていて、その中にはさらに細い金属の杭のようなパーツが収まっている。 絹旗「この爪がですか?」 垣根「あぁ。こいつは磁力、光波、電子なんかを利用して素粒子を掴む……まぁ、正確には吸い取るってとこだが、それができる。つまり、素粒子を掴む『ピンセット』なんだよ」 絹旗「はぁ……」 絹旗はあやふやに返事をする。 垣根「で、その解析の結果がここに表示されるんだ」 トン、と手の甲にあるディスプレイを指で叩く。 麦野「で、私達にこれを取ってこさせて、結局何がしたいわけ?」 垣根「いまから話すさ」 垣根「俺は、常々疑問に思っていた。アレイスターのクソ野郎は……いや、連中は俺達の動向を知りすぎているってな」 浜面「はぁ……。連中?」 垣根「俺らに指示を出してやがったクソ野郎共や統括理事会の一部の奴らさ」 浜面「あぁ。でも、そんなに気になるか?」 垣根「まぁ、お前は暗部に堕ちてから長くねぇから実感はわかねぇか。お前らはどうだ?」 麦野「言われてみればってとこかしら」 絹旗「超タイミング良く連絡がってのはしょっちゅうでしたね」 垣根「防犯カメラ、清掃ロボ、衛星を用いたとしてもおかしい」 絹旗「人を使って監視させてるとかは無いですか? 超無いですね」 垣根「テメェで結論付けてんじゃねぇか……」 フレンダ「私達の持ち物に何か仕込むとか」 垣根「向こうから支給されるもんならありえるが、支給が無い事なんてしょっちゅうあったろ? それに、気付かれたら終わりだろ」 麦野「じゃあ、気付かれないサイズで……あ!?」 垣根「そう、人間の目じゃ捉えられないサイズの物体で監視できるとしたら……」 滝壺「さっきのナノデバイス……」 麦野「あれより上の技術ね。学園都市中でネットワーク築くってんだから……それも、他のものに干渉しないし干渉されない……」 垣根「だから、これを使う」 麦野「なるほど。元々素粒子を掴むものなら、ナノサイズのもの掴むのなんて簡単でしょうね」 垣根「ま、俺の想像の域を出ないが……当ったとすれば」 麦野「私達が覗ける『書庫(バンク)』とは比べ物にならない情報が得られるかもしれないわけか……」 絹旗「でも、それって今私達がやってることも筒抜けなんじゃ……」 垣根「大丈夫だ。俺の未元物質でここら一帯は薙ぎ払った。おかげで、目当てのものも手に入らんがしょうがねぇだろ」 麦野「そのナノサイズの物体を得るにはまたここから移動なわけね……」 垣根「っつーわけで、浜面とフレンダ、滝壺は先に車用意しといてくれ。外の連中も連れてな」 浜面「あ、あぁ。わかった」ダッ 垣根(まぁ、あの野郎なら見てなくてもこうなるとわかってんだろうな……。ち、本当にムカつく野郎だ) 麦野「あんたの連れは?」 垣根「うん? あいつはいつもの小遣い稼ぎだろ」 絹旗「なんですかそれ? 超気になります」 垣根「ホテルで一時間ぐらいお話するんだとよ」 麦野「うわぁ……一時間ってのが……」 垣根「あ、エロいことはしないらしいぜ?」 麦野「ホントかねぇ……ん?」Prrrr 垣根「携帯鳴ってんぞ?」 麦野「浜面からよ。準備出来たみたい」 垣根「んじゃ行くか。おい、『レムナント』忘れんなよ。大事なもんだからな」 スクールAB「はい」 絹旗「この後何処行くんですか?」 垣根「まずはナノデバイスの入手だな。これに関しちゃ何処でも構わねぇが、『レムナント』を使って解析するには……。おい、テメェら何もたついてんだ? さっさとしねぇとブチ[ピーーー]ぞ?」 