「小萌「魔法名は『smilers100』【生徒達の笑顔のために】ですよー」2

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「小萌「魔法名は『smilers100』【生徒達の笑顔のために】ですよー」2」(2011/01/25 (火) 00:40:27) の最新版変更点

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アックア「貴様……」 アックアがメイスを構える。その理由は二つ 相手がいきなりに魔法名を名乗ってきたこと もう一つは、この魔女からの魔力が異常なこと アックア「『Flere210』…」 とだけアックアは魔法名を名乗り返した 小萌「では行くのですよー」 その声と同時にアックアは一瞬で間合いを詰め小さな魔女に迫り―― ガギィィィッ!! アックア(またか…!?) 妙な空間に阻害された巨大なメイスはまたもや動かない 小萌「よく動きますねー」 ドガッ! 小萌の小さな箒はアックアのメイス並の威力を持って激突した がそこにあるのは空間に固定されたメイスだけ。アックア本体は―― アックア「遅い―――」 バゴッ ドガッ アックアの巨躯が、ビルの一つや二つ薙ぎ払えそうな打撃を繰り広げる それを小萌は小さくか弱そうな箒一本で受け止めている その信じられない光景を目の当たりにしている五和は、ただ尻餅をついているので精一杯だった 五和(何が起こって……) しかし五和の目の前で、ハロウィンのコスプレさながらの小さな魔女は、優勢と言える戦況を繰り広げる 小萌「『宇宙を満たす第五の元素。その役割は光の道となる』」 瞬間、キラキラと舞った光の粒子は、消えた アックア「なっ……!?」 魔力、姿、音までも消えた小萌。その目の前の世界で、後方のアックアは独活(ウド)の大木でしかない 小萌「ここですよー♪」 メイスを再び握り、声の方向へ薙ぎ払った瞬間だった アックアの顔右側面に違和感が走る アックア「!?―――」 あまりの不快感にバランスを失いかける巨体の足元に、小萌の一撃が入る アックア「がっ………」 ズドン! 大きくバランスを崩し転倒した後方のアックアはあまりにも惨めな姿 小萌「こんなものですかー?」 後方のアックアは考えた アックア(引いて態勢を立て直すべきであるな…) アックアは強い。だから故に冷静になれる 『神の右席』というプライドにかけてここで戦いを続行していたならそれは間違い。目の前の状況を受け入れ冷静に分析しなければ、自分でも負ける。と言う事を知っていたから ムクッとアックアは立ち上がった アックア「仕方ないが、次に来る時は、上条当麻の命の保証は出来なくなったである」 ドバッ アックアは砲弾のように川の上流に飛んで行った 小萌「ふ~っ………本当ギリギリセーフでした~…」 五和「あ…あなたは…上条さんの…先生?」 小萌「ん?はいそうですよー」 五和「なら…なんで魔術を…」 小萌「そんなの決まってるじゃないですかー。私の生徒さん達を守るためですよー」 非常に簡潔な台詞で、小さな魔女は回答した 医者「…と言うことです。なので絶対安静にして下さい」 とある病院に天草式はいた 上条当麻は療養中で、天草式の面々も怪我をしていた 奇妙な集団の天草式だが、例の通り『馴染んで』いるので不自然なほど自然体だった。だがそれは逆に、小萌の不自然さを際立たせるだけだと言うことは言うまでもない 建宮「とりあえず後遺症も命の心配もなかったか…」 小萌「もう少し遅かったらどうなっていたか…」 建宮「それには本当に感謝してるのよな。月詠小萌」 小萌「でもまだ終わっていません。後方のアックアは必ず来ます」 五和「本当に…本当にありがとうございます小萌さん…」グスグス 半泣きの五和は何度も何度も小萌に礼を言った 小萌「大丈夫ですよ五和ちゃん。今は上条ちゃんを守ることだけ考えましょう」 五和「守……る」 小萌「そのために後方のアックアを殺します…。