第三話


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第三話 アナザープレイス




 俺は今落ちている。もちろん下にだ。
 あぁ……痛そうだな……
 何で落ちているか
 それは30分前のことだ
「はい、しゅうごぉ~」
俺達は放課後に校庭の一角で『戦う』。木刀や素手で、だ。まぁ、いわゆる同好会ってやつだ。それなら剣道部入れとか言うなよ。あれはルールが多いし武器が竹刀に限られてる。こっちは武器もプロテクターも木製で手作りで、怪我は付き物でよりリアルに近い戦いになってる。まあ平和国日本ではそんなの中二病で妄想癖なオタクの集まりなんだけどな。大会も存在するわけないし。
「今日から入会した1年は右から名前と利き手と身長、トレーニングとかしてるか言ってね~」
5月12日。今日は自己紹介と腕試しらしい。規則は殺すな、利き手狙うな、だけだ。本当にちなみにだけど、昨日は俺の誕生日だ。
「172cm、小口紅一、利き手は右です。トレーニングは家で腹筋腕立てやってます」
「162cm、原田利恵、利き手は右です。トレーニングは毎朝3km走ってます」
「ふぅん、かわいいね~。次」
かわいいね~って何?まぁかわいい女の子だけどここで言うか普通?
「166cm亜思勇、右利き、中学生の時は剣道部でした」
「お~、すごいね~、でもここでは剣道部のルールは通用しないよ~? 次」
「166cm、五十嵐勇、利き手は右手、トレーニングは……特にやってないっす」
我ながら恥ずかしい。
「ん、ユウって勇って書くの?」
「はい」
「イサム君は?」
「僕も勇です」
ちなみに俺はユウの方だ。
「ふぅん……ややこしいねぇ」
よりによって元剣道部とか。
「次~」
「工藤昇太181cm、左利き、トレーニングは筋トレぐらいです」
でかいしマッチョさんですね。僕が見劣りしてしまいますよ。
 今回の入会者は11人。かなり多い方だそうだ。
「さあ、僕らと戦ってもらうよぉ~」
どうも間延びした声がマヌケにしか聞こえないな、部長。
「う~ん……じゃあそこの亜想君、僕とね」
「はい……フン」
? 今鼻で笑わなかったか?
「じゃあそっち行こうか」
結構なイケメンさんの髪の短い先輩が話かけてきた。
「あ、はい」
「硬くならないで。緊張すると全力が出せないよ」
「は、はい、分かりました」
緊張するなって言われてリラックスできるほど俺玄人じゃねえよ。
「さあ、どっからでも来て」
……どうすれば? もう先輩が削った予備の木刀を振り上げて走っている。誰が見ても立派な素人さんだ。
 俺は木刀を正面に構えて走った。
「……」
相手はにっ、と笑って構えた。
 絶対止められる……
 ばちん
「分かっててなんで来たんだ?」
木刀特有の音を立てて俺の突きはあっけなく払われた。
「他に戦い方が無いじゃないですか……っ!」
ぐっ、と押し返される。少しよろめくが大したことはない。
「これならっ!」
「あっ……あぶ……」
ない、まで聞こえなかった。俺がフェイクをかけて横へ踏み込んだ場所には地面が無かった。落下は端っこで戦う人の特権だ。
 俺は今落ちている。もちろん下に、だ。
 下は何があるかは知っている。通学路だ。コンクリートの……
 ……水なら痛くないのにな……
 俺は覚悟を決めて来る衝撃に備えた……
 ……
 ……
 ……
 ……?
 コンクリートに頭が当たらない。
 おかしいな、何でだろう。
 落ちているのに……
 目を開けてみ……「コボ……」

ばしゃああああああん!