スクールA「そ、それが」ギシ スクールB「う、動けなくて」ギシ 垣根「はぁ? なに言ってやが……っ!?」ギシ 絹旗「なんですかこれ? 超ウザったいんですけど……」ギシ 麦野「ワイヤーかしら?」ギシ 垣根「いや、これは……」 ???「それは絃(いと)ですよ」 絹旗「絃、ですか……。いや、そんなことよりあなた達何者ですか!? こんなもので動きを封じたつもりですか!?」 絹旗の睨んだ方には3人の男達が立っていた。 ???「無理に動かない方がいいですよ。『絃呪縛』から無理に抜け出そうとすると肉が裂けます」 垣根「お前ら、外の人間だろ?」 ???「えぇ。僕達の仲間が、『レムナント』を危険視していてね……」 垣根「ほぅ……。なかなか面白いなそいつは。『レムナント』を欲しがるわけじゃなく、消しにくるとはな」 ???「彼の頭脳なら、『レムナント』は必要なさそうですから」 垣根「そいつにも興味はあるが、お前にも興味があるな。口ぶりからすると、この絃を仕掛けたのはお前なんだろ? 外の連中は面白いな」 ???「一応名乗りましょうか? 風鳥院 花月です。よろしく」 絹旗(風鳥院……鏡が言っていましたね……たしか) 垣根「あんたが戦慄の貴公子(プリンス)か。かつて、ベルトラインに挑んだとか」 花月「……えぇ。誰に聞いたかは知りませんが、その通りです」 花月の表情が曇る。 絹旗(この人がそんなにヤバイ人には超見えないですけどね。超女みたいですし) 垣根「まぁ、話に聞く限りベルトラインって所は相当ヤバイらしいな」 花月「あの頃の僕は未熟でしたからね、逃げ帰ってくるので精一杯でしたよ」 垣根「たしかに、この程度の力でどうにか出来るような場所じゃねぇだろ」 花月「何?」 垣根「そんな所だったらつまらな過ぎる」 十兵衛「貴様! それはどういう意味だ!」 垣根「はっ、そのまんまだよ……。この程度の絃で俺の動きを封じれると、本気で思っているお前らごときがどうにか出来るような場所だったら、退屈しちまう」 十兵衛「くっ!!」スッ 士度「落ち着けよ、十兵衛。相手は〈第二位〉なんだぜ? 花月もこんなもんで終わるとは思ってねぇよ」 垣根「おいおい、どういうつもりだ? 動けない俺に向かってその針を投げたら終わりなんだぜ? なのに止めるのかよ」 士度「ふん。お前らが動けねぇのに『レムナント』を持っていかねえのと一緒だよ」 垣根「ほう」 士度「そっちの女は、動けようが、動けまいが関係なさそうだ。恐らく、遠距離でも戦えるような能力なんだろ? 態度を見てりゃわかる」 麦野(へぇ……) 垣根「じゃあ、いつまでも動かねぇつもりか?」 花月「そっちがそのつもりならね」 垣根「俺も、平和的に事を進めるのは大賛成だ。例えば、ここを見逃してくれたりな」 士度「はっ、つまりは……」 垣根「まぁ、どうせ叶わねぇんだろ? じゃあ、ぼちぼち始めさせてもらうぜ? 死んでも恨むんじゃねぇぞ!?」バサッ 垣根の背から現れた翼が、次々と絃をちぎっていく。 花月「こうも簡単に、ねっ!?」ヒュン 垣根の未元物質の出現を確認すると、三人は三方向に跳ぶ。間もなく、そこへ〈第四位〉の攻撃が放たれた。 麦野「ちっ、速いわね」パシュン 垣根「他の連中もこんな感じだったろ? 外の連中は総じて身体能力が異常だな」 絹旗「余裕ぶっこいてる場合ですか!?」 垣根「俺はあの絃使いを貰うが、かまわねぇな?」 麦野「誰でもいいよ。