【第十四話・宿命! アルカールの掟!!】

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 遂にこのときが来たか……  「キュー……?」  「大丈夫だコットン。心配はいらん」  あの日、彼女をヒーローにしたときに覚悟したはずだ。  いまさら無かったことになどできない。  彼女は……ヒーローとして余りに戦いすぎた。  「まさか……な」  ブラッククロス四天王。  その全てを相手取り、勝利を収めるとは。  今の彼女の実力は如何ほどだろうか?  「さぁ。彼女をヒーローとして戦わせてきた。その責任を取るとしよう」  存分に今を楽しめ、佐天涙子。  お前の日常を破壊しに、この漆黒のヒーローが参る。  【第十四話・宿命! アルカールの掟!!】 初春「出来たー!」 佐天「おぉー!」 黒子「あらあら。上達したじゃありませんの」  お皿の上に、ウサギの形にカットされたリンゴが並ぶ。  初春渾身の作品だ。 佐天「上手くなったねー初春―」 初春「そりゃそうですよー! 皆さんがあんまりにも入院ばっかりするんですから!」 佐天「ごめんなさい」 黒子「ごめんなさい」 初春「や、いやですよー! 別にそんなつもりじゃ……」 佐天「なんつってな! いただきー!」 初春「あ! ちょっと佐天さん!?」  みんなの隙をつき、一番乗りでウサちゃんリンゴを口に運ぶ。  うん! 湿っぽいのが続いちゃったからね!  こういうノリこそ我らが佐天さんの真骨頂なワケですよ――  「ああああああああああああああああああああああ!!!??」 佐天「ゲホッ!? ……な、何ですか御坂さん……?」 美琴「た、食べちゃうの……?」 佐天「いや……そりゃリンゴですから……」 美琴「……」 黒子「お姉さま。リンゴですの」 美琴「……うん」  ……初春印のウサちゃんも、御坂さんにクリーンヒットなのか。  松葉杖を借りて、佐天は美琴と二人廊下に出た。  初春たちにはジュースを買いに行くと言ってある。 美琴「佐天さん。調子はどう?」 佐天「えぇ、もう大丈夫ですよ。体はアチコチ痛いですけど」  佐天が目を覚ましてから一晩経った。  昨日はまだ全身にダルさを感じて起き上がれなかったが、今はこうして談笑できる所まで回復した。  しかし、ファイナルクルセイドによって体力を使い果たし、強制的に変身が解かれたため、怪我は治りきっていなかった。 美琴「そう……無理しなくてもいいからね?」 佐天「あはは。御坂さんやっさしー!」 美琴「佐天さん」 佐天「……」  そうだ。  いつまでも、こうして「今まで通り」を演じているわけにはいかない……  すでに佐天の秘密は、彼女達の知るところとなってしまったのだから。 美琴「……ねぇ? どうして黙ってたのか、聞いてもいい?」 佐天「……そうしろって、アルカールさんに言われたんです」 美琴「アルカール? って、あの黒いアルカイザー?」 佐天「私の恩人です。あの人が居なかったら、私は今頃シュウザーに殺されてました」  黙って考え込む美琴。  そして答えに至ったのだろう。  暗い面持ちで、佐天に尋ねた。 美琴「ひょっとして……今、やばい?」 佐天「……たぶん」 美琴「黒子にも、誰にも貴女のことは話してないわ……」  美琴が言うには、あの日、あの場所に佐天が居たのは、  「初春と一緒に攫われていたから」  と、いうことになっているらしい。 美琴「あんまり人に話すことじゃないだろうと思ったんだけど……」 佐天「そうですね。でも、もうこうなったら関係ないですよ」  あの人が現れなかったのは、まだ正体がばれたと知らなかったからか……  もしあの日はそうだったとしても、四日も経った。  もう彼の耳には入っているだろう。  それとも、あの日は、まだ「証人が生き残るとは限らなかった」からだろうか?  ……いや。詮無いことだ。  もしそうだとしても、彼の性格からして、“消される”のは一般人ではないだろう…… 佐天「何にしても。もう時間は無いと思います……」 美琴「……どうするの?」 佐天「とりあえず変身します」 美琴「そう、変身……は?」 