濫読者の羅針盤 @ ウィキ

QQ015

最終更新:

nhoshi

- view
管理者のみ編集可

#015 The Big Bow Mystery / Israel Zangwill
ビッグ・ボウの殺人 / イズラエル・ザングウィル


短篇集ではなく、中編である。中編一編のみが収録された本。短篇集のリストだったはずだが、なぜかここで登場。中編ならいいのか?でも長編と中編の境って曖昧だよなぁ。

ロンドンのボウ街を舞台に起こった密室殺人。

1891年、イギリスのロンドン・スター紙に連載されたそうなのだが、1891年といえばちょうどストランド誌にシャーロック・ホームズシリーズが掲載され始めた時期と一致する。どちらが先かという興味もあるが、しかしながら「ビッグ・ボウの殺人」はシャーロック・ホームズとは全く異なる系統に位置する作品である。ホームズ譚が主として探偵を書くことに焦点を当てていたのに対し、「ビッグ・ボウの殺人」は事件の謎そのものとそれを取り巻く人に焦点をあてている。フェアプレイ、ロジックという点においてはホームズよりも数年先、むしろ本格黄金時代の作品に近い雰囲気をまとっている。「読者に対して公正な態度で謎を提示し、その謎の解決を論理的に提示する」というのを本格推理の基準とすれば、これは本格推理の基準を満たしていると思う。それでいてユーモアミステリなのだ。

ポーの「モルグ街」で近代ミステリの歴史が始まったとすれば、その幕開けを飾ったのは「本格推理小説」であったと言っていいだろう(若干、地の文にアンフェアな記述を指摘されることもあるが。)。初級ど真ん中ストレート。しかしその後に続くのは実録形式、犯罪小説、リドル・ストーリーなどの変化球だ。たまに The Biter Bit や、この The Big Bow Mystery のようなストレートはナチュラルにシュートしている感じ(ユーモアを味付けに使っている、という意味で)。本格にはじまり、変格で発展する、という感じがなんか愉快ですね。

この本は早川文庫版を新本で入手可能。


ちなみに、クイーンが『ビッグ・ボウの殺人』と並んで、「評価すべき」とした同年刊行の『アーサー・サヴィル卿の犯罪およびその他の物語』はには以下の5編が収録されている。
  1. Lord Arthur Savile's Crime / アーサー・サヴィル卿の犯罪
  2. The Canterville Ghost / カンタヴィルの幽霊
  3. The Sphinx Without a Secret / 謎のないスフィンクス
  4. The Model Millionaire / 模範的百万長者
  5. The Portrait of Mr. W. H. / W・H氏の肖像

これはまるごと中公文庫版『アーサー卿の犯罪』に収録されているのだが、絶版。全集も絶版状態なのでちと探すのは難しい...


名前
メールアドレス
内容

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー