佐天「…アイテム?」1

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佐天「…アイテム?」1」(2011/01/25 (火) 00:58:52) の最新版変更点

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八月第一週のとある日 「今日もお疲れ様のですー!今度は補修に来ちゃだめですよー!」 ピンク色の髪の毛の小さい先生が教室にまばらに座っている学生に対して挨拶をする。 講義を聴いていた学生達は次々にバックに教科書を入れて立ち上がり、帰宅していく。 その生徒達の中に一人、柵川中学の学生がいる。 彼女の名前は佐天涙子。 彼女が何故補修に参加しているか。 彼女は7月24日に幻想御手(レベルアッパー)に手を出して倒れてしまったからだ。 彼女は能力がいつまでたっても上がらない事に嫌気が差し、飛び級して能力を得ようとした。 そんな人達に努力してレベルを上げる事の大切さを説く為、夏休みであるにも関わらず学園都市側は補修を開いているのだ。 さて、今日の講義も終わり。 これでやっと補修の全てのカリキュラムは終了したと言う訳だ。 (いやー…やっと終わった。補修めんどくさかったなー) (自業自得なんだけどねー、でもこのクソ熱いのに外走ったり、その後にキンキンに冷えた部屋で長時間講義とか…疲れちゃうわ) (…でも、そんなめんどくさいのもおしまい!仕送りも今日来てるだろーし、ちょっと自分にご褒美しちゃおっかな) めんどくさい補修が終わって彼女は柵川中学校の学生寮に向かう。 佐天が講義を受けていた高校は多摩センターにある。 そこから多摩都市モノレールで一気に立川まで出る。 立川駅から降りると再開発地区として開発されている所の近くにある寮へ。 そこが彼女の家だ。 モノレールから降りるとうだるような熱気が漂っている。 そんな中をトボトボと佐天は自宅に向かって歩いていく。 途中コンビニに立ち寄ってお金を下ろす。 (五千円、これで一週間もつかなー…) 仕送りと言っても自由に使って言い訳ではない。 月ごとの携帯電話のお金や水光熱費などのお金。 水光熱費は柵川中学側がある程度負担してくれるとは言え、全額ではない。 (お金のやりくりとかめんどくさいなー…セブンスミスとに新しく入った服屋も行ってみたいし…) そんなお金の計算をしながら佐天は寮の前に着き、鍵をガチャガチャを開けていく。 昼下がり。 太陽はまだまだ遥か高い位地に。 (あー…冷房タイマーでつけとけばよかったなー…部屋の中、暑すぎるー…) HARUTAの革靴を脱ぎ捨て、整えずにそのまま上がっていく。 バックをベッドに放り投げようとしたその時だった。 机の上に小さい小包がおいてある。 (ん?なんだこれ?) 佐天は小包を手に取る。 (あれれ?宛名もなし…?) 何も記載されてない小包。 とりあえず彼女は制服のまま冷房が当たる位置に移動してその小包を開けて見ることにした。 ジジジ…ビリビリ… 小包を破ると中にプチプチで丁寧に包装されているipadの様なタブレット型携帯電話が入っていた。 いや、正確に言えば通話可能なノートPCと形容がしたほうがいいかもしれない。 (な…なにこれ?いたずら…?) ともあれ包装されているプチプチを取ってその携帯電話を見る。 市販で売られているipadと形は殆ど同じだが、通話機能が付いている点が大きくことなる。 製造されたメーカーの名前も彫られてない。 (…な、何よ?これ、マジで…) (ちょっと…押して見ようかな…) そんなことを考えて佐天が電源起動ボタンと思しき所に指を当てようと思った時だった。 音を立てず、静かに携帯電話が起動するではないか。 (えっ!?あれ?ボタンを押そうと思ったけど…勝手に起動した?) 動揺するよりも寧(むし)ろ、じーっとあぐらをきかながら携帯電話を見つめる佐天。 冷房の風が冷たい。 携帯電話の電源が起動する。 すると各種のソフトをダウンロードしているようで小さく機械音が聞こえる。 そしてダウンロードが終了すると、いきなり電話がかかってきた。 