第25話 終わらせる者、繋ぐ者-1

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ソル重工アンカー工場、技術研究棟地下。 そこは広い空間だった。 薄暗いその部屋には、様々な実験器具や装置が並んでいた。 シリンダー状の水槽に入れられた数々の生物が不気味に暗がりに浮かび上がっている。 人に似て人ではないもの、獣のようでもあり昆虫のようでもあるもの、魚にも鳥にも見えるもの・・・全て誰も見た事の無いような生き物ばかりである。 そしてこの部屋・・・ラボの主は今1つのシリンダーの前に立っていた。 骸骨の様に痩せた背の高い白衣姿の男である。 彼の名はネイロス。通称は「教授」(プロフェッサー) ロードリアス財団技術開発局局長・・・財団研究開発部の統括者。5人の大幹部の1人であった。 ラボの自動ドアがシューっという音を立てて開き、誰かが入ってきた。 ハイヒールが床を叩くコツコツという音がネイロスの背に近づいて来る。 「・・・教授、いる?」 「ここだ」 低い声で短くそう言うとネイロスが振り返った。 落ち窪んだ眼窩の奥の鋭い瞳が近づいて来る霧呼の姿を捉える。 「ツカサの様子はどう?」 いつもの微笑みを浮かべて問う霧呼に、ネイロスが無言で眼前のシリンダーを見上げた。 ボコっと断続的に泡を出している液体の中に白い裸身が浮かび上がっている。 『ハイドラ』の1人、ツカサ・ファルケンリンク。 「どこにも変調は無い。・・・まあ、先日の一件は小競り合い程度だったらしいがな」 そうね、と霧呼が頷く。 「交戦と呼べるほど本格的なものではなかったわね。この子に活躍してもらうのはもう数日先の事になるわ」 「・・・件の娘は・・・」 霧呼の言葉が終わる前にネイロスが言葉を発する。 「もう島へ来ているのだったな」 「ええ、今はウィリアム・バーンハルト氏の所よ」 別段気を悪くした風も無く、平然と答える霧呼。 そうか・・・とネイロスはツカサへ視線を戻した。 「楽しみだな、ツカサ。もうすぐに会えるぞ・・・お前の、『異母姉』に・・・クックックック・・・」 薄暗いラボの中に、ネイロスの笑い声は不気味に反響して消えていった。 オフィスビル2階のの資料室に、今朝から私とジュピターの2人は篭り切りであった。 先日、ジュデッカが命懸けでソル重厚アンカー工場の敷地内から持ち帰ったメモリークリスタルの解析をベルに頼んでいたのだが、今日そのデータを手渡されたのだ。 どうやらそのメモリークリスタルに保存されていたデータは「始まりの船」のものらしい。 「・・・これはまた、随分と巨大な船ですね」 ジュピターがデータを見て言う。 私もまったく同意見であった。 データを一通り見てまず驚愕したのはその船の規模だ。 「始まりの船」は円盤状の形状をしていた。 内部空間の広大さはこの世界の大国の首都クラスであり、実際にアンカーの町クラスの居住ブロックが内部四方の4箇所に存在している。 これはもう船というよりも巨大な空を飛ぶ巨大都市だ。 太古の昔に、始まりの船で空の彼方より飛来した人々の事を仮に「異邦人」と呼称する。 異邦人達は有史以前の昔に始まりの船でこのシードラゴン島へと降り立った。 そしてやむを得ぬ理由でか、それとも自ら望んでか再び空へと帰らずこの世界で生きていく事にしたらしい。 内部居住区の広さを見るに、恐らく何十万人という異邦人がいたと思われる。 彼らは皆、この地より世界中へと散っていったのだ。 「壮大な話ですねぇ・・・」 まったくだ、とジュピターと顔を見合わせる。 続いてのデータは・・・何々? 生体コード? 識別システム? 何だか急に複雑になった。意味がよくわからん。 「こっちのデータには注釈が付いていますよ。