機動戦士ガンダム0079 AfterWAR 4話

ジムコマンドライトが先行して2機のドムの注意を引き付けながら交戦している後ろでドダイから降り立った2機のガンキャノンは支援攻撃を開始した。
だが奇襲から立ち直ったジオン残党軍も応戦すべく撃破された2機のザクの残骸を中心に包囲殲滅をするべく展開する。

『ハイブリッツ少佐!フォスター隊の指揮を執ります!
 マイア、少佐のフォローをお願い。』

レイアが外部スピーカーで叫ぶと隊長機を失い連携を崩しかけたドム2機を率いるために先行していたNT-1改から離れた。

『敵を抑えろキリサメ少尉、我々は本懐を遂げる。』

『任せとけレイアー!!』

NT-1改はレイア機の離脱をサポートする為にトロントのジムコマンドライトへ牽制射撃を行い同時にマイアのドムがジムコマンドライトへ急接近をかける。

「チッ、巫山戯やがって!!」

ジムコマンドライトを跳ねるように後ろへ下がって出来たその隙間をレイア機が全速力で駆け抜け仲間のドムへと合流すべく岩陰へと姿を隠す。
しかしレイア機のコックピットは接近警報が鳴り止まない。
まだ近くに敵MSが居る…レイアの手に汗が滲む。
ここ最近連邦軍のMSの更新速度はそら恐ろしいものがある、先日までは連邦の使用している90mmではドムに致命傷を与えるにことは難しい物だった。
ところが2日前の偵察隊が突発的な戦闘を行った際には90mm弾がドムの正面装甲を貫き半壊させた。
これが偶然なのか弾頭の改良が行われたのかライフル自体が改良されたのか詳細は貫かれた装甲の中に居たパイロットの半身とデータごと吹き飛ばされ不明だ。
作戦直前で検分は不十分だったがドムといえど安心出来ないという現実が残った。
単独で敵MSとの接触は避けたい、が部隊が可能な限り敵との接触を避けるためにミノフスキー粒子を濃密に散布していて短距離通信ですら通じない。

機体を一度止めて周囲を確認する…
振動からドム2機とジムが交戦していると思われる…
更に大きな振動を確認、バズーカクラスの弾頭の炸裂した振動…迷っている暇はない、このままではいつ敵MSに包囲網が絶たれてしまう。
レイアは深呼吸と共に操縦桿を握り直し意を決して岩陰から躍り出る。
案の定ドム2機はジムと見慣れないガンキャノンタイプを相手に追われて逃げ惑うような状況であった。

最初にジムがこちらに反応して90mmの銃口をこちらに向けてきた。

「遅いっ!!」

こちらの90mmマシンガンが先に火を噴く。
ジムはシールドで弾丸を防ぎながら一度距離をとった。
一時後退したと思われたが違う、その瞬間ロックオン警報…同時に機体を激震が襲う。
左腕を丸ごと吹き飛ばされたが機体をひねり転倒を防ぐ。
暴発したバズーカが目眩まし変わりになった隙になんとか仲間のドムに合流することが出来た。

『二人とも落ち着いて、敵は2機よ。
 確実に包囲して…大丈夫、やれるわ。』

『しかし少尉その機体では…』

『大丈夫コントロール系は無事、まだ戦えるわ。』

一瞬敵機を見失ったメイベルは歯噛みしてレーザー通信越しに指示を飛ばした。

『テナー准尉、離れるな。
 今来たのが指揮官機…ここで確実に潰すぞ!!』

『了解!!』

テナーは残弾のチェックを行いながら敵機の隠れた岩場をロック、両肩のガトリング砲がスピンアップし掃射開始する。
強烈な連射の前に岩場は脆くも崩れ去りドムの姿を曝け出す。
燻り出される形でドム3機が飛び出してくるが胸部の拡散ビーム砲を各々瞬かせガンキャノンSS仕様のカメラを一時的に使用不能に陥らせる。

