第20話 Chaser of Ocean-5

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モーターボートを降りたシュヴァイツァーがザッザッと砂を鳴らして歩いてくる。 「無駄な時間を使わせてくれる。この俺の機嫌の悪い時にな・・・」 そしてシュヴァイツァーはジーンを見た。 「その小娘を始末しろ。残りの2人は俺が排除する」 「了解致しました、シュヴァイツァー様」 ジャキン、と鋼鉄の爪を鳴らしてジーンがセシルへ向けて構えを取った。 「ふぅん・・・」 とサムトーが腕を組んだ。 「お言葉ですけどねミスター。アンタ確か資料じゃほとんど戦えないってあったけど?」 かつて協会でサムトーが目を通したリヒャルト・シュヴァイツァーのデータは戦闘能力は一般兵と同等ランクだとあった。 「確かにな。俺の力はそのあたりの兵どもと大差ない。『三聖』のお前相手じゃ5秒と保たないだろうな、サムトー・ユング」 そしてサムトーを見るシュヴァイツァーは冷たく笑う。 「・・・しかしそれは『生身での』話だ!!」 「・・・・・っ!!」 足元からの殺気を感じてサムトーとパルテリースが跳んだ。 バシュッ!!と音を立てて二人の足元の砂地から無数の太い鋼鉄のワイヤーが飛び出してくる。 ワイヤーは全て先端が銛状に鋭く尖っており、バリバリと青白く輝く電撃を帯びている。 「・・・ったくぅ! あっぶないわねぇ!!」 サムトーは悪態をつきながら、パルテリースは無言でやや後方へと着地する。 その間に、海中から巨大な影が水面に浮かび上がっていた。 「やっぱ出たわね! 魔導機械兵!!」 シュヴァイツァーはその機械兵の背に立っていた。 全体的に獣の様なシルエットを持つ機体だ。二足歩行だが尾があり前傾姿勢である。 背部左右から無数のワイヤーの束が延びている。 「俺の愛機『ティアマト』だ。これでキサマらを捻り潰してやる」 そう言ってシュヴァイツァーがティアマトへ乗り込んだ。 『行くぞ』 外部スピーカーを通してシュヴァイツァーの声がする。 2人は身構えた。 ドオン!!と爆発音に似た轟音を響かせて大量の海水を弾き、ティアマトはその巨体に見合わぬ速度で一気にサムトー達に肉薄した。 「うっそぉ!? 速いじゃないのよ!!!」 突進から繋げて繰り出された豪腕の一撃を回避しつつ、サムトーは悲鳴の混じった叫び声を上げた。 無数の鋭い鋼鉄の爪の舞がセシルへと襲い掛かる。 それをセシルが両手に装甲した「アニムス」で受け流す。 (・・・強い・・・!!) 速度、狙い、威力、そのどれもが常人の域を凌駕している。 数多くの獣人たちの中でも最強の呼び声も高い『虎人』の戦士ジーン。 捌ききれない爪の攻撃が徐々にセシルの身体に傷を増やしていった。 「拍子抜けですね。もう少しやるのかと思っていましたが」 激しい攻撃の最中に、冷めた声でジーンが言う。 「契約武装もそれでは宝の持ち腐れでしょう」 ガキィン!!と交差した両手で爪の一撃を受け止めた次の瞬間、腹部に強い衝撃を受けて悲鳴を上げてセシルは後方へ吹き飛んだ。 両手を上げてガードした為に無防備になった腹部に蹴りを受けたのだ。 「・・・く・・・うっ・・・」 苦悶の声を漏らしつつ、必死に体勢を立て直す。 「アニムス・・・」 自らのガントレットを見るセシル。 白銀の手甲は先程までの猛攻を受けて傷だらけだった。 (・・・ごめんねアニムス。私、ずっと貴方に甘え続けてきたね・・・) うつむいたセシルの手の中で、ガントレットは白い光に変わって霧散していった。 「・・・武装を解いた? 観念しましたか」 契約武装を『離界』させて消したセシルを訝しげに見るジーン。 しかしセシルの目は輝きを失っていない。 再度自分へと両手の装甲の無い身で構えを取る。 「いずれにせよ手は抜きません。次で終わりにします」 ザン!!と砂を蹴ってジーンがセシルに襲い掛かった。 (装甲があるから甘える!! 生身であの爪を見切る!!!) かわし切れないのはもうしょうがない。