番外編第6話


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

♯6「店(内)駆ける厨人」

赤紫色の背景に白い文字の看板が特徴的なとある有名ショッピングモール、その屋上では、小さい子供達が、今か今かとヒーローショーの開始を心待ちにしていた。 そしてその観客の中には華音や真理亜、そしてシンヤも混じっていた。
さらにその隣りにはシンヤに分からぬよう変装した菜月とクリスティーネの姿もあった。
菜月は体の小ささを活かし、野球チームの帽子を被り、Tシャツに短パンというどこにでもいそうな男子小学生を装っている。
対するクリスは、ツインテールのかつらを被り、ゴスロリ風の衣服を着用してぬいぐるみを抱えているという知り合いに見られたら恐らく人間サイレンになってしまいそうな格好をしている。
なお、彼女のこの装いは真理亜の趣味によるものである。 いくら人形のような美しい顔立ちをしているクリスといえど、実際に人形のように扱われるのはあまりいい気分はしないだろう。
「…末代までの恥だ」


「確か慎は赤いのだったわよね。 …ヘマしなきゃいいんだけど」
そんな事は知らず、真理亜は心配そうな表情を浮かべる。
無論、演じる上での失敗は避けなくてはならないのだが、その中でも「作戦」での失敗は最も避けなくてはならない。 真理亜の左隣でたたでさえ違法な顔をしているシンヤは、行動の上でも十分法に反している。
人々の英知と努力の上に成り立ち、国内の治安を比較的高水準に維持させているこの国の憲法をはじめとした各種法律や条例を遵守する気など毛頭ないであろう彼に作戦が露呈すれば、恐らく再び華音を引き連れどこかに逃亡してしまうだろう。 そうなってしまったら何もかも水の泡となってしまう上に、シンヤの兄であるタクヤや、華音の友人である菜月やクリスティーネ達に顔向けができなくなってしまう。
―――と、そんな事を考えているうち、遂にヒーローショーが開演した。
最初に舞台に現れたのは紫色のヒーローだ。 何かに追われているようであり、その素振りには焦りが見受けられる。
彼は舞台の前、すなわち観客と同じ高さまで降り、華音と変装した菜月およびクリスに話しかける。
「君達もこんな所にいてはいけない! 早くこっちに!」
そう言って紫のヒーローが3人を舞台上まで上げたとき、今度は赤と白のヒーローがそれぞれ現れた。
「…やめるんだ、レッドにホワイト! 襲い来るモロサーワーを倒す事は、確かに正しく、人々に称讃される事かもしれない! だがその行いは、やがて世界のすべてを殺す!」
「何を言って…」
反論しようとしたレッドを、ホワイトが制止する。
「よせ、レッド。 パープルは既に錯乱している」
「ふざけるな!」
数秒間、3人の間では睨みあいが続いた。 それを破ったのはパープルの懇願である。
「…ならせめて、この3人だけでも逃れさせてくれ!」
「彼女達も既にモロサーワーに汚染されている。 その存在に意味はない」
しかし、それすらもホワイトはあっさり切り捨てる。 実際のところ、彼女達を汚染しそうなのはシンヤであるのだが、現実世界と空想の世界を本気でごちゃ混ぜにするのは、ここにいる人間ではシンヤくらいのものである。
「アンタが悪いんだ…アンタが裏切るからァー!」
レッドが怒りのままにパープルに襲いかかる。 轟音と共に舞台装置から煙幕が放出され、その煙が晴れた後にはレッドの姿のみがあった。

舞台裏には、先程レッドによって倒されたはずのパープルこと沙良と、その巻き添えになったはずの華音・菜月・クリスの3人がいた。
「下の駐車場に行けば貴教がいるはずだ。オレンジ色の車なんてそうそうないからすぐ分かるだろう」
「わかりました。ありがとうございます」
クリスが礼を述べ、菜月が華音にカツラを被せた(流石に野外で着替えるわけにはいかなかった)のを確認すると、3人はシンヤに見つからぬようゆっくりと舞台裏から階段まで歩き始めた。
そのまま地上まで降りると、駐車場に一台のオレンジ色の自動車が止まっていた。
「おーい! こっちこっち!」
その自動車の横で貴教が手を振っていた。自動車と同じオレンジ色の頭髪は非常に目立っている。
「予定通りだな。 がしかし、まだ終わってはいない。 お前ら、油断すんなよ?」
『はい』
3人はそろって返事を返した。
全員が車に乗り込むと貴教はエンジンを始動させ、シートベルトをしめる。
「貴教・ヴェステンフルス、行くぜ!」
黄昏の魔弾が、西の大地を駆ける。