プルルルルルルル………… 最新機器の携帯電話から奇妙なくらいにレトロな音が鳴る。 その音で彼女の肩がびくりと震える。 「はい…もしもし…」 『あ、出たねー、こんにちわ』 受話器越しに聞こえる声は明朗快活な好青年の様な感じだった。 「えーっと、どちらさまですか?」 『あー、自己紹介遅れちゃったね!俺は…そうだなぁ…名前は言えないんだけど、人材派遣って言ってくれればいいよ』 「マネジメント?」 佐天は人材派遣という言葉を聞き返す。 (マネジメントって何よ?) 『あー、まぁ…名前の通り?かな、人材を募集したり、必要な機器をいろいろな人々に供給する、学園都市の影の功労者みたいな感じかな?』 電話の相手はペラペラと自分の事を話していく。 佐天は坊主の野球部員をなぜか想像していた。 「…その人材派遣さんが私になんの用なんですか?」 『あ、鋭い指摘だね、単刀直入に言うけど、君に引き受けてもらいたい仕事があってさ』 「引き受けてもらいたい仕事…?」 『うん、出来ればその業務内容、ちょっとだけ聞いてくれないかな?』 佐天は思った。 明らかにこれはおかしい。 何かしらの性質の悪い勧誘か、最近はやっている詐欺の一種とか新興宗教の勧誘だと思った。 ほら、最近噂の三沢塾とか。 そんな彼女の不振の念など携帯電話の通話相手はつゆ知らず、ベラベラと喋っていく。 『あー、平気平気。取りあえず、俺のはなし聞いてくれない?五分だけでもいいからさ、はは、CKBの健さんみたいだね、って知らないか』 何か勝手に冗談を一人で言っているが、佐天にはわからないようだ。 それより、この男は何を持って平気と言えるのだろうか、佐天は首をかしげる。 「…なんなんですか…さっさと要件言ってください、いたずらですか?」 ちょっと強い語調で言い放つ。 すると即座に電話の相手の男は答えた。 『違うよ』 その言葉を聞き、答えに窮する佐天。 たいして男は佐天が黙っている事をいいことに喋る。 『取りあえず、段ボールの底を見てほしい』 電話の男は佐天の家に届けられた小包の底を見てくれと言ってきた。 それが一体、この電話が冗談かどうか、どういう関係があるのかはわからない。 取りあえず、佐天は電話の男には答えずに小包の底を見る。 そこには茶の封筒が入っていた。 (な、なにがはいってるの???) 佐天はガサリとその袋をつかむ。 その音が通話している男にも聞こえたのだろうか、『封筒見つけた?』と聞いてくる。 そして、次には佐天が驚く事を男は言った。 『100万ね、それ』 「100万…?何がですか?」 (え…、まさか…?お金?) 『佐天さん、まだあけてないの?封筒開けてみてよ』 その男の声に導かれるがままに佐天は封筒を開けてみる。 ビリビリと封を切ってあけるとそこには新札で大量の一万円が入っていた。 佐天は試しにぱらぱらと一万円に目を通す。 本物かどうかは中学生の彼女には判定できないが、見た目はちゃんとした一万円のようだ。 「こ、こんな大金…一体…私に何をさせたいんですか?」 彼女の心拍数は一気に早くなる。 こんなお金の束、見たことない。 テレビ画面ではよく身代金を要求するシーンで札束を目にすることがあるが、彼女がこんな大金生で見るのは生まれて初めてだった。 『何をさせたいって…まぁまぁ、焦らず聞いて』 男は落ち着き払った声が聞こえてくる。 緊張で手汗をかいている佐天とはおそらく正反対の態度であることは容易に想像できる。 『取りあえず、これで俺が冗談を言ってるって訳じゃないことが分かったよね?ちなみに本物だから、それ』 「…はい…」 (ほんと?…ひゃー…) 『そのお金を見たうえで君に質問何だけど、能力者に嫉妬してる?』 「え?いきなりなんですか?その質問?」 佐天はいきなり自分の心の内面がえぐられる様な気分を味わう。 なぜなら今、彼女は幻想御手のショックから回復して学校で補習を受けており、只今絶賛、能力についての話を受けているからだ。 正直、あまり能力とかそういう話はしたくないのが今の彼女の本音だ。 「その質問の答えを、私があなたに…言う必要があるんですか?」 