機動戦士ガンダム0079 AfterWAR 5話

『メイベル、その機体じゃもう戦闘は無理だ。
 今からすぐに艦砲打撃部隊の所まで後退しろ、方角はわかるな?
 西北西に真っ直ぐ走るんだ、良いな。』

『中尉の機体もそんな状態じゃ無理です!!
 一緒に逃げましょう!!』

半狂乱で叫ぶメイベルにイトウは嗜めるように喋りかける。

『まずは落ち着いて深呼吸しろ。
 お前はただ撤退するんじゃない、艦砲打撃部隊に増援を呼びに行くんだ。
 俺の機体は無事だが無線がオシャカな上にウスノロのガンキャノンだ、脚はお前のジムの方が遥かに早いだろ。』

『でもっ!!』

『な~に俺はのんびり後ろから付いて行くさ。
 それにさっさと帰っておネェちゃんと一緒に酒でも引っ掛けたいんだ、ここで死ぬ気はねぇさ。』

『…了解。』

メイベルのジムコマンドカスタムはゆっくりと西北西へと足を向けた。
後部カメラでイトウのガンキャノンが立ち上がりこちらに付いてくるのを確認してメイベルは機体の速度を上げた。
岩場を利用した砲台跡でガンキャノンが見えなくなり前方に集中した。
そのとき先ほど無力化し倒れたドムのコックピットハッチが爆発ボルトで吹き飛んだのが見えた。
恐る恐るといった感じでサバイバルキットを背負ったパイロットが這い出してきた。
身体つきから女性と分かるパイロットはこちらに気付きキットから慌てて拳銃を抜きこちらに向けた。
だがすぐに拳銃を下ろして、そしてあろうことかヘルメット越しに自分の頭に拳銃を突きつける。

メイベルのMSが駆け寄ろうとした瞬間、レイアが引き金を引こうとした瞬間夜が明けた。
深夜の闇に包まれた周囲が昼間のように明るく照らされる。
融合炉の爆発だと直感したメイベルはジムコマンドカスタムを膝まづかせ右手でレイアを掬い上げながらコックピットハッチを開けた。


「早く入って!!お願い…」

レイアをコックピットに引き摺り込みながら叫ぶが最後は搾り出すのがやっとだった。

もう目の前で人が死ぬのは見たくなかった。
今まで何機も敵MSを撃破してその度に人を殺してきていたというのに。



 自覚がなかった

 MSというロボットを倒しただけ

 そのコックピットに人間が収まっているという現実を見ようとしなかった

 正直に言えばゲーム感覚で戦っていた

 そして今言い訳にもならないそんな理由を並べながら敵パイロットを助けようとしている

 彼女がこのまま拳銃を私に向ければMSを奪われて仲間を、叔父様を、妹を殺してしまうかもしれない







         それでも…




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メイベル機が見えなくなると量産型ガンキャノンのコックピットでイトウは呟いた。

「嗚呼麗しのメイベル嬢よ、どうか振り返らずにお逃げくださいっとな。
 さてお仕事と行きますかね…。」

メイベル機が落としたであろう90mmマシンガンを拾い上げ簡単に点検すると機を反転させた。
先ほど捉えた巨大な移動物体に向かって走り出す。

メイベルのジムコマンドカスタムのレーダーやセンサーはまともに稼動していないのか気が付いていなかったが大きさと熱分布からいけばギャロップかホバーカーゴ程度、ただしどこまで正しいか不明。
このミノフスキー粒子と砂嵐では正常に稼動していても拾えるかどうかという反応だった。
γポイントが壊滅した今比較的近いαポイントと艦砲打撃部隊のレーダー設備が反応を拾ってくれる可能性もあるが高濃度のミノフスキー粒子と砂嵐で期待はできない。
ブラッドハウンドも先程からの戦闘音でまともに音源を拾えないだろう、MSの足音やマゼラアタックのキャタピラ音と比べれば比較的静かなホバー移動だ。
距離も距離だけに余程良い耳のソナー員でも運次第といったところか。

