佐天「…アイテム?」29

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佐天「…アイテム?」29」(2011/05/31 (火) 20:22:37) の最新版変更点

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あらすじ 麦野は心理定規の精神攻撃で人間関係の距離を変更させられ、混乱。 同時にフレンダの裏切り情報をも得て、フレンダを追撃することに。 フレンダは第三学区で麦野と遭遇し、必死になって逃げるが、とある立体駐車場で捕まる。 殺害されそうになっている所をちょうどGPSで追跡していたステファニーに見つかって九死に一生を得る。 ※ステファニーとフレンダが姉妹という設定です。フレメアさんの出番はありません。 ステファニー=ゴージャスパレス フレンダ=ゴージャスパレス って感じ ――ランクルの車内 「さっきの女は…麦野って人?」 「うん…私の所属している組織のリーダーで、麦野沈利って言うんだ」 「そっか……あの人がリーダーだったんだ。フレンダ、一杯、苦労かけさせちゃったね」 「いや、結局、私もこんな暗部で命をすり減らすなんてまっぴらゴメンだったし、お姉ちゃんを捜すために入ったようなもんだし…」 (でも、麦野達、仲間を売ったっていう事実はやっぱ精神的にきついって訳よ…) ステファニーはそっか、と一言言うと「ごめんね」と小さい声で言った。 「私が自分勝手に色んな事するからさ、ほら、こんな性格だしさ」 確かにステファニーは自分のやりたいことを続けて来た。 学園都市で教鞭を握っていたこともあるし、警備員としても活躍したこともあった。 そして、傭兵として世界の戦場を見て回った。 「ま、お姉ちゃんらしいって言ったら、お姉ちゃんらしいいけどさ」 フレンダはそう言うとにこりと笑った。 彼女の笑顔をみたステファニーは自分がここまで来て本当に良かったと思った。 「もう、フレンダには苦労かけないから、これからは一緒に居ようね?」 ステファニーの発言にフレンダはうん、と目を見据えて話す。 問題はこの後どうするかだった。再会の余韻に浸りたい気持ちはあるにはあるが、学園都市から脱出することを考えなければならない。 「フレンダ、取り敢えず、この後の予定としては第三学区の学園都市の出入国ゲートに行こうと思うんだけど?」 「結局、ここまで暴れといて学園都市に居続けれるわけ無いもんね」 ステファニーはそうねー、と軽い調子で答える。 しかし、ステファニーとフレンダだけではこの局面を乗り切れるのだろうか? 先ほど戦火を交えた猟犬部隊の他にも攻撃を仕掛けてくる組織もあり得る。 「ちょっと砂皿さんに連絡取ってみる…」 ステファニーは運転しながら携帯をかける。 数回のコールが鳴る。 (出て下さい、砂皿さん!こっちはフレンダと合流しましたよ!) プルルルルルル…… 長いコール音が続く。コール音が一回、二回と続くたびにステファニーの胸が詰まるようだ。 彼女が半ば諦めかけていた時だった。 ステファニーが外部音声に切り替えた時にちょうど砂皿が受話器を取ったようだった。 突然コール音が途切れたことで助手席に座っているフレンダはびくりと肩をふるわせた。 『俺だ砂皿だ!今どこにいる?』 「砂皿さん!こっちは今、第三学区です…フレンダとも合流しました!」 『そうか、GPSで大体の場所は把握している。このまますんなり学園都市外に逃げれるとは思えない。一度合流しないか』 「今後の作戦に関しては砂皿さんに任せます。今どこらへんにいるんですか?」 砂皿は現時点での座標をステファニーに教える。 彼女がそれを口頭で復唱するとフレンダがカーナビにその座標を入力していく。 「見つかりました。では、今からそっちに向かいますね」 『わかった。ではその場所で待機している』 「どうしましょう?私もフレンダも怪我してます。砂皿さんはトライバル刺青の男を倒したんですか?」 『殺しはしなかったが、致命傷は与えたつもりだ…お前等は怪我の手当はしたのか?』 砂皿はとどめを刺せなかったことを悔しそうにつぶやく。 ステファニーはフレンダの方を見て「まだです」と答える。 結局、ステファニーと砂皿が電話で話し合った結果、まずは三人合流することに。 敵の脅威は依然消えていないのだ。三人で集合して万全の状態で学園都市から離脱しなければならない。 ステファニーは気持ちを新たにする。 フレンダを救出して心のどこかで安心している自分を律した。 そう。ここからが本番なのだ。 フレンダと砂皿と一緒に学園都市から離脱しなければならない。 学園都市の組織に仮に捕まれば、命の保証はないとみていいだろう。 ステファニーは自分に課せられているものがずっしりと重たく感じられた。 (妹の命は是が非でも守る…絶対に…!けど…私と砂皿さんで出来るんですかね…?) どうする?自分と砂皿さんだけでこの学園都市から脱出できるのか? ステファニーはいつもの明るい雰囲気とは対照的に自分の気が沈んでいくような感じがした。 と、そこで意気消沈しかかっていたステファニーに声が掛かる。 「お姉ちゃんの相棒…だよね?その人」 ステファニーはうーん?とちょっと悩んだ表情をする。 たしかに相棒だけど、ちょっと違う、って思いたい。 ステファニーの迷いの表情にフレンダはんー?とからかうような視線を送る。 じっとりと見つめられたステファニーは運転しながらも段々と顔が紅くなっていく。 「あれ?結局惚れちゃってるの?うひひ」 「ばっ!だ!うっさい!フレンダ!」 「あれ?まさか本当に?」 フレンダの茶化しに耐え切れず、ステファニーは「いや、師弟の関係だし、それ以外でも以上でも未満でも切り上げ切り捨て……」と途中から訳のわからない事を言い始めた。 「……そしたら、お姉ちゃんの大切な想い人に合流しなきゃね?」 ステファニーは「にゃはは…想い人って」とフレンダの言うことに照れつつも否定はしなかった。 師であれ、好きな人であれ、ステファニーにとっては大切な人なのだ。 そして砂皿がいなければ今回の作戦はここまでうまくいかなかった筈だ。 「フレンダ、後ろに私のバックがあるから傷の手当したげる」 「いーよ。自分でやるって訳。一々車停めたらその分だけ合流するのが遅くなっちゃうって訳よ」 フレンダはそう言うと麦野に貫かれた足の痛みを堪えて、後部座席にある応急キットで処置をする。 そしてチェロのケースより少し小さいバックのファスナーをジジと開け、ばらしてある狙撃銃を組み立てる。 「いい銃持ってるじゃないの」 「へへへ、結局、狙撃専門だけどね」 アキュレシー・インターナショナルL96AWS。 