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 わたしは貴方を許しません。ですから籍を抜くことはないでしょうし、そのようなことはお考えにならないでくださいまし。
 ええ、結構ですわ。裁判でも何でもどうぞ。でも私はあなたを許すことはありませんから、それは無駄というものです。
 長いようで短い暮らしでしたわね、十年って。とても幸せだったのに、とても優しかったのに、とても素敵だったのに、貴方はわたしから去って行ったのですよ。どうして許すことが出来ますでしょうか・・。
 先日、拓海の運動会がありましたのよ。あなたがいたらさぞ楽しかったでしょうに、可哀想な拓海ですわ。でもわたし、頑張りましたのよ。駆けっこに玉入れ、そして綱引きにも出ましたの。翌日なんか筋肉痛で階段が降りれませんでしたわ。拓海ったら、ママ凄かったよ、見なおしちゃった、なんて言いましてね。嬉しかったですわ。貴方が出ていてくれたらもっと楽しかったのにと思うと、やはり拓海が不憫になりますわね。貴方、こんなときはどうしたらいいと思います?毎月一度だけ貴方に会っていることで良しとしている拓海の心がどれだけ悲しみに満ちているかご存知の貴方なら、どうしたらいいのかお分かりかと思いましてね、尋ねるのですわ。
 わたしの前では、一言もあなたのことを言い出さない拓海を見ていることが、どれほど辛いことか、不憫さも胸が裂けるほどですわ。お分かりになります?この気持ちが。
 今頃はどこの馬の骨とも知れない女と仲良くしている貴方は、どこまで流れて行っても何をしていても、拓海の父親ですわよ。それだけはついて回りますのよ、分かっていらして?
 黙って笑っているだけの拓海に何が言ってあげてくれませんこと?あの子が学校で何を言われているかご存知ですか?そうです、あなたが今想像されている通りですのよ。どうされます?不憫に思いませんこと?
 わたしはいいのですよ。ひとりには慣れてますし、むしろその方がどれだけ気楽か知れませんからね。お互いに父も母もすでに他界していればこその、今回の不祥事ですわね。誰もあなたを責めませんものね、誰か怒鳴り込んでいく人もいなければ、諭しに行く親戚もいませんものね。良かったですわね、貴方・・・。
 あなたほど気の小さい男は知りませんもの。あら、わたしが笑っているのが分かりまして?手紙だというのにね、さすが私の夫ですこと。
 そうそう、わたしと拓海、今度引越しをしますの。ですから、もう拓海の顔は見れませんし、何かひとこと声をかけてあげることも出来ませんわ。
 今日の用件はそれでしたわ。

 かしこ