「そんなものが何時までも通用するかっ!!」

テナーは赤外線カメラに切り替えて白黒ながらディスプレイを復旧させて再度敵機をロックオン掃射を再開。
ガンキャノンSS仕様の電装系は通常タイプのそれに比べて格段に処理能力が高い、その結果動き回るMSですら5機同時にロックオン出来る。
しかし左腕のないドムは先程まで相手をしていた2機とはまるで動きのキレが違いロックオン出来ない。

『少尉!!1機ロックし損ねました!!
 そちらをお願いします。』

『了解、無理はするな!!』

先程の被弾でひび割れ使い物にならないシールドを投げ捨て左腕の無いドムと対峙する。
敵機の戦闘能力は既に半減した、軽くひねって早くテナー機に追い付かなければと考えていた。
油断大敵とはこのことである…

ドムは急加速を掛けて左半身で掬い上げるような強烈なタックルを仕掛けてきた、ドムとジムコマンドカスタムの重量差約20tが大きく響く。
メイベル機は両足を地面から浮き上がり吹き飛ぶ。

「ぐぅッ…」

シートベルトが胸に喰い込み肺から無理やり搾り出された空気が声にならない声になる。
目の前が赤く染まる…だが意識ははっきりしている、以前ビグロのアームで手荒い歓迎をされたときにあっさり気を失った反省から徹底した対G訓練を行って来た結果だ。
MSが背中から倒れる前にメインバーニアを全開にして機体を立て直しながら反撃に90mmマシンガンのトリガーを引き絞る、タタタッと3連射。
とっさの操作で弾丸はあさっての方向へ飛んでゆく。
ドムは何事も無かったのように残った右手の90mmマシンガンをこちらに向け即座に発砲。
左腕を盾がわりにするもののジムコマンドカスタムの装甲に火花が散り弾丸が喰い込み内部機器を破壊してゆく。
コックピット内をロックオン警報とダメージの警告がけたたましく喚き立てる中メイベルは全ての警告を無視してドムに反撃の弾丸を放つ。
ドムはランダム機動で回避し、被弾しながらもこちらに合わせた銃口を逸らさない。
メイベルも被弾し続けながらも負けじと90mmマシンガンをドムに向け続けた、この負けん気が勝利を呼び込む。
目分量で打ち続けた中の1発がドムの90mmマシンガンに直撃し炸薬の暴発でマニピュレーターごと吹き飛んだ。

「なっ!!」

レイアは短く叫んだがそれだけでは終わらない、メイベルはそのままマシンガンの爆発で動きの止まったドムの両膝に向かって乱射する。
ドムの正面装甲は90mm弾では貫通が難しい、こうして脚を潰せばマニピュレーターも無く火器の運用の出来ないMSを簡単に無力化出来る。
レイアの心配はただの杞憂であったのだ…だが彼女はその事を知る由もない…

『テナー准尉、無事か!?』

外部スピーカーで叫ぶ。
ジムコマンドカスタムのメインカメラは機能不全、通信機器機能停止、左腕は最早外装で繋がっているだけ。
システムの稼働率も40%といった所だがまだ戦闘可能だ。

しかしその隣で行われていたドム2機とガンキャノンSS仕様の戦いはテナーが終始押される形で推移していた。
メイベルがレイアのドムと交戦状態に入ってからドム2機を脚の遅いガンキャノンで相手をせざるを得ない状況、ましてSS仕様は機体重量が更に増えている。
さらにレイア機の参戦で冷静さを取り戻した2機のドムは常に後ろを獲るように連携しながら砲火を加えてくる。
テナー機は既に右肩のガトリング砲が120mm弾の直撃で使用不能、左手に持った100mmマシンガンは残弾無し、右手のマシンガンは残弾が35発。
それでも1機のドムは頭部を喪失、武器もヒートサーベルのみとなっているがもう1機は左肩の装甲こそ吹き飛んではいるが五体満足でまだジャイアントバズを携えている。
ガンキャノンSS仕様はあくまでも面制圧の為の機体、味方機との連携が前提のMSであり単機での戦闘などもっての外である。
ましてガンキャノンタイプの天敵とも言えるドムと2対1で持ち堪えてはいるが撃墜されるのは時間の問題だった。