イトウはダメージを負った通信システムの復旧を行いながら各センサーの反応をじっくりと見定める。
約2000m先ギャロップよりも熱量が少なくサイズが少し小さい、そしてその反応の影になっていて気が付かなかったがMS1機の反応もキャッチした。
内部に格納されているようで熱分布から旧ザクと当たりを付ける恐らく最低限の護衛なのだろう。

機体を止めヘッドレスト脇のスコープを引き出しスタビライズド・ギアを接地して精密射撃モードへ移行。
無事な右のキャノン砲を内部の旧ザクに照準、240mmキャノンを直撃させれば格納庫の中だろうと無事では済まない。
砂嵐が吹き荒れるこの悪条件ではFCSの杓子定規な補正ではまず当たらない、今まで61式の砲手として散々砲撃してきた経験がそう告げる。
距離、風速、湿度、気温、敵の移動速度、練度…様々な条件を計算に入れ砲弾の軌道を頭の中でシュミレートして補正する。

いける。

ニュータイプのそれとは違う計算と経験に裏打ちされた予測がそう囁く。
トリガーに掛かった指に力を入れた瞬間、真後ろから強烈な閃光が瞬いた。
驚き思わずコントロールスティックを引いてしまった。



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αポイントでの戦闘は既に下火になっていた。
ジオン残党のMS部隊は撃退したものの被害もそれなりに出ている。
まだ擱座したMSの内部で粘っているジオン残党兵も何人か居るがそれも時間の問題だった。

「こちらホワイトフェザー、ダカール本部応答を願います。」

無線からはザーとノイズが流れるだけである。

「粒子に溺れちまう…」

パイロットが呟いた瞬間、南西の方角から太陽が登った。
真っ白な光が現れ辺りを照らした。
同時に警報が鳴り響く。

『核だ!!コックピットに入れ!!』

外部スピーカーで叫ぶ。
桁外れの光に遅れて数秒後に衝撃波が到達する。
砂が巻き上げられ壁となって迫りあっという間に飲み込まれる。
MSから外に出ていたパイロット達が吹き飛ばされ砂塵の中に掻き消えた。

「βポイントの方角、どっちがやりやがったんだ…」

砂に埋まったパイロット達を掘り起こす準備をしながら無線の全チャンネルをオープンにして情報収集を開始した。

--------

ダカール基地からもこの爆発は観測された。

「ジョシュア准将、スペクトル分析から爆発したのはジオン製の核融合炉と思われるとのことです。」

クライリーからプリントアウトされた分析結果を受け取りジョシュアは深く溜息をついた。
そして両手を揉み解すと指揮所から各部門長に指示を出す。

「基地防衛隊から最低限を除き全ての部隊を各防衛ポイントへ急行させろ。
 先行してヘリでβポイントへミノフスキー粒子散布装置を投下して被曝を防げ、パイロットの防護も忘れるな。
 艦砲打撃部隊の直衛MSも前進させてαポイントとβポイントを抜けた敵MSを挟撃しろ。
 例のダブデも構わんヘビーフォークの砲撃で潰せ。
 捕虜を捕る必要はない皆殺しにするつもりで行け、情けも容赦も一切無用だ。」

ジョシュアは立ち上がり更に続ける。

「諸君、今の命令は全て私、ジョシュア・ホーガン准将の厳命である。
 この度の作戦の一切の責任は私にある、諸君は私の命令に従っただけだ。
 もう一度言う一切の責任は私にある、その上で捕虜の確保は諦めろ。
 現場下士官まで徹底して伝えるように。」

指揮所に詰めていた全員の顔に緊張が走る。
今まで現場の判断で捕虜の確保せずに殺してしまうケースは多々あったが正式な命令というのは異例中の異例だった。

--------

「ティア・アール准尉、今すぐ2番滑走路のミデアをどかせて下さい。
 コア・イージーが出撃できません。」

「ちょっと待って、まだ格納庫が空いてないの!!
 だいたい戦闘機の発着は3番と4番でしょ、なんで2番使うのよ!?」

「3、4滑走路は先刻からの砂嵐で視界が確保出来ないんです。
 1、2滑走路だけまだぎりぎりで発着可能な視界を保っているんですよ。
 指示はジョシュア准将から直接出てますので出来るだけ早くお願いします。」

