『リゾナンターЯ(イア)』 59回目


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紺野の私室。
そこには血溜まりに横たわる「不戦の守護者」と呼ばれた女。
紺野は女を見下ろしながら、思いを馳せる。

「何や。今更後悔か?」
「いや。昔のことを少し、思い出していただけですよ」

現れたのは、着物姿に番傘を肩にかけた「首領」。
この世界とは別の世界で組織を束ねる者。

「そう言えばあんたは、『ダンデライオン』の出身やったもんなあ」
「よく御存知で。そちらの世界にもあるのですか?」
「まあな。うちじゃ『蒲公英隊』っちゅう名前やけど」

「首領」を含む5人の能力者たちによって創設された「アサ・ヤン」。
そこからさらに「M」、そして「ダークネス」へと発展と変遷を繰り返す中において、「不戦の守護者」が立ち上げたのが組織内部
隊「ダンデライオン」だった。


「しかし。『ダンデライオン』の創設メンバーの二人を同時に失う、か。うちの世界の子たちは仲ようしてんで?」
「仕方ないでしょう。こちらの飯田さんの件はあなたの世界の事情が絡んでますし、矢口さんにしてもこちらの世界のこれからを考
えると、放って置くにはあまりに危険でしたからね」
「とか何とか言うて。圭織の件はあんたの私情が絡んでるんと違うの?」

からかい口調の「首領」に、紺野は肩を竦める。

「それより、この飯田さんの能力。早く回収しないといけないんじゃないですか?」
「慌てなさんな。今やるわ」

「首領」が、番傘を前に突き出し、一気に開く。
すると、「不戦の守護者」の死体から目玉が二つ、ふわふわと宙に浮かびはじめた。
主を失った双眸は、頼りなさげに「首領」の元へと飛んでゆく。

「なかなかシュールな絵だ。水木しげるさんが見たら喜びますよ」
「目玉、言うても本物やない。これはあくまでも能力の『イメージ』や」

かつて、「不戦の守護者」は任務中に両目を失明するというアクシデントに見舞われた。
その時視力とともにもう一つの能力を与えたのが、別の世界にいた「首領」であった。


「うちんとこの圭織が未来視の能力を持て余してな。しばらく預かってもらってたんやけど、返却の時期が来たっちゅうわけ」
「返却…相手の能力を受け取り別の相手に貸す『高利貸し(システム・シャイロック)』の能力ですか。リスクなしで対象の資質を
問わず能力を貸与できれば、興味深い話なんですけどね」
「アホ。世の中ノーローンで借りれる金貸しなんてないねんで?」

言いながら、部屋の回転椅子にどっかと腰掛ける「首領」。

「コーヒーでもいかがですか?少々煮詰まってはいますが」
「そんなんよりビール、ビールがええな。キンキンに冷えたやつ」
「アルコールは脳の働きを阻害するので、ここには置いてませんよ」

紺野のにべもない対応に、眉間にしわを寄せて抗議。
どうやら酒好きなとところは全世界の「首領」共通のようですね。
そんなどうでもいいことを実感し、「叡智の集積」は一人で納得していた。

「何一人でにやにやしてんねん。酒がないなら、用も済んだしうちは戻るわ」
「お疲れ様です」
「ところで。あんたもこの『高利貸し』の能力、試してみいひん?もしかしたら新しい才能が芽生えるかも…」
「結構です」

「首領」の言葉を、紺野は途中で遮る。


「今の状況を、結構気に入ってるんでね。私は無能力者のままで十分です」
「さよか」

首を振りつつ、踵を返す「首領」。
草履が床をする音が、徐々に遠ざかってゆく。去り際に。

「あんた、変わってるな。うちの世界にも紺野はおるけど、文武両道で生真面目やでえ?」
「そうですか。褒め言葉として受け取っておきます」

そして部屋は再び紺野一人だけになった。
静かな、暗闇。

暗闇は時として過去に流された遠い記憶を呼び起こす。
斃れた亡骸はじきに「鋼脚」の息のかかった連中が運び出すだろうが、記憶までは消えない。
「ダンデライオン」。「不戦の守護者」が提言したという、能力者・非能力者を、戦闘員・非戦闘員を問わないオールマイティな活
躍を期待された部隊。だが、部隊は守護者の思惑からは大きく外れ、空中分解することとなる。

さて。予定通りならば同じ元「ダンデライオン」の二人がぶつかっているはずですが。
戦いの行方は、どうなると思います?飯田さん。

血を流しつくし冷たくなった亡骸は、何も答えなかった。





投稿日:2014/02/22(土) 00:27:48.72 0