「クソックソッ!!」

メイベルの声すら届かないほどテナーは焦り視野狭窄に陥っていた。
既に残弾のないマシンガンのトリガーを引き弾が出ていないことにも気がつかない始末だ。
そして当然の如く…



ジャイアントバズを持ったドムを警戒するあまりに右手にいたヒートサーベルを持ったドムから目を離した。
後ろを取らせまいと左に旋回した瞬間ヒートサーベルがガンキャノンの脇腹に喰い込みそのまま両断。
テナーはヒートサーベルの熱量によってこの世から消え去っていた…

『テナーッ!!』

メイベルがジムコマンドカスタムを走らせ駆けつけようとする前に全てが起きてしまった。
はっきり言えばメイベルの判断ミスである。
レイアのドムは確かにエース級だがだからといって連携が前提のMSを孤立させた。
今までガラッツやイトウの指揮下や戦闘ヘリからの管制下でしか戦ったことのない甘さがここになって顕著に現れたのだった。

--------

テナーが撃墜される少し前。
ガラッツとイトウはザクキャノンとグフカスタムの2機と相対していた。
元々αポイントとβポイントは入り組んだ岩場を利用した天然の要塞である。
この入り組んだ地形がザクキャノンとグフカスタムの味方に付いていた。
ザクキャノンの曲射とグフカスタムの一撃離脱を繰り返すコンビネーション攻撃でガラッツとイトウの進撃を阻み続けていた。
イトウも撃ち返す為に射撃体勢を取り肩のキャノン砲を撃とうとするがグフカスタムが妨害に現れその防御にガラッツが割って入るが次の瞬間にはザクキャノンの砲撃が着弾寸前になり
回避運動を取るとそれと同時にグフカスタムが岩陰に後退し行方を眩ませる。
指揮官である2人が同じ場所で足止めされるという最悪の状況だというのに先手を取られて時間稼ぎに付き合わされる格好になってしまっている。

『中尉、ちょっと作戦変えよう!』

『あいよ、了解!!』

ガラッツとイトウは互いに確認することなく瞬時に役割を切り替えた。

イトウは射撃体勢を取ると見せかけてグフカスタムが襲ってくるタイミングを測りガンキャノンのブースターを最大にして一気にグフカスタムへと向かって突進する。
猛牛の如く衝角付きのシールドがグフカスタムを真正面からぶつかり合う。
衝角によって動力パイプごと腰を貫かれ岩壁に釘付けにされて身動きを封じられたグフカスタムのモノアイが威嚇するように仄めく。
しかしガンキャノンはシールドをマウントから切り離し距離をとりそのまま追い討ちの240mmキャノンを叩き込む。

ガラッツのジムカスタムはブースターを全開で砲台跡を足掛かりに空中へ駆け上がる。
そして空中で一瞬訪れる0Gの浮遊感を味わいながらザクキャノンの姿を確かめ90mm弾の雨を降らせてマシンガンを投げ捨て腰のヒートソードを抜き放つ。
ザクキャノンは肩のキャノンと両腰のビックガンを空中に向けて乱射しつつ煙幕を展張する。
ジムカスタムのシールドを前面にそのまま自由落下しながら全重量を掛けて煙幕の中のザクキャノンを袈裟懸けに叩き切った。

わずか10秒の逆転劇。
だが2人はそのまま止まることなくMSを走らせる。

『隊長さんはトロントの坊主の方へ行ってくれ。
 キャノンの足じゃ追い付けねぇ。』

『ああ、中尉も無理しないようにな。』

『りょーかい、じゃまた後で。』

2機はレーザー回線を切り二手に別れジムカスタムはバーニアでジャンプしてβポイントの要塞の向こう側へと姿を消した。
ジムカスタムが消えるのと入れ替わるかのように爆発音が響いた、メイベル達が敵機と遭遇した方からだ。

「このウスノロMSめ。」

レーザー通信をしたくてもメイベル機、テナー機共々正確な位置が分からないので使うことが出来ない。
イトウはこの時ばかりは足の遅い愛機を罵った。
外部スピーカーをスイッチを入れて敵に自機の位置を知らせる覚悟で叫ぶ。

『メイベル少尉!!生きていたら返事をしろ!!』

返事の代わりに響いたのは大型弾頭の炸裂音と爆炎であった。
その爆炎から現れた左腕をほぼ喪失したジムコマンドカスタムはまるでゼンマイ仕掛けのブリキ人形のように不器用に逃げまわっている。
メイベルは自分の判断ミスでトロントを死なせたことで動揺し思考停止に陥っていた。



今まで仲間の死は何度か見てきた。
だけどそれは他の部隊の顔もあまり知らない人間が自分でない誰かのせいで遺体も残らないMSの爆発によって掻き消えてゆくだけだった。



でも今回は違う…一緒に戦った時間は短かったけど生真面目な大きな青年の最後の瞬間

コックピットにヒートサーベルが喰い込んでゆくのと同時に

コックピットハッチが開いた瞬間見えてしまった

燃えるながら動く何かが必死に外に出ようとしていたのを

それが人間の腕で

次の瞬間には

ヒートサーベルで薙ぎ払われて

蒸発した



手が足がガクガクと震えて思うように操作が出来ない。
ただでさえ視界が赤くて思うように見えないのに視界が暗く歪んでいく。
そして何よりも呼吸が出来ない。
何度もスイッチを押し損ねながらバイザーを上げる、まだ足りない。
ヘルメットを脱ぎ手を滑らせ落とす、まだ足りない。
無理やりジッパーを下げてパイロットスーツの胸元を開ける、まだ足りない。
この時自分の手に落ちた雫で自分が泣いていることに初めて気がついた。

メインディスプレイが急に暗くなり接近警報が鳴り響いた。
ハッと顔を上げたメイベルの目に写ったのは頭部の無いドムがヒートサーベルを振りかぶった姿だった。
スローモーションのようにゆっくりと迫って来るヒートサーベルを避けようとフットペダルを踏み込もうとするが滑って操作ができない。

しかしそのヒートサーベルはジムコマンドカスタムに届くことはなかった。
直前に横薙ぎにドムの巨体が吹き飛ばされたのだ。
ガンキャノンの240mmキャノン砲から放たれた砲弾がドムを一撃でバラバラにした。

『メイベルしっかりしろっ!!
 怪我したのかっ!?』

残ったもう1機のドムに100mmマシンガンを放ちつつガンキャノンをジムコマンドカスタムの前に滑り込ませる。
ドムがジャイアントバズを撃とうと砲口を向けた瞬間ガンキャノンのヘッドバルカンも追加して弾幕を張り巡らせて攻撃を断念させた。

まずはこのドムを撃破しなければメイベルの様子を確認することも出来ない。
イトウは一気に片をつける為にガンキャノンの240mmキャノンの相互砲撃でドムの足止めをしながらジムコマンドカスタムのビームサーベルを強引にもぎ取る。
一年戦争以降ガンキャノンでもビーム兵器を運用できるようにアップデートが施された。
実戦でビームサーベルを使うのは初めてだがガラッツとの本物のビームサーベルを使った実戦と変わらない鍛錬を重ねてきたのだ、何も問題ない。
イトウは残弾の殆どない100mmマシンガンをドムへと投げつける。
ドムは爆炎と砂塵で視界不良だったのも祟ってハンドグレネードと勘違いして慌てて飛び下がった。
それと同時に煙を掻き分けビームサーベルを掬い上げるように振るう。
躱し損ねたドムの左腕が宙を舞うが致命傷になっていない。
ガンキャノンは勢いを殺さずそのまま左肩からタックルを打ち噛ますがドムも必死に残った右手でガンキャノンの腕ごとビームサーベルを押し返ながら胸部拡散ビーム砲をほぼゼロ距離で放つ。
ゼロ距離ではエネルギー効率も収束率も悪いドムの胸部拡散ビーム砲でもガンキャノンの放熱ノズルを融解させ冷却機能を半減させた。

「こんにゃろ!!」

イトウは肩のキャノン砲のセーフティーを解除してゼロ距離で撃ち返しお互いに弾き飛ばされた。
尻餅を付くように倒れこんだガンキャノンにジムコマンドカスタムが近づいてくる。

『ちゅう…い…?』

外部スピーカーから震える声が響いた。

『無事か?少尉。』

ガンキャノンを立たせながらイトウが声を掛ける。
ドムの上半身はバラバラに吹き飛んでいたがガンキャノンもゼロ距離でのキャノン砲の使用で左の砲身が吹き飛び砲弾の破片でメインカメラもかなりの損傷を負ったものの機能そのものは失われていない。
その失われていないレーダーが巨大な移動物体を捉えた…



--------

イトウと別れてβポイントの壁を飛び越えた先には地獄が広がっていた。
ミーティングの段階でG3ガスが使われたことは明らかだったが実際現場に来てみると想像以上だった。
ありとあらゆる場所に人間の死体が転がりその死体は苦悶の表情を浮かべたまま血と吐瀉物にまみれている…

ガラッツはそれらをあまり視界に入れないようにしながらMSを進めていく。
途中見慣れない機械がいくつか設置されているのに気づく、ジオン製のMS運搬型ミノフスキー粒子散布装置だ。
弾薬を消費するのは避けたいところだが時間を消費するのはもっと避けたい、ヘッドバルカンで目に付く範囲のモノを破壊。
その途中MSの火器ラックを見つけ先刻投げ捨てた90mmマシンガンと同じものを拾い上げFCSの接続を確認、腰の汎用ラックに予備のマガジンを2つ搭載して90mm弾で残ったミノフスキー粒子散布装置を破壊する。

「仇は…取るからな…」

呟いてジムカスタムを走らせる。

テナー機が何処まで敵機を深追いしてしまったのかまだ分からない。
ミノフスキー粒子散布装置を破壊した今20分もすれば通常の無線とレーダーも復旧する。
だがそれまで悠長に待つわけにもいかない…元々カッとなりやすいテナーがリードを殺した相手を見つけて冷静で居られるはずがない。

風で砂が舞い視界を妨げられる中モニターの設定を切り替えて目視の索敵を補強しながらジムカスタムをさらに走らせた。
コロニー育ちのガラッツはこのダカールに配属されるまで砂漠は平坦で砂ばかりの土地だと思っていたが実際には砂丘などによりずっと高低差がある。
場所によってはMSですら乗り越えるのに苦労するような巨大な砂丘すらある、そしてそれが今テナーを追い掛けるのに障害となっている。
ジムカスタムですら思ったよりも脚が取られてスピードが上がらない。
ジムコマンドライトの機動力の上昇もあるが何よりも軽量化により砂に脚を取られることが格段に少なくなる。
ハゴット班長の気遣いで足の接地面積を増やすための改造も功を奏して機動力だけであればドム以上になったのだ。

砂丘を乗り越えたガラッツの前にまた砂の壁が大きな砂の壁が現れる。
今度の砂丘は大きく乗り越えるよりも迂回したほうが早いと判断して機体を走らせようとした時に僅かに砂が崩れるのをガラッツは見逃さなかった。
風がどんどんと強くなっているが崩れ方が違う…これは振動だ、もうテナーと敵MSが近いことを確信した。
しかし風ももう砂嵐と言ってもいいレベルになってきているお陰でMSの戦闘音が聞こえてこない。
ノイズ除去機能によってモニターの砂はほとんど写ってはいないが装甲を激しく叩く砂の音が響く。



その頃テナーはマイアのドムと死闘を演じていた。

NT-1改を追撃を断念してドムを撃破してから改めて追撃を行う…いや、NT-1改はもちろんだがこのドムも隊長の仇と言える。
コイツを殺してからNT-1改を殺せばいい…そもそもジオンなんて全員死ねばいいんだ。

バズーカと90mmマシンガンの洗礼でボロボロになったシールドをパージし背中の2本のビームサーベルを引き抜く。
元々軽量化で装甲を削ってしまったジムコマンドライトにとってシールドは重要な追加装甲だ。
だが逆に言えばせっかく軽量化したのにシールドの重量分重くなっている。
また機体重量が軽くなったせいでシールドの重量に振り回されてしまう欠陥まで負っている。
だからジムコマンドライトはシールドを排除してからが本領発揮なのだ。

