とある夏雲の座標殺し(ブルーブラッド) > see vision S

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~第八学区・ハイウェイ~ 姫神「そんな事が。あったの」 上条「まだ誰にも言わないでくれよな。俺達も…色々あったからさ」 一方その頃…姫神と上条を除く全員が長旅で眠り込んでしまった中、姫神と上条は話し込んでいた。 上条達が終戦後、世界各国で何をし、何を見、何を手にしてきたかを。 姫神「(だから)」 何故だろうか、少し見ない間に少し大人びて見えたのは。 男子三日会わざれば刮目して見よ、という諺があるが…頷けると姫神は思った。 その横顔には確かな自信と、少しの落ち着きがあった。 恐らく以前の姫神が見たなら――頬を染めてしまうほどに。だがしかし―― 上条「なんか姫神も大人っぽくなったよな」 姫神「そう。そういうものは。自分ではわからないもの」 肩にかかる羽のような重み、微かに香るクロエの匂い、サラサラとした赤い髪、そして安らかな寝顔――結標淡希。 姫神「ふっ…。私にも。色々あった」 上条「おっ…おおっ…姫神がまさに大人な発言で上条さんも驚きましたよ」 初恋だったかも知れなかった男の帰還、そしてそれ以上に愛しい存在が今、姫神の傍らにある。 今、日向ぼっこしている猫のように微睡んでいる――利かん防で、怒りん防で、暴れん坊で、甘えん坊な同居人(こいびと)結標淡希が。 フィアンマ「貴様等。いつまで眠りこけているつもりだ。もう着くぞ」 上条「んがー!飛行機で一番遅く起きて車で一番早く寝たのお前だろうがフィアンマ!上条さんの目は節穴ではございませんの事ですよ!」 フィアンマ「ふん。この俺様がそんな失態を見せるか。目を瞑って世界の行く末を憂いえていただけだ」 上条「授業中居眠りするヤツはみんな目閉じてただけって言うんだっつの!」 姫神「(あまり変わってない。かも知れない)」 そんなやり取りの傍ら――姫神は―― 姫神「淡希。起きて」 ~とある高校~ そう、私はずっと長い夢を見ていたんだと思っていた。 この終わりの見えなかった、一週間前からずっと続く夢。 だから、私は信じられない。今自分の目に映っているものが。 白井「結標さーん!おかえりなさいですのー!」 校門の前で仁王立ちになっている白井黒子が手を振っている。 御坂「遅いのよアンタは!遅刻も遅刻大遅刻よ!」 その横で御坂美琴が真っ赤にした嬉し泣きの顔で指を突きつけている。 坂島「おお~姫神さん!どうにか生き延びたよ」 美容師もいる 舞夏「おおー!みんな久しぶりなんだぞー!」 メイドもいる 服部「浜面ぁぁぁ!!オレもう限界だ!気ままなスキルアウト暮らしに戻りてえええ!!」 スキルアウトもいる 黄泉川「打ち止め!一方通行!おかえりじゃん!」 芳川「愛穂、転ぶわよ、松葉杖なんだから」 手塩「姫神君、か、息災そうで、なによりだ」 木山「車椅子なのだから立ち上がらないでもらえるかい?やあ結標さん。おはよう。大変だったようだね」 警備員が二人、研究者崩れも二人いる。 滝壺「はまづらー!」 絹旗「超浜面ー!!」 フレンダ「変な名前のヤツー!結局、生きて帰って来たって訳よ!」 麦野「はーまづらぁ…上条!かみじょーう!とうまぁぁぁぁぁぁ!!寂しかったぁぁぁぁぁぁ!!」 禁書「しずりズルいんだよ!私も!とうま!あとふぃあんま」 暗部が四人、何故か修道女までいる。 吹寄「姫神さん!無事で良かった…本当に良かった…!あら?そっちの人達は?」 土御門「カミやーん!おかえりなんだぜーい!それと結標、一方通行、久しぶりだな」 青髪「(本業抜けてきおったな)カミやん!お勤めご苦労さん!」 友人達もいる 絶対等速「ばんざーい!ばんざーい!!」 刑務所帰りもいる。 御坂妹「おかえりなさい上位個体、とミサカはおじぎしながら彼をチラ見するちゃっかりした自分が大好きです」 ステイル「ふんっ…悪運しぶとく帰ってきたか」 オリアナ「はあい坊やにお嬢さん?