「あーーーもうっ!!フランッ!!さっき着いたミデアをそのまま6番滑走路に回して。
 生鮮食料品以外はとりあえず積んだままで待機!!」

「協力感謝します。」

軍曹は無線機で管制塔へ準備完了の報告を行ったあと敬礼して走り去った。
返礼したティアの傍らにフランが戻ってきて呟いた。

「何が起きてるんでしょう?」

「少なくとも碌な事じゃないでしょうね。
 そういえばお姉さん前線に出てるんじゃないの?
 大丈夫なの?」

「お姉ちゃんはあの天下のゼファー小隊ですよ~。
 大丈夫に決まってます。」

「そうね…あの<ホワイト・ライトニング>が率いる部隊だものね。」

この子は本当に信じているんだ。
しかしこの戦闘が始まってから頭のてっぺんから爪先まで冷水を掛けられたような悪寒が暴れ回る、この不快感が何かを暗示しているようで怖かった。
昔からそうだった、友達がエレカに跳ねられた時も祖母が亡くなった時もコロニー落としがあった時もこの悪寒が止まらなかった。

「よし、私達は出来ることをしましょう。
 まずはD-5倉庫に隙間を作るわよ。」

「りょうかいで~す。」

私は思ったことを口にした。
自分に言い聞かせるために…

--------

運が良かった、と言うべきか。
砂丘越えを諦めて迂回していたその時、圧倒的な閃光と衝撃波に襲われたのだ。
砂の壁によって守られた、下手に砂丘を乗り越えようと砂丘の上部に居たならば衝撃波で吹き飛ばされて機体は甚大な損傷を負っていただろう。

「どっちがやったんだ…」

ガラッツはくらくらする頭を振りながら独りごちる。
閃光と衝撃波が同時にやって来たということは近い距離、おまけに先程から放射線の警報が鳴りっ放しだ。
テナーがやったのかそれともやられたのか、どちらにしても生きてはいないだろう。
機体のダメージをチェックし砂から這い出させながら冷静に考える。
自分でも嫌になる冷静さだった。

今の爆発のお陰かミノフスキー粒子は拡散したらしくレーダーシステムそのものは正常になっていた。
しかし巻き上げられた砂と融合炉から解放されたプラズマの影響でレーダーには砂嵐が走るだけであった、念の為に周囲の目を配りながら砂丘の影から出るとやはり砂塵が舞い視界は10m程度しかない。
フラッシュライトを点灯してカメラの補正を更に上げて周囲を捜索する。
すぐに爆心地は見つかった。
高温で砂がガラス化してキラキラとライトの光が反射してくる。
そしてその中でジムコマンドライトの残骸を発見した。
ほとんど原型をとどめていない黒い塊であったが近くに落ちていた左腕がジムコマンドライトであった事を物語っている。
コックピット周辺も熱でグズグズに溶けていた、中に居たであろうテナーはもう…
ガラッツは少しだけ眼を閉じたがすぐにMSを走らせた。
ここにある残骸はMS2機分がいいところだ、爆散したMSの残骸はドム系特有の曲面を持った装甲板だ。
まだNT-1改は生きている、どころか近くに居る…

自分でも分からない何かが囁く敵はすぐそこに居る、と。

ジムカスタムは弾かれるように左に飛んだ。
同時に弾丸が着弾して砂を巻き上げる。

NT-1改がジオン製の90mmマシンガンを油断無く構え更に発砲。
シールドで90mm弾を受け止めつつこちらも銃口をNT-1改に向ける。
約70mの距離でお互いを真正面に捉えた状態で睨み合い膠着した。

時間にして10秒睨み合っただけだというのに1時間以上こうしていたように感じる。
パイロットスーツの中が汗だくになって気持ちが悪い、まだそんな事が分かるぐらいには余裕があるらしい。

ジリジリと向かい合ったMSの脚を動かしてゆく。
そしてNT-1改とジムカスタムが向かい合ったまま跳ねるように駆け出し銃撃戦を開始する。
セミオートで3連射ずつ撃ち出しされる弾丸がNT-1改に襲いかかるがお互いに走りながらの射撃でギリギリのところで外れていく。
こちらも同様だ、僅かに逸れた弾の風切音を聴覚センサーが拾いコックピットに響き渡らせる。
それでもトリガーを引き絞り銃撃戦を展開しながら左手でバックパックからビームサーベルを引き抜く。
ルナチタニウム、しかもガンダム用の最高ランクのルナチタニウム合金相手にヒートソードでは分が悪い。
一足飛びでNT-1改に急接近してビームサーベルを振るうが向こうも息を合わせたようにビームサーベル引き抜き受け止めた。
そのままお互いにビームサーベルでの斬り合いが始まる、一息で一撃、一撃が二撃、二撃が三撃、加速する斬撃の応酬。
全身の細胞が酸素をもっとよこせと呼吸と心臓の鼓動を加速させ大量の血液を送り出し続ける。
同時にMSも繰り出す斬撃が反応速度の限界へ到達し各部のフィールドモーターが悲鳴を上げ始める。
NT-1改を相手にする事が求められたジムカスタムは最初からリミッターを施されていない、警告表示されるだけで本当の機械的な限界まで突き進む。
壊れるまで戦い続ける事を求められ自らの力で自らを滅ぼす機械として致命的なエラーを抱えこんだ欠陥MS。
だがそうでもしなければならないほどジムタイプとガンダムタイプの性能の壁は厚いのだ。

NT-1改がひらりとビームサーベルを躱し後ろに飛び下がり銃撃を加えてくる。
シールドで防ぐが既に何発もの弾丸を受け止めたシールドが砕け左腕に弾丸が食い込みビームサーベルへのエネルギー供給が絶たれた。
可動そのものは失われていないが正副共にエネルギー供給システム応答なし、回復の見込みも無く火災予防も含めてエネルギー遮断。
反撃にこちらも90mm弾をばら撒くがもう残弾が無い、10発ほど残したマガジンを自動排除して走りながら腰にマウントした新しいマガジンに交換するのと同時にもう1つの新しいマガジンを活性化させ切り離し足元に落とす。

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この連邦のパイロットは出来る。
今まで戦ってきた連邦軍のパイロットの大半はまるで教科書通りの動きで読みやすく殺してくださいと言わんばかりだ。
と言っても地球で戦ったのは終戦直前からの約1年だけなのだが。

今思い出しても忌々しい、連邦の極秘作戦の動きを掴み強引にビグロを借用して強襲しようとしたが守備部隊の2機のジムに阻まれたのだ。
しかも損傷したビグロを回収したムサイが連邦の追撃に会い撃沈、コムサイで脱出したもののそのまま地球の重力に捕まりなんとか勢力を保つアフリカに降下した。
そのままアフリカで抵抗を続けていた同胞に合流したのだが所謂ベテラン将兵の大半は宇宙へ脱出しており宇宙でのMS運用経験を買われMS部隊の指揮を任された。
ベテランが抜ければ必然、部隊の殆どが若い兵士で一部に至っては軍学校を繰り上げ卒業した少年兵、MSはオデッサ攻防撤退戦と度重なる連邦の追撃で損傷多数。
更に北アフリカ戦線の司令部は合流したときに既に壊滅状態であの腰抜け大佐が指揮を取っていたのだ。
オデッサから敗走した部隊が持ち込んだG3ガスを封印し戦闘も避け連邦に良いように戦線突破を許している。
使い方によっては連邦をアフリカに近づかせず地上の一大拠点とすることも可能だというのに…
本当ならば今回の作戦に使ったG3ガスもスエズからポートサイドに配備していけば大陸経由での侵攻も阻めた。
後は海から上陸しようとする連邦軍を海に叩き落とせばアフリカは安泰だったのだ。
これを敗戦直後に行っておけば良いものを腰抜けドゥラームとその後ろ盾たるビッターがよしとしなかった、奴らはこの戦争に負けることを選んだ。
敗北主義者どもが…さっさと銃殺してしまえばあのような忌々しいダカール基地など造らせもしなかったのだ。



