第8話 地獄のラーメン対決

「第8話 地獄のラーメン対決」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

第8話 地獄のラーメン対決」(2010/07/19 (月) 21:47:09) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

#image(第8話1.jpg,right) #image(第8話2.jpg,right) エリスは私の定宿の私の隣の部屋を借りた。実際のところ、彼女は実に優秀な助手であった。 頭の回転は速く、身の回りの事は一通り完璧にこなせた。 「ママがね、家事もできずにおじさまの所に行ったらご迷惑でしょうって。ママに教わって一生懸命頑張ったんだから」 エリスが明るく笑う。 今日は彼女にアンカーの町を案内する事になっていた。 「んぉ? どうしたんスかセンセー。女の子なんか連れちゃってまあ」 その途中、我々に声をかけてくるものがいた。 藍色の陣羽織を纏った独特のヘアスタイルの男。 2年前から委託されてこの町の警備や犯罪捜査その他いわゆる警察のような仕事を受け持っている傭兵隊「うぐいす隊」の隊士葛城陣八であった。 藍色の陣羽織はうぐいす隊のユニフォームだ。 私は彼女を助手だと紹介した。 「エリスリーデル・シャルンホルストです。以後宜しくお見知り置きを」 丁寧に挨拶したエリスが頭を下げる。 「うぐいす隊の葛城陣八だ。・・・・・しかしまぁセンセーのやってる事は結構歳に似合わずハードだぜ?お嬢ちゃんみてーな子供に助手が務まるかねえ?」 ピキーン。私はエリスのこめかみがヒクついたのをはっきりと見た。 いかんぞ「子供」はエリスには禁句なのだ! 「私はこれでも二十歳です!! レディに対して失礼じゃないんですかそんなハゲだかマゲだかわかんない頭して!!!」 「んなッ!? てめえこの漢のヘアスタイルをハゲだかマゲだかわかんねえだと!? 大体がそうやって言われてすぐムキんなるところがガキんちょの証拠だろうがッッ!!!」  これには流石にエリスも「うぐっ」と詰まった。 「・・・・だろう? 大体実年齢何歳言ってたってなぁそんなペッタンコの胸して・・・・」 「ふんぬーーーーーッッッッ!!!!!」 ボゴァッッ!!!!!!! おお、ジンパチが飛んだ。 真正面から顔面に正拳を受けたジンパチは石畳の上に落ちて2,3度バウンドした。 しばらくしてゆっくりと立ち上がる。 「き、効かねぇなぁぞんな”ガキんちょのパンヂな”んでなぁ」 ・・・・・凄い鼻血だ。まるで滝のようだ。 「だがそこまで言うならテメェが本当にガキじゃねえか試してやるぜ! 俺の勝負受けるか!? 負けたら土下座して自分は子供でしたと認めてもらうぜ!!」 「面白い!! シャルンホルストの名にかけて挑まれた勝負からは逃げはしないッッ! 私が勝てば貴方が土下座して非礼を詫びてもらうわ!!」 私はそんな2人のやり取りを尻目に通りがかった他の知人と談笑していた。 最近厄介ごとに巻き込まれるのに慣れてしまってこの程度の事では何も思わなくなってしまったのだ・・・・。 「ここだ。ここが俺達の勝負の舞台よ」 ジンパチが我々を連れてきたのは、アンカー唯一のラーメン屋「ラーメンいぶき」であった。 安価で味も良く量も多めなので私もよく来る店だ。 「ラーメン屋? ジンパチ貴方は一体何を・・・」 「まーあれを見な!」 ジンパチが壁のチラシを指す。そこには真っ赤な「ヘル・レッド・ラーメン」の文字と共に黒い髑髏の絵が描いてあった。 「この店自慢の超・極・激辛ラーメンよ。こいつぁ辛いものが苦手なお子様に食いきれるもんじゃねぇ。こいつをどっちが先に完食するかで勝負といこうじゃねえか!!」 ぬぅ・・・・ジンパチのカラ党は町では有名だ。何だかんだ言って自分得意の土俵に持ち込むとはきたないさすがジンパチきたない。 「ふっ、つまらない勝負だけど、それで貴方の気が済むのだったら構わないわ」 エリスは余裕の笑みだ。私は知っている。彼女もまたマイタバスコを持ち歩くくらいのカラ党であった。 かくしてヘル・レッド・ラーメンが2杯注文された。 「おいあれを頼んだ奴がいるんだってよ!」 「スゲーっ! どこの命知らずだよ!!」 噂を聞きつけて店の前に人ごみが出来始める。 そんな2人の前にラーメンが運ばれてきた。 !? に、匂いだけで鼻の粘膜をやられそうだ!!なんだあの真っ赤なスープは!! そして勝負は開始された。 「先手必勝!! いくぜあっっ!!」 ズズーっとジンパチがラーメンをすする。 「!??!??!!?!?!?!??!!!??」 なぜかそのままの体勢でこっちを見る。その目は「オイ何だこの劇物!!