財団の研究者の物らしいです」 そういえばアタッシュケースの中にはメモリークリスタルの他に資料があったという話だったな。 ジュピターから数枚の紙を受け取る。 ・・・・・・・・・・・・・・。 目を通す。署名は財団研究開発部次元技術研究室室長カシム・ファルージャか・・・。 何々・・・? 異邦人達は超文明による優れた科学技術を有していたが、中でも特に目を見張るものは生物の「個」、或いは「カテゴライズされた生命体」の識別システムである、と。 要約すると、異邦人達は機械システムによって個人個人を識別する事ができたらしい。 このシステムは異邦人達がこの島に作った数々の遺跡にも利用されている。 転移装置に関係した数々の遺跡である。 始まりの船ならびに、遺跡の利用は「異邦人」及び「一定以上の濃度でその血を継承している者」に限られる・・・。 ・・・ふと、そこまで読んでいて気が付いた事がある。 初めてDDと出会った水晶洞窟の「裏側」の事だ。 あそこは間違いなく異邦人達の作った遺跡だろう。内部に転移装置があった。 私とDDはあそこへ立ち入る事が出来た。しかしエリスとカルタスは駄目だった。 「という事は先生とDDは『異邦人』の血を引いているという事ですね」 ジュピターに言われて驚愕する。・・・という事は私やDD、後先日の幽霊屋敷の一件から察するにエトワールやクラウス伯爵は異邦人の血が混じっているのか・・・。 まあ今更そう知った所で何がどうという話でもないが。 むしろ遺跡や船に立ち入る事ができる幸運を喜ぶべきであろう。 オフィスへ戻るとラゴールが私の席へ来る。 「ウィリアム、これを」 そう言ってラゴールは私の机に封筒をポンと投げ出した。 ・・・? 何だこれは? 開けて中を見てみると、チケットが出てくる。 「アンカーマジカルランド特待入場券」か。遊園地? そう言えば先日アンカーにそんな遊戯施設が完成したと新聞にあったな。 元々が観光地のアンカーの事、オープン直後という事もありかなりの盛況ぶりという話だが・・・。 しかし何でこんな物を急に? 「今日仕事で行った家が報酬と合わせて出してくれた。折角なので受け取ってきた。・・・ウィリアム、明日娘達を連れて行って来い」 ・・・そうは言ってもシフトに入っている者もいるだろう。 「それは残った者たちでフォローする」 ジュピターがやおら勢い良く席から立ち上がった。 「やった!遊園地ですね!! ・・・早速今から着て行く服を選んで・・・」 「お前は留守番だ」 パリーン!!とジュピターのメガネのレンズが粉々に砕け散った。 伯爵は口笛を吹きながら鏡の前で蝶ネクタイの位置を直している。 「よろしい。では我輩が明日は諸君らを紳士的にエスコートしようではないか」 「お前も留守番だ」 伯爵の蝶ネクタイとヒゲと眉毛がポロポロと外れて床に落ちた。 ジュピターと伯爵をばっさり斬ってラゴールが皆の顔を見回す。 「チケットは7枚しかない。ウィリアムと娘たちで行って貰う。異存のある者は申し出ろ」 「あ、あの~」 ジュウベイが恐る恐る手を上げる。 「何だミヤモト」 「異存を申し出るとどうなっちゃうのかなー、なんてハッハッハ・・・」 決まっているだろう、とラゴールがメガネの位置を直した。 その奥で鋭い瞳が冷たい輝きを放つ。 「血を見せる」 「非道ぅい!!!!!」 昼下がりのオフィスにジュウベイの絶叫とシイタケマンの放つブーイングの声が響き渡った。 ボコドカバキゴキメキ!!!! ・・・と思ったら静かになった。 アンカー市場は今日も盛況である。 様々な出店が軒を連ね、店主達が声を張り上げて客を呼び込んでいる。 そんな喧騒の中を買い物を終えたクリストファー・緑が抜けていく。 