さっきぶりね」 人間が一人、魔術師も二人いる。 削板「案内人!いい根性だったぞ!これからもよろしく頼むぞ!」 雲川「案内人、二日も本部に顔を出さなかったな。仕事が溜まってるんだけど」 地べたに踏まれている委員長と踏んづけている副委員長もいる。 そして――― サアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア… 姫神「これ。…は?」 結標「青い…薔薇?」 青天から降り注ぐ、青い薔薇(ブルーローズ)の花片。 まるで翼が舞い散るような花が吹き踊るようにフワリフワリと… 結婚式の花のシャワーのように空から空から…後から後から―― 垣根「よお“9人目”。歓迎するぜ――レベル5に。花束代わりに受け取んな」 結標「第二位!!?垣根帝督!!?」 初春「か、垣根さぁん!ここからだと私のスカートの中見えちゃいますよぅ!」 垣根「しまった!いけねえ!オレの飾利がぁぁぁ!」 遥か天空から、『未元物質』で青い薔薇を作り上げ降り注がせる垣根帝督。 その腕に慌ててお姫様だっこで抱えられる初春飾利。 そして…そんな二人を―― 小萌「――おかえりなさいなのです、姫神ちゃん、結標ちゃん!青空教室なのですよー!」 姫神・結標「「小萌…!」」 あたたかく迎えてくれる――教師がいる 上条「…行けよ姫神。家に帰るまでが遠足…だろ?」 背中を押してくれるクラスメートがいる 一方通行「――凱旋だ。いけよ。花道は譲ってやるからよォ」 尻を蹴飛ばす仕事仲間がいる 私達は、一人じゃない。 ~See visionS~ 姫神「…行こう。淡希!」 結標「わわっ、ちょっと待って秋沙!」 私達は駆け出す。この限りなく澄み渡る青空の下、降り注ぐ青い薔薇の花吹雪の中を、互いの手を取り合って駆け出す。 姫神「大丈夫。離さないから。貴女の手を」 飛べない、届かない、掴めない空。それを地べたを這いながら生き、何度その青さをなじっただろう。 結標「年下のクセに…生意気ねっ」 でも、今なら思える。この場所だって悪くない。 羽根を持たない私達は、一歩一歩前に足を進める事しか出来ない。 それでいい。もうあんなに空を飛び回るのには飽きた。 地べただって構わない。泥にまみれたって構わない。 姫神「私が。上」 結標「私が下!?」 舞い散る青い薔薇の花嵐。終わりなく続き、限りなく広がる青空を見上げながら歩いていけたらそれでいい。 遠くに行けなくなったって、先に進めなくなったって、立ち上がれば良い。何度だって。 私達の瞳に映る太陽は、眩しくって、届かないかも知れない。 でもそれでいい。もう離さない。この繋いだ手を。もう二度と離さない。 結標「――秋沙、青い薔薇の花言葉ってなんだったかしら?」 姫神「――“不可能”――」 私達は超えて来た。レベルの壁(不可能)を、打ち破れない悲劇の夜を、二人で越えてきた。 結標「――もう一つは?」 姫神「――“神の祝福”――」 神様に見捨てられたって、神様に忘れられたって、私達の学園都市(せかい)は終わらない。終わらせはしない。 結標「――あと一つは?――」 姫神「――“奇跡”――」 奇跡はここから始まる。作り上げていく。一人一人の手から。私達の手から。 もう神様なんていらない。夏雲の彼方(そこ)から黙って見てればいい。 結標「――秋沙――」 姫神「――淡希――」 貴い物は、私達の手の中にある。血の繋がりより強いものが。 花嵐の中駆け抜ける秋沙、青空の下走り抜ける淡希、夏の陽射しが降り注ぐ、海のように青く澄み渡って―― 「――――――愛してる――――――」 終わらない空の下――私達の世界は繋がっている。 私達はもう… 孤独(ひとり)じゃない―― とある夏雲の座標殺し(ブルーブラッド)・終

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