絶対に――」 いつもの小萌からは想像できないような怖い顔。それを見た五和も決意を決めたのだろう 五和「分かりました…。絶対に守ります…」 建宮「(え?今アックアを[ピーーー]って言わなかった?ねぇ今)」 牛深「(い、言いましたね…)」 建宮「(え、こう言うバトルものって[ピーーー]じゃなくて倒すでしょ普通、ねぇねぇ??)」 牛深「(教皇代理がなんとかしてくださいよぉぉ!)」 建宮「(無理無理無理無理!あの二人ヤバいよマジ。俺が殺されかけ――)」 五和「建宮さん……」 五和のくらーい声が建宮を呼ぶ 建宮「は…はい…」 五和「三時間ほどまって下さい…。海軍船上槍の加工をします…」 小萌「私も調子を整えましょうかねー」ドバー 延々と槍に加工をし続ける五和の隣に、ドラゴンボールよろしく魔力をなんかドバーっとやっている小萌 正直、建宮はアックアと対面した時より怖かった 午前3時頃―― アックア「まさかエーテル魔術が私に立ちはだかるとはな…」 襲い掛かる学園都市の無人兵器を薙ぎ払い、後方のアックアは独りごちた アックア(神の右席の弱点だとでも推測したであるか…) 世界は五大元素によって構築されると定義されているものの、神の右席は4人。エーテルはない アックア(忌ま忌ましい『科学』に侵食された元素か…) それが昨今の魔術世界の共通認識、みたいなもの アックア(そして、まさか聖人でもないただの魔術師が私と対等に渡り合うとは…) アックア(『エーテルの魔女』。面白いである) その時だった ザザッ アックア「刻限の時間まであと半日以上あるのであるが…」 建宮「こうも無理難題を押し付けられると、悩む必要も無くなるってのよ」 再び激突が始まろうとしていた――― アックア「あの小さな魔女はいないのであるか?」 建宮「気になるのか?」 アックアは天草式など眼中にない。自分と渡り合うあの『エーテルの魔女』に興味があった 五和「その前にまず私達の相手をして貰いましょう」 ドバァッ! 例の加工した槍は『冷たい夜気』を利用した魔術で、一気に爆発した アックア「私の質問にも答えて貰えぬのであるか」 無傷の巨体は鋭くこちらを見据えている。そして爆発による灰色のカーテンを薙ぎ払おうとした、その時だった ざわ… アックア「!?」 まただ またあの不快感が右の首筋を襲った アックア「魔女めッ!!」 ドバッ! アックアの足元に巨大な氷柱が生え、その巨躯は空を舞った 小萌「氷なんかに乗ってると、すべっちゃいますよー」 アックア「!?」 まさか… と息を呑んだ瞬間、アックアの足場が、『滑った』 アックア(エーテルの特性は『万物に似ている』。ここまで厄介だとは…) 氷柱に何らかの干渉をされたらしい、と推測したアックアは態勢を立て直すべく、第二、第三の氷柱を作る しかし小萌の追撃は止まない 小萌「おっと、空中戦では私の方が有利ですよー」 バッ バッ しかし応戦するアックアは一つのことに気づく アックア(空中……!?) するとアックア上空の小萌を見上げ、十字架を切った ドガァァァァァァッ 十字架を切る。たったそれだけの動作で雷に似た光線が空飛ぶ魔女を襲った かつて十二使徒の一人ペテロは、空飛ぶ魔術師シモン=マグスを主に祈るだけで撃墜した だからアックアは知っている、いや魔術師のほとんどは知っている 『現代の魔女は、空を飛ばない』 アックア「なっ…!?バカな!!」 そして、それを熟知している『神の右席』後方のアックアにとって、今目の前に広がる光景は信じられなかったのである 小萌「現代の魔女は空を飛ばない。それは撃墜術式の発展によります――」 アックア(何故だ…何故『墜ちない』!?) 小萌「しかし防御を徹底すれば、小萌先生にも空は飛べるのですー。例えば、『ガヴン=コンパス』みたいに」 全員「!?」 天草式もアックアも、驚いた つまりあの魔女は、今見せたように、移動要塞ガヴン=コンパス並の防御術式を常時展開している。つまりそれは――― アックア「貴様…もしや吸血鬼…」 小萌「違いますよー。私は上条ちゃん達の先生ですー」 ドバァッ! 小萌は空爆かのように空から地上を殴りつける アックア(あの防御術式…つまり通常の人間、いや『神の右席』さえも越える魔力を保持していると言うのか――) アックアは一方的に応戦の形をとる いくら天草式が雑魚だとは言っても、空からの強烈な攻撃に対し、地上の天草式に足場を崩されば非常に厄介だ アックア(ええい!!) すると、そのまま地上を駆けるアックアの目の前に無数の鋼糸が… アックア「ふんッ!」 メイスでそれらの鋼糸を薙ぎ払うと、切断面から赤い霧が吹き出し―― アックア(そうくるか………) そのままアックアの全身は赤い霧に包まれる 五和「その術式の正体は『殺人に対する罪』。ワイヤーを生命と再定義した罰を与える術式で―――」 ドバッ! 赤く纏う霧を無効化するかのように、中心から爆発がおこる アックア「私の特性を教えよう」 上空にいる小萌にも対峙する天草式にも、アックアは強く大きく写る アックア「私の特性は『神の力(ガブリエル)』聖母崇拝の秘儀をある程度行使することができる」 アックア「その特徴は『厳罰に対する減衰』である」 その声に天草式は一線を引く アックア「結論を言おう、我が特性は罪を打ち消す『聖母の慈悲』。殺人罪ごときの罪が私に通じるとでも思ったか――」 小萌「もしやあなたの特性は罪だけでなく、『神の右席』の約束・束縛・条件すら無効化する…ということですか?」 アックア「よく気づいたであるな」 それが聖人アックアの強さの秘密 しかし、それを知ったところで小萌と天草式の考えは変わらない アックア「さて、説明も終わった。そろそろ私も本領発揮といきたいところである」 すると橋の下を流れる川が突如爆発を見せる 五和「ッ!?」 建宮「来るぞ!!」 水は砲弾となり槍となり、地上の天草式に襲い掛かる 小萌「くっ…!」 小萌は急降下して天草式の助けに入ろうとする、が アックア「貴様は私の相手をしろ――」 エーテルの干渉魔術を恐れたのか、アックアは氷を使わず移動し、メイスは水で加工されている 小萌「仕方ないですねー…」 すると小萌はあっさり箒から降り、空中で足場のない2人のメイスと箒が爆音を奏でる―― アックア「見事な体裁きであるな」 小萌「ちょっと苦しいのですよー……ッ!」 ガギィッ ドバッ! クルクルと空を舞う小萌と、水の砲弾を足場とするアックアの速さは一閃の光を煌めかせた このままではさすがに小萌自身も苦しい… 小萌「『宇宙を満たす第五の元素。それは電磁波の媒質ともなる』」ギン 箒を両手に、祈るようにして唱えたその魔術は―― ドバァァァァッ!! アックア「――ッ!?」 突如アックアの足場の水と、メイスを加工していた水が爆発をした アックア(電磁…波…。まさか……) 小萌「アックアさんは科学のお勉強は嫌いですかー?」 その問いの意味が、アックアにはすぐ分かった… 小萌「エーテルは光と同時に電磁波の媒質ともなります。その意味は魔術的要素にも――」 ドバッ! アックアは一旦地上に降り立つ 小萌「つまり小萌先生のエーテルは、電磁波の魔術なのですー」 19世紀末に科学者マックスウェルの予言よりヘルツによって発見された『電磁波』。光と同等の伝播速度を持つそれは、必然的にエーテルが媒質とされてきた訳で―― 小萌「つまりー、私の魔術は…」 アックア「自らが開発した…『独自の魔術』」 魔術を作るエネルギーはもちろん魔力。そして属性に関連性のある魔術が一般的とされている 小萌「そうですねー。『科学の魔術』とでも名付けましょうかねー」 アックア「―――ッッッ!?!?」 それはアックアの理性を越えた一言だった この魔女は……知らない 何も知らないのだろう、と アックア「貴様…『科学の魔術』を…自分一人で開発したのではあるまい」 小萌「?…まぁローラさんのアドバイスでこの魔術を完成させましたけどねー」 ローラ・スチュアート その名を聞いたアックアはさらに怒りの感情が込み上げてきた アックア「クッッッ!!」 小萌「??」 『科学の魔術』 それは魔術世界で禁忌とされる魔術であった。科学的伝承を利用し科学的効果を利用する魔術 恐らくさっきの『電磁波』の攻撃は強力なマイクロ波による水の爆発。つまり電子レンジのようなもの アックア「ローラ・スチュアート………」 何とも忌ま忌ましい名前 そして何故ここまで『科学の魔術』が嫌われるか。それは簡単で、『魔術を侮辱する』と言う理由 そして、昔にも本格的な『科学の魔術』を使用した人間がいた―― アレイスター・クロウリー アレイスターの名を知らぬ魔術師はいない 魔術世界で最大の魔術師。そして、最も魔術を侮辱した人間を そして学園都市で『人工天使』を作りあげ、また一つ魔術を侮辱した人間 アックア「貴様が使用したその魔術。それを知ったからには、私は『神の右席』として見過ごす訳にはいかないである」 小萌「………いいですよー」 ドバァァァァッ! 小萌(はや…) ガギィィィッ! 重い アックアの一撃は重く、メイス越しに憎しみが伝わってきた 小萌(電磁波の…魔術で…) さっきと同じように箒に祈りを捧げると周囲の水は爆発の連鎖を起こす しかしもちろんの如くアックアは防御術式を展開しマイクロ波を利用した魔術は効かない 小萌「―――ッッ!?」 ドグッッ! 小さな魔女の体が、鈍い音をたてて遥か後方へ飛んでいった… ――来るッ そう知覚したのは五和だけでなく天草式全員がそうだった ズドンッ! メイスを振るい、水をミサイルの如く乱発するその巨体は、先程と違う 建宮「陣を…崩すなッ!」 『怒り』を表にしたアックアは手加減を知らない 五和(『本命』を叩き込むどころか…陣さえ持たない…!) じわじわと崩れてゆく、とかそんなものではない。一瞬にして崩壊させられる一打一撃が大地震のように大地を震わせる アックア「貴様らに構っている暇は…ないッッ!」 ゴゴゴッ! 氷の壁が迫ったかと思うと、そこから無数の水槍が襲う 一気に散開した天草式だが、そこにアックアはいない… 建宮「まさか…まだ月詠小萌を…!」 五和「そのようです…ね」 体力は損耗しているものの、致命傷はない そう確認した天草式の面々には無謀か勇敢か、『まだやれる』という根拠のない希望だけが脳裏を支配した アックア(あの魔女は……どこに……) 今だ平静を取り戻せない後方のアックアは夜の街を飛ぶ アックア(あの魔女だけは…仕留めるであるッ!) そう決断したとき、右方向からの殺気がアックアの足を止めた 神裂「…私の『仲間』達が、お世話になりましたね」 現れたのは極東の聖人。そして天草式女教皇「神裂火織」 しかし今のアックアには、そんな軽い自己紹介も彼を苛立たせる要因の一つでしかない アックア「あの魔女は…どこにいるッ!!」 高速で氷を滑るアックアの速度に対応してみせた聖人神裂は、疑問の表情を浮かべる 神裂「魔女……月詠小萌の…」 バギィッ やはりアックアは今『怒って』いる 神裂ですら受け止めるのも危ういメイスを、怒りに任せ振るう、そして振るう ブォン ブォン! 行動が読めなさすぎるアックアに対し、神裂はただ身構えるしかなかった 神裂「――ッック!!」 すると後方から大人数の足音が… 五和「女教皇!!」 五和が叫び、神裂が答えようとした時だった アックア「貴様ら……ッ!」 ドバァァッ!! 足元を流れる水道管でも利用したのか、周囲一辺の地表が爆発する 神裂「ッ!?こんな…こんなふざけたことが…」 しかし神裂も暴れるようなアックアの動きを辛うじて読み、懐に潜りこむ アックア「私の相手は貴様ではないッッ!!」 片手一本で吹っ飛ばされた神裂はギリギリ受け身をとった 神裂(ダメだ…読めない。速さも動作も魔術も…) そして受け身をとった後顔を上げると、後方のアックアはいない 神裂「ッ!?上!」 その時にはもう遅かったのかもしれない アックア「『聖母の慈悲は厳罰を和らげる』」 神裂「!?」 アックア「『時に、神の理へ直訴するこの力。慈悲に包まれ天へと昇れ!!』」 一瞬で神裂には分かった。