さっさと終わせたいし」 垣根「うっし」バッ 翼をはためかせ、一気に花月との距離を詰める。詰めながらも、未元物質で生み出した氷の槍を無数に放つ。 花月「くっ、風鳥院流絃術「守の巻」第拾五番の参『繭玉の楯(けんぎょくのたて)』!!」 花月は、琴絃を頭上から足元へと振り下ろし壁を作り、氷の槍を防ぐ。 垣根「あぁ、その絃に有効な物質で攻撃しなきゃなんねぇのか……。意外と丈夫なんだな。やっぱ、その波動が重要なのか?」 花月「驚いたよ……。そこまで見切れるなんてね……」 垣根「さっき押さえつけられた絃と、アンタが直接扱う絃とじゃ波動が違ぇ……。そこから解析してくか」 花月「キミの能力は、随分と変わっているね……。風鳥院流絃術「攻の巻」第弐拾七番の弐『降雨の槍(こううのそう)〈時雨〉』!!」 琴絃の束が、垣根の頭上へと不規則に降り注ぐ。その威力は周囲の鉄骨を歪ませるほど。 しかし垣根は、琴絃の降りしきる中、まるで傘を差すかのように未元物質を頭上に展開させ佇む。ただ、それだけ。 垣根「なんの超能力もなしに、こんな力持ってるアンタのが変わってるぜ?」 花月「僕なんてまだまだだけどね……」 垣根「謙遜するなよ。そこいらの能力者だったら一瞬で終わってる」 花月「君は、一筋縄ではいかないみたいだけどね……」 垣根「この程度でやられていたら、〈第二位〉なんて名乗っていられねぇよ。さっさと他の攻撃でもしてきな、こんなもんじゃねぇだろ?」 花月「……君の方からは、仕掛けてこないのかな?」 垣根「……ふぅ」 垣根は、花月の問い掛けに浅く溜め息を吐く。 垣根「そんなに早く終わらせたいのか?」 笑みを浮かべる垣根。無邪気に、というよりはあざ笑っている。強者の余裕とも見て取れる。 花月「……そんな態度ばかり取っていると、長生きできないよ?」リィィン その態度に花月は目を細め、手に持つ鈴を構える。 花月「風鳥院流絃術「攻の巻」第弐拾七番の壱『流水の刃(りゅうすいのじん)〈鉄砲水〉』!」 琴絃の束が垣根へと正面から襲い掛かる。 垣根「ふん。代わり映えしねぇな……っ!?」 翼で空気を叩き、横へと飛ぶ。しかし、垣根の体には絃が無数に絡み付いている。 花月「〈濁流〉!」 垣根「ちっ、俺の動きを読んだのか」 腕へと絡みついた絃の束を見ながら呟く。そこに焦りは見られない。 花月「〈渦巻き〉!」 四方八方から絃の束が垣根へと向かう。 床や壁のコンクリートをも粉砕し、粉塵が辺りを包んだ。 花月「……」 徐々に粉塵が晴れ、目の前に傷一つない垣根の姿が現れる。 垣根「ったく、その細腕のどこにこんな力が秘められてるんだか」 垣根は、服についた埃を叩き落とす。未元物質は収まっている。余裕の現れ。 花月「……気付かないかい?」リィィン 垣根「あ?」 垣根は辺りを見回す。体には数本の琴絃が縫い付けられている。 垣根「いつの間に……っ!?」 それらを、未元物質で振り払う前に花月が動いた。 花月「川を泳げばいかにぬぐおうとも、幾ばくかの水滴(しずく)まではぬぐいきれない――〈雫〉!!」リィィン 垣根の頭上から無数の琴絃が降り注ぐ。束ではなく、一本一本ではあるが、未元物質の発現よりも遥かに速い。 垣根「うぐぁあぁ!?」                                    つづく

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