この曲がかかる舞台の幕前客入れの時間帯が好きだ
微かな灯りが裸の舞台の一点を照らす
首の折れた小さな人形の眼を照らす
眼は見開かれたまま俺を見つめている
血が滲むように溢れ出て床が真っ赤に染まる
突然暗転すると曲が終わる
漆黒の舞台で人の叫び声と車の軋む音

溶明

照明が静かに照らし出したのは
           ひとりの女
うつむくようにして膝の上の何かを撫でる
中味のない頭
    の中の灯りが漏れ揺れている
その隣にあの人形が座っている
人形と女はそっくりだ
汚れた長いスカート
櫛の通らない長い髪
穴の開いた赤い靴
傷だらけの脛
袈裟にぶら下げた綿の袋
そして
あの

女は膝の上の空っぽな頭を放り出すと
両手で自分の頭を包み捩じった

ポロリ
と落ちた

人形の首と同じように薄皮一枚でぶらさがって

暗転

人の叫び声と車の軋む音

…美しい光景を見た…