A アークティック・W ウォーフェア・S サプレス。 極寒地での作戦遂行も可能であることを意味する。そして消音機能に関しても文句なしの一品だ。 狙撃銃の中では最高峰の性能を誇る。 「お姉ちゃんが派手好きなのは警備員の人から聞いたこともあるし、私はおしとやかだから綺麗に華麗に狙撃するって訳☆」 ステファニーはカーッ!よくゆーよ!と前を見ながら呆れるようなそぶりを見せる。 冗談を交わしつつ、フレンダはハンドガンの手入れも済ませていく。 (いつも見たいに、派手にぶっ放して、ぱーっとやって片付けちゃいましょ。そうすればうまくいくはずです!) 根拠など無い。 しかし、ステファニーについ先ほどまで妹を救えるかどうか逡巡していた面影はそこにはなかった。 ――猟犬部隊の応急車輌内にて 数多はしばらくの間失神していた。 砂皿から受けた一撃は彼の意識を奪っていた。 「起きて下さい、砂皿さん!」 猟犬部隊の隊員のかけ声で数多は目を覚ました。 彼が目を覚ますとストレッチャーの上に乗せられており、証明が彼の顔を照らした。 その光を遮るように彼は手をかざす。 (猟犬部隊の緊急車両の中にいるのか…俺は…) 大型トラックほどの大きさの救急車に数多はいた。 最新の治療設備が整えられたこの車両で数多は失神している最中に応急手当を受けていた様だ。 「大丈夫ですか?」と名前も聞いたことのない数多の部下の隊員が話しかけてくる。 「お…俺は…寝てたのか……?」 「はい、昏倒していました」 「砂皿…っ…の野郎は…?」 腹部を押さえながら数多は猟犬部隊の隊員に話しかける。 すると隊員は気まずそうな顔をして「逃げられました…」とぽつりと言い放った。 「チックショウが!!!!」 救急車の側壁を数多は思いっきりたたく。 逃げられたのだ。学園都市外からやってきた得体の知れない傭兵に。しかも失神させられて。 「で、砂皿の野郎は今どこにいる?」 その質問に隊員は「…目下、全力で捜査中です……」と下を向いて答えた。 「要するに…行方をくらまされたって事か…」 「はい、申し訳ございません!!!」 がばっと謝罪する隊員の姿を見ること無く、数多は救急車の外を見る。 車輌は砂皿と戦った地下駐車場の外に出た所に駐車しており、移動はしていない。 数多は考えた。 恐らく、砂皿はあの金髪ブロンドのステファニーとか言う女と合流した。 いや、もしかしたら既にステファニーの妹のフレンダと合流している可能性も有り得る。 (希望的観測はするな…最悪の状況を考えて行動しろ…) 自分が倒れていた事を心底呪いたくなる反面、彼は次の対応策を考える。 ほぼ後手後手に回っている対応で苛立ちはピークに達していたが、ここで発狂すれば元も子もない。 全ては冷静に。いかにクールになれるか、こうした状況で最も元も得られるのは焦りと興奮ではなく、慎重さと冷静さだ。 そう自分に言い聞かせた数多はまず、ポケットに入っている携帯を取り出す。 (ったく、あの素人童貞の出番だな……) 携帯のフォルダから呼び出された名前は一方通行。 学園都市の無能力者に敗北し、その事で絶対能力進化計画は頓挫。 しかし、一方通行は未だその利用価値を学園都市に見いだされ、この街の闇に依然滞留している。 (ったく…アイツの組織も戦闘中か?電話に出ろ) ストレッチャーに横になったまま数多は携帯を自分の受話器に宛がう。 すると出た。数コールの後に一方通行の「なンですかァ?木原クン」といううざったそうな声が数多の耳朶に届く。 「一方通行か…?俺だ」 『クッカカカ…何だ何だァ?そのよわっちィ声ェ…もしかして、負傷中ですかァ?』 「そんなトコだ、で、テメェの出番だ、一方通行」 『へいへい。こっちは順調に敵をぶっつぶしててつまンねェとこだったから、強敵大歓迎だぜェ?』 「ったく口がへらねぇ野郎だな、まぁいい。そしたら今から送る奴らを消せ」 『りょォかい。この命令はグループ全体で受け取っちまって良いのか?』 「かまわねぇ。上からは俺がどーとでもいっとくから安心しろ」 『流石木原家。やるねェ!』 一方通行の独特の口調に辟易した数多は携帯のタブを開いてデータを一方通行の携帯に送信する。 送信データは砂皿緻密とステファニーとフレンダの三人。 『こいつ等を消すのか?』 どうやらデータは一方通行に届いたようだった。 数多は「あぁ」と答える。 『こいつら全員無能力者じゃねェか』 「うるせぇな。黙って消せ、後裏切り者を出したアイテムにも容赦しなくていいぜ」 一方通行は受話器越しに「りょォかい」、と適当な返事を数多に寄越す。直後、彼の受話器越しにドかぁああン!と大きな破裂音が聞こえた。 「どぉした一方通行?今変な音が聞こえたが?」 『あー、わりぃ。先客だァ。木原君のオーダーも後でやってやっからよ、ただ、ちょいと席外すぜェ?第二位様のご来店だ』 数多は第二位?と一方通行に聞き返すが、電話は既にツーツーと無機質な機械音しか流さなかった。 一方通行の話す内容が正しければ、第二位の垣根帝督がやってきたことになる。 まさか仲良くお茶でもするわけがあるまい。 暗部の組織同士の戦いだろう。数多は内心にクソ!とつぶやく。 猟犬部隊と一方通行が使えなければ後はテレスティーナと妹達(シスターズ)のクローン部隊しかいない。 数多は目を閉じる。 冷静になれ、とことさら言い聞かせる。ここで焦っては一度は接触した砂皿達をみすみす逃がしてしまうかもしれない。 それだけは避けなければならない。 数多は電話を取ると猟犬部隊の隊員に招集をかけ、砂皿達の追跡経路の割り出しに当たらせる。 彼らがそれに当たっている最中、数多はテレスティーナに連絡をしてMARに増援要請を行った。 「あぁ。俺だ、木原数多だ」 『いきなりどうしたの?数多兄さん』 「援護要請だ。お前等の所の人員を割いて欲しい」 『了解。じゃ、座標指定してくれれば人員をそっちに回すから、お願いね』 数多は座標を送信すると受話器越しから『今座標に誘導する様に伝えた』と連絡が入る。 座標が指示しているポイントは学園都市と日本国の入り口。 第三学区の吉祥寺方面の境だ。 数多はテレスティーナに礼を言うと電話を切り、白衣を着ると救急車の運転手に連絡する。 「第三学区と日本の境目に向かうんだ。恐らく奴らはそこから出国する。警戒を厳にしてあたれ。クローン部隊、“モンスーン”にも連絡」 数多はそう言うと部下の報告を受ける。 その報告に耳を貸して救急車の窓を開けると付近に数台の車輌が集まっていた。 中にはMARと書かれた車輌も有り、テレスティーナの応援部隊も駆けつけたことを示していた。 「よぉし、第二ラウンドだぁ!