こんなもん料理として客に出していいと思ってんのか!!!くそ!吐き出したら負けちまう!!でも飲み込めもしねえ!!!」と私に語っていた。 口と丼を麺で繋げたまま丼を持ってジンパチが立ち上がる。そしてそのまま表をウロウロしている。もう座ってもいられなくなったらしい。 そこへ・・・・・。 「お前は一体警邏中に何をしているん・・・・・だ!」 片手でジンパチの後頭部を、もう片方の手で丼を掴んだ誰かは、そのままジンパチの顔面をじゃぼっと丼に沈めた。 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”A”A”A”A”A”A” 目”がぁ!!目”がぁぁぁぁぁ!!!!」 こんな苦悶に満ちた絶叫、産まれて初めて聞いたぞ。 そんな冷酷な仕打ちを平然とやってのけたのは、ジンパチと同じ藍色の陣羽織を纏った若い眼鏡の女性。うぐいす隊の鬼の副長、南雲響である。 そんな一部始終を余裕で眺めていたエリスは 「勝負ありね。まあ完食が条件ですからきっちりトドメをさしてあげるわ!」 そう言ってラーメンを口に含んだ。 「☆%#$!!??!☆★■&*‘@!?」 エリスが舌を出したまま走り回っている。もう口に舌を戻せなくなったらしい。 「・・・・おっおじひゃま・・・・これ・・・ひゃらい・・・・」 涙目である。 ふう、とため息をついてヒビキが店内に入ってきた。 「二人とも仕方がありませんね。食べられない物を注文するものではありません」 そう言ってエリスのラーメンと箸を手に取ると「いただきます」と言って一気に麺をすする。 観客からおおっというどよめきが起こった。 ずーっとスープまで残らず飲んで空になった丼をテーブルにゴトリと置く。 「ご馳走様でした。それでは」 そう言ってヒビキはまだ表でのた打ち回っているジンパチのわき腹に蹴りを入れ、引きずって去っていった。 帰り道、エリスはまだ舌を出したままうーうー唸っている。 勝負はドローだがお互いが負った傷は深かった。 これを機会に二人とも少しはラブアンドピースについて学んで欲しいものだ。 「・・・おじひゃま・・・わたひ、いつかもっひょひゃんとひたおとにゃのおんにゃににゃるひゃら・・・ひょれまでまっへへね・・・」 何言ってるかわからんけど話を合わせておこう。 私はエリスの頭を優しく撫でてうなずいた。 ~探検家ウィリアム・バーンハルトの手記より~ [[第7話 紅い記憶>第7話 紅い記憶-3]]← →[[第9話 舞い戻ってきた男]]
エリスは私の定宿の私の隣の部屋を借りた。実際のところ、彼女は実に優秀な助手であった。 頭の回転は速く、身の回りの事は一通り完璧にこなせた。 「ママがね、家事もできずにおじさまの所に行ったらご迷惑でしょうって。ママに教わって一生懸命頑張ったんだから」 エリスが明るく笑う。 今日は彼女にアンカーの町を案内する事になっていた。 「んぉ? どうしたんスかセンセー。女の子なんか連れちゃってまあ」 その途中、我々に声をかけてくるものがいた。 藍色の陣羽織を纏った独特のヘアスタイルの男。 &blankimg(第8話-1.jpg,width=160,height=218) 2年前から委託されてこの町の警備や犯罪捜査その他いわゆる警察のような仕事を受け持っている傭兵隊「うぐいす隊」の隊士葛城陣八であった。 藍色の陣羽織はうぐいす隊のユニフォームだ。 私は彼女を助手だと紹介した。 「エリスリーデル・シャルンホルストです。以後宜しくお見知り置きを」 丁寧に挨拶したエリスが頭を下げる。 「うぐいす隊の葛城陣八だ。・・・・・しかしまぁセンセーのやってる事は結構歳に似合わずハードだぜ?お嬢ちゃんみてーな子供に助手が務まるかねえ?」 ピキーン。私はエリスのこめかみがヒクついたのをはっきりと見た。 いかんぞ「子供」はエリスには禁句なのだ! 「私はこれでも二十歳です!! レディに対して失礼じゃないんですかそんなハゲだかマゲだかわかんない頭して!!!」 「んなッ!? てめえこの漢のヘアスタイルをハゲだかマゲだかわかんねえだと!? 大体がそうやって言われてすぐムキんなるところがガキんちょの証拠だろうがッッ!!!」  これには流石にエリスも「うぐっ」と詰まった。 「・・・・だろう? 大体実年齢何歳言ってたってなぁそんなペッタンコの胸して・・・・」 「ふんぬーーーーーッッッッ!!!!!」 ボゴァッッ!!!!!!! おお、ジンパチが飛んだ。 真正面から顔面に正拳を受けたジンパチは石畳の上に落ちて2,3度バウンドした。 しばらくしてゆっくりと立ち上がる。 「き、効かねぇなぁぞんな”ガキんちょのパンヂな”んでなぁ」 ・・・・・凄い鼻血だ。まるで滝のようだ。 「だがそこまで言うならテメェが本当にガキじゃねえか試してやるぜ! 