「さっさとくたばれよ、ジオン野郎!」

左手に持ったビームサーベルをドムへ向け、右手に持ったビームサーベルの剣筋を隠すために機体の影にする。
ドムもヒートソードを引き抜き刀身を灼熱化させながら構える。

剣が光り輝き2機の影を浮かび上がらせその影が踊るように重なり離れ廻りお互いの装甲を削りあう。
ビームサーベルをヒートサーベルが受け止めもう片方のビームサーベルが届くよりも早く殴りつけて軌道を逸らす。
飛び下がり拡散ビーム砲で牽制しようとするも60mm弾が装甲を舐めるように叩き拡散ビーム砲が沈黙する、だが60mm弾もメインカメラに到達する前に途切れた。
射撃武器は完全に尽きた今再びひたすらに接近して斬り合う。

ヒートサーベルを横薙ぎに切り払い白い軌跡を描くがジムコマンドライトを捉えられず空振りに終わる。
ドムの左側面に回り込みビームサーベルを突き立てようとするがドムはヒートサーベルを振るった勢いを殺さずその場で回転してヒートサーベルを更に振るう。
襲いかかるヒートサーベルを左手のビームサーベルで受け止め右手のビームサーベルで斬りかかろうとしたがドムの拳がジムコマンドライトのゴーグルカメラに叩き込まれメインコンピューターが作動不良を起こす。
だが連邦製のMSはメインコンピューターが作動不良を起こしていても各末端の統合処理がうまく出来なくなるだけで四肢の動作そのものは失われずそのままジムコマンドライトのビームサーベルは
コックピットから逸れてバックパックに接触して推進剤が爆発、爆風が2機を突き飛ばす。

「このジムやろーふざけんなよ!!」

コックピット内でマイアが吠えながらレバーとペダルを必死に操作する。
普通ならばコックピットまで吹き飛んでもおかしくない状態だ。
今までの戦闘で推進剤をかなり消耗していたことでコックピットの隔壁を貫くような爆発には至らなかった。
だがモノコックフレームの歪みが内部機器を破壊したらしくカメラ以外がほぼ応答が無く機体もゆっくりとしか動けない。

「ちょこまかちょこまかとこのデブMSめ。」

メインコンピューターの作動不良で四肢の動きの統制を失い満足に動けないジムコマンドライト。
先程から水平姿勢の再調整を何度やってもでたらめな値しか出てこない、メインコンピューターと直結された機体制御のセンサー系にまでダメージが及んでいる。
ここまで深刻なダメージとなると真っ直ぐ歩くことすら出来ず戦闘機動などもっての外だ。
矢継ぎ早に表示されるシステムエラーの警告がサブディスプレイを埋め尽くす。

「もう持たない、早くくたばれ糞ジオンが!!」

左に傾くジムをマニュアル操作で修正しながらビームサーベルをドムに突き立てる為に歩を進める。
ズシン、ズシンと柔らかい砂漠の上でも不自然な歩き方のジムの振動が響く。

「チクショウ、なんで動かないんだよ!!」

ほとんど応答のないペダルを踏み込み続けるマイアの眼前にジムが迫る。
ジムコマンドライトの砕けたバイザーの奥のサブカメラが無慈悲に輝きビームサーベルをコックピットに突き立てようとする。
しかし寸前にドムの脚が僅かに動きジムに向かって倒れこんだ。
結果ジムのビームサーベルが核融合炉を貫いた。





「へへ、ざまぁみろ…」




真っ白な光がすべてを飲み込んだ。



あー仕事辛い、眠れない
2月中に上げるとか言ってすみませんですた

  • 乙です。次も楽しみです -- 名無しさん (2011-03-08 01:08:55)
  • 糸屑のあれをここまで昇華させるとは凄いな… -- 名無しさん (2011-04-01 20:57:51)
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最終更新:2011年04月01日 20:57