佐天「体中痛いんですよ~。変身して治癒力上げちゃいたいんです~」 美琴「そ、そういうものなの?」 佐天「どっか人目につかない場所ありませんかね……トイレとか?」 美琴「じゃあ、黒子に頼みましょう」 佐天「え? それって……」 美琴「テレポートでどっか飛ばしてもらいましょう」  ……わーい。退院早々、白井タクシー平常運転だー。  容赦ねー。  そして、佐天たちはとある学校のグラウンドに居た。  何でも、怪人が校舎を荒らしてしまったため、しばらく休校になっているそうだ。  ここに居るのは、佐天と美琴、ここまで送ってくれた黒子。  そして―― 初春「……」  初春飾利。  もう、彼女達に隠してはいられない。  「いま、御坂さんの目には何が見えていますか?」  佐天は、一人暴走する美琴にそう言ったことがあった。  それは、「周りを見ろ。貴女には頼ってもいい友達がいる」そういう意味。  時が経った今、美琴が自分に対し、その言葉を返した。 佐天「さて……じゃあ、済ませちゃおっか……」  目を閉じて集中する。  今まで何度もそうしたように。  体の中心。生命力の源から、全身に熱いエネルギーが流れていく。  体が光を放ち、力が湧いてくるいつもの感覚。 佐天「変身……!」  この言葉を何度呟いただろう?  時には叫んだし、無言だったこともある。  いつのまにか、この掛け声が自分のアイデンティティになっているような錯覚さえあった。  光を吹き払う一迅の風。  少女達の前に、紅い鎧のヒーローが現れた。  美琴は真剣な表情でそれを見届けた。  黒子は、まだ信じきっていなかったのだろう。目を丸くしている。  そして初春は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。  全身の痛みが引いていく。  骨に入ったヒビがくっ付き、傷口がふさがっていく。  ヒーローになると治癒力が増す。  特に、変身するときは急速な肉体の再生が起こる。  いらなくなった松葉杖を置き、深呼吸した。 佐天「改めまして――」  声に振るえはない。 佐天「私が、アルカイザーです」  その名を、彼女達の前で名乗った。  そして、それが意味するものとは――  「覚悟を決めたようだな。アルカイザー」  突如吹き荒れた暴風と巨大な影。  空から、何か翼を広げた生き物が現れた。  見慣れたはずの黒い男が、佐天には地獄からの使者に見えた。 美琴「怪人!?」  美琴たちが身構える。  グラウンドの砂を巻き上げ、その生物が地上に降りた。  クリーム色の毛に覆われた、大きな鳥のような生き物。  しかし、爬虫類のような尻尾と長い首は、伝説のドラゴンを思わせる。  赤と青の入り混じった不思議な色の羽が美しい。  その背から――  「ならば、私がここに来た理由も分かっているな?」  漆黒のヒーロー・アルカールが降り立った。 アルカイザー「アルカールさん……」 アルカール「いつかこの日が来ると思っていたよ」  ただならぬ気配に、事情を知らない黒子と初春は固唾を呑む。  大体の予想が付いている美琴も、二人のやり取りを黙って見守っている。 アルカイザー「私を殺しに来たんですね」 アルカール「人聞きが悪いな。記憶を消すだけだ」  冷たく言い放つその声に迷いはない。 アルカイザー「同じです。今の私が居なくなるのなら……」  彼女達のことを忘れてしまうというのなら―― アルカイザー「私は命がけで、それを拒否しますから……!」 アルカール「……そう言うと思っていたよ。残念だアルカイザー」 アルカール「君をヒーローに相応しくないと判断し、掟に従い『消去』する……!!」  アルカールが踏み出そうとする。  その足元へ―― アルカール「む……!」  一本の鉄矢が突き刺さった。 黒子「そこまでですの」 美琴「それ以上近づけさせないわよ」 初春「……!」 アルカイザー「みんな……」  アルカイザーを守るように、三人の少女が立ちはだかった。  黒子の手には鉄矢が、美琴の手にはコインが握られている。  初春は落ちていた松葉杖を拾って構えた。 アルカール「……やれやれだ。これでは、まるで私が悪党みたいだな」 美琴「私の友達に危害を加えるってんなら、誰だって悪党よ!」 黒子「たとえ命の恩人とはいえ、そのような物騒な話を目の前でされては――」 初春「風紀委員として、見過ごすわけにはいきません!!」  少女達の目は、闘志に満ちている。  「絶対に守り抜く」  それは、彼らヒーローと同じ信念だ。  だが、その光景にアルカールが怯むことはない。  想定済みだ。 アルカール「……だ、そうだぞ? どうするのだ、アルカイザー?」 アルカイザー「え……?」 アルカール「彼女らを私と戦わせるのか、と聞いている」 アルカイザー「……」  そんなことは出来ない。  何故ならこれは、自分が乗り越えなければならない試練だから。  巻き込むとか、頼るとか。  そんな次元の話じゃない。 初春「佐天さん! 下がっててください!!」 アルカイザー「いいんだ、初春。 私が戦わないといけないの」 美琴「……」 アルカイザー「私が決着をつけます。これは、『私』の戦いだから」  ヒーローになることで命を救われ、アルカイザーとして戦ってきた。  そしてあの日。私はこの運命を選択した。  そのけじめをつける。 アルカール「よく言った。アルカイザー」 アルカイザー「……手加減は、してくれませんよね」 アルカール「当たり前だ馬鹿者」  こうして、紅いヒーローと黒いヒーローが対峙した。  場所はとある学校のグラウンド。  時刻は昼過ぎ。  命がけの決戦には不似合いなそのロケーション。  逃れることの出来ない宿命の戦いが、容赦なく幕を上げる。 アルカイザー「おおおおおおおおおおおおお!!!」 アルカール「おおおおおおおおおおおおお!!!」  二つの影が、お互いに向かって真っ直ぐに駆けて行く。  アルカイザーは右手に光を灯した。  『ブライトナックル』なら、アルカールのそれを見たことがある。  自分の方が威力は高い。打ち合いになれば確実に勝てる。  だが―― アルカイザー「――――え?」  このとき、まだ佐天はアルカールという男を甘く見ていた。  彼は歴戦の勇者なのだ。  それが、何故わざわざ自分の予想どおりに動いてくれると思ったのか。  接近戦に臨もうとしていたのは、アルカイザーだけだったのだ。  アルカールのそれは「フリ」。  実際には―― アルカイザー「足――!?」  砂埃に紛れて、鉛玉による『地上掃射』がアルカイザーに迫っていた。  足元を狙うそれに気付き、慌てて跳びあがる。 アルカール「また、一手遅れたぞ?」  アルカールの手に握られた二丁拳銃が、空中に浮いたアルカイザー目掛け『集中連射』を仕掛けた。 アルカイザー「う、うわぁ!?」  自分に迫る十発の弾丸を、とっさの『アル・ブラスター』で撃ち落とす。 アルカイザー「け、拳銃……?」  想定外の攻撃に戸惑い、足が地面に付くと同時に再び距離を取った。 アルカール「何故飛び退いた? 接近するチャンスをみすみす逃すか」 アルカイザー「……!?」  確かに。相手は飛び道具を持っているのだ。  なら、接近するのが上策じゃないか。  そもそも、自分はさっき接近戦なら勝てると踏んでいたはずなのに……! アルカール「分かるか? アルカイザー……これが『差』だ」 アルカイザー「……『差』?」 アルカール「そうだ。確かにお前の方が、私よりも遥かにヒーローとしての才能は高い」  アルカールは弾を撃ちつくした銃を捨て、アルカイザーに向き直った。 アルカール「だが、どんな才能も開花させなければ意味は無い」 アルカイザー「……」 アルカール「所詮お前は、急ごしらえのヒーローに過ぎないということだ……!」  アルカールの体が光を放ち、一瞬で目の前に飛び込んで来た。  今度こそ、正真正銘の接近戦。  しかし、さっきの銃撃の残像を拭いきれず、アルカイザーは瞬時に反応できない。 アルカイザー「しまっ――!?」  腰を低く落とし、右掌に光を圧縮させる、この構え――、  『フラッシュスクリュー』……!? アルカール『金剛神掌!!!』  ――違う!? また予想が外れた!!?  アルカイザーの腹に叩き込まれたのは「掌打」。  