濫読者の羅針盤 @ ウィキ
QQ006
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nhoshi
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#006 Out of His Head / Thomas Bailey Aldrich (1862)
狂乱 / トーマス・ベイリー・オルドリッチ
- Dr.Pendegrast
- By the Seashore
- The Estrangement
- A Catastrophe
- The Flight
- Tired to Death
- An Arrival
- Dark Days
- Agnes
- The Red Domino
- The Danseuse 舞姫
- A Mystery 事件
- Thou Art the Man 汝こそその人なり
- Paul's Confession ポールの告白
- A Long Journey
- Out of His Head
- Burning a Witch
- Two Hundred Years Old
Paul Lynde's Sketch Book
- Pere Antoine's Date Palm
- A Word for the Town
- Miss Hepzibah's Lover
- The Lady with the BalMoral
- The Cup and The Lip
オルドリッチは日本ではほとんど知られていません。国内のサイトで検索する限りにおいては、上記の『狂乱』、あるいはその抜粋である「舞姫」がクイーンの定員に入っている、という事実ぐらいしかわかりません。
Out of His Head はオルドリッチの短編集として紹介されているのですが、中編1つと5つの短編が入っています。この中編の11章から14章までが一つのミステリになっており、この部分だけを抜粋して「舞姫」として訳されています。(11章の章タイトルも「舞姫」ですが、11-14章全体も「舞姫」と呼びます。)上記目次では数字の付いている部分が中編のCHAPTER番号です。後ろの5つの短編には Paul Lynde's Sketch Book というタイトルがつけられています。本の副題が A Romance. [Also Paul Lynde's Sketch Book] となっているので、中編のタイトルが "A Romance"なんだろうか?中編、短編ともポール・リンドなる人物が語り手になっており、オルドリッチはEditorということになっています。
原文はここで読めるのですが、詳細を確認してはいません。いずれにしてもミステリ史として重要なのは「舞姫」の部分だけ、なのでしょう。
「舞姫」は
光文社文庫版『クイーンの定員 I』に収録されていますが、これ以外では把握している限りでは EQ 1983.1月号に掲載されただけです。
「舞姫」はクイーンによって密室の変形として評価されているのですが、実は Charles Martel の "Hanged by the Neck : A Confession" が原型であるという指摘もあります。(Grost氏のA Guide to Classic Mystery and Detection による)この話は見たことがありません。(この人物のことを調べようとすると、フランク王国でウマイヤ朝を撃退したカール・マルテル(同姓同名の人物)に阻まれます。T^T)Waters(QQ002)のような刑事の回想録の一つに収録されているようですが。
「この時代にこんなものがあったんだ」という意味での興味はあるのですし、決して橋にも棒にもかからないというレベルのものではないのですが、入手困難なものを無理してまで...という感じです。私は光文社文庫版『クイーンの定員』で読みました。
オルドリッチは上記『狂乱』ではなく、1870年発行の半自叙伝 "The Story of a Bad Boy" の作者として知られています。トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンにつながる、アメリカ少年物語の嚆矢です。あとは "Marjorie Daw" なる短編も結構有名です。これは謎とオチがある書簡体の短い小説で、ミステリに分類できるような気もします。が、邦訳はないのでわざわざ読むのもなぁ...