第26話 Friendship-5

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『クハハハハ!!! 消し飛べ!!!雑魚どもが!!!!』 外部スピーカーから聞こえてくるシュヴァイツァーの叫びと共に、『アマテラス』より数発のミサイルが射出された。 ミサイルは灰煙を吹きながら正確にジャスミン目指して飛んでくる。 そのジャスミンの背でスッとパルテリースが立ち上がった。 「『風の盾』」 両手を前に翳して彼女が呟く。 すると旋風がジャスミンを包み込み、ミサイルの起動をその両脇へと逸らした。 飛び去ったミサイルが背後で大爆発する。 ・・・危ない所だ・・・あんなものの直撃を受けたら一体どうなるか・・・。 「・・・や~ぃデカブツ!! 当たらんぞう!!!」 ジュウベイと伯爵はアマテラスに向けて舌を出したり尻を叩いたりしていた。 やめなさい君達大人気ない。 『小癪な・・・ではこれはどうだ?』 ・・・!!! シュヴァイツァーの声に全員が緊張する。 アマテラスの見た目は変わらない。しかしあの兵器が何がしかの戦闘態勢をとった事は雰囲気が伝えていた。 ・・・・・・・・・・。 ・・・何も来ない・・・? そう思った瞬間、私は全身に衝撃を受け視界が激しくぶれた。 ジャスミンも悲鳴を上げて空中でその巨体を大きくグラつかせた。 我々は皆振り落とされないように必死にジャスミンにしがみ付く。 「・・・う・・・おじ・・・さ・・・ま・・・」 片手でジャスミンにしがみ付き、もう片方の手で抱き留めているエリスが呻いた。 彼女の端正な顔に頭から一筋血が滴る。 奴は衝撃波を放ったのだ・・・! く・・・まずいぞ今のを連打されたら・・・!! 「・・・行って下さい!」 ペガサスに跨ったマチルダが我々を振り返った。 その隣にはルクも浮遊している。 「皆さんは空では不利です・・・ここは我々が。行って下さい、ウィリアム」 ルクが私を見て言う。 ・・・ダメだ、危ない・・・。そう、言いたかった。 だがもう今はそんな時ではない。ここは戦場の真っ只中であり、戦争はもう始まっているのだから。 すまない・・・2人とも頼む。 血を吐くような思いでその一言を口にする。 ルクがそんな私を見て優しく微笑んだ。 「心配はいりません。私たちは必ずウィリアムの所へ戻ります。これから先もずっと」 「・・・よし、ジャスミン降下して!!」 悠陽が告げるとジャスミンが真下へ下り始める。 するとパルテリースがマチルダのペガサスにヒョイと飛び乗った。 「パルテ・・・」 「私のアントワネットちゃんは飛ぶのが苦手なので、団長宜しくお願いします。あれの上まででいいですから。後は自分でどうにかします」 パルテリースがアマテラスを見て言った。 降下していくジャスミンをアマテラスは追撃しなかった。 その事実はアマテラスの追撃からジャスミンを防衛せんと決死の覚悟で両者の間で停止しているマチルダ達を少なからず拍子抜けさせた。 「・・・黙って行かせていいんですか?」 マチルダが尋ねる。 ・・・返事を期待しての問いではなかったが、シュヴァイツァーはその問いに返答した。 『その必要は無い。・・・下りた連中に対しては俺はただ哀れだと、そう思うだけだ』 シュヴァイツァーの言葉にルク達が訝しげに眉を顰める。 『下で奴らは知るだろう・・・この世の絶対の真理と真の絶望をな。その点、この空で死ねるお前たちは幸せだ』 アマテラスのボディに無数に砲身が現れる。 『この世で最も恐ろしい事は何だと思う? ・・・それは自分の全てが無意味だったと思い知らされる事だ。無意味だったのだよ。今日までのお前たちの戦いも流した血も全てな。その残酷な事実を、自らが楯突いたあの御方の万能の力を見れば嫌でも思い知る事になる』 その言葉に激しいショックを受けたマチルダが反射的に下を見た。 財団大幹部であるこの男がここまで謙る「あの御方」とは1人しかいない。 ・・・いるのだ。この下に。 財団総帥ギャラガー・C・ロードリアスが。 『さて、ではお前たちも散るがいい!!!!』 叫び声に砲門から轟く発射音が重なり大空に響き渡った。 降下した我々を待ち構えていたのは財団の精兵達であった。 忽ち周囲は乱戦になる。 良く訓練された手錬の兵達ではあったものの、我々も一騎当千の戦士ばかりだ。 財団の兵たちは徐々に無力化され、やがて完全に沈黙した。 しかし、問題はここからだ・・・。 私は水晶洞窟の入り口を見る。 ここからゲートへは、『裏側』へ侵入しなくてはならない。 しかし裏側へ行くには、件のカシム博士の弁を借りれば「異邦人の血をある程度以上の濃さで引いている者」でなくてはならないのだ。 私やDDの様に現時点で入れる事が確定している面子を除いて果たして何人が奥へ向かえるか・・・。 しかし財団の連中も軒並み適合者だと言うのだろうか? 「心配はいらないわ・・・見て」 悠陽が我々を振り返って言う。 ・・・!!! 洞窟を埋める水晶の向こう側に石造りの遺跡の壁面が見えていた。 以前は水晶に透けて見えていたのは只の岩壁だったはずだ。 「カシム博士が内側からあちら側への進入条件を解除したのですね」 ジュピターが言うと悠陽が肯く。 「財団も全員が適合者ってワケには行かないでしょうしねー」 なるほど・・・。 ともあれこれで全員で追跡が可能になったわけか・・・。 我々は遺跡部へ侵入を開始する。 全員で石造りの回廊を走り抜けて深部を目指す。 そんな中で、先頭を走る悠陽が首をかしげていた。 「・・・おかしいなぁ・・・」 どうした? 「いやーね、ちょっと・・・連中の進行速度がこっちの読みより随分速いような・・・」 悠陽は難しい顔をしている。 間も無く最深部だ・・・。 あのDDが封縛されていた広間。 ・・・そして、私が1度命を落とした場所。 「まっさかねー。もっかい来る事になるとはねー」 並走するDDも苦笑していた。 確かあの広間の奥にゲートがあるんだったな・・・。 以前そこをくぐった(と聞かされている)時は私は死んでいたので記憶には無いが。 我々は広間へ突入した。 ・・・何もかもがあの時のままだ。 砕け散った水晶牢の欠片も、流れた私の血の跡も・・・。 まるで時間が止まっているかの様にそのままだった。 だが、今は感傷に浸っている時間は無い。 一気に奥のゲートへ我々が駆け抜けようとしたその時、 『・・・ハーイはいはいはいそこまでー。止まりなさーい、ストーップ』 広間に響き渡った聞き覚えのある声が私達を制止した。 声のした方を見る。 !! 柳生霧呼!!! まずキリコの姿が目に入った。しかし先程の声は彼女のものではなかった。 3人いる・・・。 キリコと、見たことの無い白衣の痩せた背の高い男と・・・そしてその2人に挟まれるようにして・・・中央に・・・。 ・・・エトワール・・・。 私はその娘の名を呟いていた。 聞き覚えがあったのは当然だ。先程の声はエトワールの声だった。 ・・・エトワール! 君がどうしてここに・・・。 1歩前へと踏み出した私の肩を後ろからラゴールが掴んだ。 「彼女がここにいるのは当たり前の事だ、ウィリアム。・・・あれは財団5大幹部の1人、財務部のトップにして総帥ギャラガーの姪、エトワール・D・ロードリアスだ」 ラゴールの言葉はナイフの様に私の肺腑を抉った。 ・・・そうか・・・。 幽霊屋敷の一件を思い出す。 思えば彼女の血族の話や強大な魔力等、それを連想させる事実は多々あった。 しかし私は心のどこかでその事を結びつけて考える事を避けていたのかもしれない・・・。 「・・・やほー、せーんせ」 そんな私の内心を知る由も無いエトワールは無邪気に私に向かって笑顔で手を振っている。 「柳生霧呼の説明はいるまい。もう1人の男は財団研究開発部門のトップ、ネイロス・ミュンヒハウゼンだ」 ラゴールが言葉を続ける。 財団の5大幹部がこの場に3人か・・・。 「足止めにしちゃ豪華な顔ぶれね。けどちょっと人数足りてないんじゃない?」 悠陽が肩をすくめて言う。 ・・・確かに、我々は途中にマチルダとルクとパルテリースを置いて来ているとはいえまだ30人近い大所帯だ。 「さって~。それはどうかなぁ?」 ニヤリと笑ったエトワールの手の上には透明の箱の様なものがくるくると回っていた。 ・・・いや、あれは物質に見えるが魔力の結晶だ・・・。 「そぉれ!!!」 突然エトワールがそのキューブを我々の頭上へポイと無造作に放った。 途端にキューブは一気に巨大化し、我々の大部分をその内側へと取り込んだ。 「『ジャックインザボックス』・・・オープン!」 パン!とエトワールが手を打ち鳴らす。 その瞬間、キューブは内側に取り込んだ仲間達もろともに跡形も無く消失した。 ・・・!!!!!!! ・・・エリス!!! DD!!!! 仲間達の名を叫ぶ。・・・しかし私のその声は広間に虚しく木霊するのみだ。 「どう?センセ、驚いた? 今のがうちの『ジャックインザボックス』 予め定めた数箇所にシャッフルしてランダムに取り込んだ物を転移させる魔法の箱。どこへ誰が飛ばされるのかはうちにもわかりませーん」 ・・・皆をバラバラにどこかに飛ばしたのか・・・。 「エトワール・・・彼以外にも何人か取りこぼしてる」 キリコが腕を組んだままで周囲を見回して言う。 「えー。そりゃしょうがないってば、あんだけいたんだから。・・・うち的には天河悠陽飛ばしただけでも拍手喝采もんだと思うんですが!!」 ぶーっ、とエトワールが口を尖らせた。 ふう、とキリコが息を吐く。 「まあいいわ。どっちにしろ彼は私が相手を・・・」 ジャッ!!!!!! と背後からの鋭い突きを振り向かずにキリコが上体を横にスライドさせてかわす。 銀光を放つ剣先がキリコの髪の毛を数本散らしていった。 「・・・してあげるつもりだったしね!!!」 振り向き様にキリコが背後にいる突きを放った相手・・・エルンスト・ラゴールに左手の拳を溜めた魔力ごと叩き付ける。 爆音が轟き、磨き上げられた石造りの床が砕けて破片が舞った。 「貴方がこんなにあっさり私達を裏切る事だけは、想像していなかった」 形の良い顎に右手の人差し指と親指を添えてキリコが苦笑する。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ラゴールは無言だ。 「あの確執があるから、と油断していたわ。・・・あの話にはもうケリをつけたの?」 「お前には関係の無い事だ」 ラゴールが無感情に言い放つ。 「ふぅん・・・無かった事にして付き合いを続けてるわけね。大人ね」 ふふっとキリコは笑ったが、その声には嘲りの響きがあった。 ・・・そうだ。我々はその話に触れずに今日ここまできた。 あの若き日の事、私と奴とユカリのいた日の事。 そしてユカリは命を落とし、我々は2人とも生きている・・・。 「いつか・・・その事に俺もウィリアムも向き合わねばならない日が来る。その日まで俺は奴に代わって奴の敵を斬り続ける」 ラゴールが刀を構える。その刀身が鈍い輝きを放つ。 「いつか・・・? そんな日は来ないわ。だって・・・」 キリコが冷たく微笑んだ。 「・・・貴方はここで死ぬんですもの」 エトワールが私へ向かって歩いてくる。 「さて、じゃーセンセはうちと遊ぼーね。時間までじっとしてくれてたら別に戦わなくてもいいんだけど・・・2人でお話でもして待ってない? もうノーミソとろけちゃうくらいの甘ーいトークでもいいよ・・・ってゆかむしろそれ全力でかむひあ」 ・・・エトワール・・・。 私は首を横に振って、手にしたルドラを構える。 皆を探しに行かないといけないのだ・・・エトワール。 だができるなら戦いたくない。剣を引いてくれないか・・・? 「そっか」 エトワールは微笑んだ。 そして手にした刀を構える。 「・・・こっちはこっちで嫌いじゃないんだ。むしろお話するより相手の事がよくわかる気がするし・・・って・・・」 慌ててバッとエトワールが身をかわした。 一瞬前まで彼女の立っていた位置に何かが激しく回転しながら轟音を立てて落下し、床を大きく抉った。 「・・・ドラブレレーザー!!!!!!!!」 そのクレーター状に抉られた床から叫び声がする。 ・・・と、同時にじょばーと穴から液体が噴き出してきてじゃぼじゃぼと周囲に降り注いだ。 液体が触れた石床がジュウジュウと音を立てて溶けていく。 怖!!!! ・・・ドレブレレーザー怖!!!!!! てゆかレーザーじゃないそれ!!!!!! 「・・・チッ・・・やっぱし来やがったなヘンタイ・・・」 冷や汗を手の甲で拭いつつ、エトワールがクレーターの底へ刀を向けた。 「御主とも因縁よなエトワール・D・ロードリアスよ」 穴から這い上がってきたELHがドラゴンブレイドを構えた。 「ええもう、素直に最悪です」 エトワールはとっても素の顔で言った。 「奇妙な術で我らの仲間をかどわかすとは・・・許さんぞ、エトワール!!」 ELHがエトワールへ向けて右手をバッと突き出した。 「!!! ・・・何だッッ!!?」 エトワールが身構える。しかし異変は彼女の足元に起きていた。 いつの間にか巨大な褌がエトワールの足元に広がっていた。 その褌が突如持ち上がり彼女をすっぽりと包み込む。 「うわっ!! なんだ!!・・・わぷっ!!!」 褌の中でエトワールがもがく。 「お前も同じ思いを味わうがいい!! 我が『フンドシ転移ワープ移送』でな!!」 ・・・なんてくどい程に言葉かぶってる名前だ。 むんっ!とELHが気合を込めると褌がぱさりと開いた。 中には誰もいない。・・・エトワールはどこかへ飛ばされたのか。 そのエトワールが広間の入り口から戻ってくる。 「・・・すぐそこに飛んだんだけど・・・」 うむ、とELHが肯いた。 「半径35m以内にしか飛ばせん」 ・・・近。 [[第26話 4>第26話 Friendship-4]]← →[[第26話 6>第26話 Friendship-6]]

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