これは必殺である、と そしてこの必殺を受ければ、聖人である神裂ならいざ知らず、周囲にいる天草式の面々はどうか この巨躯から繰り出される必殺を受けて耐えられるか、どうか その思考は遅かった 後方のアックアは一直線に落下。そして振り下ろされる特大のメイス。それは圧倒的な破壊を意味する訳で――― ドガァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!! 辺り一面を占める砂埃が消えると、そこは大きく穴の開いた地表。第五階層まで続くその穴 しかし神裂及び天草式全員は、死んでいない どころか傷一つない訳で―― 小萌「言ったじゃないですかー、エーテルは『光の媒質』だって」 アックア「エーテルの…魔女ッッ!」 アックアも、自分の必殺が当たらなかった理を理解したようだった 小萌「エーテル魔術で光の屈折を変え、目標座標をずらす。たったそれだけのことを見破れなかったのは、あなたは相当頭に血が上ってたのですねー…」 アックア「―――ッッ!」 第五階層から大きく上方に飛んだアックアは小萌に襲いかかる。が、空中戦では小萌が地の利を得ている バッ バッ 小萌「だからいいましたよねー。私の方が有利だって」 アックアの戦闘は怒りに満ちている。だがそれは動きに無駄が多いことを小萌は洞察していた 小萌「ほっ!」バシッ 小さく短い足が、アックアの腹を蹴る。それだけで無理矢理地球の引力に引き込まれたようにアックアは第五階層に叩き付けられる メキメキ… そしてその引力は第五階層をも突き破った… 神裂「すご…い……」 ただのその言葉が自然に出たのは、聖人神裂にとって生まれて初めてかもしれなかった アックア「チィッ!!」 あれだけの威力をモロに喰らいながらも、数ヶ所の傷だけですむアックアはやはり化け物だと認識せざるを得ない そして闇が覆う第六階層に、小さな魔女と巨体の聖人が再び対峙した 小萌「頭は冷えましたかー?」 アックア「残念ながら、そう簡単にこの怒りは消えぬのである」 小萌「ならば仕方ありませんねー。ここで決着つけたいと思いますぅ」 アックア「私も本来の仕事がある。ここで立ち往生するのは得策ではないのでな」 地下貯水池が近いのか、アックアは水の気配を感じ地の利を確かめた アックア「月並みな台詞ではあるが…私とここまで渡り合う魔術師は、貴様が初めてである」 小萌「それはどうもなのですー」 これから戦う相手の実力を再確認し、その莫大なまでの魔力を知覚したアックアは、今までに無く武者震いが止まらなかった――― ゴバァッ! 先を発したのはアックア。どこからか水が飛んできて、それは水の散弾と化して小萌に襲い掛かる 小萌「しかし…!」 ブォォン! 小萌は箒を前に突き出すと、その先から風が巻き起こり水の散弾を上手く弾く 万物に似ている特性は擬似的に他属性を操ることも可能だった アックア「賢しい…ッ!」 アックアの片手からバスケットボール大の水玉が投げられる それを小萌は、電磁波術式での迎撃を試みる…が バチバチッ… 小萌「!?圧縮…」 グググ… それは小さく圧縮された「水玉」。マイクロ波で爆発させようものなら、周囲の被害は甚大なもので… しかし遅かった ドバァァァァァァァッ! 本物の爆弾のように飛び散る様は近代の戦争のようだ。それを感想として抱いたアックアは、それほど世間知らずではないということか アックア「……………」 また、いない 魔女が アックア「……………」 エーテル使いの知識がまるでないアックアにとってこの戦いは先が読めない 先が読めないと言う理由でオドオドしていては元傭兵の名が泣けるところだが、それはホラー映画にも似た恐怖でもあった 小萌「ふぃ~…」 不気味だ… まさか神の右席で聖人の自分がそんな感想を持っていることに、一番驚いた スッ… 小萌「もうすぐですよー」 ドガッ! 右下方から入った箒の一撃。無論アックアは受け止めたものの、不気味さはまだ拭えない アックア「ふざけた真似を…!」 ドガッ! バギィ! 