 えあ!?
「ごぶぅっ」
水中……学校の近くの水といったら反対側、しかも300m離れた池しかないぞ。
 とりあえず俺の水泳技術を総動員して水面へ上がった。
「えぇぇ―――――――――――!?」
そこは森の中、後ろには岩山、左は洞穴のようなものが広がっていた。
「・・・?」
穴の近くに人が二人いる。
「あの……ここ……ぅえあっ!?」
一人は許せる。それでもすごく変だが……
 緑色のマントの下は着易さ使い易さ重視のような地味な服、一言で言うとアニメやゲームっぽい。杖まで持って俺が浮いている池のそばに座っている。顔はこっちを向いてあんぐりと口をあけている。
 もう一人も口あんぐりだけど、両手を口の横、いわゆる『やっほー』の状態にして目だけこっちを見ている。下へ観察するとそいつのおかしさが分かった。
「ちょっと、キミ、何でそんな服着てるの!? 下手すりゃ犯罪よ!?」
スカートで表現すると立っている状態でパンツを拝め、パンチラという未知の領域に踏み込む喜びを奪われ、水着で表現すると半端すぎる露出度で焦れったいビキニ。普通に街を歩くのは絶対に犯罪レベルだ。完璧とも言えるそのスタイルを自慢でもしたいのだろうか。
「え……いきなり池に落ちて何言うかと思ったら……」
「まぁ初めて見るのにはちょっと刺激的かもな……」
腕を組んでうなずく茶色い髪の毛の俺と同い年っぽい男だが、そこは相方のややそいつよりオレンジっぽい茶髪の女の子を見るのは結構なナイスポジションだぞ。あ、見た。
「そっかな~」
「何で折角もらった服着ねえんだよ」
「モンスターが出たら着るよ」
モンスターって……
「モンスター? 平和国日本に、それどころか世界にそんなのいるわけないだろ」
「ニッポン? 何だそれ?」
まさか、日本という地名を知らずに旅行しに来た外国人……いや、髪を染めてるとはいえどう見ても顔は日系だ。
 二人が近づいてきた。
「風邪ひくよ、ほら」
女の子がかがんで手を伸ばす。
「う……」
思春期にはちょっとハイレベルなシチュエーションじゃないか? 引っ張りあげてもらった勢いで倒れこんで女の子の胸に……
 俺何考えてるんだ。俺最低。
「……? 何だよ、慣れの遅い奴だな。ほら、俺ならいいだろ」
「あ、あぁ、ありがとう」
力強く引き上げられて、地面に倒れこむ俺。どのみち立ってから女の子に倒れこむだけの体力はなかったらしい。
「そのままじゃ寒いだろ。火たいてやるからこいつに着替えな」
男の子の方が着ているのと同じ物と下着を投げてよこされた。
「……」
何か足りなくは無いか? 物ではなく……
「どうした?」
ロープ……多分俺の服を干すためだと思うけど……を張りながら男の方が聞いてきた。
「いや、あの……」
「何か足りなかったか?」
「いや、そうじゃなくて……」
「何だよって」
こいつらマジか?マジで……
「ここで着替えろと?」
「じゃあどこで着替えるんだよ」
このタイミングで気付いたが、こいつらの荷物は食料少々と二つの布団しかない。しかもかなり小さく布のようだ。寒い時はくっついて寝るのだろう。
「だってここじゃお前らに見られるって……」
女の子の方もこちらに背を向けて普通に火の番をしている。
「誰が好き好んでお前の裸なんか見るかよ。本当に変な奴だな」
お前らの方が大分変だと思うよ。
「他人の裸は着替えてない方が見ないように気を付けるのも常識だよ?」
振り向きはしないものの火いじりの手を止めて言う女の子。
「ん、俺そこの池で洗い物するから着替えとけよ。あ、ミライナ何か洗うものあるか?」
「ミライナって……」
「あ、私のこと。あっちはヴァイシス。キミは?」
「俺は……五十嵐勇と言いますが?」
「ユウ……変わった名前だね」
日本の名前じゃない……? 日系なのにどう考えてもカタカナネームだ。
「日本語まで話してるのに……?」
「ニホンゴ?」
「言語。知らないのか?」
「そんなの魔力で全部共通語になってて分かんないよ?」
魔力って……何だよ……
「お~い! 無いのか~?」
「あ、待って~、今着替えちゃうから~」
今着てるものを洗えと言ってるようだがどうやって……?洗うには……
「ぐえっ! ちょっと!」
「ん?」
もう留め金に手をかけたところ、荷物からは替えのビキニもどきがのぞいている。
「俺の前で着替えちゃっていいのか!? 恥ずかしくないのか!?」
「だって裸見られても困らないし、他のところ行って敵が出てきて助けてもらえなかったら困るし……」
言ってることは正しいよ? 正しいけど根本的に何かがズレてないか。
「あ~、待って、俺そっち行ってるから!」
俺に堂々と裸を見る根性はない。
「そう?まぁいいけど」
「早くしろよ~」
「あ、は~い!」
俺は手早くその場から離れ、自己最速とも思える速度で着替えた。それにしてもこいつら幼馴染か何かだろうか。
「あぁ、ついでにユウだっけ? お前の服も持ってきてくれよ」
「あいあい」
俺は脱いだ制服を持ってヴァイシスとやらのところに行った。

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