神機動戦史ガンダムラテール第9話


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シンヤの中にある最も古い記憶は、自分を見下ろす母親の目である。
それは冷たく、鈍い金属にも似た光を宿していた。

ーそれは、そう…まるで汚い虫を見る様な…

シンヤは今でもそんな目で自分を見る母親の体温も体臭も知らない。
シンヤの耳に入る母親の声は、兄と話している時とは明らかに違う低いトーンである。
不快だが、快適だった思い出がないのだから、母親とはそういうモノなのだと認識するしかなかった。
それでも、それが異常な事だと思った事は無かった。

小学生の頃はそんなシンヤにも一緒に遊んでくれる近所の友人とも言える存在があった。
彼らはシンヤの話す事を全て理解してはいない様だったが、それでも自分の話す事に反応はしてくれた。そしてゲームをしたりゴムボールで他愛ない遊びをしたりはしてくれたのだ。
シンヤは自分の思いを語った。友人達は途中で違う話をし始め、いつしかシンヤの話す言葉は宙に消えてしまう事が多かったのだが、シンヤは友人達の理解力がちょっと足りないのだと考えていた。

ーでも、彼らは自分と遊びたがっているのだし、自分より劣る連中が周りに居る事は自尊心を満足させてくれる…

シンヤはそれなりに充実した小学生時代を過ごした…

中学校に上がると、シンヤの通っていた小学校とは違う学区の小学校に通っていた者達が存在した。
彼ら違う小学校に通っていた者達に、シンヤは自分の能力や見識の高さを理解させるべく積極的に話かけた。
初めのウチは耳を傾けていたのだが、やっぱりシンヤの言葉が宙に消える事が多くなっていき、結局、シンヤが近づくと明らかに避ける様に笑いながら何処かへ行ってしまう様になった。
それでもシンヤには同じ小学校に通っていた友人達の存在があった。
彼らはシンヤの言葉に熱心に耳を傾ける事は無かったが、シンヤがそばに居ても過敏な反応をする事はなかった。
しかし中学校に入って3ヶ月程経つとシンヤの小学校時代からの友人達は、違う小学校から来た者達と打ち解け始め、気が付くと仲良しグループの解体と再編成が進行していた。
シンヤも何処かのグループに属する為に休み時間を有効活用したのだが、その度に違う小学校から来た連中が異口同音に言うのだった。
「アイツ、何かワケ分からない事ばっか言って気持ちわりー」
「何かエラソーに言ってるけど、こっちの言う事聞いてねーよなw」
シンヤは

ーテイノーな連中が俺の言う事を理解出来ないのは仕方ないか…

と一応平静を保っていたのだが、そのうち小学校からの友人達も彼らと一緒になって自分の事をこき下ろし出したのは我慢ならなかった。
「アイツ、前からあんななんだよ…俺らも、別に仲良くしてた訳じゃないし、勝手に寄って来てただけだし」
「アイツの言う事なんて聞いてなかったよなw何か独り言言ってるなって感じでw」
「ゲームで負けるとキレるし、何やっても俺ルール作っちゃうし、嘘ばっか吐くし、親が可哀想だから遊んでやんなって言うから遊んでやっていたけどなあ」
そんな会話の断片が耳に入る度に、シンヤは頭の中が真っ白になって記憶が曖昧になった。
気が付くと体中が震え、ノートや教科書を引き裂いていたり、投げ散らかしたりしていた。
母親があの目つきのままシンヤを心療内科に連れていったのはそれからしばらく経ってからだった。

ー自分は異常じゃない、アイツらが異常なんだ…この母親も、この訳の分からない事言ってる医者も、自分をおかしいと言った先生も、兄貴も、どいつもこいつも異常だっ!

シンヤは四六時中手が震える様になり、貧乏揺すりが止められなくなっていた…

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