様々な食材を買い込み、それらは全て今の彼の滞在先、ソル重工の敷地内の宿舎へと配達させる手配をした。 宿舎への帰り道にリューがアンカー港湾公園を通る。 港湾公園は丘の上にある。港の方角からだと幅の広い長い石段を登らなくてはならなかった。 夕焼けの照らす石段を一段一段しっかりとした足取りでリューが登っていく。 そして半分ほど登った所で、リューは足を止め上を見上げた。 ・・・石段の頂上で夕焼けを背負い誰かが自分を待っている。 「待っていたわ。クリストファー・緑!!」 それは勇吹だった。 風が吹き、彼女の長いお下げがなびく。 「来ると思っていた」 表情を変えないまま静かに言うリュー。 「良い返事を持ってきた・・・訳ではなさそうだな」 「話が早いわね、リュー」 勇吹が構えを取る。 そしてリューを見る。 自分にはリューの考えている事がなんとなくわかる。 だからきっと・・・リューも自分の考えている事がわかるのだろう。 「俺とお前は言葉を交わし、丼も交わした。・・・だが、確かにまだ1つ交わしていないものがあったな」 ・・・それは「拳」・・・ ボキボキと指の骨を鳴らしてリューも構えを取った。 「・・・自らの力量で屠り捕獲できぬ食材は取り扱ってはならんと、わが師の言葉だ」 「奇遇ね! 私の師匠も同じこと言ってたわ!!」 勇吹が叫ぶ。 リューから感じる闘気は圧倒的だった。気を抜けば実際に拳を交える前に膝を屈してしまいそうになる。 勇吹はそれだけで、目の前の男と自分の戦闘能力の差は料理の腕以上に開いている事を感じ取っていた。 ・・・互いにあるのは料理だけに打ち込んできて、ラーメンを作る為に磨き上げてきた「武」 共に半生を厨房で過ごした似た者同士の2人が今、同時に相手に向け地を蹴った。 [[第24話 遥かに遠き森の落日>]]← →[[第25話 2>第25話 終わらせる者、繋ぐ者-2]]
ソル重工アンカー工場、技術研究棟地下。 そこは広い空間だった。 薄暗いその部屋には、様々な実験器具や装置が並んでいた。 シリンダー状の水槽に入れられた数々の生物が不気味に暗がりに浮かび上がっている。 人に似て人ではないもの、獣のようでもあり昆虫のようでもあるもの、魚にも鳥にも見えるもの・・・全て誰も見た事の無いような生き物ばかりである。 そしてこの部屋・・・ラボの主は今1つのシリンダーの前に立っていた。 骸骨の様に痩せた背の高い白衣姿の男である。 彼の名はネイロス。通称は「教授」(プロフェッサー) ロードリアス財団技術開発局局長・・・財団研究開発部の統括者。5人の大幹部の1人であった。 ラボの自動ドアがシューっという音を立てて開き、誰かが入ってきた。 ハイヒールが床を叩くコツコツという音がネイロスの背に近づいて来る。 「・・・教授、いる?」 「ここだ」 低い声で短くそう言うとネイロスが振り返った。 落ち窪んだ眼窩の奥の鋭い瞳が近づいて来る霧呼の姿を捉える。 「ツカサの様子はどう?」 いつもの微笑みを浮かべて問う霧呼に、ネイロスが無言で眼前のシリンダーを見上げた。 ボコっと断続的に泡を出している液体の中に白い裸身が浮かび上がっている。 『ハイドラ』の1人、ツカサ・ファルケンリンク。 「どこにも変調は無い。・・・まあ、先日の一件は小競り合い程度だったらしいがな」 そうね、と霧呼が頷く。 「交戦と呼べるほど本格的なものではなかったわね。この子に活躍してもらうのはもう数日先の事になるわ」 「・・・件の娘は・・・」 霧呼の言葉が終わる前にネイロスが言葉を発する。 「もう島へ来ているのだったな」 「ええ、今はウィリアム・バーンハルト氏の所よ」 別段気を悪くした風も無く、平然と答える霧呼。 そうか・・・とネイロスはツカサへ視線を戻した。 「楽しみだな、ツカサ。