同時刻、舞台上ではレッドこと慎と、ホワイトこと関口零らが大暴れしていた。
「倒すけどいいよね? 答えは聞いてない」
「俺は最初からクライマックスだぜェ!」
他にも慎が応援として呼んだブラックこと小野隼人、ブルーもとい関知一(ちいち)が舞台上で敵を次々に打ち倒していった。
「“あくまで”ヒーローですから…セェカンドレイドッ! …消えろ、モロサーワー共!」
「ぶぁく熱、デュエルフィンガーッ!」
そんな姿に子供たちは歓声をあげ、真理亜も「すごいじゃない」と感想を漏らした。
唯一例外があるとすれば、先程からそわそわしているシンヤであろうか。

華音がいつまでたっても帰ってこない。 パープル共々倒されたのだから、そろそろ帰ってきてもいいのではないだろうか。
気を紛らわすためシンヤが頭の中で華音との黒ずんだピンク色の妄想を花咲かせたその時。
妄想によって活性化された彼の脳が恐るべきことに真実へとたどり着いてしまったのである。
(まさかあの時のは…! 雨宮菜月と、クリスティーネ・シュタイナー…!)
すなわち、彼女らと一緒に去って行った少女は―――
(華音!)
シンヤはいつもの100メートル24時間という記録もどこへやらと言わんばかりのスピードで会場から抜け出した。

彼は一つ下の階層で華音を駆け足で探していた。 あちらこちらに視線を向けつつ、その足は赤い人専用機のごとくまったく減速しない。
しかし、彼には一つ見落としていた点があった。
「…ッ!」
目の前に迫るガンプラの箱、それもMGの山。
彼はそこから軌道変更を行う事が出来ず、かろうじてジャンプして回避を試みたものの、そのままガンプラの箱の山の中に突っ込んでしまった。
「くそ、種アンチめ…」
的外れな事を口にしつつ、シンヤは無茶をしたせいで死にかけている体に鞭を打って華音を追おうとする。 すると、
「やめてよね…」
どこからともなく声がかかり、シンヤはその背筋を凍らせた。
「僕のフリーダムをボコボコにしておきながら、そのまま逃げられるわけないだろ」
周りを見回すと、視界の中に一人の青年が目に入った。
こげ茶色の前髪の向こうには、まるで何か汚いものを見るような生気のない瞳が待ち構えている。
身につけているのはこの店の制服、名札には「大和」と名字が書かれていた。 すなわち、彼はここの店員だ。
そしてシンヤは次に下を見る。 彼が突っ込んだのは「MG ストライクフリーダムガンダム エクストラフィニッシュ」の箱だったのだ。
無論ガンプラの箱が高速で突っ込んでくる中学生の体を支えられるはずもなく、
「店の物を破壊しておきながら、弁償もしないなんて、許せないじゃない?
だから貴方を事務所に連れて行かなきゃならないんだ、それをしたのだから!」
シンヤは事務所に連行されてしまった。

そう、彼には反射神経と筋力が足りなかったのだ。


「華音~!」
所変わって、慎の自宅前の道路。 変装を解いた菜月は、周りの目も憚らずに華音に抱きついた。
「犯されたりご主人様呼びを強制されたりしてないよね!?」
「さ、されてないよ…」
菜月のハイテンションさに彼女も若干退き気味である。
「本当!? 良かったぁ~! 華音はずぅっとボクのものなんだから、あんなのに渡すわけにはいかないよ」
少し危ない発言が出たものの、華音はそれを聞き間違いとして受け流す。
だが、それが逆に菜月を増長させてしまうこととなった。
彼女の視線は華音の下半身に移り、そして次の瞬間華音の太ももに抱きついたのである。
相変わらず人目をはばからない、そして予想だにしない行動に、華音は顔を紅潮させる。
「なっ…ちょ、ちょっとなっちゃん、何して…!」
「太ももすりすり、略してFSS」
「そ、そうじゃなくて!」
そんな二人を横目に、クリスは近くの自販機で買ったブラックコーヒーをあおっていた。
実際問題、違法な顔のシンヤが飲んだところでただのやせ我慢か恰好つけにしか見えないが、彼女の場合はそれがさまになるのだから、同い年の人間でもここまで差が出るといういい見本である。
「まったく…」
缶から口を離すと、クリスは言葉と共に溜息をつく。
はるばる四国からここまで来て、よくこんな元気が残っているものだと彼女は感心した。
「んっ? どしたのクリス? 溜息なんかついて…」
華音にFSSしていた菜月がこちらに振り向く。 いやな予感を感じたクリスは、即座に
「いやなんでもない」
と返した。 しかし、菜月の眼は既に彼女の太ももをロックオンしていた。
「華音もいいけど、クリスも捨てがたいかなぁ。 このニーソとスカートの間の絶対領域とか」
「!?」
菜月の思いがけない発言に、クリスは驚愕した。
「今日からきさまはボクのFSS対象になるのだ~」
彼女の足元に、菜月が蛇のごとく迫りくる。
「離せっ! はーなーせぇー!」