内部から爆発を起こし、敵を木っ端微塵に吹き飛ばす『フラッシュスクリュー』ではない。 アルカイザー「ゴフッ……がぁああ!!?」  打ち込まれた途端、掌から膨れ上がったエネルギーに包み込まれ、全身を焼かれる。  掌打による衝撃で吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がった。  『金剛神掌』……?  そんな技、この体は教えてくれなかった――! アルカイザー「こ、れが……アルカールさんの『特性』……!?」 アルカール「違う。これはただの『経験』だ!」  再び、アルカールの右手が振りかぶられた。  立ち上がったアルカイザーは、今度こそ防ごうと、両腕を交差させる。  今度は間に合った。アルカールの手のひらは、アルカイザーの腕に向かって伸び―― アルカール「近接格闘は打撃しか知らないのか? 『掴み』は防御できない……!」  腕を掴まれたアルカイザーは、そのまま前に引っ張られバランスを崩す。  その隙を突いて、アルカールは背後を取り、両脚で頭を挟み固定させた。  上体を反らされ、バク宙するように足が地面から離れた。  ぷ、プロレス!!?  「ぐるり」と、天地がひっくり返る。 アルカール『バベルクランブルッ!!!』  一瞬の無重力の後に、頭から地面へと落下した。 アルカイザー「……ッあ……!?」  脳が揺れる。  視界が飛びそうになった。 アルカール「どうした? 立て……」 アルカイザー「う……ぐっ!!」  頭を振り意識を戻す。大丈夫、まだ立てる。  シュウザーの拷問も、メタルブラックとの死闘もこんなものじゃなかった。  御坂さんの『超電磁砲』を受けたときなんて、走馬灯さえ見えたんだ。 アルカイザー『レイブレード!!』 アルカール『次は剣か……レイブレード!!』  二人のヒーローは、互いに蒼い光の剣を構え、間合いを取った。  睨み合い、必殺の一撃を打ち込もうと隙を伺う。  ここまでの戦い。佐天の読みはことごとく外されている。  それで何となく分かった。  彼は、こちらに失敗を繰り返させ「心を折りに来ている」のだと。  抵抗する気力を奪うつもりなのだ。    なら、圧倒的なスピードで、小細工する暇を与えなければ! アルカイザー『カイザースマッシュ!!!』  メタルブラックを破った神速の三段斬撃。 アルカール『ディフレクト!!』  一撃目は受けられた。  だが二撃目がすでに放たれている。 アルカイザー「入った!!」  一撃目を受けてアルカールの剣は止まった。  もう防ぐものは無い――! アルカイザー「嘘……!?」  彼女の目に、信じられない光景が写った。  左側に打ち込まれた『カイザースマッシュ』が、受けられている。  アルカールの左手に、いつの間にかもう一本、逆手に『レイブレード』が握られていたのだ。 アルカイザー「二刀流ってこと!?」 アルカール「後の先……取った!!」  度重なる想定外の出来事に混乱し、アルカイザーは三撃目を放てなかった。  ついに、思考が途切れた。  隙だらけの彼女に、アルカールの刃が奮われる。 アルカール『二刀……烈風剣!!!』  疾風が走りアルカイザーの胸を十字に切り裂いた。  遂に、アルカイザーはヒザから崩れ落ちるように倒れた。 アルカール「もう一度言おう……お前は所詮、急ごしらえのヒーローに過ぎない!!」  アルカールが、倒れる彼女に歩み寄る。 アルカール「危険なのだ……力を得ただけの素人は……」 アルカール「もうここまでだ。佐天涙子。力と記憶をこちらに渡し、楽になれ」  そして、レイブレードが振り下ろされる―――― ………… ……  そこは深い闇の中……  私は地獄の底にでも落ちたのか……?  悪魔か、鬼の声が聞こえる。  「お前の記憶を確認させてもらったぞ」  「面白いものが見られた。イマジネーションが掻き立てられたぞ……!」  「そこでだ。提案がある」  「お前に新しい体を用意しようと思う」  「勿論、お前の頭脳はそのままだ。その革命的な頭脳こそ、このボディに相応しい」  「やってくれるな?」  答えはいつも一つしか用意されない。  『YES』だ。  