もうすぐに会えるぞ・・・お前の、『異母姉』に・・・クックックック・・・」 薄暗いラボの中に、ネイロスの笑い声は不気味に反響して消えていった。 オフィスビル2階のの資料室に、今朝から私とジュピターの2人は篭り切りであった。 先日、ジュデッカが命懸けでソル重厚アンカー工場の敷地内から持ち帰ったメモリークリスタルの解析をベルに頼んでいたのだが、今日そのデータを手渡されたのだ。 どうやらそのメモリークリスタルに保存されていたデータは「始まりの船」のものらしい。 「・・・これはまた、随分と巨大な船ですね」 ジュピターがデータを見て言う。 私もまったく同意見であった。 データを一通り見てまず驚愕したのはその船の規模だ。 「始まりの船」は円盤状の形状をしていた。 内部空間の広大さはこの世界の大国の首都クラスであり、実際にアンカーの町クラスの居住ブロックが内部四方の4箇所に存在している。 これはもう船というよりも巨大な空を飛ぶ巨大都市だ。 太古の昔に、始まりの船で空の彼方より飛来した人々の事を仮に「異邦人」と呼称する。 異邦人達は有史以前の昔に始まりの船でこのシードラゴン島へと降り立った。 そしてやむを得ぬ理由でか、それとも自ら望んでか再び空へと帰らずこの世界で生きていく事にしたらしい。 内部居住区の広さを見るに、恐らく何十万人という異邦人がいたと思われる。 彼らは皆、この地より世界中へと散っていったのだ。 「壮大な話ですねぇ・・・」 まったくだ、とジュピターと顔を見合わせる。 続いてのデータは・・・何々? 生体コード? 識別システム? 何だか急に複雑になった。意味がよくわからん。 「こっちのデータには注釈が付いていますよ。財団の研究者の物らしいです」 そういえばアタッシュケースの中にはメモリークリスタルの他に資料があったという話だったな。 ジュピターから数枚の紙を受け取る。 ・・・・・・・・・・・・・・。 目を通す。署名は財団研究開発部次元技術研究室室長カシム・ファルージャか・・・。 何々・・・? 異邦人達は超文明による優れた科学技術を有していたが、中でも特に目を見張るものは生物の「個」、或いは「カテゴライズされた生命体」の識別システムである、と。 要約すると、異邦人達は機械システムによって個人個人を識別する事ができたらしい。 このシステムは異邦人達がこの島に作った数々の遺跡にも利用されている。 転移装置に関係した数々の遺跡である。 始まりの船ならびに、遺跡の利用は「異邦人」及び「一定以上の濃度でその血を継承している者」に限られる・・・。 ・・・ふと、そこまで読んでいて気が付いた事がある。 初めてDDと出会った水晶洞窟の「裏側」の事だ。 あそこは間違いなく異邦人達の作った遺跡だろう。内部に転移装置があった。 私とDDはあそこへ立ち入る事が出来た。しかしエリスとカルタスは駄目だった。 「という事は先生とDDは『異邦人』の血を引いているという事ですね」 ジュピターに言われて驚愕する。・・・という事は私やDD、後先日の幽霊屋敷の一件から察するにエトワールやクラウス伯爵は異邦人の血が混じっているのか・・・。 まあ今更そう知った所で何がどうという話でもないが。 むしろ遺跡や船に立ち入る事ができる幸運を喜ぶべきであろう。 オフィスへ戻るとラゴールが私の席へ来る。 「ウィリアム、これを」 そう言ってラゴールは私の机に封筒をポンと投げ出した。 ・・・? 何だこれは? 開けて中を見てみると、チケットが出てくる。 「アンカーマジカルランド特待入場券」か。遊園地? そう言えば先日アンカーにそんな遊戯施設が完成したと新聞にあったな。 元々が観光地のアンカーの事、オープン直後という事もありかなりの盛況ぶりという話だが・・・。 