圧倒的兵力でなぶり殺しにしてやるぜぇ?」 ――第三学区の立体駐車場 「お、おい!麦野大丈夫か?」 「は、はまづ……ら?」 麦野は自分の事を呼び掛ける声に目をさます。 (……痛い痛い!って…パシリの浜面か…) 麦野の視界には自分の肩を揺する浜面の姿とその背後にいる滝壺の姿が映った。 垣根と心理定規の追跡から逃れてきたのだろう、浜面と滝壺の二人は息をはぁはぁと荒くしながら麦野を見ている。 「あれ…?あ、そっか。私倒れてた…」 気絶していた麦野の脳裏に浮かぶのは金髪ブロンドの女が銃をこちらに構えている光景。 そうだ、私は撃たれたんだ、と麦野はぼんやりとした思考で白人の女の表情を思い出す。 彼女は手と目の痛みに苛まされつつも当たりを見回す。 どうやら自分が倒れている最中にどこかに姿を消してしまったようだ。 「麦野!目と腕、撃たれてんぞ!大丈夫かよ?」 「あ、あぁ…」 麦野の意識は依然、朦朧としていた。 (あの白人女、確かフレンダの姉とか言ったか?…に私は、たしか、撃たれて倒れて……そっから……) 麦野は自分が撃たれた時の前後の一連の出来事を思い出す。 自分の腕と目が撃たれた痛みが屈辱、憎悪といったエネルギーに屈折し、変わっていくのが感じられた。 「浜面ぁ…ふ、フレンダが……逃げた。暗部、…から!」 「フレンダが……?そ、それよりもまずは傷の手当だ!お前の腕が!血が出て…!」 麦野を抱えている浜面の手はぶるぶると震えている。 彼女は自分の左手の感覚を確かめようとするが、それが出来ない。 ちらと左手を見ると二の腕辺りからどす黒い血が出血している。 (あー……これ、私の血かぁ…、感覚ねぇわー……やべーかもな…) あまりの事態にどこか他人事のような麦野。 だんだんと記憶を取り戻しつつある彼女は頭を抱えようと左手を持ち上げようとするが、激烈な痛みに襲われてすかさず下ろす。 「くっ!あぁぁ!!浜面ぁ!いてぇ……」 今、救急車呼ぶからな、と浜面が言いぐっと麦野の体が持ち上がる。 すると不意に浜面の指に嵌まっている指輪が視界に入る。 「お、おい…は、浜面ぁ、その指輪…、誰と」 「は?お前と買いに行っただろ?忘れたのかよ!」 「え……、浜面と?」 麦野は記憶を思い返す。 たしかに浜面と一緒に買いに行った。 ケド、浜面に対して全く好意が沸かない。おかしい。たしか、ついさっき、心理定規に頭をいじられたような…?え? 彼女は自分の記憶には留めている事実がよくわからなかった。 好きでもない人となんで指輪をつけてるの? ってか、滝壺!お前は浜面とくっつくんじゃねぇ! 訳のわからない思考の奔流で麦野の脳内は混乱した。 激痛と思考の混濁にさいなまされながらも麦野が出した命令はその場にいた浜面と滝壺を呆れさせた。 「救急車よりも、まずは…、滝壺!あんた…、体晶で、垣根の探索……」 麦野は浜面の背後にいる滝壺に声をかける。 殺気、いや、狂気を孕んだ麦野の視線に滝壺は自分の体がぶるっと震えるのを知覚した。 「待て!麦野。まずはお前の治療だろ!垣根は、お前ですら勝てなかったんだろ?た、体晶を使ってヤローを見つけてどーすんだよっ!?」 浜面が二人の会話に割って入ろうとする。 「ブチコロス」 「やってみろ!ただ、絶対に無理だ!お前じゃ垣根には勝てない!」 うるせぇ。麦野はそう言おうとしたが口が塞がれた。 浜面が麦野にキスしたから。 「なっ。何してんだよ…!はまづらぁッ!」 麦野にとっては浜面のキスもただの欝陶しい唇をくっつけるだけの動作程度にしか感じられなかった。 しかし浜面はそれでもキスをやめない。 「うぁぁぁ!」 麦野がめくらめっぽうに原子崩しを放出する。立体駐車場の車が何台か吹き飛ぶ。 浜面も頬を原始崩しが擦過し、ツツーと血が垂れていく。 「ゆるさねぇ。私の頭をいじくった奴ら、スクールも、脱走者のフレンダもゆるさねぇ!」 「馬鹿野郎……!まだそんな事言うのかよ!!」 浜面の渾身の思いを込めたキスも伝わらなかったのだろうか。 麦野は先ほどと同室の狂気を孕んだ視線を滝壺に送る。 「滝壺ッ!体晶、飲めよッ!」 麦野の怒声が立体駐車場に響く。 ――第七学区オフィスビル群 美琴は目の前で繰り広げられている戦いに言葉を失っていた。 (な、なによ?こんな事人間に出来るの?) 美琴の数百メートル先にいるのはあの一方通行だ。そして戦っているのは…、茶髪の男。 羽が生えている。虫とかじゃなくて、なんだろう。天使のような羽。 「な、なによ、あれ……?」 突如として始まった戦い。 「いやァ、第二位様からきていただけるとはこれはこれは」 「しかたねーさ。今日の戦いの発端は俺っぽいしな。責任とってテメェもあの世行きにしてやるよ」 「出来るもンならやってみな」 第七学区のオフィス街の巨大な十字路で激突したレベル5。 一方通行はビルに指を当てると、そのままビルを投げた。 想像するのは難しいだろうが、投げたのだ。高層ビルを。 グワァァァァ!と大音響を響かせてビルが垣根に当たる。しかし垣根の回りにはビルは当たらず、融解していく。 「おもしれー力だなオマエ。背中から翼も生えてるぜェ?」 「仕様だ。じゃ、つぎは俺の番だな?」 垣根はそういうと、ぱっと手を広げて一方通行に向ける。 首を傾げる一方通行を余所に垣根は死ね、と一言言い放つ。 「もう真空だよ、そこ」 一方通行は途端に呼吸が出来なくなる。恐らく垣根の力で真空地帯を作りだしたのだろう。 「がっ、は……!」 (息が出来ねェ!) 一方通行の肺が酸素を求める。肺が灼熱している。 彼は焼けるように熱い肺に手を当ててアスファルトの床をふみくだく。 地割れが垣根に向かって延びていく。地割れを起こしたアスファルトから空気が流入する。 急死に一生を得た一方通行はグン!と勢いよく垣根に突撃する。 「ぶっ、はっ!ずいぶんやってくれるじゃねェか!」 「ちっ、やっぱあれくらいじゃ死なねぇか」 垣根はそう言うとちらと後ろを見る。ビルの間からちょこっと頭一つ覗かせている心理定規に逃げるよう合図を送る。 「よそ見してるひまありますかァ?」 (ん?あの女、垣根の女かァ…?) 一気に迫る一方通行に垣根は振り向く。 「演算終わったぞ」 垣根がつぶやくと彼と一方通行はぐっと腕を組む姿勢になる。 「反射のベクトルを逆算した。なんて事はなかったな」 「へェ、反射が効かねェとは、いいねいいね!サイッコーにおもれェよ!」 めきめきと音を立てていくアスファルト。そのまま地面にめり込んでいくのかと思う瞬間、二人は上空に居た。 「お前、跳べるのか」 一方通行は見下すように吐き捨てる垣根に訂正しろ、と鬱陶しそうに呟く。 「訂正しろ。飛べるンだよ、クソメルヘン」 一方通行はそう言うと、ドン!と派手な音を周囲にとどろかせて、一気に加速する。その音は彼が音速に突入した事を意味する加速音だった。 垣根の視野に一方通行は捕らえられない。 「どこにいきやがった?」 垣根は未元物質を周囲に張り巡らす。レーダーの役割を果たす未元物質に一方通行は引っ掛からない。 音速を越えたスピードなら一足飛びで垣根に相対するはずだ。 そう考えた矢先、垣根の鳥肌がズアッと粟立つつ。 (やべぇ!まさか心理定規を?) 垣根の頭に血が上っていく。天使の羽根を一気に羽ばたかせて心理定規の隠れているビルに向かう。 (無事でいろ!頼む!) 時間にしてほんの二秒程。しかし、この二秒は一方通行に攻撃の隙を与えるには余りに長すぎた。 垣根は高度を一気に下げてビルの合間に下りる。しかし、そこには――… 「ゲームオーバァでェす…!」 ニタリと暴悪な笑みを浮かべる一方通行。彼の靴の回りには肉片が散らばっていた。 「て…テメェ……!し、心理定規に何をしたッ!!!」 「殺した」 冷淡に、いや、冷淡さすら感じない。ただ自分のやった行為を正直に告げる子供の様に一方通行は自分の行為を垣根に告げる。 「そこまでだ、スクールのリーダー、垣根帝督」 やじ馬の中から出て来る三人の男女。その中の一人、金髪頭でBVLGARIのサングラスを掛けた男が告げる。学ランを着ているが下には派手なアロハシャツ。 「降伏する気にはなりませんかねぇ?スクールのリーダー、垣根さん。結標さんからも何とか言ってあげてください」 その男は優男といった印象を垣根に与えた。 彼も恐らく一方通行と同一の組織なのだろう。彼が話しかけた結標とかいう女も気付けば垣根の背後に立っていた。 「投降すれば悪いようにはしないわ。統括理事会もそう言ってる」 垣根は気付けばそいつらに囲まれていた。 身動きの取れない状態になった垣根は決断を迫られていた。 「決めろ、第二位」 一方通行は垣根に吐き捨てる。 目の前の血だまりを見て垣根はわなわなと震える両手をぐっと握りしめる。 「バカか、てめぇら、愛してる女殺されて降伏?冗談じゃねぇ」 垣根はそう言うと一瞬で上空に跳ね上がる。 手の平にキィィィと音を立てて光球が形成されていく。 「砕けろ、てめぇら…!俺の未元物質に常識は通用しねぇ…!」 ――柵川中学の学生寮 陽がくれはじめている。 長かった一日が終わりを告げようとしている。 佐天は学生寮の二階の自室でひとりぽつねんと座り、タブレット型携帯電話を起動させる。 彼女は思った。自分にはなんらかの罰が下ると。 学園都市から脱出する人間を幇助したのだから。 (アイテムの連中からも連絡こないわね…大丈夫かな…。今日は色んな組織が戦ってるっていう情報も入ってるし……) 佐天は学園都市の戦いの動向が気になっていた。 しかし、それよりもと言ったら失礼になるかもしれないが、もっと気にしている事があった。それは、フレンダの脱出作戦成否だった。 (フレンダから連絡こないなぁ。何してるんだろう…もうとっくに脱出したのかな?携帯の電池が切れたのかな) 佐天はフレンダを逃がすことになんら抵抗は……ないと言えば嘘になる。 しかし、それよりもフレンダが脱出した瞬間に自分が得られるであろう、人を助けたという、かつて人を殺す命令をだしていた事を帳消しにする免罪符を得れる のではないかと思い気が気でなかった。 散々人を殺す命令を出しておいていまさら、人一人を学園都市から逃がすだけで一体何が赦されるのかは甚だ疑問だ。当の佐天もそれを理解している。 (自分の都合のいい理由付けだって事はわかってる、ただ私は自分の意志で人を助けたいって思う) フレンダが学園都市から脱出すれば佐天は自分の意志で人を助けた事になる。 その瞬間に得られるものが何か、彼女は見てみたかった。 ――第三学区と日本国の境界線付近 「随分な数の警備だな」 砂皿が超々望遠カメラを覗きつつ、後ろにいるフレンダとステファニーに言う。 彼の保有しているカメラは横田の米軍から譲り受けたカメラで30キロ先から対象を見れる事が出来る代物だ。 今彼らは境界線の検問所から15キロ程の地点にあるビル郡の一角にいた。 学園都市の独立記念日という事で多くの企業が休んでいるのが幸いし、潜入し休息を取れたのは彼らにとって大きかった。 「薄暮の頃合いに行くぞ」 「「はい」」 二人の姉妹の勢いのいい返事が聞こえる。砂皿は望遠鏡に目を押し当てたまま、いい返事だ、と答える。 「恐らく学園都市側は俺ら三人が脱出を目論んでいるのを察知しているだろう、相当な軍備で待ち構えているだろう」 姉妹二人が顔を合わせる。 フレンダがステファニーに引き寄せられて彼女の胸の中に顔を埋める。 ここから脱出出来るかどうか不安なのだろう。 砂皿は望遠レンズから目を離すと疲労の色が滲んでいるフレンダと彼女の肩を優しくなでているステファニーに向かって宣言した。 「君達は死なせない。何が起きてもだ。学園都市からも脱出させる」 砂皿も数多との激闘で負傷し、疲労している。しかし、幾田の戦場を駆け抜けて来た男には失敗は許されなかった。 姉妹二人を学園都市から脱出させる。ステファニーだけではできないだろうと思い砂皿は同行した。 (俺がやらねば誰が!二人に幸せをもたらせる?俺以外にいない。たとえ、俺の命を使い果たしたとしても二人は脱出させる……!) 砂皿は二人を見た後、グッと強く拳を握る。すると、ステファニーがフレンダに座るように目配せする。 フレンダが座るとステファニーが砂皿の後ろに立つ。フレンダから見ると夕日に真っ赤に照らされている二人が立ちすくんでいる様に見えた。 「砂皿さん、あんまり考えすぎないで下さいね?自分だけが死ぬなんて考えてないですよね?」 まさか、と砂皿は望遠レンズを覗きながら答える。しかし彼女の質問は砂皿の心理状態を的確に表している事は間違いない。 ステファニーはそれを見透かしたかの様にふふ、と笑う。 そして砂皿がレンズを覗き、視界が塞がれている方に軽快なステップ歩いて回り込んでいく。 「がんばりましょうね?砂皿さん☆」 そう言うと、砂皿が振り向くより前に彼の頬に優しく口付けをする。 「砂皿さんも一緒に学園都市から脱出しましょうね?にゃはは…」 砂皿さんは私のキス、なんとも思ってないのかな?ステファニーは無反応な砂皿を見てむすっとするがそんな事はなかった。 夕日に照らされてよくはわからなかったが砂皿の顔は俄かに朱くなっていた。勿論、ステファニーの頬も。 「い、いくぞ!準備出来次第出発だ!」 まるで恥ずかしさを払拭する様に砂皿は声を張り上げる。 フレンダとステファニーは目を見合わせて、クスリと笑い、カチャカチャと銃器の手入れを行っていく。 脱出の時刻が来た。 いかなる軍備が待ち受けていようがもう後退は出来ない。
