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「……変身」
 交差させていた両腕を納めると、窓ガラスにぼんやり顔が映ってる。青い髪と赤い目。いかにもアニメみたいなふざけた配色の私。
 地毛のプラチナブロンドも無意味に目立ってイヤだけど、いくらなんでも青はない。ふざけてる。
「……この、髪と目の色だけ変える変装って意味ないよね」
「来生さんちの瞳ちゃんは金髪にするだけで恋人にも正体がバレないんですの。得てして魔法というのはそういうものなのですわん☆」
「よくわかんないけど」
「そもそも変装ではありませんの。ジュリアんが精霊に近づいた分だけ、その精神的本質が外見に色として顕われるということであって……」
「……ま、何でもいいけど」
 本来の姿――20cmほどの女の人の姿に戻ったネネコの髪は、火の妖精と言う通りに赤い。燃えるように。蝶のような翅も煌びやか。
 私の黒一色のゴスロリとは正反対。服の色までもが私の本質だとしたら、つまり……そういうことなんだろう。
「じゃ、行こうか」
「はいの!」
 窓を開け、こっそり部屋を抜け出す。月が出ていた。異世界からの侵略者というのが現れるのは、決まってこういう夜だった。

 今の私は、ちょっとした超人ではある。だから電信柱を飛び石に見立て、その上をほとんど跳ねる形で走っていくようなマネができる。
 いっそ空を飛べればいいのにとは思うけど。そういう便利な能力は風の魔法少女にしか使えないらしいから仕方ない。
「ネネコが風の妖精でしたら、ジュリアんがもっと活躍できますのに……」
「またその話?」
「でも悔しいのですわん! 史上稀に見る三級デビューの栄光が霞んでしまったことが!」
「私は別に……」
「ネネコが悔しいんですの。ジュリアんを、もっと誉めてあげてほしいのですわん」
 二級魔法少女マサキ。普通は魔法少女見習いから始め六級、五級とステップアップしていく制度において、史上初の二級スタートを切った天才。
 普通の魔法少女が近所でしか戦えないところを、風の力であちこちに飛び回り、異常なペースで戦果を上げていく謎のルーキー……だって。
 あまりに現実離れした戦績に、妖精たちの間では魔法少女協会が私たちに発破をかけるために設定した架空の人物という噂も広がっているらしい。
「パートナーさんも妖精ネットに顔を出したことがありませんし……」
「パソコン持ってないんでしょ。私だって兄さんのを借りてるだけだし」
 変な話だけど、妖精たちが交流するサイト(運営:魔法少女協会)がインターネット上にあるわけ。ファンタジーの象徴みたいな生き物の分際で。
 ……まあ、その辺のシステムの数々には、もう慣れた。色んな意味で。何かが台無しになっているとは思うけど。


 戦闘の基本は先制攻撃。それが、この半年で学んだ最も重要なこと。
 離れたところで精神を集中し、必殺の一撃で一気に終わらせる。卑怯だろうと、これが私のスタイル。
「燃えいずる篝火は、炎となりて」
 魔法という形のない曖昧な概念に、言葉の力で意味を与える。虚から有へ。有から球へ。赤い火の玉が右手に宿り、真っ赤に燃えあがった。
 それと同時に、敵が炎に照らされた私を感知。闇の中から光る瞳が私を見据える。殺気。迫ってくる足音。軽い緊張と興奮が入り混じり、心臓が高鳴る。
「破邪顕聖の矢とならん」
 球から円へ。円から線へ。線から点へ。魔力を右手の一点に凝縮させ、炎の矢となし、猛進する右目と左目の間に照準を定めた。
 左手をまっすぐ伸ばし、その手に握るステッキを弓に見立て、燃える右手で見えない弦を引く。
「……射抜け!」
 獣の生臭い息が顔に吹きかけられる位置まで引きつけ、魔力を解き放った。右手から炎の矢が一直線に伸び、爬虫類とも哺乳類ともつかない、その眉間を貫く。
 物質界からの消滅を意味する閃光。それが、もう一つの影を照らした。
「もう一匹ですの! 距離10!」
「近っ」
 ネネコの警告。狙撃が間に合わない近距離。ステッキを右手に持ち替え、飛び退る。
 ぬめっとしたイノシシ。そんな感じの姿をした獣の突進をやり過ごし、魔力を右手に集中させつつ、距離を詰めた。
「……我が炎は破邪顕聖の剣」
 ステッキを媒体に炎の刃を形成しつつ跳躍。空中で上段に振りかぶったステッキが、巨大な炎の剣となる。
 斬馬刀。兄さんのマンガで読んだ、獣を切り裂くための剣。これを、一気に振り下ろした。
「一刀両断……! 斬っ!」