しかし何でこんな物を急に? 「今日仕事で行った家が報酬と合わせて出してくれた。折角なので受け取ってきた。・・・ウィリアム、明日娘達を連れて行って来い」 ・・・そうは言ってもシフトに入っている者もいるだろう。 「それは残った者たちでフォローする」 ジュピターがやおら勢い良く席から立ち上がった。 「やった!遊園地ですね!! ・・・早速今から着て行く服を選んで・・・」 「お前は留守番だ」 パリーン!!とジュピターのメガネのレンズが粉々に砕け散った。 伯爵は口笛を吹きながら鏡の前で蝶ネクタイの位置を直している。 「よろしい。では我輩が明日は諸君らを紳士的にエスコートしようではないか」 「お前も留守番だ」 伯爵の蝶ネクタイとヒゲと眉毛がポロポロと外れて床に落ちた。 ジュピターと伯爵をばっさり斬ってラゴールが皆の顔を見回す。 「チケットは7枚しかない。ウィリアムと娘たちで行って貰う。異存のある者は申し出ろ」 「あ、あの~」 ジュウベイが恐る恐る手を上げる。 「何だミヤモト」 「異存を申し出るとどうなっちゃうのかなー、なんてハッハッハ・・・」 決まっているだろう、とラゴールがメガネの位置を直した。 その奥で鋭い瞳が冷たい輝きを放つ。 「血を見せる」 「非道ぅい!!!!!」 昼下がりのオフィスにジュウベイの絶叫とシイタケマンの放つブーイングの声が響き渡った。 ボコドカバキゴキメキ!!!! ・・・と思ったら静かになった。 アンカー市場は今日も盛況である。 様々な出店が軒を連ね、店主達が声を張り上げて客を呼び込んでいる。 そんな喧騒の中を買い物を終えたクリストファー・緑が抜けていく。 様々な食材を買い込み、それらは全て今の彼の滞在先、ソル重工の敷地内の宿舎へと配達させる手配をした。 宿舎への帰り道にリューがアンカー港湾公園を通る。 港湾公園は丘の上にある。港の方角からだと幅の広い長い石段を登らなくてはならなかった。 夕焼けの照らす石段を一段一段しっかりとした足取りでリューが登っていく。 そして半分ほど登った所で、リューは足を止め上を見上げた。 ・・・石段の頂上で夕焼けを背負い誰かが自分を待っている。 「待っていたわ。クリストファー・緑!!」 それは勇吹だった。 風が吹き、彼女の長いお下げがなびく。 「来ると思っていた」 表情を変えないまま静かに言うリュー。 「良い返事を持ってきた・・・訳ではなさそうだな」 「話が早いわね、リュー」 勇吹が構えを取る。 そしてリューを見る。 自分にはリューの考えている事がなんとなくわかる。 だからきっと・・・リューも自分の考えている事がわかるのだろう。 「俺とお前は言葉を交わし、丼も交わした。・・・だが、確かにまだ1つ交わしていないものがあったな」 ・・・それは「拳」・・・ ボキボキと指の骨を鳴らしてリューも構えを取った。 「・・・自らの力量で屠り捕獲できぬ食材は取り扱ってはならんと、わが師の言葉だ」 「奇遇ね! 私の師匠も同じこと言ってたわ!!」 勇吹が叫ぶ。 リューから感じる闘気は圧倒的だった。気を抜けば実際に拳を交える前に膝を屈してしまいそうになる。 勇吹はそれだけで、目の前の男と自分の戦闘能力の差は料理の腕以上に開いている事を感じ取っていた。 ・・・互いにあるのは料理だけに打ち込んできて、ラーメンを作る為に磨き上げてきた「武」 共に半生を厨房で過ごした似た者同士の2人が今、同時に相手に向け地を蹴った。 [[第24話 遥かに遠き森の落日>第24話 遥かに遠き森の落日-5]]← →[[第25話 2>第25話 終わらせる者、繋ぐ者-2]]

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