「終わり」
先生の声が響く。
シンヤは頭を掻きむしり、問題が悪いと小さな声で呟いた。
周りの生徒が驚き振り返る。
図らずも集めてしまった他者からの視線に恐怖を覚え、シンヤは縮こまってしまう。
10分程はそうしていた気がする。
肩のあたりをシャープペンシルでつつかれ信也は我に返った。
どうやら回答用紙を集めているようだ。
後ろの席のボンクラがこんな難しい問題を解けているわけがない。
シンヤは他人の回答用紙を見て自尊心を取り戻すことにした。
次の瞬間、シンヤは愕然とした。
長年見下してきたボンクラは全ての解答欄に答えを埋めていた。
答えが正しいかはシンヤには分からない。
しかしシンヤが積み上げてきたつもりになっていたものを崩すには十分な衝撃だった。
あわてて手元の回答用紙全てを確かめる。
生徒の能力相応の差は有るもののシンヤの回答用紙とは明らかな違いがあった。
「シンヤ、早くしろ」
再び先生の声が響く。
またも周りの注目を浴びてしまい、シンヤは小さくなりながら回答用紙を前の生徒に手渡した。
回答用紙を集め終わった後は、簡単なHRを行い解散となった。
「今日のテストどうだった?」
周りの生徒は友達同士で雑談を始める。
そんな周囲を尻目にシンヤはその場を立ち去ろうとした。
周りの生徒の会話は続く。
「そういやシンヤ何してたの?」
前の席の生徒がわざと大声で答える。
「あのキチガイのことなんか知るかw。でもアイツ記号問題しか埋めてなかったな」
シンヤは顔を真っ赤にし、爆笑の渦に包まれた教室から逃げるように走り去っていった。
一心不乱に家まで自転車をこぎ、家につくや否やパソコンに電源を入れる。
シンヤは満足そうな顔でブックマークの新シャアをクリックした。
最終更新:2010年09月19日 19:47