望むとおりの答えを聞き、彼は地に響くような声で嗤った。  「よくぞ辿りついた……メタルブラックよ!!!」  Drクライン。  私の本来の主であり、製作者だ。  しかし、彼は本当に分かっているのだろうか?  彼女の強さを、科学者であるDrに理解できるのだろうか?  死に瀕しても、何故彼女が立ち上がるのか――――  蒼い剣は、蒼い剣に受けられ、動きを止めていた。 アルカール「……まだ立つつもりか」 アルカイザー「当然……ですよ……」  まだまだだ。  まだまだ、彼女の心を折るには足りない。  何故なら…… 初春「佐天さん!!」 黒子「いけませんの初春! これは佐天さんの――」 初春「で、でも……!」 美琴「佐天さん……!」 アルカイザー「……はい」 美琴「私達は、いつだって手を貸すわよ?」 アルカイザー「……いいえ! 冗談じゃないですよ!!」  みんなの見ている前で大見得切っておいて、その信頼を裏切るなんて出来るものか! アルカール「何故抵抗する……」 アルカイザー「そっちこそ。どうしてそんなに私を消したがるんですか?」 アルカール「そういう決まりだ」 アルカイザー「……その『決まり』が私達を傷つけるなら――」 アルカイザー「そんな『ただルールを守るためのヒーロー』なんてクソ喰らえだ!!!」 アルカール「なら――打ち勝ってみせろ!!!」  アルカールの気配が変わる。  さっきまでの、あからさまな手加減が終わった。  そう、手加減されていた。  その位のことは、佐天にも分かっていた。  彼は、厳しく、仰々しく、そして優しい男だ。  ゆえに、あと一撃だけチャンスをくれた。  あの老獪な戦い方を続けられれば、こちらは手も足も出ず、じわじわと削り取られたのに。  「心を折るための戦い」を、「納得させるための戦い」に切り替えた。  打ち勝って見せろと。  なら、答えよう。  私の全部をこの拳に乗せる――!!  御坂さん。白井さん。初春。  見ていて。  私は消えないし、みんなのことだって消させない。  この力はただ一つ、「大切なモノ」のために在るのだから……!!! アルカイザー「私は『ヒーロー』になりたいんじゃない!」 アルカイザー「『ヒーローごっこ』は、もう卒業だ!!」 アルカイザー「『私たちの世界』を守るためなら! 『正義』だって倒してみせる!!!」  拳が炎で燃えるように熱い。  全身のエネルギーがそこに送り込まれる。 アルカイザー『ブライト――――』 アルカール『ブライト――――』  白と黒。二つの光が衝突する―――― アルカール『ナックルゥゥゥ!!!!!!』 アルカイザー『ナックルゥゥゥ!!!!!!』  グラウンドを、白と黒が埋め尽くす。  初春たちが巻き込まれないように、美琴が地面を引っぺがして盾にした。  ただでさえ荒れていた校舎が更に崩壊する。  白い生物が上空からその様子を見下ろしていた。  白と黒が混ざり合い、打ち消しあい、やがて掻き消えた。  グラウンドには―― アルカイザー「……」 アルカール「……」  アルカイザーとアルカール、どちらも倒れては居なかった。 アルカール「……仕方がないな」 アルカイザー「アルカールさん……まだ!」  再び身構えるアルカイザー。  だが―― アルカール「さて。ここにはもう用はない」 アルカイザー「――――はい?」  アルカールはさっさと構えをとき、上空の白い生物を呼び寄せた。 美琴「ちょ、ちょっと! 帰る気!?」 アルカール「何だ? 私は任務を遂行したぞ?」 アルカイザー「いや……任務って……」 アルカール「ヒーローに相応しくない者の消去だが?」 アルカイザー「えっと……え?」 アルカール「だが無理だった。対象は私一人で処理出来るモノではなかった」 アルカール「つまり。任務失敗だ」  呆気にとられる佐天たちを余所に、アルカールはのん気にストレッチなどしている。 アルカール「いや……久しぶりに体を動かした。いい準備運動になったな」 アルカイザー「じゅ、準備……運動……?」  私、結構全力だったんですけど…… アルカール「ここの所、統括理事会だの魔術結社だの。妙な連中との会合が続いてな」 美琴「と、統括理事会? 魔術……結社……?」 黒子「会合……って、一体何の話を……?」 アルカール「腹の探りあいは苦手だ。こういう分かりやすい相手の方が良い。気楽だ」  さて、と。  アルカールは空を見上げた。 アルカール「そろそろ時間だ」  その瞬間。  まるで台風が直撃したような激しい暴風が吹き荒れた。  校舎の窓ガラスが全て割れる。  へし折れた風車が飛んでいった。 初春「きゃあぁあ!!?」 アルカイザー「な、何これ!??」 美琴「……見て! 空が!!?」  空が――割れる――――!!!?? 黒子「な、何ですの、あれは?」 初春「……宇宙船?」 美琴「白鳥だわ……いや、アヒルかしら?」 アルカイザー「御坂さん……そんな場合じゃないです……」  割れた空から出現したのは、銀色に輝く、巨大な白鳥だった。  否、正確には白鳥を模した「リージョン・シップ」――  『キグナス号』――――!!! アルカイザー「あ、アルカールさん……?」 アルカール「これから、私はあの『キグナス』で戦いに挑む」 美琴「戦い……?」 アルカール「ああ、そうだ。我々とブラッククロスの――」 アルカール「最終決戦だ!!!」 アルカイザー「!!?」  最終決戦……! 遂に……!? アルカール「どうする? アルカイザー……来るか?」 アルカイザー「わ、私は……」  胸の鼓動が激しい。  これが……これで戦いが終わる……!?  これで……!! 美琴「さぁ。行きましょう佐天さん!」 アルカイザー「――え」  彼女は、あっさりそんなことを言う。 佐天「み、御坂さん!?」 美琴「何よ?」 アルカイザー「いや、あの……何で御坂さんが……?」 美琴「は? 何でって……」 アルカイザー「だって……この戦いは……」 初春「我々とブラッククロスの最終決戦……ですよ。佐天さん」 アルカイザー「初春……まさか初春まで!?」 初春「勿論、着いていきますよ?」 アルカイザー「む、無茶だよぉ!?」 初春「――――そんなことは分かってます」 初春「それでも……連れて行ってください!」 アルカイザー「どうして……」 黒子「貴女と同じですの。佐天さん」 アルカイザー「白井さん?」 黒子「目の前で友達が困っていますの。それも、命がけの戦いだなんて……」 美琴「なら、微力でも何でも、自分の持てる力で助けるのが、『友達』でしょ?」  ――――――。  まったくもう……みんな勝手なんだから…… アルカール「もういいのか?」 アルカイザー「はい……覚悟は決まりました!」 アルカール「……アルカイザー。私はな、ヒーローは孤高なものだと思っていた」 アルカイザー「……」 アルカール「友を作れば、必ず巻き込んでしまう。だから、孤高でなければならない……」  それが、「正体をばらしてはならない」という規則が出来た一因。 アルカール「だが、必ずしもそうではないらしい」 アルカール「いい友を持ったな。佐天涙子!」 アルカイザー「……はい!!」  落ちこぼれのヒーローは、最後のステージへ進む。  【次回予告】  キグナスに乗り込み、いざ最終決戦へ!  そして、アルカールから明かされる、この世界の秘密!!  驚愕する佐天たちに、戦闘艦・ブラックレイが迫る!!  ブラックレイを突破する、初春の作戦とは!?  次回! 第十五話!! 【潜入! ブラックレイ!!】!!  ご期待ください!!  【補足】  ・アルカールについて。   原作では殆ど出番のないアルカール。老練なベテランヒーローというイメージで書いてみました。   原作では彼の技もアルカイザーと同じグラフィックですが、差異を出すため「黒い閃光」としています。   ちなみにこの話で使っている技はヒーロー用の技ではなく通常の人間の技です。  ・キグナスについて。   原作で主人公・レッドが勤めていたリージョン・シップです。   「リージョン」に関してはまた次回。  ・バベルクランブルについて。   あれってフランケンシュタイナーみたいな認識でいいのかな?   グラフィック良く分からないんだけど……

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