あらすじ 麦野は心理定規の精神攻撃で人間関係の距離を変更させられ、混乱。 同時にフレンダの裏切り情報をも得て、フレンダを追撃することに。 フレンダは第三学区で麦野と遭遇し、必死になって逃げるが、とある立体駐車場で捕まる。 殺害されそうになっている所をちょうどGPSで追跡していたステファニーに見つかって九死に一生を得る。 ※ステファニーとフレンダが姉妹という設定です。フレメアさんの出番はありません。 ステファニー=ゴージャスパレス フレンダ=ゴージャスパレス って感じ ――ランクルの車内 「さっきの女は…麦野って人?」 「うん…私の所属している組織のリーダーで、麦野沈利って言うんだ」 「そっか……あの人がリーダーだったんだ。フレンダ、一杯、苦労かけさせちゃったね」 「いや、結局、私もこんな暗部で命をすり減らすなんてまっぴらゴメンだったし、お姉ちゃんを捜すために入ったようなもんだし…」 (でも、麦野達、仲間を売ったっていう事実はやっぱ精神的にきついって訳よ…) ステファニーはそっか、と一言言うと「ごめんね」と小さい声で言った。 「私が自分勝手に色んな事するからさ、ほら、こんな性格だしさ」 確かにステファニーは自分のやりたいことを続けて来た。 学園都市で教鞭を握っていたこともあるし、警備員としても活躍したこともあった。 そして、傭兵として世界の戦場を見て回った。 「ま、お姉ちゃんらしいって言ったら、お姉ちゃんらしいいけどさ」 フレンダはそう言うとにこりと笑った。 彼女の笑顔をみたステファニーは自分がここまで来て本当に良かったと思った。 「もう、フレンダには苦労かけないから、これからは一緒に居ようね?」 ステファニーの発言にフレンダはうん、と目を見据えて話す。 問題はこの後どうするかだった。再会の余韻に浸りたい気持ちはあるにはあるが、学園都市から脱出することを考えなければならない。 「フレンダ、取り敢えず、この後の予定としては第三学区の学園都市の出入国ゲートに行こうと思うんだけど?」 「結局、ここまで暴れといて学園都市に居続けれるわけ無いもんね」 ステファニーはそうねー、と軽い調子で答える。 しかし、ステファニーとフレンダだけではこの局面を乗り切れるのだろうか? 先ほど戦火を交えた猟犬部隊の他にも攻撃を仕掛けてくる組織もあり得る。 「ちょっと砂皿さんに連絡取ってみる…」 ステファニーは運転しながら携帯をかける。 数回のコールが鳴る。 (出て下さい、砂皿さん!こっちはフレンダと合流しましたよ!) プルルルルルル…… 長いコール音が続く。コール音が一回、二回と続くたびにステファニーの胸が詰まるようだ。 彼女が半ば諦めかけていた時だった。 ステファニーが外部音声に切り替えた時にちょうど砂皿が受話器を取ったようだった。 突然コール音が途切れたことで助手席に座っているフレンダはびくりと肩をふるわせた。 『俺だ砂皿だ!今どこにいる?』 「砂皿さん!こっちは今、第三学区です…フレンダとも合流しました!」 『そうか、GPSで大体の場所は把握している。このまますんなり学園都市外に逃げれるとは思えない。一度合流しないか』 「今後の作戦に関しては砂皿さんに任せます。今どこらへんにいるんですか?」 砂皿は現時点での座標をステファニーに教える。 彼女がそれを口頭で復唱するとフレンダがカーナビにその座標を入力していく。 「見つかりました。では、今からそっちに向かいますね」 『わかった。ではその場所で待機している』 「どうしましょう?私もフレンダも怪我してます。砂皿さんはトライバル刺青の男を倒したんですか?」 『殺しはしなかったが、致命傷は与えたつもりだ…お前等は怪我の手当はしたのか?』 砂皿はとどめを刺せなかったことを悔しそうにつぶやく。 ステファニーはフレンダの方を見て「まだです」と答える。 結局、ステファニーと砂皿が電話で話し合った結果、まずは三人合流することに。 敵の脅威は依然消えていないのだ。三人で集合して万全の状態で学園都市から離脱しなければならない。 ステファニーは気持ちを新たにする。 フレンダを救出して心のどこかで安心している自分を律した。 そう。ここからが本番なのだ。 フレンダと砂皿と一緒に学園都市から離脱しなければならない。 学園都市の組織に仮に捕まれば、命の保証はないとみていいだろう。 ステファニーは自分に課せられているものがずっしりと重たく感じられた。 (妹の命は是が非でも守る…絶対に…!けど…私と砂皿さんで出来るんですかね…?) どうする?自分と砂皿さんだけでこの学園都市から脱出できるのか? ステファニーはいつもの明るい雰囲気とは対照的に自分の気が沈んでいくような感じがした。 と、そこで意気消沈しかかっていたステファニーに声が掛かる。 「お姉ちゃんの相棒…だよね?その人」 ステファニーはうーん?とちょっと悩んだ表情をする。 たしかに相棒だけど、ちょっと違う、って思いたい。 ステファニーの迷いの表情にフレンダはんー?とからかうような視線を送る。 じっとりと見つめられたステファニーは運転しながらも段々と顔が紅くなっていく。 「あれ?結局惚れちゃってるの?うひひ」 「ばっ!だ!うっさい!フレンダ!」 「あれ?まさか本当に?」 フレンダの茶化しに耐え切れず、ステファニーは「いや、師弟の関係だし、それ以外でも以上でも未満でも切り上げ切り捨て……」と途中から訳のわからない事を言い始めた。 「……そしたら、お姉ちゃんの大切な想い人に合流しなきゃね?」 ステファニーは「にゃはは…想い人って」とフレンダの言うことに照れつつも否定はしなかった。 師であれ、好きな人であれ、ステファニーにとっては大切な人なのだ。 そして砂皿がいなければ今回の作戦はここまでうまくいかなかった筈だ。 「フレンダ、後ろに私のバックがあるから傷の手当したげる」 「いーよ。自分でやるって訳。一々車停めたらその分だけ合流するのが遅くなっちゃうって訳よ」 フレンダはそう言うと麦野に貫かれた足の痛みを堪えて、後部座席にある応急キットで処置をする。 そしてチェロのケースより少し小さいバックのファスナーをジジと開け、ばらしてある狙撃銃を組み立てる。 「いい銃持ってるじゃないの」 「へへへ、結局、狙撃専門だけどね」 アキュレシー・インターナショナルL96AWS。 A アークティック・W ウォーフェア・S サプレス。 極寒地での作戦遂行も可能であることを意味する。そして消音機能に関しても文句なしの一品だ。 狙撃銃の中では最高峰の性能を誇る。 