むにっ。
クリスの太ももに菜月が触れた瞬間、彼女は気を失った。
どうやら他人にこういう部位を触れられる事に慣れていないらしい。

「待てぇーい!」
不意に男の声が聞こえてきた。
「アカレンジャイ…って、ん?」
その声の主は沙良だった。
「一歩遅かったみたいですね」
飛鳥の的確な突っ込みが彼の心を鋭く突き刺した。



続・超展開。
最初に言っておこう、私は特撮やヒーローショーをまともに見たことがない。
あとキャラの元ネタは、小野隼人:スウェン・カル・バヤン→バヤン→ハヤン→隼人+小野
関知一:ほとんどそのまま
関口零:関+適当な文字+レイ
です。
隼人のセリフの元ネタは黒執事・ハルヒ・スタゲです。
ゴレンジャイのネタが分かる人はいるだろうか…
ちなみに「赤紫色の~」ってのはAEONのつもりです。 広島のイオンの屋上でヒーローショーなんてやるかよとかそういう突っ込みは聞きません。
割り切れよ、でないと…死ぬぞ。
ブラックコーヒーは糸甲に対抗しただけで、特に意味はありません。
糸甲がEXF閣下山脈に特攻→「やめてよね」もやりたかっただけで同様に特に意味はありません。
ではまた次回。

  • the Five Star Stories(フトモモ・スリスリ・シタイ物語)ですね -- 名無しさん (2010-09-21 23:57:08)
  • モロサーワーに吹いたwwwwww なっちゃんやクリス、華音もかわゆすなぁ 今回も乙です -- 名無しさん (2010-09-22 00:10:51)
  • ヒーロショーネタ使ってくれて、ありがとう -- 名無しさん (2010-09-22 00:18:23)
  • その頃モリは、おち〇ぽみるくコーヒーを飲んでいた -- 名無しさん (2010-09-22 04:33:51)
  • 続き乙 まさかの大和が糸屑連行とは…吹いたわwwww -- 名無しさん (2010-09-22 06:16:02)
  • 相変わらずの面白さに脱帽します!絵のお仕事があれば、気軽にお伝えくださいね~ -- Pixivの人 (2010-09-22 16:32:19)
  • 華音と菜月とクリスのイチャイチャしてるイラストを(ry -- 名無しさん (2010-09-22 16:38:05)
  • そういう系統の絵・・・描けるかなぁ・・?目汚れても保障はしませんよ? -- Pixivの人 (2010-09-22 18:29:40)
  • 閣下の山をそんな形で崩すなよラテ屑 -- 羊羹 (2010-09-22 18:36:47)
  • FSS(無理なら変えちゃってください)する菜月と、赤面する華音、呆れ(傍観する場合)or驚き赤面(華音同様菜月に攻撃されてる場合)顔のクリスとか・・・>pixivの人 -- 名無しさん (2010-09-22 19:47:48)
  • 書いてから思った 胸を揉m・・・ゲフンゲフン胸部マッサージもありじゃないかと。 -- 名無しさん (2010-09-22 19:49:27)
  • まあただの戯言なんで無視しちゃってください。 -- 名無しさん (2010-09-22 19:52:42)
  • ・・・頑張ってみるでござるよ。 -- Pixivの人 (2010-09-22 20:11:15)
  • 本当に無視しちゃって構いませんからねー? -- 名無しさん (2010-09-22 20:21:28)
  • さて…私もクリスのサイドストーリーを書かねば -- 名無しさん (2010-09-23 07:46:38)
  • ↑期待 -- 名無しさん (2010-09-23 10:44:23)
  • え?もしかして大和さんとアッー!・・・な展開? -- 名無しさん (2010-09-24 17:37:54)
  • どうでもいいが私の変装した姿を盗撮した奴…素直に名乗り出ろ。 -- クリス (2010-09-24 20:48:23)
  • くしゅん…風邪かなぁ? -- 菜月 (2010-09-24 22:24:48)
  • なぜかその場にいた荒河君です -- 名無しさん (2010-09-25 06:25:08)
  • なんで俺が事務所連合なんだァーー!!俺は神だぞ!ラテールの神なんだぞぉーーーー!!!
    -- hybt (2010-09-25 07:01:26)
  • ↑ストフリ山積み崩しの代償を身体で払って貰うからだろ。牡丹の花がポトリと落ちるイメージ映像で〆。 -- 名無しさん (2010-09-25 13:31:24)
  • 糸屑、明日遂にサツに連行されるのか。胸が熱くなるな。 -- 名無しさん (2010-09-26 22:56:52)
  • 次回サブタイトル『消えたナルキッソス』でお願い ナルキッソス→水仙→スイセン→推薦 -- 名無しさん (2010-09-27 16:55:58)
  • 見苦しいぞ、糸屑 -- 名無しさん (2010-09-28 20:23:49)
名前:
コメント: