(92)663 「updated」的な何か


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「ま~ちゃん、雨は嫌い。お客さんが来ないんだもん」
「お前はちゃんと接客できてないだろうが」

その日は朝から冷たい雨が降り続いていた。
その為か、喫茶リゾナントを訪れる客の数もとても疎らで。
あまりに手持ち無沙汰な看板娘達は食器棚を整理し始めた。
ピカピカに磨かれたグラスはまるで鏡みたい。
元々綺麗にされていたカップやソーサーもお化粧直しした。

「これってお菓子」

小物を入れておく引き出しから香音が何かを見つけた。
口にしようとした香音を止めた春菜は音楽を記録しておくMDだと言った。

「えぇMDって何ね。えり、知ら~ん。ずっとアイポッ…ヒヒィ」

余計なことを言った衣梨奈を射竦めたさゆみ。
その黒髪はまるで伝説の妖怪メデューサのよう。
聞いてみたいと里保が言い出すと、メデューサは物置に突進して古ぼけたコンポを探し出した。

「これは…ライブの音源?」

ピアノとギターだけを伴奏に美しい女性の歌声。
曲が終わると決して多いとは言えないが、温かい拍手が響く。

「えり、知っとうよ。こういうのをワッチていって違法行…ヒィ」

衣梨奈を視殺したさゆみがMDの仔細を話し出す。
これはリゾナントで昔行われたライブを録音したもので、歌い演奏しているのは李純と銭琳。かつてさゆみと肩を並べて戦った仲間だ。

「リゾナントのお客さんが少なくなったからテコ入れのために歌の上手い二人にライブをしてもらおうって」
「え~リゾナントつぶれちゃうんですか」


サンドイッチを食べるのをやめ、悲しげな声を上げる香音ちゃん。
人の話はよく聞こうよ。そしてもうちょっと食べるのを(ry

「~というのは口実でね。本当はジュンジュンとリンリン二人の為に開いたんだって後で愛ちゃんが言ってた」

七人の日本人に囲まれた二人の中国人。
自由奔放そうなジュンジュンもどこか遠慮がちで、ほんとは人懐っこいリンリンもどこか消極的で。
そんな二人を元気付け積極的になってもらうために行ったライブの模様が終わった。
…と、明らかに音源が違う曲がスタートするとさゆみの目の色が変わる。
これはダメと音源を止めようとするさゆみの前でダンシングしてコンポを守る亜佑美。
やなのやなのと駄々を捏ねるさゆみを聖が優しく宥めた。

「それはライブ前日に地下のトレーニングルームでした練習の録音だけど、…さゆみも歌ってるの」

リンリンがアドリブで演奏し始めた曲にアドリブで歌詞をつけ歌い始めた愛。
試行錯誤を繰り返し、やがて一曲の歌らしきものの形が出来上がっていく。
聞いた者の心を癒すような歌いだし、切々と何かを訴えるような中国語のサビ。
歌はやがて九人の合唱となったところで唐突にMDは終わった。
え~という失望の音。
ほっと胸を撫で下ろすさゆみ、しかし。

「♪都会での~」

絶対音感と超聴力を持つ少女、香音が耳にした歌を再現し始める。
それにナビゲートされるように、歌に自信があるさくらが続き、里保が優樹が聖が後を追い、亜佑美や衣梨奈、遥も加わっていく。
そしてやがてリゾナントに響く九つの歌声。
それは録音されていたものと比べれば明らかに拙かった。
しかし同じように人が生きていく歓びの証しだった。

「ま~ちゃん、雨振りも好き。 だってま~ちゃんのところが雨ならどこか晴れてるってことだよ」







投稿日:2014/02/15(土) 15:06:22.64 0