「お姉ちゃんが派手好きなのは警備員の人から聞いたこともあるし、私はおしとやかだから綺麗に華麗に狙撃するって訳☆」 ステファニーはカーッ!よくゆーよ!と前を見ながら呆れるようなそぶりを見せる。 冗談を交わしつつ、フレンダはハンドガンの手入れも済ませていく。 (いつも見たいに、派手にぶっ放して、ぱーっとやって片付けちゃいましょ。そうすればうまくいくはずです!) 根拠など無い。 しかし、ステファニーについ先ほどまで妹を救えるかどうか逡巡していた面影はそこにはなかった。 ――猟犬部隊の応急車輌内にて 数多はしばらくの間失神していた。 砂皿から受けた一撃は彼の意識を奪っていた。 「起きて下さい、木原さん!」 猟犬部隊の隊員のかけ声で数多は目を覚ました。 彼が目を覚ますとストレッチャーの上に乗せられており、証明が彼の顔を照らした。 その光を遮るように彼は手をかざす。 (猟犬部隊の緊急車両の中にいるのか…俺は…) 大型トラックほどの大きさの救急車に数多はいた。 最新の治療設備が整えられたこの車両で数多は失神している最中に応急手当を受けていた様だ。 「大丈夫ですか?」と名前も聞いたことのない数多の部下の隊員が話しかけてくる。 「お…俺は…寝てたのか……?」 「はい、昏倒していました」 「砂皿…っ…の野郎は…?」 腹部を押さえながら数多は猟犬部隊の隊員に話しかける。 すると隊員は気まずそうな顔をして「逃げられました…」とぽつりと言い放った。 「チックショウが!!!!」 救急車の側壁を数多は思いっきりたたく。 逃げられたのだ。学園都市外からやってきた得体の知れない傭兵に。しかも失神させられて。 「で、砂皿の野郎は今どこにいる?」 その質問に隊員は「…目下、全力で捜査中です……」と下を向いて答えた。 「要するに…行方をくらまされたって事か…」 「はい、申し訳ございません!!!」 がばっと謝罪する隊員の姿を見ること無く、数多は救急車の外を見る。 車輌は砂皿と戦った地下駐車場の外に出た所に駐車しており、移動はしていない。 数多は考えた。 恐らく、砂皿はあの金髪ブロンドのステファニーとか言う女と合流した。 いや、もしかしたら既にステファニーの妹のフレンダと合流している可能性も有り得る。 (希望的観測はするな…最悪の状況を考えて行動しろ…) 自分が倒れていた事を心底呪いたくなる反面、彼は次の対応策を考える。 ほぼ後手後手に回っている対応で苛立ちはピークに達していたが、ここで発狂すれば元も子もない。 全ては冷静に。いかにクールになれるか、こうした状況で最も元も得られるのは焦りと興奮ではなく、慎重さと冷静さだ。 そう自分に言い聞かせた数多はまず、ポケットに入っている携帯を取り出す。 (ったく、あの素人童貞の出番だな……) 携帯のフォルダから呼び出された名前は一方通行。 学園都市の無能力者に敗北し、その事で絶対能力進化計画は頓挫。 しかし、一方通行は未だその利用価値を学園都市に見いだされ、この街の闇に依然滞留している。 (ったく…アイツの組織も戦闘中か?電話に出ろ) ストレッチャーに横になったまま数多は携帯を自分の受話器に宛がう。 すると出た。数コールの後に一方通行の「なンですかァ?木原クン」といううざったそうな声が数多の耳朶に届く。 「一方通行か…?俺だ」 『クッカカカ…何だ何だァ?そのよわっちィ声ェ…もしかして、負傷中ですかァ?』 「そんなトコだ、で、テメェの出番だ、一方通行」 『へいへい。こっちは順調に敵をぶっつぶしててつまンねェとこだったから、強敵大歓迎だぜェ?』 「ったく口がへらねぇ野郎だな、まぁいい。そしたら今から送る奴らを消せ」 『りょォかい。この命令はグループ全体で受け取っちまって良いのか?』 「かまわねぇ。上からは俺がどーとでもいっとくから安心しろ」 『流石木原家。やるねェ!』 一方通行の独特の口調に辟易した数多は携帯のタブを開いてデータを一方通行の携帯に送信する。 送信データは砂皿緻密とステファニーとフレンダの三人。 『こいつ等を消すのか?』 どうやらデータは一方通行に届いたようだった。 数多は「あぁ」と答える。 『こいつら全員無能力者じゃねェか』 「うるせぇな。黙って消せ、後裏切り者を出したアイテムにも容赦しなくていいぜ」 一方通行は受話器越しに「りょォかい」、と適当な返事を数多に寄越す。直後、彼の受話器越しにドかぁああン!と大きな破裂音が聞こえた。 「どぉした一方通行?今変な音が聞こえたが?」 『あー、わりぃ。先客だァ。木原君のオーダーも後でやってやっからよ、ただ、ちょいと席外すぜェ?第二位様のご来店だ』 数多は第二位?と一方通行に聞き返すが、電話は既にツーツーと無機質な機械音しか流さなかった。 一方通行の話す内容が正しければ、第二位の垣根帝督がやってきたことになる。 まさか仲良くお茶でもするわけがあるまい。 暗部の組織同士の戦いだろう。数多は内心にクソ!とつぶやく。 猟犬部隊と一方通行が使えなければ後はテレスティーナと妹達(シスターズ)のクローン部隊しかいない。 数多は目を閉じる。 冷静になれ、とことさら言い聞かせる。ここで焦っては一度は接触した砂皿達をみすみす逃がしてしまうかもしれない。 それだけは避けなければならない。 数多は電話を取ると猟犬部隊の隊員に招集をかけ、砂皿達の追跡経路の割り出しに当たらせる。 彼らがそれに当たっている最中、数多はテレスティーナに連絡をしてMARに増援要請を行った。 「あぁ。俺だ、木原数多だ」 『いきなりどうしたの?数多兄さん』 「援護要請だ。お前等の所の人員を割いて欲しい」 『了解。じゃ、座標指定してくれれば人員をそっちに回すから、お願いね』 数多は座標を送信すると受話器越しから『今座標に誘導する様に伝えた』と連絡が入る。 座標が指示しているポイントは学園都市と日本国の入り口。 第三学区の吉祥寺方面の境だ。 数多はテレスティーナに礼を言うと電話を切り、白衣を着ると救急車の運転手に連絡する。 「第三学区と日本の境目に向かうんだ。恐らく奴らはそこから出国する。警戒を厳にしてあたれ。クローン部隊、“モンスーン”にも連絡」 数多はそう言うと部下の報告を受ける。 その報告に耳を貸して救急車の窓を開けると付近に数台の車輌が集まっていた。 中にはMARと書かれた車輌も有り、テレスティーナの応援部隊も駆けつけたことを示していた。 「よぉし、第二ラウンドだぁ!圧倒的兵力でなぶり殺しにしてやるぜぇ?」 ――第三学区の立体駐車場 「お、おい!麦野大丈夫か?」 「は、はまづ……ら?」 麦野は自分の事を呼び掛ける声に目をさます。 (……痛い痛い!って…パシリの浜面か…) 麦野の視界には自分の肩を揺する浜面の姿とその背後にいる滝壺の姿が映った。 垣根と心理定規の追跡から逃れてきたのだろう、浜面と滝壺の二人は息をはぁはぁと荒くしながら麦野を見ている。 「あれ…?あ、そっか。私倒れてた…」 気絶していた麦野の脳裏に浮かぶのは金髪ブロンドの女が銃をこちらに構えている光景。 そうだ、私は撃たれたんだ、と麦野はぼんやりとした思考で白人の女の表情を思い出す。 彼女は手と目の痛みに苛まされつつも当たりを見回す。 どうやら自分が倒れている最中にどこかに姿を消してしまったようだ。 「麦野!目と腕、撃たれてんぞ!大丈夫かよ?」 「あ、あぁ…」 麦野の意識は依然、朦朧としていた。 (あの白人女、確かフレンダの姉とか言ったか?…に私は、たしか、撃たれて倒れて……そっから……) 麦野は自分が撃たれた時の前後の一連の出来事を思い出す。 自分の腕と目が撃たれた痛みが屈辱、憎悪といったエネルギーに屈折し、変わっていくのが感じられた。 「浜面ぁ…ふ、フレンダが……逃げた。暗部、…から!」 「フレンダが……?そ、それよりもまずは傷の手当だ!お前の腕が!血が出て…!」 麦野を抱えている浜面の手はぶるぶると震えている。 彼女は自分の左手の感覚を確かめようとするが、それが出来ない。 ちらと左手を見ると二の腕辺りからどす黒い血が出血している。 (あー……これ、私の血かぁ…、感覚ねぇわー……やべーかもな…) あまりの事態にどこか他人事のような麦野。 だんだんと記憶を取り戻しつつある彼女は頭を抱えようと左手を持ち上げようとするが、激烈な痛みに襲われてすかさず下ろす。 「くっ!あぁぁ!!浜面ぁ!いてぇ……」 今、救急車呼ぶからな、と浜面が言いぐっと麦野の体が持ち上がる。 すると不意に浜面の指に嵌まっている指輪が視界に入る。 「お、おい…は、浜面ぁ、その指輪…、誰と」 「は?お前と買いに行っただろ?忘れたのかよ!」 「え……、浜面と?」 麦野は記憶を思い返す。 たしかに浜面と一緒に買いに行った。 ケド、浜面に対して全く好意が沸かない。おかしい。たしか、ついさっき、心理定規に頭をいじられたような…?え? 彼女は自分の記憶には留めている事実がよくわからなかった。 好きでもない人となんで指輪をつけてるの? ってか、滝壺!お前は浜面とくっつくんじゃねぇ! 訳のわからない思考の奔流で麦野の脳内は混乱した。 激痛と思考の混濁にさいなまされながらも麦野が出した命令はその場にいた浜面と滝壺を呆れさせた。 「救急車よりも、まずは…、滝壺!あんた…、体晶で、垣根の探索……」 麦野は浜面の背後にいる滝壺に声をかける。 殺気、いや、狂気を孕んだ麦野の視線に滝壺は自分の体がぶるっと震えるのを知覚した。 「待て!麦野。まずはお前の治療だろ!垣根は、お前ですら勝てなかったんだろ?た、体晶を使ってヤローを見つけてどーすんだよっ!?」 浜面が二人の会話に割って入ろうとする。 「ブチコロス」 「やってみろ!ただ、絶対に無理だ!お前じゃ垣根には勝てない!」 うるせぇ。麦野はそう言おうとしたが口が塞がれた。 浜面が麦野にキスしたから。 「なっ。何してんだよ…!はまづらぁッ!」 麦野にとっては浜面のキスもただの欝陶しい唇をくっつけるだけの動作程度にしか感じられなかった。 しかし浜面はそれでもキスをやめない。 「うぁぁぁ!」 麦野がめくらめっぽうに原子崩しを放出する。立体駐車場の車が何台か吹き飛ぶ。 浜面も頬を原始崩しが擦過し、ツツーと血が垂れていく。 「ゆるさねぇ。私の頭をいじくった奴ら、スクールも、脱走者のフレンダもゆるさねぇ!」 「馬鹿野郎……!まだそんな事言うのかよ!!」 浜面の渾身の思いを込めたキスも伝わらなかったのだろうか。 麦野は先ほどと同室の狂気を孕んだ視線を滝壺に送る。 「滝壺ッ!体晶、飲めよッ!」 麦野の怒声が立体駐車場に響く。 ――第七学区オフィスビル群 美琴は目の前で繰り広げられている戦いに言葉を失っていた。 (な、なによ?こんな事人間に出来るの?) 美琴の数百メートル先にいるのはあの一方通行だ。そして戦っているのは…、茶髪の男。 羽が生えている。虫とかじゃなくて、なんだろう。天使のような羽。 「な、なによ、あれ……?」 突如として始まった戦い。 「いやァ、第二位様からきていただけるとはこれはこれは」 「しかたねーさ。今日の戦いの発端は俺っぽいしな。責任とってテメェもあの世行きにしてやるよ」 「出来るもンならやってみな」 第七学区のオフィス街の巨大な十字路で激突したレベル5。 一方通行はビルに指を当てると、そのままビルを投げた。 想像するのは難しいだろうが、投げたのだ。高層ビルを。 グワァァァァ!と大音響を響かせてビルが垣根に当たる。しかし垣根の回りにはビルは当たらず、融解していく。 「おもしれー力だなオマエ。背中から翼も生えてるぜェ?」 「仕様だ。じゃ、つぎは俺の番だな?」 垣根はそういうと、ぱっと手を広げて一方通行に向ける。 首を傾げる一方通行を余所に垣根は死ね、と一言言い放つ。 「もう真空だよ、そこ」 一方通行は途端に呼吸が出来なくなる。恐らく垣根の力で真空地帯を作りだしたのだろう。 「がっ、は……!」 (息が出来ねェ!) 一方通行の肺が酸素を求める。肺が灼熱している。 彼は焼けるように熱い肺に手を当ててアスファルトの床をふみくだく。 地割れが垣根に向かって延びていく。地割れを起こしたアスファルトから空気が流入する。 急死に一生を得た一方通行はグン!と勢いよく垣根に突撃する。 「ぶっ、はっ!ずいぶんやってくれるじゃねェか!」 「ちっ、やっぱあれくらいじゃ死なねぇか」 垣根はそう言うとちらと後ろを見る。ビルの間からちょこっと頭一つ覗かせている心理定規に逃げるよう合図を送る。 「よそ見してるひまありますかァ?」 (ん?あの女、垣根の女かァ…?) 一気に迫る一方通行に垣根は振り向く。 「演算終わったぞ」 垣根がつぶやくと彼と一方通行はぐっと腕を組む姿勢になる。 「反射のベクトルを逆算した。なんて事はなかったな」 「へェ、反射が効かねェとは、いいねいいね!サイッコーにおもれェよ!」 めきめきと音を立てていくアスファルト。そのまま地面にめり込んでいくのかと思う瞬間、二人は上空に居た。 「お前、跳べるのか」 一方通行は見下すように吐き捨てる垣根に訂正しろ、と鬱陶しそうに呟く。 「訂正しろ。飛べるンだよ、クソメルヘン」 一方通行はそう言うと、ドン!と派手な音を周囲にとどろかせて、一気に加速する。その音は彼が音速に突入した事を意味する加速音だった。 垣根の視野に一方通行は捕らえられない。 「どこにいきやがった?」 垣根は未元物質を周囲に張り巡らす。