濫読者の羅針盤 @ ウィキ
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nhoshi
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#004 Hunted Down / Charles Dickens (1860)
追いつめられて / チャールズ・ディケンズ
コリンズに続いてディケンズ。おそらくコリンズの影響もあると思うが、この時点では「月長石」もまだ書かれていないし、当時の小説の傾向として、謎や犯罪を扱うものが多かったのでしょうか。
「クイーンの定員」のリストによると、ライプツィッヒのベルンハルト・タウホニッツ刊が1860年、ロンドンのジョン・カムデン・ホッテン刊が1870年となっており、本文中には「(アメリカ版は)イギリス版より九年先んじていた。1861年にフィラデルフィアのT・B・ピーターソン刊の The Lamplighter's Story(『点灯夫の物語』)に収録された」とある。
なんだかごちゃごちゃしていて良くわからんが、「クイーンの定員」という「短編集リスト」に関して言えば、前後の事情(#003が1859年刊、#005が1861年刊となっている)から1860年刊のものがエントリされているのだろう。
1860年発行の本はタイトルが Hunted down : a story ; The uncommercial traveller : a series of occasional papers とある。The uncommercial traveller というのは「無商旅人」と訳されるシリーズもので、一人称の随想録といった感じだが、どの程度フィクションなのかは知らない。時期的にはこのシリーズの一部と、Hunted Down の合本のような形だろう。ベルンハルト・タウホニッツはライプツィッヒですが、本自体は英語のものだ(情報は後出の
復刻EQMM1-3)そうな。(なお、Hunted Down 自体の初出は1859年で、アメリカの雑誌。)
まぁいずれにしても短編集としての Hunted Down に拘る必要はあまりないだろう。「無商旅人」はミステリとはあまり関係がないと思うので、とりあえず短編作品 Hunted Down に話を絞る。(なお、「無商旅人」は広島大学英国小説研究会による日本語訳がディケンズ・フェロウシップ日本支部のサイトで読むことができます。)
「追いつめられて」は岩波から出ている
『ディケンズ短篇集』で読むことができる。これが一応現役。私は
復刻EQMM1-3に入っているのを読みました。この本は今でも入手可能。原書では作品の冒頭に毒殺魔ウェインライトについての解説があり、そのあと物語が始まるらしい。EQMM版では「冒頭の解説を削除」したとあるが、なぜか物語の1章(Most of us see some romances in life. で始まる短い章)まで削除されている。まぁ大して気になるもんでもないですけど。あとは
『犯罪文学傑作選』で読めるが、こいつは絶版です。
毒殺魔ウェインライトにヒントを得て書かれた、ということなのですが、物語を読む限りにおいては特にウェインライト事件の事実に取材しているというわけではなく、毒殺&生命保険詐欺をテーマにしています。(原書では冒頭にウェインライトが紹介されていることからもわかるように、これだけでは別にネタバレになっているわけではありません。)