フリーシア伝説続き

「幽霊たち」
 神埼慎也率いる異界調査隊は、野湯が疎らにある山岳の湿地帯を進んでいた。
その最中、偶然目の当たりにした古城を拠点に使うべく進入するが、そこには過去の調査隊の姿があった。
かつての仲間との再会に歓喜する神崎らはその日の夜を古城で過ごした。後日の晩、古城の隊員らは、神崎率いる隊員らに色とりどりでたくさんの果実を「古代の植物を栽培して得た果実」といって差し出した。皆が群がってその果実を味わい、心から空腹を満たすが、智だけは数が足りずそれを食べることができなかった。

 隊員らはその城で眠りにつき、智は空腹で眠れないためか城の地下を散策していると、一番奥の部屋で白骨化した遺体の塚をみつけた。
その光景に智は驚くが、状況を理解しようと思ってとりあえず頭蓋骨の数を数えると、古城の隊員らの数とまったく同じであった。
それに気づいた途端、後ろから物音が響いた。振り向くとそこには仲間の隊員がいたが、どこか様子がおかしかった。
 話しかけてもなにも返さず、うわごとのように声をあげ続けるそれは、突然ナイフを握って智に襲い掛かる。智はとっさに逃げて神埼の元へ向かうべく地下の階段を駆け上がるが、前方から同様におかしくなった隊員数名が現れ道をふさいだ。
焦る智だったが、視界の中で青黒い何かを見つけた。それは誰かが持っていたであろう漂流遺物のハンドキャノンだった。目の前まで迫った隊員らに向け発砲すると、放たれた青白くて大きな光球に隊員らは粉砕され、肉片が周囲に散らばった。

 智は何とか地下から抜け出し、ちょうどその場にいた神崎と合流した。周りは豹変した隊員らが囲い、先ほど粉砕されたはずの隊員もスカスカの体で這って現れてくる。神崎は凄まじい瞬発力で瞬く間に隊員らを切り刻んでいくが、彼らの散らかった手足や臓器はヒルの様に地面を張ってくっつきあい、元通りの体に再生した。
 二人は城の入口を目指して走っていくが、隊員らはそれを狂ったような速さで追いかける。神崎は一足早く外につき入口の両扉に手を掛け、智は外まであと少しというところで背中をつかまれた。
腕や背中をかまれて出血する智は絶望感に駆られつつ手を外へと伸ばす。神崎はその手を握り、もう片手で隊員らを振り払って智を窮地から救い上げた。

 入口はすぐに閉じられ、二人が抑える両扉は軋み揺れていた。神崎は打撃刀を片手に、それの霊気で扉を溶接する。
しばらく抑えたあと、二人は少し後ずさりするが、扉が空かないとわかるとすぐに城から走って逃げた。
数十メートル走ったところで、神崎は唐突に立ち止まった。智も足を止めて神崎の様子を伺うと、彼は自責の念に駆られたような表情をしていた。
 神崎は「引導を渡してくる」というと智が持っていたハンドキャノンを取り上げ、城の方へ歩いた。
彼は軋む扉の方を見て、ハンドキャノンを向ける。そして数十秒、銃口の先に霊力を溜め、一軒家ほどの大きさはあるだろう光の球を放った。
城は地盤ごと崩落し、その中では隊員のうめき声が聞こえてくる。地盤の下にあった水脈の中に瓦礫は沈み、鼻が焼けただれそうなほど酸っぱい匂いのする煙が周囲に立ち込めると、そのうめき声が聞こえる事はもうなかった。

「導きの神・フリーシア」
 古代の大戦争の時に量産された人工の神は、霊体組織と物理的構造体でできているもので、今でも、大陸西部では地中から装甲が発見され、王国の兵装やコロニーのパーツとして再利用されている。
量産型の人工神は霊体組織に寿命があり、大戦争が終わった後はたびたびに溶け崩れていったという。そのため、神自体、伝説に現れる存在としか思われず。霊力もあくまで「神の国」のテクノロジーによるものとして扱われる。
 フリーシア等の「導きの神」や日本列島を今でも防衛をし続ける複数の「守りの神」は、量産型と違い完璧な個体であり、最大の違いは物理的構造体を持たないこと、そして霊体組織の寿命が永遠で、再生可能でもあることだ。
物理的構造体を持たない為、質量は完全にゼロであり、実体化の際はその時の姿に合わせて自然な物性と重量を再現できる。なのでフリーシアはモノリス・刀・人間・ドラゴン・血液等、あらゆるものに変化できる。

「森の主」編では後半にモノリスとして登場し、後に無形の光となる。
「神作り」編ではもっぱら武器(青黒い打撃刀)として登場
「天の火」編では人間として登場し、その際は「神ながらに人間の姿でいる事は恥しい」などと発言している。後に少年の体内に血液として入り込んで守ろうとしたり、旅人に吸収された後は青黒いドラゴンの姿で守りの神を倒していく。

「工廠カンザキの神」
 大戦争以前に、文明消失後の事を考慮して複数製造された「導きの神」の一つ。
大戦争が終わり、人類の文明がほとんど消え去った後でも、導きの神同士での殺し合いは密かに続いていた。結果的にはこの神とフリーシアの二体だけが生き残ることとなる。
 白い金属のような表面を持つ巨人であり、あらゆる箇所がえぐられ損傷の激しい状態で工廠の最深部に保管されている。建前上、製造途中の人工神ということになっているが、実際は大戦争の直後から、王家である「神埼」と互いに仕えていた存在である。
 「雲の大国」ができた当初から信仰の対象とされ、他に存在する「導きの神」を破壊し、神としての地位をより強いものとしてきたが、最後の一体となったフリーシアとの激闘の末に、体の多くを噛み千切られ、霊体組織を再生しないようにする呪いを掛けられて完全に機能停止し、以後、神埼家はこれを封印し、呪いを解く方法を探し続けた。
 その最中、神埼家の中で反旗を立てる者が現れ、同じ名前の分家を構成する。そして、神と王権を賭けて数百年もの間本家と争い続け、結果的に分家は滅び、唯一残った幼い子供とその両親は「異界」に追放される。
両親はその子供を魔獣から守り、最後は庇うように死に、大陸西部に生き延びた子供は「霧から現れた子」と呼ばれた。
後の「神埼慎也」であり、天賦の才を持つ彼は「異界」を切り抜け再び「雲の大国」へ戻ることとなる。そこで彼がとった行動とは――

 ・少年
 18歳。極東型モンゴロイド(日本列島人種)で、両親は労災にあって死亡している。
〝名前の無い奴隷〟として扱われているが、混血ばかりの宇宙文明では数少ない「純血」であることが唯一の誇りで、そればかりが際立って大きなプライドとなってしまっている。
 智とは親友の関係で、本来智が単身で地球に行くところを、どうにか手伝わせてほしいと頼んでひっそりと同行し、地球に舞い降りる。

 ・旅人
 22歳。極東型モンゴロイド(日本列島人種)で、もともとは「陽沙子」という、農村ではとても評判の良い娘であった。神崎慎也が王国に出向く前は同じ村で暮らしており仲の良い友人であったが、神崎から聞く「雲の大国」や「神の国」の話に強い興味を持ったことで、「異界」に身を投じて〝名前を捨てた旅人〟となってしまい10年が経った。
 異界の霧の影響で高い身体能力と知能を得ているが、過去に人間が霧に毒された果てに魔獣化する瞬間を見たことがあり、自身の末路を悟っている。

 ・神埼慎也
 22歳。極東型モンゴロイド(日本列島人種)で、姓名が古い日本語でそろった唯一の人物。王国の傭兵(神埼慎也については他項が詳しい)

 ・智
 20歳。極東型モンゴロイド(台湾人種)で、コロニーでは中級部族である。寛容深く、奴隷身分である少年を親友としている。

「導きの神と守りの神」
 人工の神の原料となる霊気もあくまで天然資源の一種であり、無論限りあるものであった。霊銅の量産に必要な霊気を得るために人間の魂は多く刈り取られ、特に人口が多い中国人は供給量と品質が両立された良い資源となった。
 量産型の人工神は強力な妖怪や地縛霊などが破壊された残骸を使用し、物理的構造体で補強したもので、
「導きの神」や「守りの神」は既存の高等神を数十体もまとめ重ねた上で、生前に特色が強かった人間の魂をコアとして添加し、融合させた後に複雑な再プログラミングを行うので、一体製造するだけで相当な期間がかかる。

「霧が人体にもたらす作用」
 異界の霧は大戦争による霊的な汚染の一種と考えられ、一般的にはあらゆる電磁波を遮蔽する性質があるとされる。
 霧の中へ入ると暫くは何も見えないものの、徐々に霧の成分の影響を受けることで数キロ先までハッキリと見渡すことができるようになり、さらに長期間立つと身体能力と知能が向上し始める。
旅人は実際に身体能力と知能が高く、魔獣相手でも俊敏な動きを見せ、また、自然環境にある物で、石鹸・刃物・衣類のような日用品の作成から霊銅に近い高度な物質の合成を行う事が出来ている。
 一方で、霧の影響が蓄積しすぎると外観的な変化が生じ、脱皮するかのように魔獣と化してしまう。旅人は、自分と同じように異界で長い間生き続けた人間と行動を共にした事があったが、最期に魔獣化する光景を目の当たりにしている。