今がチャンスと言わんばかりにアックアは追撃をかける。無限に近い魔力を持つ的に対して長期戦は絶対不利。ならばスピードで勝負するしかない アックア「動きが…遅いであるな」 小萌「ッッ………」 次第に小萌の防御術式の破壊も、アックアの強大な膂力にかかれば時間の問題 しかし 小さな魔女は笑っていた アックアはそれに気づかず、小萌を吹っ飛ばす一撃をいれた時だった ドッ! しかし小萌は見事なまでに受け身をとる 小萌「じゃあ、もうこれで完成のようですねー」 アックア「……………ッ!」 周辺を流れる強大な魔力、地脈などを利用していない、この魔女から流れるものだ 小萌「『セオレムは第一の矛盾を示します』」 ドクンッ アックアは『動けなく』なった アックア「ッッ!?!?」ギギギ ギロリ ギロリとアックアが周りに目をやると、そこにはルーンらしき紙が不規則に散らばっている… 小萌「あなたの『聖母の慈悲』は、様々な束縛・条件・約束から逃れることができます」 アックア「…………」ギギギ 現に天草式の『殺人の罪』を利用した術式は効果を成さなかった 小萌「しかし、その束縛法が『科学の定義』ならばどうでしょうかねー?」 アックア「…!?!?」 まだアックアは完璧に理解していなかった。いくら科学とは言えこの『聖母の慈悲』の特性に当て嵌まらないのは… 小萌「『グリム・セオレム』。と言ってもわからないでしょうねー」 アック「……………」 アックアには分からない、しかし何か分かればまだこの束縛状態から逃れるヒントがあるかもしれない。この聖人はそれを必死に求めていた 小萌「この術式は『グリムの定理』という一つの定理を応用した特殊な魔術です」 アックア「………」ギギギ 小萌「この定理は簡単に説明するとですねー…。『神様の存在』を否定するんですよー」 1991年にパトリック・グリムにより発表された、『神の存在』を否定した定理 小萌「それの定理や数値を術式に変換、こうしてルーン化することに説明しましたー」 ルーンをよく見ると、緻密な数式のようなものが書かれていた アックアも少しづつ理解してきた 確かに神の存在を根本から否定するのなら『聖母の慈悲』も効果を成さないはずだ…と 小萌「そしてこの定理は『神様の存在』を否定するだけではないのですー」 まだこの魔術には『隠し種』があった 小萌「『神様の存在』を理解しようとする、そのものを矛盾と捉えるのですー」 この定理での結論は『神は人間の知性を越えた存在』 そして神の三位一体を理解する行為、もしくは理解したのならそれは理解したのでなく全くの『異端』だと アックア「――――ッッ!!!」 アックアはやっと気づいた 小萌「そう。あなた達『神の右席』のように、神と同列対等になろうとする者の全てを否定させる魔術。この術式において、『神の右席』は最大の矛盾でしかないのですー」 これが対アックア用とも言うべき、必殺の術式――― つまり普通の魔術師ではあまり効き目がない 『神の右席』のように、天使に近い体をし、神と同列対等になろうとするそれこそが、この術式が喰らうところ 小萌「ではお休みなさい……。『セオレムは第二の矛盾を示します』」 ドバァッッッ 周囲の特殊なルーンが特殊な陣を描き、その力は中心のアックアに襲い掛かり――― アックア「…がぁッッッッッッッッッッッ!!――――――――――――」 声にならない悲鳴をあげ、内から爆発するような音が幾度となく第六階層をこだまする アックア「――――――――――――――」 ――悶死したのか無傷なのか、アックアか別人か、全ての判断を狂わせそうな一つの肉塊が、そこに転がった 小萌「…………これで…よかったのですよね…」 ただただ心を鬼にして、生徒のためを思い、『魔女』になった月詠小萌は今何を思うか 『生徒達の笑顔のために』 そう誓った『エーテルの魔女』は、もの哀しげに佇立していた――――

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