90mm弾がガンダムのギリギリの位置を掠めてゆく。
回避運動を更に大きくして躱しながら牽制射撃を繰り返す。



このガンダムも腐敗しきった連邦の象徴だ。
わざわざこちらに起動試験スケジュールと警備網の穴の情報を寄越した愚か者が居たのだ。
大体の想像は付く、ガンダムを囮にして我々を誘き寄せて潰すことで手柄にでもしようとしたのだろう。
正しく教科書通りのとんだ間抜けだ、誰がそんな罠に真正面から挑む馬鹿が居るものか。
だが少しは感謝し連邦に敬意を払おう、このMSは強力なのだ祖国の作ったMS「ゲルググ」と比べても遜色ない…いや恐らく最新鋭のゲルググイェーガーよりも…
火器やオプションが手に入らなかったのは惜しかったが連邦製MSの火器は全て共有出来るうえに機体の内部パーツまで基本的に共有出来るのだ。
ジオン製MSは整備統合計画後にようやく一定の部品共有が出来るようになったというレベルだった事からも腐っていても連邦の技術力は半端なレベルではない。
まぁジオンの技術陣が理論先行で実践を疎かにしている気来が強いという点も大きいのだが…



相手も回避運動を更に大きく早くしてゆく。
相当息が上がってきた、だがこちらが苦しい時は相手も苦しい。
60mmバルカンに切り替えて牽制しながらマガジンを交換して即座に発砲。



残りマガジンは1本だ、長期戦になるのは願ったりだがこの1機だけに構っている訳にもいかない。
もっと敵を呼び集めなければ。
例え自らの命と引換えにしてでもジオンに勝利をもたらさねばならないのだ…



--------

右に左に跳ね飛び、伏せてやり過ごす。

ガラッツは持てるスキル全てを総動員して回避運動を取り続ける。
鋭い射撃が一瞬足りとも息を抜くことを許さない。
だが負けるわけにはいかない、間隙を縫って反撃の銃弾を撃ち込む。

敵が一瞬でも気を抜けばこちらが喰ってやる、そう思いつつも敵機が早く90mmマシンガンの弾薬を使い切ってくれるように願う。
向こうにはまだ腕部75mmガトリング砲が備わっているからだ。
口径を小さくすることで集弾性の向上と携行弾数の増加を謀ったのだがそれが裏目に出ている可能性が高い、
新型の75mmガトリング砲はジオンのB-3グフが携行していた75mmシールドガトリング砲を参考に設計された。
そして参考にした75mmシールドガトリング砲の弾薬は恐らくそのまま使える、更に悪いことに先日オデッサ基地に放棄されたグフは右腕こそザクF2型のものが使われていたが機体そのものはB-3グフだったのだ。
ジオン残党軍が75mm弾を保有している可能性は非常に高くしかも内蔵火器に関しては機体にマニュアルとドライバがプリインストールされている。
強奪されたときには全ての弾薬とオプションを降ろしていたがビームサーベルすら鹵獲したジムの物をを代用してくるぐらいだ、簡単な整備補給で腕部75mmガトリング砲は使用可能になるだろう。

しかしここはガラッツのトラップがNT-1改を追い詰める。
先程10発残した弾倉とわざと落とした新品の弾倉の所に戻って来たのを確認すると10発だけ残った弾倉をNT-1改へ蹴り飛ばした。
NT-1改は瞬時に回避運動を取るがただの弾倉と確認して回避運動を中断、蹴りで動きの鈍ったジムカスタムへ90mm弾を浴びせ掛ける。
ジムカスタムは頭部の60mmバルカンを弾倉目がけてばら撒きその中の1発が残っていた弾薬に直撃し小規模な爆発を起こした。
たった10発の弾丸とはいえ90mm弾のパウダーの量はかなり多い。
NT-1改が両腕を交差し頭部とコックピットを守る構えを見せたその瞬間もう1つの新品の弾倉をジムカスタムが再び蹴り上げる。
既に活性化済みの90mm弾が満載された弾倉に同じように60mmバルカンの雨を降らせ再び炸裂、今度は先程の比ではない爆発がNT-1改の目と鼻の先で起きた。
防御の為に構えたNT-1改の腕を滅茶苦茶に弾けた弾頭と衝撃が襲いかかり引き裂く。

しかしジムカスタムも十分に距離を取っていなかったせいで出鱈目に飛んで来た90mm弾が右肩のスラスターと90mmマシンガンを直撃した。
それでも有り余る成果を得た、NT-1改の左腕の装甲が脱落し内蔵された75mmガトリング砲を破壊したうえ完全に体勢を崩させた。
確認することなくジムカスタムはNT-1改へ一気に駆け寄り隙だらけの左脇腹へ全重量を掛けた蹴りをお見舞いする。
さしものルナチタニウム合金も50tものMSの加速を付けた蹴りを喰らっては大きく歪み内部機器を露出させた。

吹き飛んだNT-1改は転がる勢いを利用して柔道の受け身のように体制を立て直し片膝立ちになる。
そして右腕を突き出すと腕の上半分の装甲がスライドして開き猛獣の唸り声のような音が響く。
ガトリング砲はまだ死んではいなかったのだ。

--------

ホバーカーゴの上部には直撃させたものの当初の狙いは完全に失敗だった。
ザクは想定通り旧ザクだったが全くの無傷でこちらに120mmマシンガンを向けて発砲してくる。
ホバーカーゴに増設された機銃とグレネードランチャーからも絶えず弾丸が吐き出される、対人用なので大した事はないのだが損傷の著しい左半身にグレネードが入ってしまえばそれなりのダメージは避けられない。
あの光量と衝撃波は何処か近くで融合炉が吹き飛んだのだろうことは分かったが今はそんな事に気を配る余裕はない。
量産型ガンキャノンを必死に操り旧ザクの120mm弾とホバーカーゴからのグレネードを躱し続ける。

「邪魔くせぇ!!」

イトウは叫ぶと走りながら右肩のキャノンをホバーカーゴに、腕の90mmマシンガンを旧ザクに向けて撃ちまくる。
目分量とはいえ比較的近い距離だ、外すようなヘマはしない。
ホバーカーゴのグレネードランチャーは沈黙し旧ザクは頭部に90mm弾をしこたま撃ち込まれその場に倒れこんだ。
あとはコイツらが何故こんな所に居たのか、ホバーカーゴに何が積み込まれていたのか…
それは近づく前に分かった、ハッチは閉じられていたが2発の砲弾が着弾して破られた外壁から何かが吹き出している。
同時にコックピットの警報が鳴った、出撃直前に大気センサーに設定を追加しておいた大気検知システムが警報をがなり立てる。
案の定、予想通り、想定の範囲内、だが現物を目の前にすると背中に冷たい汗が流れた。
コックピット内気密と圧力調整は問題なしパイロットスーツも問題なし念の為に点検してから更にカーゴに接近して中を覗き込む。
1箇所のMSハンガーを除いて直径約1mの球体がGG-GASの表記の下に黄色地に黒いドクロマークが描かれているビッシリと並べられている。
強固な外殻と衝撃吸収材に包まれていても240mmキャノンのダメージは大き過ぎたらしくタンクのいくつかは砲弾の破片や構造材の脱落で破損しているのが確認できた。