「やっぱりネネコは悔しいのですわん」
「まだ言ってる」
「だって~」
「別に私、今以上に張り切る気もないし」
「ふに~……」
 月明かりの下、電柱の上。守るべき価値のない人々が生きるこの世界。それでも、ネネコが喜んでくれるなら。
 この世界でたった一人の友達が、笑ってくれるなら。
「それに、私のことはネネコが見てくれてる」
 他人の評価なんてどうだっていい。私は、私のやりたいようにやるだけ。
「私は、それで十分だから」


 異性に交際を申し込まれたことは何度かある。すべて断ったけど。
 腹いせに「顔がいいだけで性格は最悪」だとか悪口を言われもした。好意って簡単に覆る。
 だから、ちょっとしたトラウマ。恋とか、そういうの。同性にも妬まれるし、やっぱり同じような悪口ばかり言われるし。
「他人の恋愛に興味ないんだけど……」
「ううっ、後生ですわん! 事件はリアルタイムに起こっていますの!」
「はいはい」
 膝の上で催促する仔猫に頷き、パソコンを起動させる。最近ネネコが夢中になってる、とあるブログを開くために。
 きっかけは偶然。例の妖精ネットに接続するとき、たまたまそれを見かけた。アイポンという人が書いてる、なんてことない日記。
「一方通行だった初恋の殿方との運命的な再会……」
 うっとりとした声。異性と出会う機会のない妖精たちにとって、他人の恋愛話は麻薬のようなものらしい。
「しかも学生時代より素敵になった想い人……! ああ、なんてロマンチックなんですの……!?」
「ニートになってたのはスルーしちゃいけないと思うけど」
「……それはそれ、ですわん」

 アイポン初恋の人、オッギー。高校での同級生で、無口・無愛想・無表情の三拍子が揃った一匹狼。
 人付き合いは悪いけどお人好し。何を考えているのかわからないタイプ。……ってとこ。彼に関する記述をまとめると。
「もし私だったら恋に落ちない。むしろ気持ち悪い。しかも今はニートとか論外」
「同族嫌……。蓼食う虫も好き好きですわん。誤解されやすい子でも、見ている人はちゃんと見てくれているのですわん!」
「……何ムキになってんの?」
 でも、彼の他人の目を気にしない自由気儘な生き方が、小さな頃から優等生をやってきたアイポンには眩しかったそうだ。
 そのオッギーが六年振りに突然現れた。
 小太りだった体はスマートに。無愛想だったのが社交的に。ほとんど別人みたいだけど、好きになった根っ子の部分は変わっていない。
 まさしく理想の男性になっての再会……だって。できすぎた話。都合よすぎ。嘘っぽい。
「面白おかしく嘘ばっかり書く人もいるらしいけど、こういうの」
「はう!? 無粋ですわん! ……ネネコの知り合いにも少年時代のオッギーさんみたいな子がいますの」
「へえ?」
「ですから、大人になった彼がどんな風に変わったのか、どうして変われたのか興味があるのですわん」
「ふう……ん」
 ネネコが故郷で好きだった人なんだろうか。変に感情移入してるのもそのせい?
 遂にメアドを渡すことができたという最新記事に盛り上がるネネコを見下ろし、そんなことをぼんやり考えた。


 山の中ですれ違う、その顔には見覚えがあった。山下美鈴。私の同級生で、いつぞや彼氏を奪ったの何だのと言いがかりをつけてきた女。
 中一にしては発育がいいし、美人で男好きのするタイプ。そういう女が連休中に大人の男と逢引きして、その……。
「嘆かわしいことですわん」
 ネネコが、腕の中で憮然とした声を上げる。
「世には25歳で純粋な恋をしている女性だっていますのに……」
「だから、あれは大なり小なり脚色してるんだってば」
 ここ数日で私が実在を疑っている人物は二人。アイポンの初恋の人、オッギー。彼女がメアドを教えた真意に全く気づいていない天然ニート。
 そして、もう一人が……たった今、過去形になった。
「昆虫採集っスかね」
 と、相方の妖精にとぼけた返答をしているのが、その人物。
 淡い桃色のセミロング、紫色の大きな瞳。黒を基調としたフリルつきのドレスに、赤いマフラーと手袋のコーディネイト。人形みたいな女の子。
 二級魔法少女マサキ。架空の人物だと噂されていた彼女が、例の悪評高い「獲物の横取り」を完遂し、どこかへと飛び去っていった。

 ゴールデンウィークということで、一人暮らしをしている兄さんのところに遊びにきてた。だから、これはすごい偶然。本当に。
 魔法少女の義務を果たすべく家族の目を盗んで駆けつけたら、全ては終わっていた。そして……。
「死んじまえーっ! ちきしょうがーっ!」
 という山下の叫び声が、逃げる彼女とすれ違い、慌てて変身を解除していたことを思い出させた。腕の中で、ネネコが呆れた声を出す。
「エンジン音が聞こえますの……。殿方は一人で逃げたようですわん」
「うわ最低。そういう男に引っ掛かる彼女も彼女だけど」
「こんな山の中に置いて行かれた学友を放っておきますの?」
「助ける義理はない」
「でも助ける。それがネネコの知ってるジュリアんですわん☆」
 上目遣いに顔を覗き込むネネコに閉口していると、頭上に何者かの気配。
 顔を上げようとしたら、飛び去ったはずのマサキとその妖精が眼前に立っていた。びっくりして、思わず硬直する。
「おや、先の小娘とは別人ではないか?」
「そうスね。もっと出るとこ出てまし……コホン、髪の色! 黒髪だったっス! 黒髪の子! ……を、見なかったスか?」
「え?」
 最後の言葉は、私に向けられたもの。私がそれに気づくと同時に、ネネコが「にゃあ」と普通の猫の振りをして鳴いた。
 誤魔化せってことか。この得体の知れない二級魔法少女に、私の正体を気取られないように。
「あ、ああ……あの子、私の連れなの」


