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ここはakiharu国のとある場末の料理屋である。メニューの数は少ないが最近始まった冷やし中華が好評である。南国であるakiharu国では年中通して食べられるのである。
カウンター席の隅のほうに一人の男が小さくなって座っている。南国人にしては立派な体つきをしており、発達した筋肉は薄手の衣服の上からよくわかる。しかしながら今は小さくなって座っているのでやはり小さかった。
男の名を東西天狐と言う。先日小笠原に結城火焔とコガとで遊びに行ったはいいが、そこで結城火焔を命の危機に晒してしまったことをひどく悔やんでへこんでいた。

「マスター、もう一杯」

ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞ、と音を立てて錦糸卵と色とりどりの野菜に彩られた冷麺が消えていく。ちなみに五杯目である。

「天狐さん、注文してくれるのは嬉しいんですけどそろそろ止めといたほうがいいっすよ」

声を掛けたのは店主の忌闇装介。小笠原おもいで秘宝館館長をやったりakiharu国観光局長をやったりしているが今はこの店の繁盛に尽力している。ちなみに後1週間ほどで飽きるだろう、というのが大方の予想である。

「うるさいですだまっててくださいほっといてください」

カウンターに突っ伏してのの字を書いている指がテーブルに穴を空け始めていた。伊達にサーラにマッサージで鍛えられてはいない。顔に縦線を浮かべてなんだかなー、と忌闇。従業員として働かされている猫士のリズが重ねられた大皿を引いてお絞りとお茶を出す。重さでちょっとよろける。

「もう終わったことなんだからしょうがないじゃナイッスか。それに火焔ちゃんは無事で天狐さんも無事に帰ってこられたんだから、もういいじゃないっすか」

忌闇、そろそろ帰ってくれないかなーと思いながらも丁寧に慰める。お昼時が迫っていたのである。

「このままのこのことどんな顔をして会いに行けと言うんですか・・・」
「でもここでそうやってても何も解決しないっすよ」
「・・・何か、いいアイデアでもあるんですか?」
「え?えーっと、そうっすねえ」

東西が死んだ魚のように濁った目でぎょろりと見上げると、忌闇が目を逸らす。すると手が伸びてきて襟首を掴まれた。

「こっちは、真剣に、話してるのに、なんで、目を逸らしますか?」

東西のドアップ顔に半泣きになる忌闇、もともとチキンであった。そして後ろでリズが腰を抜かしている。

「え、えーと、えーと、そうだ!プレゼント!プレゼントっすよ!昔っから女の人は心のこもったプレゼントに弱いと相場は決まってるっす!」

プレゼント、と呟いて東西が手を離す。忌闇、その隙を突いて頭脳フル回転、さらに畳み掛ける。命がかかっていると人間能力が跳ね上がる物である。

「この間コガにお礼で料理を作っていったんですよね、なら今度はそれを火焔ちゃんにもやればいいんですよ!えーと、ほら可愛いアクセサリーとか!とか!」
「アクセサリー、ですか。・・・それも考えましたがあまり高価な物を贈ると負担になりますよ。火焔ちゃんはまだ未成年なんですし」

忌闇、本当にめんどくさい人だなーと思いつつさらにさらにさらに頭脳超回転。電球点灯。

「あー、だったら価値がつけられないものにすれば・・・そ、そうか!そういうことだったんっすね!?なるほどこれは俺に与えられた天の啓示だったんっすね!?うおっしゃああああああ久しぶりに燃えてきたっすー!!でぃわ、ちょっくら行ってくるっすよー!!」

忌闇、突如雄たけびを上げて前掛けと帽子を脱ぎ捨てるとカウンターと東西を飛び越えて着地。一目散に入り口扉を蹴破って走り去った。
数秒の後、我に返った東西がこれは追いかけたほうがいいな、と席を立つと、くい、と抵抗があった。振り返ってみると眼に涙を一杯に貯めたリズが懸命な表情で服のすそに掴まってぶら下がっていた。どうした、と尋ねると殆ど泣き声でぽつり、と

「お、お客さん、きちゃいます・・・」

ちょうどその時、忌闇が蹴破った入り口から団体客がぞろぞろと入ってきた。お昼時なのである。

6時間後。東西は中華鍋を振るい続けて傷めた左手と、千切りのし過ぎで傷めた右手を庇いながら居宅にたどり着いた。あの後、客と店員に罵声を浴びせられながら必死で鍋と包丁を握り続けると、終わる頃には少し落ち着いていた。さらにその後、略奪系考古学者の本領を発揮したインディー○ョーンズばりの冒険の末に、盗掘品を山のように抱えて戻ってきた忌闇を店員とともに袋叩きにして遺跡発掘の現場に謝りに行った頃には半分くらいいつもの調子を取り戻していた。
1日を振り返ってみるとろくでもなかった。まず、また女の子を泣かせてしまった、とひどく暗い気持ちになって、その顔だとまた泣かれてしまうと思い無理矢理笑った。それから忌闇さんには悪いことをしたな、と思って明日謝りに行こう、と決めた。
最後に思い出したのはペンダントネックレス。忌闇が抱えていた煌びやかな盗掘品の中でも浮いていたためか、妙に眼に留まった簡素にして無味な物だった。だが像を思い浮かべることも出来たし、手触りもしっかりと残っていた。

しばらく考えた後、がばっと体を起こすと靴を履きなおしてもう一度出かけ商店街へ。幸い店で想像通りの材料を揃えることができた。ただどうしても揃わなかった一つだけ、中央のメダリオンの部分だけは野生の木を探して自分で手を加えることにした。。
なんせ宝石を買うほどの甲斐性が無い物だったからそこも木製。

木材を磨いて形を整え星と太陽をうっすらと掘り込む。
故郷を飛び出す時に姉に教わった幸運のシンボル。それに赤い花を磨り潰して摺りこんで色を付けると出来上がった。

ちょうど二つ目の夜が明ける頃だった。



そしてそんなこんなで作られたペンダントだったが、クリスマスに会いにいけなくなったためについに出番が回ってきたのである。
果たして本当に幸運をもたらす効果はあるのだろうか?拗ねているらしい火焔はそもそも受け取ってくれるのか?
それはこの先の結城火焔しか知らないことであるのだった。
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