そこまで確認した瞬間、異変が起きた。
ほぼ停止していたカーゴが急発進したのだ。

「んなっ!」

イトウは慌ててガンキャノンをホバーカーゴへ張り付かせ前進を阻む。
しかし凄まじい衝撃と共にガンキャノンを弾き飛ばされる、人と10tトラックが正面からぶつかるようなものだ。
だがイトウは諦めない。
先ほど覗き込んでいた外壁の穴に左手を掛け強引に掴まり90mmマシンガンと60mmバルカンをホバーカーゴに取り付けられたジェット推進機へありったけ叩き込む。
その間もまだ無事な機銃から対人用の12.7mm弾が装甲を叩き続けるが完全に無視して反対側の推進器を破壊するべくホバーカーゴにへばり付きながら移動する。
90mmマシンガンを持った右手を外壁の穴に掛けた時カメラの片隅にジオン製のパイロットスーツを着込んだ人影が動いたのを見逃してしまった。
対戦車ロケットランチャーを担いだ人影を…

「これで足止め出ぅっ!!」

先の戦闘で内部が剥き出しになった右胸の冷却装置にロケットランチャーが撃ち込まれ爆発した。
内部でも誘爆を起こしイトウの量産型ガンキャノンは肩の付け根から腕が脱落しホバーカーゴから振り落とされ地面に叩き付けられる。

「おっさんは諦めが悪い事だけが取り柄でね…」

コックピットのすぐ横での誘爆は隔壁を貫き破片がイトウに突き刺さっていた。
そんな状況でも残った左腕でホバーカーゴのスカート部分を掴み引き摺られながらも喰らいついたのだ。
砂の抵抗で引き剥がされそうになるのを必死にバーニア調整して機体を浮かせて抵抗を軽減する。

傷の状態と出血量からあと10分は騙せる。
コックピットもまだ1.1気圧に保っていたお陰ですぐにはG3ガスも入ってこない。
そしてコイツをこのまま直進させるわけにはいかない。
恐らくこれが本命だ、ダブデ級も大量のMS部隊も全てコレが前衛すり抜ける為の陽動。
この莫大な量のG3ガスがあればダカール周辺は長期に渡って生物の存在しない死の世界に変えることができる、これだけの人員と物資を投入したとしてもお釣りが出るほどの戦果だ。
連邦の対アフリカ戦略の大幅な後退と変更を余儀なくされジオン残党は体制を立て直す時間を十分稼ぐ事が出来る。
だがこの作戦を発動した指揮官は狂っている。
やはりジオンの人間は頭がおかしい、戦争と虐殺を取り違えている。
でなければコロニー内でG3ガスを使用したうえにそのコロニーを質量兵器として地球に落とし挙句の果てにコロニーそのものを巨大なレーザー砲に改造するような気違い沙汰を何度も出来るわけがない。

イトウはガンキャノンを残った左手とバーニアの噴射で何とか姿勢を整え再びホバーカーゴに取り付く。
そして60mmバルカンの残弾を全て推進器に撃ち込んだ、だが4発の推進器の内の1発が煙を吹いただけで止まらない。
まだダメージから復旧していない無線の全チャンネルと外部スピーカーに向かって叫ぶ。

『誰か応答しろ、N14.7W17.0付近にてG3ガスを満載したホバーカーゴと交戦中!!
 足止めしてる内に応援を寄越してくれ!!』

左腕だけでホバーカーゴを引っ張る形でブレーキを掛けるが気休めにもならない。
スタビライズド・ギアも展開してガンキャノンを踏ん張らせるも想定外の方向に力が掛かかったスタビライズド・ギアは折れ曲がってしまう。

『N14.7W17.0付近にてG3ガスを満載したホバーカーゴを確認、交戦中!!
 誰でもいい、早く応援をっ!!』



追記というかちょっと説明
G3ガスは本来GGガスでG3という表記ですが文章にすると分かりづらいのでG3ガスと表記してます
G3ってだけ書くと灰色のガンダムに見えるんwww

ツッコミなんかも受付中なのねん

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最終更新:2011年05月05日 15:36