向こうの鋭さがこちらの反応に勝っているのだから。 必殺の右の爪が来る。セシルが自身の右手をそこへ合わせる。 ・・・向こうが速い。 爪がセシルの腕を切り裂いていく。 傷口から赤い血が飛沫く。 セシルはそこで怯えて下がらなかった。前へと更に踏み出す。 傷は肉を浅く薙いでいく。筋にも骨にも届いていない。 そしてセシルはジーンの手首に内側から手の甲を当て、攻撃を外へと弾き、遂に彼女の懐へと到達した。 「・・・・しまっ・・・!!!」 虎人であるジーンが皮肉にも、この時自身が虎の巣へと踏み込んでいた事に気付く。 その胸部の中心にセシルの拳が炸裂した。 「・・・・・・がアッッ!!!!!」 血を吐いてジーンが大きく吹き飛ばされ、砂浜に叩きつけられた。 「・・・っ・・・不覚! ですがこれで終わりではありませんよ・・・!」 立ち上がって体勢を立て直すジーン。 その彼女へセシルも油断せず構えを取り直した。 その間にも財団の兵隊たちとオルブライトとその部下は戦闘を続けていた。 「・・・ちぃっ!!! 胸毛ニードル!!!  ・・・胸毛ニードル!!!!」 オルブライトも必殺の胸毛ニードルで何人もの兵隊を倒していた。 しかし数が違いすぎる。 「・・・胸毛ニー・・・何ッッ!!?」 異変を感じて慌てて自分の胸元を確認するオルブライト。 あれだけ剛毛だった胸毛は産毛一本なくなってしまっていた。 「・・・しゃ・・・社長・・・ツルツルです・・・!!」 脇で戦っていた部下が愕然とする。 「ハッ!! 手が尽きたか!! 観念するんだなッッ!!!」 そこへ新たな財団兵達が殺到してきた。 その兵達をオルブライトがギラリと睨み付ける。 「・・・・ナメるなよ若造ども」 バッと顔の前、で両手を×の字に交差するオルブライト。 「眉毛ニードル!!!!!!!」 鋼鉄の硬度を持つ針に変じた眉毛を受けた兵達が悲鳴を上げて倒れていく。 しかし眉毛はすぐ無くなってしまう。 「ヒゲニードル!!!! ・・・頭髪ニードル!!!!!」 そして遂にオルブライトの頭部はまったくの無毛状態になった。 「しゃ、社長!!! もうだめです!! 宇宙人みたいです!! 誰だかわかりません!!!」 スキンヘッドの上に眉毛までないのだ。人相が変わってしまっている。 「・・・くっ! まだだッッ!!」 襲い来る兵の1人をオルブライトが掴む。 そしてその頭をヘッドロックに決めて小脇へと抱え込み、かぶっているヘルメットを力任せに剥ぎ取った。 「・・・他人の毛髪ニードル!!!!!!」 ズババババ!!!!!と小脇に抱えた兵の頭から毛をニードルにして撃ち出しながらオルブライトが必死に叫ぶ。 「こっちの心配はするなーッッ!! そっちは任せたぞぉーっ!!!! ・・・・って・・・・え?」 気が付けば向こうの戦いは完全に止まってしまっていた。 セシルも、その相手をしているジーンも・・・サムトーとパルテリースも、その眼前にティアマトのコクピットにいるシュヴァイツァーも皆呆然とオルブライトを見ている。 『・・・へっ・・・』 ティアマトの外部スピーカーからシュヴァイツァーの声がした。 『HENTAIかキサマぁ!!!!!』 そこへ・・・。 唐突に浜辺に到着したものがいた。 いや、漂着と言うべきだろうか・・・ボロボロの筏が流れ着いて来たのだ。 その上では何やら大男が組んだ両手を枕にガーガーと鼾をかいて寝こけている。 「・・・ン?」 浜へ着いて筏がガクンと揺れた衝撃で男が目を覚ました。 「・・・おーぅ・・・何処ぞへ着いたか。カッカッ・・・いや寝ておる内に櫂が流された時はさてどうしたものかと思ったものだが・・・」 むっくりと身を起こした男が木下駄を履いて砂浜へと下りた。 着物に袴姿の男だ。 そして男は自分を見つめるサムトーと視線を交差させた。 「・・・!!!! 御主は!!!!!」 「遂に来たわね・・・・」 サムトーが男を鋭く見つめて呟く。 「『ハイドラ』・・・リチャード・ギュリオン」 ----