佐天は顔も見たことのない相手に自分の事を言われ、若干苛立つ。 しかし、男はそんな彼女の事を全て知り尽くしているかの様な口ぶりで話していく。 『いやー…佐天さんを怒らせる気はないんだよ?あくまで嫉妬してるかどうかを聞いただけだから』 「…それが私の気に障るんです、電話切りますよ?」 『あ、ちょっと待って!たんま!』 電話を切ろうとすると男は慌てふためいている様で、動揺した声が佐天に聞こえてくる。 『君にお金を渡した理由はね、君にある組織に電話をかけてほしいからなんだよ!』 「組織に電話…?」 『そうそう、えーっとね…これ以上電話で言うことはできないから…今日会えるかな?』 「なんですか、それ。ついさっき電話掛けてきた人にあれよれよと会おうなんて気がしません」 『平気だって、拉致とか、薬使って眠らせたりはしないからさ』 「…そういうと余計心配になります」 『だったら小包に本物の100万円なんて置くはずがないだろ?』 「………」 佐天は黙っていたが、正直、確かに、と納得してしまった。 そして、律儀な彼女はお金をもらったからには、もらい逃げするのもなんだか気が引けてしまうのである。 「…じゃあ…良いですよ…会うだけですからね」 (会うだけならいいかな…?我ながら…大したクソ度胸ね…) 佐天はお金をもらったことと、なんだか分からないが、このままではすっきりしないと判断したのだろう、男と会うことに決めた。 『ホントに?やったね、じゃ、19時に町田でどうかな?』 男は指をパチン!とはじく。 その音が佐天に受話器越しから聞こえてくる。 「町田って?JRの町田駅ですか?」 『そうだね。…じゃ、町田駅のオブジェ前でどうかな?改札出たらすぐわかるから、そこにいてよ、迎えに行くからさ』 「あ、わかりました」 『あ、そうそう、それとこの電話は持ってきてね、今佐天さんがもってる電話で説明するから』 「はい…じゃ、切りますよ?」 (この携帯で…?) 『うん、いいよ』 佐天は電話を切るために電源ボタンを小刻みに何度も押す。 電話が終了した時、彼女の思考能力は半ば停止していた。 能力、嫉妬、100万、電話、仕事… 見ず知らずの男に言われたさまざまな単語が彼女の頭の中に浮かんでは消える。 ごちゃごちゃにして全く合わないパズルのよう。 (あぁ…お金をもらっちゃった手前、拒否出来なかったけど…どうしよう…行くしかないかな…?) 行くと決めておきながら、やっぱり町田駅に行くかどうか逡巡する。 取りあえず彼女はスカートのファスナーに手を駆けて着替えることに。 ジーッ…っとファスナーを下ろしていくと、ストンとスカートが床に落ちる。 衣類が入っているタンスを開けて、スウェットを履く。 上着も制服から半そでの白いシャツに着替える。 冷房の空気が冷たく当たり、寒い。 冷房の電源を一度切って窓を開ける。 もわっと熱気が部屋に侵入してくる。 しばらくして彼女は窓を閉めて横になった。 警備員の詰所に佐天はいた。 『あら、佐天さん、今日も詰所にきていらしたんですの?』 『すいません、白井さん、お邪魔しまっす!』 『白井さん、佐天さんは今日は暇って言っているので、ここに来ました…』 初春の苦笑した様な顔。 どうやら彼女は佐天を詰所に連れてきたことを後悔しているようだ。 『…もしかして、今日はきちゃだめでしたか?』 彼女はこういう時、決まって苦笑いをする。 (いやぁ…今日は来ちゃまずかったのかな?) 『いえ…別に来るな、とは言ってませんの、ただ…』 『ただ…?』 『いえ、なんでもないですわ、ホラっ、初春!警邏に行きますよ?』 『あ、はい!』 佐天を置いて二人はどこかに消えていく、彼女はそれを追いかけて…風紀委員の詰所のドアを開けていく…。 ガチャリ、 そこには何もない。真っ暗な空間…。 『待って!私も行って良いですか?』 そこは虚空。何もない。誰も答えない。 気付けば、周りには私以外誰もいない。 ただの空間だけ。 いきなりシーンが変わる。 『あれ?ここはどこ?まさか、セブンスミスト?』 佐天は周りをキョロキョロ見回す。 初春達を見つける。 『ういはるー!白井さーん!御坂さーん!』 