「ちょっと待って」
 私の返答に、二級魔法少女マサキが眉をひそめた。小さな子供――多分、二つか三つは年下なのに、不思議と大人びた印象を受ける。
 小柄で童顔なだけで、見た目より実年齢は上なのかもしれない。
「その子と、あー……その、親しげだった男の人の他にもまだ誰か一緒かな?」
 見たんだ、この子。まだ中一の山下美鈴が、夜の闇の中で何をしてたのか。何故か私の顔が熱い。多分、耳まで真っ赤になってる。
「ううん。三人だけ。いつの間にか、二人だけでどこかに隠れてたみたい。私を驚かせようとしたのかも」
「うわーお……いや、心配だね、お友達。傷物……もとい心の傷とか、まあ色々」
 友達。そう呼べる関係じゃないけど。本当のところは。むしろ逆恨みされてるし、関わり合いたくないというのが本音。
 幸か不幸か、その山下美鈴は耳障りな罵詈雑言を辿っていくとすぐに見つかったんだけど。車道の前でヒステリックに暴れてる姿が。
「センジュピンチだ! 彼女は既に、少し錯乱している!」
「……それなりに甲斐性を見せたらどうじゃ?」
「こいうとき、どんな顔をすればいいのかわからないの……」
 私には存在を知覚されていない(と思いこんでいる)妖精への返答を兼ね、マサキが縋るような視線を向けてきた。
 まあ、無理もないけど。思わず溜め息をつき、ネネコを放す。軽く深呼吸して、喚きながら木を殴り続ける山下の肩を叩いた。
「いつまでそうやってるつもり?」
「あ……?」
 振り向いた。目が据わってる。一気に顔が歪んだ。私がここにいることへの困惑と、醜態を見られたことへの羞恥心。そして日頃からの憎悪。
 やっぱり放っておけばよかったと後悔した瞬間、いきなり突き飛ばされた。不意を突かれたこともあって尻餅をつく。見下ろす山下の目が怖い。
「道明寺……なぁんで、アンタがここにいんのよ……」
「なんでって……」
 立ち上がり、慌てて山下を背交い締めにするマサキとその妖精の視線を意識しながら、辻褄の合う返答を考える。
 ……ていうか、なんで私がこんな女のためにデスノートごっこをしなきゃなんないんだろう。
「あんたを心配してたんでしょ」
「心配……? アタシから達也を奪っといてふざけんじゃないわよ!」
 この山中で逢引きしていた男ではなく、小学生の頃から交際していたという同級生の柳井達也のことだ。
 でありながら、彼が私に一目惚れしたと称して交際を申し込んだのは事実。それは気の毒だと思う。散々、中傷を受けたのは腹が立つけど。
「あんたが私を嫌っているほど、私はあんたを嫌ってないの」
「ハッ……! そりゃそうよ、アンタは加害者でアタシは被害者だもん! ねえ、楽しい? アタシをいじめてそんなに楽しい!?」
 どこまで身勝手になれるんだろう、この女。思わず殴ろうとすると、その手をマサキに掴まれた。完全にヒいてる。
 その困惑顔に落ち着きを取り戻しかけた瞬間、逆に私が山下に殴られた。
 ……さすがに、もうキレてもいいと思った。


「痛っ!?」
 カッとなって、打った右拳に激痛。まるで岩でも殴ったような、そんな感触だった。拳の先に、マサキの頭。
 いつの間にか山下の前に立ち塞がっていたらしい。ていうか、何なの、このとんでもない石頭は。
「お姉さん、やめようよ!」
「やめるのはその女を黙らせてから」
「君が泣くまで殴るのをやめないパターン!? けんかをやめて! 二人をとめてー!」
 そんな感じで私とマサキが揉み合ってるうちにマサキの石頭が後ろの山下に直撃。
 激痛に山下が泣き出したせいで、私は振り上げた拳の行き先を失った。
「女に……泣かれた……」
「貴様が悪いのじゃ! このヘタレ甲斐性なしが!」
「イマドキなニュータイプの修羅場を見たの初めてなんスもん……。あの年頃で痴話喧嘩とかオレには未知の世界っスよ」
 ぺしっと後頭部をはたく妖精に小声で応えつつ、マサキががりがりと頭をかく。
 そりゃそうだ。私も何でこういう状況になってるのかわけがわからない。
「……ここで待っててくれるかな? 人を呼んでくるから」
「え!?」
 二人っきりにしないで。そう主張する間もなく、マサキが妖精を連れて車道を駆け出す。
 背を向けて泣き続ける山下を横目にネネコを抱き上げ、顔を見合わせ、何度目かの溜め息をついた。