モーターボートを降りたシュヴァイツァーがザッザッと砂を鳴らして歩いてくる。 「無駄な時間を使わせてくれる。この俺の機嫌の悪い時にな・・・」 そしてシュヴァイツァーはジーンを見た。 「その小娘を始末しろ。残りの2人は俺が排除する」 「了解致しました、シュヴァイツァー様」 ジャキン、と鋼鉄の爪を鳴らしてジーンがセシルへ向けて構えを取った。 「ふぅん・・・」 とサムトーが腕を組んだ。 「お言葉ですけどねミスター。アンタ確か資料じゃほとんど戦えないってあったけど?」 かつて協会でサムトーが目を通したリヒャルト・シュヴァイツァーのデータは戦闘能力は一般兵と同等ランクだとあった。 「確かにな。俺の力はそのあたりの兵どもと大差ない。『三聖』のお前相手じゃ5秒と保たないだろうな、サムトー・ユング」 そしてサムトーを見るシュヴァイツァーは冷たく笑う。 「・・・しかしそれは『生身での』話だ!!」 「・・・・・っ!!」 足元からの殺気を感じてサムトーとパルテリースが跳んだ。 バシュッ!!と音を立てて二人の足元の砂地から無数の太い鋼鉄のワイヤーが飛び出してくる。 ワイヤーは全て先端が銛状に鋭く尖っており、バリバリと青白く輝く電撃を帯びている。 「・・・ったくぅ! あっぶないわねぇ!!」 サムトーは悪態をつきながら、パルテリースは無言でやや後方へと着地する。 その間に、海中から巨大な影が水面に浮かび上がっていた。 「やっぱ出たわね! 魔導機械兵!!」 シュヴァイツァーはその機械兵の背に立っていた。 全体的に獣の様なシルエットを持つ機体だ。二足歩行だが尾があり前傾姿勢である。 背部左右から無数のワイヤーの束が延びている。 「俺の愛機『ティアマト』だ。これでキサマらを捻り潰してやる」 そう言ってシュヴァイツァーがティアマトへ乗り込んだ。 『行くぞ』 外部スピーカーを通してシュヴァイツァーの声がする。 2人は身構えた。 ドオン!!と爆発音に似た轟音を響かせて大量の海水を弾き、ティアマトはその巨体に見合わぬ速度で一気にサムトー達に肉薄した。 「うっそぉ!? 速いじゃないのよ!!!」 突進から繋げて繰り出された豪腕の一撃を回避しつつ、サムトーは悲鳴の混じった叫び声を上げた。 無数の鋭い鋼鉄の爪の舞がセシルへと襲い掛かる。 それをセシルが両手に装甲した「アニムス」で受け流す。 (・・・強い・・・!!) 速度、狙い、威力、そのどれもが常人の域を凌駕している。 数多くの獣人たちの中でも最強の呼び声も高い『虎人』の戦士ジーン。 捌ききれない爪の攻撃が徐々にセシルの身体に傷を増やしていった。 「拍子抜けですね。もう少しやるのかと思っていましたが」 激しい攻撃の最中に、冷めた声でジーンが言う。 「契約武装もそれでは宝の持ち腐れでしょう」 ガキィン!!と交差した両手で爪の一撃を受け止めた次の瞬間、腹部に強い衝撃を受けて悲鳴を上げてセシルは後方へ吹き飛んだ。 両手を上げてガードした為に無防備になった腹部に蹴りを受けたのだ。 「・・・く・・・うっ・・・」 苦悶の声を漏らしつつ、必死に体勢を立て直す。 「アニムス・・・」 自らのガントレットを見るセシル。 白銀の手甲は先程までの猛攻を受けて傷だらけだった。 (・・・ごめんねアニムス。私、ずっと貴方に甘え続けてきたね・・・) うつむいたセシルの手の中で、ガントレットは白い光に変わって霧散していった。 「・・・武装を解いた? 観念しましたか」 契約武装を『離界』させて消したセシルを訝しげに見るジーン。 しかしセシルの目は輝きを失っていない。 再度自分へと両手の装甲の無い身で構えを取る。 「いずれにせよ手は抜きません。次で終わりにします」 ザン!!と砂を蹴ってジーンがセシルに襲い掛かった。 (装甲があるから甘える!! 生身であの爪を見切る!!!) かわし切れないのはもうしょうがない。向こうの鋭さがこちらの反応に勝っているのだから。 必殺の右の爪が来る。セシルが自身の右手をそこへ合わせる。 ・・・向こうが速い。 爪がセシルの腕を切り裂いていく。 傷口から赤い血が飛沫く。 