『あ、佐天さん!どこに行ってたんですか?探しましたよ?』 『ごめんごめん、ちょっと風紀委員の詰所に…?ってあれれ?』 混乱する。自分がどこにいたのか良く分からない。 確か、風紀委員の詰所にいて、初春と白井を探そうとして、彼女はドアを開いた時…。 『ま、どこ行ってたって良いわよ?それより、ホラ、今日は美琴先生のおごりだから、美味しいパフェがどこにあるか教えてよ!』 『あら!お姉様が奢るなんて珍しいですの!さては…何か良いことでもありましたか?』 『は?な、な、な、ないわよ!あの馬鹿とかどうでもいいから!』 『あの馬鹿?まさか…あの類人猿とまた遭遇しましたの?噂に聞けば、あの類人猿は無能力者らしいですわよ?』 急激に情景が切り替わったと思えば、佐天は白井達といつもしているごく、他愛のない話の輪にいた。 『初春?あなたからも何か行ってあげて下さい!お姉様は無能力者の男に気があるそうなのですが…お姉様の様な上品な御方とはどう考えても釣り合わないですの…!』 『…私は人それぞれで良いと思いますけど…ダメですかね?佐天さんはどう思いますか?』 『あ、私は…はは、無能力者がどうとか、って言うよりかは自分の思った相手だったら誰でもいいと思いますけど…』 『ちょっと!初春さんに佐天さん!そんな話じゃなくって!ってかいつから私はあの馬鹿の話をしたのよ?』 『だって、お姉様が私たちといて、上の空の時はたいていはあの類人猿がからんでいるんではなくて?お姉様は否定できまして?』 『うっ…///』 顔が赤くなっている御坂。 そしてそれを複雑な表情で見ている白井。 初春と佐天は、ははは、と笑っている。 佐天は一緒に笑っている初春をちらりと見る。 彼女は御坂と白井の痴話げんかの様なやりとりを聞いている。 (私は…どうかな…?) 佐天は自分が本当に心の底からこの会話を楽しんでいるか、自分に聞いてみる。 答えはわかりきっている。 この会話は彼女にとって苦痛以外の何ものでもなかった。 (御坂さんが気に言ってるかどうかなんてわからないけど…) (無能力者だって良いじゃない…白井さんも御坂さんも、能力なんて気にしないでさ…?) 彼女の思考がまた切り替わる。 すると今度は誰かが佐天を呼んでいる。 またシーンが暗転する、今度は声だけだ。 聞き慣れない男の声だ。 『おーい!おーい!起きろ!超電磁砲が…!』 (私を呼んでるのは…誰?) 『結局…私のお姉ちゃんの話何だけど…』 『オマエがあの電話の…へぇ…』 『わたしは…そんな境遇の………応援……』 『超、私とためですね…!』 (誰?声だけが聞こえてくる…!?) 聞こえてきた声は五人。 そして…? 「はぁ…はぁ…夢?」 佐天はベッドに横になったまま寝ていたようだった。 やけにリアルな夢を見ていた。 いや、むしろ…現実のワンシーンのフラッシュバックを思わせるもの。 しかも最初の二つは自分があんまり思い出したくない、風紀委員の詰所で感じた疎外感の話や能力者特有の会話だ。 けれども、彼女が納得できない夢が一つあった。 それは―― (あの五人の声は一体誰の声だったんだ?) 彼女を呼んだ五人の声。 声からしておそらく四人は女性だろう。あんな声の知り合いなんて誰もいないが。 勿論、男も聞き覚えがない声だった。 とにかく、嫌な夢をみた気分だった。 冷房のタイマーは切れていて、室内はうだる夏のクソみたいに熱い熱気に浸食されつつあった。 汗もじっとりと書いている。 嫌な汗だ。 さっさと体を洗いなあがしたい衝動にかられる。 (軽くシャワーあびよっかな…) (時計、時計っと…今何時何だろう?) 取りあえず彼女はベッドに置いてある携帯電話をパカリと開く。 時刻は17時半。今からシャワーを浴びて、支度をすれば、19時には町田につく。 (時間的には余裕かな…?シャワーあびよ…) (っていうか…なんだったんだろう…あの夢…あー、もう思い出せない!) 薄れゆく夢の記憶。 つい先ほどまで見ていた夢の内容はもう頭から消えていった。

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