レーダーの役割を果たす未元物質に一方通行は引っ掛からない。 音速を越えたスピードなら一足飛びで垣根に相対するはずだ。 そう考えた矢先、垣根の鳥肌がズアッと粟立つつ。 (やべぇ!まさか心理定規を?) 垣根の頭に血が上っていく。天使の羽根を一気に羽ばたかせて心理定規の隠れているビルに向かう。 (無事でいろ!頼む!) 時間にしてほんの二秒程。しかし、この二秒は一方通行に攻撃の隙を与えるには余りに長すぎた。 垣根は高度を一気に下げてビルの合間に下りる。しかし、そこには――… 「ゲームオーバァでェす…!」 ニタリと暴悪な笑みを浮かべる一方通行。彼の靴の回りには肉片が散らばっていた。 「て…テメェ……!し、心理定規に何をしたッ!!!」 「殺した」 冷淡に、いや、冷淡さすら感じない。ただ自分のやった行為を正直に告げる子供の様に一方通行は自分の行為を垣根に告げる。 「そこまでだ、スクールのリーダー、垣根帝督」 やじ馬の中から出て来る三人の男女。その中の一人、金髪頭でBVLGARIのサングラスを掛けた男が告げる。学ランを着ているが下には派手なアロハシャツ。 「降伏する気にはなりませんかねぇ?スクールのリーダー、垣根さん。結標さんからも何とか言ってあげてください」 その男は優男といった印象を垣根に与えた。 彼も恐らく一方通行と同一の組織なのだろう。彼が話しかけた結標とかいう女も気付けば垣根の背後に立っていた。 「投降すれば悪いようにはしないわ。統括理事会もそう言ってる」 垣根は気付けばそいつらに囲まれていた。 身動きの取れない状態になった垣根は決断を迫られていた。 「決めろ、第二位」 一方通行は垣根に吐き捨てる。 目の前の血だまりを見て垣根はわなわなと震える両手をぐっと握りしめる。 「バカか、てめぇら、愛してる女殺されて降伏?冗談じゃねぇ」 垣根はそう言うと一瞬で上空に跳ね上がる。 手の平にキィィィと音を立てて光球が形成されていく。 「砕けろ、てめぇら…!俺の未元物質に常識は通用しねぇ…!」 ――柵川中学の学生寮 陽がくれはじめている。 長かった一日が終わりを告げようとしている。 佐天は学生寮の二階の自室でひとりぽつねんと座り、タブレット型携帯電話を起動させる。 彼女は思った。自分にはなんらかの罰が下ると。 学園都市から脱出する人間を幇助したのだから。 (アイテムの連中からも連絡こないわね…大丈夫かな…。今日は色んな組織が戦ってるっていう情報も入ってるし……) 佐天は学園都市の戦いの動向が気になっていた。 しかし、それよりもと言ったら失礼になるかもしれないが、もっと気にしている事があった。それは、フレンダの脱出作戦成否だった。 (フレンダから連絡こないなぁ。何してるんだろう…もうとっくに脱出したのかな?携帯の電池が切れたのかな) 佐天はフレンダを逃がすことになんら抵抗は……ないと言えば嘘になる。 しかし、それよりもフレンダが脱出した瞬間に自分が得られるであろう、人を助けたという、かつて人を殺す命令をだしていた事を帳消しにする免罪符を得れる のではないかと思い気が気でなかった。 散々人を殺す命令を出しておいていまさら、人一人を学園都市から逃がすだけで一体何が赦されるのかは甚だ疑問だ。当の佐天もそれを理解している。 (自分の都合のいい理由付けだって事はわかってる、ただ私は自分の意志で人を助けたいって思う) フレンダが学園都市から脱出すれば佐天は自分の意志で人を助けた事になる。 その瞬間に得られるものが何か、彼女は見てみたかった。 ――第三学区と日本国の境界線付近 「随分な数の警備だな」 砂皿が超々望遠カメラを覗きつつ、後ろにいるフレンダとステファニーに言う。 彼の保有しているカメラは横田の米軍から譲り受けたカメラで30キロ先から対象を見れる事が出来る代物だ。 今彼らは境界線の検問所から15キロ程の地点にあるビル郡の一角にいた。 学園都市の独立記念日という事で多くの企業が休んでいるのが幸いし、潜入し休息を取れたのは彼らにとって大きかった。 「薄暮の頃合いに行くぞ」 「「はい」」 二人の姉妹の勢いのいい返事が聞こえる。砂皿は望遠鏡に目を押し当てたまま、いい返事だ、と答える。 「恐らく学園都市側は俺ら三人が脱出を目論んでいるのを察知しているだろう、相当な軍備で待ち構えているだろう」 姉妹二人が顔を合わせる。 フレンダがステファニーに引き寄せられて彼女の胸の中に顔を埋める。 ここから脱出出来るかどうか不安なのだろう。 砂皿は望遠レンズから目を離すと疲労の色が滲んでいるフレンダと彼女の肩を優しくなでているステファニーに向かって宣言した。 「君達は死なせない。何が起きてもだ。学園都市からも脱出させる」 砂皿も数多との激闘で負傷し、疲労している。しかし、幾田の戦場を駆け抜けて来た男には失敗は許されなかった。 姉妹二人を学園都市から脱出させる。ステファニーだけではできないだろうと思い砂皿は同行した。 (俺がやらねば誰が!二人に幸せをもたらせる?俺以外にいない。たとえ、俺の命を使い果たしたとしても二人は脱出させる……!) 砂皿は二人を見た後、グッと強く拳を握る。すると、ステファニーがフレンダに座るように目配せする。 フレンダが座るとステファニーが砂皿の後ろに立つ。フレンダから見ると夕日に真っ赤に照らされている二人が立ちすくんでいる様に見えた。 「砂皿さん、あんまり考えすぎないで下さいね?自分だけが死ぬなんて考えてないですよね?」 まさか、と砂皿は望遠レンズを覗きながら答える。しかし彼女の質問は砂皿の心理状態を的確に表している事は間違いない。 ステファニーはそれを見透かしたかの様にふふ、と笑う。 そして砂皿がレンズを覗き、視界が塞がれている方に軽快なステップ歩いて回り込んでいく。 「がんばりましょうね?砂皿さん☆」 そう言うと、砂皿が振り向くより前に彼の頬に優しく口付けをする。 「砂皿さんも一緒に学園都市から脱出しましょうね?にゃはは…」 砂皿さんは私のキス、なんとも思ってないのかな?ステファニーは無反応な砂皿を見てむすっとするがそんな事はなかった。 夕日に照らされてよくはわからなかったが砂皿の顔は俄かに朱くなっていた。勿論、ステファニーの頬も。 「い、いくぞ!準備出来次第出発だ!」 まるで恥ずかしさを払拭する様に砂皿は声を張り上げる。 フレンダとステファニーは目を見合わせて、クスリと笑い、カチャカチャと銃器の手入れを行っていく。 脱出の時刻が来た。 いかなる軍備が待ち受けていようがもう後退は出来ない。

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