セシルはそこで怯えて下がらなかった。前へと更に踏み出す。 傷は肉を浅く薙いでいく。筋にも骨にも届いていない。 そしてセシルはジーンの手首に内側から手の甲を当て、攻撃を外へと弾き、遂に彼女の懐へと到達した。 「・・・・しまっ・・・!!!」 虎人であるジーンが皮肉にも、この時自身が虎の巣へと踏み込んでいた事に気付く。 その胸部の中心にセシルの拳が炸裂した。 「・・・・・・がアッッ!!!!!」 血を吐いてジーンが大きく吹き飛ばされ、砂浜に叩きつけられた。 「・・・っ・・・不覚! ですがこれで終わりではありませんよ・・・!」 立ち上がって体勢を立て直すジーン。 その彼女へセシルも油断せず構えを取り直した。 その間にも財団の兵隊たちとオルブライトとその部下は戦闘を続けていた。 「・・・ちぃっ!!! 胸毛ニードル!!!  ・・・胸毛ニードル!!!!」 オルブライトも必殺の胸毛ニードルで何人もの兵隊を倒していた。 しかし数が違いすぎる。 「・・・胸毛ニー・・・何ッッ!!?」 異変を感じて慌てて自分の胸元を確認するオルブライト。 あれだけ剛毛だった胸毛は産毛一本なくなってしまっていた。 「・・・しゃ・・・社長・・・ツルツルです・・・!!」 脇で戦っていた部下が愕然とする。 「ハッ!! 手が尽きたか!! 観念するんだなッッ!!!」 そこへ新たな財団兵達が殺到してきた。 その兵達をオルブライトがギラリと睨み付ける。 「・・・・ナメるなよ若造ども」 バッと顔の前、で両手を×の字に交差するオルブライト。 「眉毛ニードル!!!!!!!」 鋼鉄の硬度を持つ針に変じた眉毛を受けた兵達が悲鳴を上げて倒れていく。 しかし眉毛はすぐ無くなってしまう。 「ヒゲニードル!!!! ・・・頭髪ニードル!!!!!」 そして遂にオルブライトの頭部はまったくの無毛状態になった。 「しゃ、社長!!! もうだめです!! 宇宙人みたいです!! 誰だかわかりません!!!」 スキンヘッドの上に眉毛までないのだ。人相が変わってしまっている。 「・・・くっ! まだだッッ!!」 襲い来る兵の1人をオルブライトが掴む。 そしてその頭をヘッドロックに決めて小脇へと抱え込み、かぶっているヘルメットを力任せに剥ぎ取った。 「・・・他人の毛髪ニードル!!!!!!」 ズババババ!!!!!と小脇に抱えた兵の頭から毛をニードルにして撃ち出しながらオルブライトが必死に叫ぶ。 「こっちの心配はするなーッッ!! そっちは任せたぞぉーっ!!!! ・・・・って・・・・え?」 気が付けば向こうの戦いは完全に止まってしまっていた。 セシルも、その相手をしているジーンも・・・サムトーとパルテリースも、その眼前にティアマトのコクピットにいるシュヴァイツァーも皆呆然とオルブライトを見ている。 『・・・へっ・・・』 ティアマトの外部スピーカーからシュヴァイツァーの声がした。 『HENTAIかキサマぁ!!!!!』 そこへ・・・。 唐突に浜辺に到着したものがいた。 いや、漂着と言うべきだろうか・・・ボロボロの筏が流れ着いて来たのだ。 その上では何やら大男が組んだ両手を枕にガーガーと鼾をかいて寝こけている。 「・・・ン?」 浜へ着いて筏がガクンと揺れた衝撃で男が目を覚ました。 「・・・おーぅ・・・何処ぞへ着いたか。カッカッ・・・いや寝ておる内に櫂が流された時はさてどうしたものかと思ったものだが・・・」 むっくりと身を起こした男が木下駄を履いて砂浜へと下りた。 着物に袴姿の男だ。 そして男は自分を見つめるサムトーと視線を交差させた。 「・・・!!!! 御主は!!!!!」 「遂に来たわね・・・・」 サムトーが男を鋭く見つめて呟く。 「『ハイドラ』・・・リチャード・ギュリオン」 [[第20話 4>第20話 Chaser of Ocean-4]]← →[[第20話 6>第20話 Chaser of Ocean-6]] ----

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