俺の勝負受けるか!? 負けたら土下座して自分は子供でしたと認めてもらうぜ!!」 「面白い!! シャルンホルストの名にかけて挑まれた勝負からは逃げはしないッッ! 私が勝てば貴方が土下座して非礼を詫びてもらうわ!!」 私はそんな2人のやり取りを尻目に通りがかった他の知人と談笑していた。 最近厄介ごとに巻き込まれるのに慣れてしまってこの程度の事では何も思わなくなってしまったのだ・・・・。 「ここだ。ここが俺達の勝負の舞台よ」 ジンパチが我々を連れてきたのは、アンカー唯一のラーメン屋「ラーメンいぶき」であった。 安価で味も良く量も多めなので私もよく来る店だ。 「ラーメン屋? ジンパチ貴方は一体何を・・・」 「まーあれを見な!」 ジンパチが壁のチラシを指す。そこには真っ赤な「ヘル・レッド・ラーメン」の文字と共に黒い髑髏の絵が描いてあった。 「この店自慢の超・極・激辛ラーメンよ。こいつぁ辛いものが苦手なお子様に食いきれるもんじゃねぇ。こいつをどっちが先に完食するかで勝負といこうじゃねえか!!」 ぬぅ・・・・ジンパチのカラ党は町では有名だ。何だかんだ言って自分得意の土俵に持ち込むとはきたないさすがジンパチきたない。 「ふっ、つまらない勝負だけど、それで貴方の気が済むのだったら構わないわ」 エリスは余裕の笑みだ。私は知っている。彼女もまたマイタバスコを持ち歩くくらいのカラ党であった。 かくしてヘル・レッド・ラーメンが2杯注文された。 「おいあれを頼んだ奴がいるんだってよ!」 「スゲーっ! どこの命知らずだよ!!」 噂を聞きつけて店の前に人ごみが出来始める。 そんな2人の前にラーメンが運ばれてきた。 !? に、匂いだけで鼻の粘膜をやられそうだ!!なんだあの真っ赤なスープは!! そして勝負は開始された。 「先手必勝!! いくぜあっっ!!」 ズズーっとジンパチがラーメンをすする。 「!??!??!!?!?!?!??!!!??」 なぜかそのままの体勢でこっちを見る。その目は「オイ何だこの劇物!!こんなもん料理として客に出していいと思ってんのか!!!くそ!吐き出したら負けちまう!!でも飲み込めもしねえ!!!」と私に語っていた。 口と丼を麺で繋げたまま丼を持ってジンパチが立ち上がる。そしてそのまま表をウロウロしている。もう座ってもいられなくなったらしい。 そこへ・・・・・。 &blankimg(第8話-2.jpg,width=160,height=241) 「お前は一体警邏中に何をしているん・・・・・だ!」 片手でジンパチの後頭部を、もう片方の手で丼を掴んだ誰かは、そのままジンパチの顔面をじゃぼっと丼に沈めた。 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”A”A”A”A”A”A” 目”がぁ!!目”がぁぁぁぁぁ!!!!」 こんな苦悶に満ちた絶叫、産まれて初めて聞いたぞ。 そんな冷酷な仕打ちを平然とやってのけたのは、ジンパチと同じ藍色の陣羽織を纏った若い眼鏡の女性。うぐいす隊の鬼の副長、南雲響である。 そんな一部始終を余裕で眺めていたエリスは 「勝負ありね。まあ完食が条件ですからきっちりトドメをさしてあげるわ!」 そう言ってラーメンを口に含んだ。 「☆%#$!!??!☆★■&*‘@!?」 エリスが舌を出したまま走り回っている。もう口に舌を戻せなくなったらしい。 「・・・・おっおじひゃま・・・・これ・・・ひゃらい・・・・」 涙目である。 ふう、とため息をついてヒビキが店内に入ってきた。 「二人とも仕方がありませんね。食べられない物を注文するものではありません」 そう言ってエリスのラーメンと箸を手に取ると「いただきます」と言って一気に麺をすする。 観客からおおっというどよめきが起こった。 ずーっとスープまで残らず飲んで空になった丼をテーブルにゴトリと置く。 「ご馳走様でした。それでは」 そう言ってヒビキはまだ表でのた打ち回っているジンパチのわき腹に蹴りを入れ、引きずって去っていった。 帰り道、エリスはまだ舌を出したままうーうー唸っている。 勝負はドローだがお互いが負った傷は深かった。 これを機会に二人とも少しはラブアンドピースについて学んで欲しいものだ。 「・・・おじひゃま・・・わたひ、いつかもっひょひゃんとひたおとにゃのおんにゃににゃるひゃら・・・ひょれまでまっへへね・・・」 何言ってるかわからんけど話を合わせておこう。 私はエリスの頭を優しく撫でてうなずいた。 ~探検家ウィリアム・バーンハルトの手記より~ [[第7話 紅い記憶>第7話 紅い記憶-3]]← →[[第9話 舞い戻ってきた男]]

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: