『まりまりもりもり』


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もう、りほりほったら。今日という今日は容赦しないの。

さゆみは、里保の部屋の惨状を前に腕撫していた。
リゾナンターのエース。戦闘面において、そして時にはメンバーの士気を高める場面において。まさに万能の活躍をしている彼
女ではあったが。
部屋の片づけ、この点において他のメンバーの追随を許さないほどに苦手であった。他にもよく遅刻をしたり、歩くのが遅かっ
たりと色々と欠点はあるのはさておき。

とにかく、部屋が汚い。
部屋中を埃が舞っているのは当たり前。足の踏み場もないほどに部屋が埋め尽くされている。サイダーの缶、お菓子の箱、衣服、
CDケース、雑誌…中にはどういうわけか会社四季報まで紛れ込んでいる。株に詳しい能力者でも目指すつもりなのだろうか。
部屋の中で嵐でも吹き荒れたかのような散らかりように、さゆみは眩暈すら覚えてしまう。
噂には聞いていたが、ここまでひどいとは。


しかしながら、さゆみはリゾナンターのリーダーである。
メンバーのこのような醜態を、そのままにしてはいけない。なぜならそれがリーダーの務めだから。決して何らかの下心がある
わけではない。里保が目を離している隙に部屋のカギをゲット、すぐさま合鍵屋に走ったのも、それがリーダーの仕事だから。

さてと。お宝収集…じゃなかった。部屋の整理をしないと。

なぜか目をらんらんと光らせながら、片づけるもの、捨てるもの、そして第三の部類に入るもの、と丁寧に袋に分類してゆく。
最後の袋は企業秘密、たとえそこになぜか里保の私物とかが入れられてもさゆみを責めてはいけない。なぜなら、それがリー
ダーの仕事だから。

スーとかフッフフフとか気味の悪い声を漏らしつつ、部屋の片づけに勤しむさゆみ。
そんな中。ごみの山から、小瓶の水に浮かぶ緑色の丸い物体を発見する。

これは…まりも?

里保は、去年あたりから植物を育てるのを一つの目標としていた。しかし、素人でも楽に育てられるはずのかいわれ大根、ミ
ント、ラディッシュ、バジルが次々に枯れる、腐る、しまいには消滅する。本人は水の力が強すぎるから…と能力のせいにし
ていたが、明らかにそれ以外の原因で植物を死に至らしめているのは誰の目から見ても明らかだった。最後の植物が天に召さ
れてからは、てっきり植物を育てることはあきらめたものかと思っていたが。


まりもは、世話をしなくても枯れたりすることはない。
これなら大丈夫だろう、そうドヤ顔をしつつまりもを購入した里保を思い浮かべるさゆみ。甘いおかしが食べたいの、みたい
な顔は放送コードぎりぎりだ。ところが。

球形をしていたはずのまりもが、みるみるうちに崩れてゆくではないか。
さゆみは思い出す。天然に丸まっているのは阿寒湖のまりもなどごく一部のもので、その他のまりもは人の手で丸めて作られ
ることを。そしてそうやって作られたまりもは形が崩れやすいということを。何でそんなことをさゆみが知ってるかと言うと、
それは大人の事情。

りほりほの心を、植物を愛する心を闇に閉ざしてはいけないの!!

さゆみは、ここぞとばかりに小瓶を手のひらで包み込む。
そう。彼女は、自らの治癒能力でまりもを復元させようとしていた。
ああ、何というリーダー愛。何というメンバー愛。


そんなさゆみの視界に、あるものが入る。
薄ピンクの、くしゃくしゃと丸められたそれは。
思わず、レッスン(稽古)後すぐ、ですかね、これは。これは。レッスン後すぐの方がいいね。何となく。とそれが脱ぎ捨て
られた状況を妄想してしまうほどの魔力を秘めていた。いわゆるひとつの、下着。

その突如として上がるテンション。
それはすぐさゆみの変化をもたらす。あまりの興奮に姉人格である「さえみ」を呼びだしてしまった結果。
手のひらの中の小さな命は、哀れ消し炭に。
里保がマリモ君と密かに名づけていた存在の、短い一生であった。

夜、里保が自らの部屋に帰り、変わり果てた姿になったマリモ君を見て絶句したのは言うまでもなく。






投稿日:2014/01/24(金) 01:09:39.77 0