「ちくしょう、次があったらまた来てやるぞこんにゃろー!」 ‐ある来場者(27歳・男性)の叫び‐  さて、農業博覧会だ。 たまの休みに家族サービスのひとつもしないでいると、カミさん(2●歳)から「それって父親としてどうなの」いう視線がやんわりと突き刺さってくるので、こんなところに来ていたりする。 さすがにNW中から出展者参加者を募っただけあって、広い会場のあちこちから賑やかな声と水が焼ける音、甘芳しい香りにスパイスの効いた食欲をそそる香りやらが溢れかえっている。 そんな中、最近「お母さんに似てきたわね」とご近所に評判の娘(7歳)は、先ほど平らげたマンゴープリンで口の周りをベタベタにしながら、地鶏の串焼きを両手に装備してご満悦な様子だ。 なるほど、確かに似てきているかもしれない……いてえ、脛を蹴るな!脛を!てか俺の心を読まないでください! ‐  一方俺はカミさんの買い物の品を次から次へと抱え込まされているので絶賛空腹中だ。 くそ、さっきから顔の横に挟んだ箱がガサガサ動いてる気がするんだが、まさか生きてるんじゃねえだろうなこの海産物め。 背中に背負った籠には、もう何が何やらと言う状態で野菜と果物がぎっちり詰め込まれていやがる。 いくら美容効果もあると言っても、食べた分は動かないと体重はふえイデデデ耳を引っ張るな引っ張らないでくださいあだだだだ! ‐  周りに目を向けて見ると家族連れやカップルから、友人同士の集まりらしい集団がいくつも見える。 最近はどうにもお祭りごとを楽しむ気分にはならなかったが、やはり来てみると自然と気分が上向くようだ。 家に帰れない日の分もあるし、今日位は振り回されるのもいいかもしれないな。 いつも振り回されてるんじゃないのかとは言わないでくれ、ちょっと泣きたくなるから。 ‐  さて、ところで先ほど言ったように俺の両手は荷物で塞がっていて自分では物を食えない。 その窮状を訴えたところ、カミさんが「じゃあ私が食べさせてあげます」と言ってフルーツの盛り合わせ(カクテル風)から一つを摘み上げて俺の口元に持ってきた。 オーケイ、状況を整理しよう。 ここは品評会?会場人ごみど真ん中、そんな中を歩きながらいわゆる「はい、あ〜ん(しかも指で)」をしてくださると仰られるのですこのお方は。 付き合い始めた頃にやってみて以来、恥ずかしいですから、と言って普段家でもしてくれないくせに何で今だよ! ちくしょう、ああ食うさ食うとも!腹減ってんだ!カミさん愛してるんだ! なんで拍手してやがるギャラリーども!そして煽らないでくれ娘(7歳)ええええ!!!! そしてそんなこんなあって、俺の我ながらよく分らない捨て台詞を残し、我が一家は家路に着いたのであった。