 気が遠くなるほど長い時間だった。実際はそうでもないんだろうけど、体感時間が。
 ネネコが近づいてくるエンジン音に反応して聞き耳を立てる。割と高級っぽい車が私たちの前で停車したのは、その数分後。
 無言で座り込んでいた山下が、その車を見てびくっと身体を震わせた。食い入るように、運転席を睨んでる。
「……今更、戻ってきたわけ」
「え? あれ、あんたの……」
 彼氏か。と、言い終える前に運転席が開いた。中から男の人が出てくる。
 大学生くらいかな。肩まで伸びた長髪が鬱陶しいけど顔立ちは整ってるし、身長も低くはない。
 真っ赤なTシャツにサラリーマンみたいな黒い長ズボン。その上に青いYシャツを上着代わりに羽織ってるのはダサイけど。
 ただ、どちらかと言うと真面目そうな感じで、中学生を騙すような男には見えない。勘違いかなと首を傾げると、山下が詰め寄る。
「和也さんはどこ? これ、あの人の車でしょ? どこよ!」
「彼は暗くて狭いところで震えてるよ。代わりに、僕が迎えに来たんだ」
 別人か。でも、どうしてその和也さんって人の車で? 不審に感じて見詰めると、彼が気まずそうに頭をかいた。
 気のせいか、誰かに似ているような気がした。


「会わせて」
 山下が、有無を言わせぬ態度で後部座席に乗り込む。簡単に乗っちゃうかな、普通。……道理で悪い男に引っ掛かるわけだ。
 この冴えない男を疑ってないのか、もう何もかもがどうでもよくなっているのかはわからないけど。
 座席から刺すような視線を向ける山下に苦笑し、彼が警戒している私に語りかける。
「見ず知らずの他人とはいえ、お節介な女の子を気にもかけなかったね」
「ああ、あの“青い”髪の子に頼まれたんですか」
「ん……暗いからそう見えたのかな? ピンクの髪の子だよ、信用してくれると助かる」
 私の引っ掛けを見透かすように顔を覗き込み、男が困ったような笑みを浮かべた。
 ……まあ、いざとなったら変身してボコにすればいいか。観念して頷き、山下の隣に座りたくなくて助手席に回る。
 何と無く私たちの関係を察したようで、男が気まずそうに頭をかいた。

 楽しい楽しいドライブ中、主に運転手と山下の間で交わされた会話は、わざわざここに書くことはないと思う。
 山下美鈴がどんな女だろうと人権くらいは認めていいし、彼女が被った被害を晒して喜ぶ趣味もないから。
 男がこれでもかと和也という人の悪事を並べ立て終えたと同時に、山を降り切ったところで車が止められる。
「もう、あんな悪い大人に関わっちゃ駄目だよ」
 そんな言葉で締めくくり、男が私たちに下車を促した。
 未練がましく座席に居座る山下を説得するのにまた一悶着あったのは、余談。
 ぼけっと歩く山下の背に続き、しばらく歩いてから振り返る。
 ……あの冴えない男にトランクから別の男が引きずり出されていた。思わず硬直していると、山下がとろんとした声を上げる。
「道明寺」
「え!? な、何!?」
 小走りに横に並び、山下の横顔を覗き込む。ほんのりと頬が赤い。
「今までごめん、ひどいこと言って」
「は?」
「アタシ、目が覚めた。あの人が言ってた通り、恋に恋してただけなのかもしれない……」
「ふう……ん」
「恋をするなら、ああいう中身のある人にしなきゃダメだよね……」
 絶句。自分の世界に没入している山下を尻目に、もう一度だけ振り返った。
 いつの間にか、そのお相手は姿を消していた。運転席に本来の持ち主であろう男を押しこんでから。
「……そうね。相手は選ばなきゃね」
 そうか。性格が悪いんじゃなくて、こういう思い込みの激しい、自己完結型の女なんだ、こいつは。
 もじもじとメアドの交換を申し出る山下に、ネネコが「にゃあ」と鳴いた。何故か、嬉しそうに。

 ――平成20年5月3日。人間の友達と呼べる存在らしきものが、初めてできた日。