『RHAPSODY』


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「ふふっ、あー面白かった。次は何見よっかな~」

亜佑美は自室で、録りためたDVDを鑑賞していた。
積み上げたDVDを1枚1枚確認していると、亜佑美の手が止まった。

「…なんだこれ?何も書いてない…」

いつもは録画したディスクには、必ず何か番組名などを書き記している。
何だろう?書き忘れたっけ?
確認の為に、そのディスクを再生した。

「…?」

テレビ画面に映し出されたのは、街や自然の風景が統一性もなく、そしてセリフやナレーションもなく、ただ一定の時間で次々と切り替わっていく映像。
こんなものは録った記憶がない。何か間違えて録ったのをそのままにしていたのだろう。
そう思い、消去しようとリモコンを向けたその時。

「んっ?」

急に映像の質感が変わった。
また、今まではわりと明るい映像だったのが、どんよりと暗くなり、何が映っているのか判別するのに少し時間を要した。


「…何これ?井戸?」

鬱蒼とした森のような場所の中、画面中央に古ぼけた白い円形の井戸がある。
なんだこれ、どっかで見たことある。
リモコンを握ったまま、画面に引き込まれてゆく亜佑美。

「ヒイッ!」

小さな悲鳴が漏れた。
井戸の中から、白く細い腕が伸びてきたのだ。
髪の長い頭部が現れ、胸部が現れ、そして全身が這い出てくる。

カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ

消去、停止、電源、その他あらゆるボタンを押すが、映像は止まらない。
じわりじわりとにじり寄ってくる髪の長い人物は、やがて画面一杯になり。

「!!!!!!!!!!!!!!」

ニュッ、とついさっき井戸から出てきた時と同様に、画面から這い出てきたのだ。

「イヤっ!イヤだっ!嘘だ!」

手当たり次第に物を投げつける亜佑美だが、髪の長い人物は全く怯むことなく近付いてくる。
そして、その髪の隙間から。
亜佑美を睨みつける、血走った眼。

「キャーーーー!!!!!!!!」


ガタタッ

ソファーから転げ落ちた亜佑美。

「いたたっ…ゆ、夢?」

テレビ画面に何も変わりはなかった。
特に物も散らばっておらず、そしてあの何も書き記されていないDVDは見当たらなかった。

「…嫌な夢だったなー。なんか疲れた、寝よ」

亜佑美は床に就いた。


翌日。

「あゆみん、おっはよー」

この日亜佑美は、春菜・優樹・遥と共にリゾナント2階に集まることになっていた。
一番乗りしていた亜佑美に、続いてやってきた遥が声を掛けた。

「…。」
「あれ?あゆみん、おはよってば」

何故か返答のない亜佑美。
遥が再び声を掛けたその時。


バシッ

「!!?」

何かが遥の体に当たった。
床に落ちたそれは、ヘアスプレーのフタだった。

「拾って」
「はっ?」
「拾って」

ぶっきらぼうに口を開く亜佑美。その手にはヘアスプレー。
今のフタは、亜佑美が投げつけたのだ。

「…!?」

思いもよらない行動に、言葉の出ない遥。
フタを拾い上げ渡すと、遥は怒って階下へドスドスと音をたてて降りていった。

「くどぅーどうしたの?」
「どーもこーもねーよあゆみんのヤロー!」

入れ違いでやってきた春菜。
何故遥が怒っているのかよくわからないまま、階上へ上がってゆく。


「あゆみん、おはよー」

春菜の声に、ゆっくり振り向く亜佑美。
そして、春菜の全身をなめ回すように見つめる。

「ど、どうしたの…?」

困惑する春菜に、亜佑美が立ち上がって近付く。

「はるなん…」

甘い声を出す亜佑美に、春菜はどぎまぎする。

「な、なに?」
「はるなん…。チューしよ」
「へえっ!?」
「ねえ、しよ?ねえねぇ」
「やだ、ちょっ、やめて!やめて!」


【自主規制】


物音に気づいた遥が、階上に上がってくる。
ドアを開くと、そこには2人がぐったりと倒れていた。

「うわ!ちょっと、どうしたのさ2人とも!はるなん!あゆみん!」
「ん…ん…?」

先に声を発したのは亜佑美。

「何してんだよ!おっきな音出してさ!」
「…あれ?くどぅー…?」
「何?どっか頭でも打ったの?」

そのうちに春菜も気がつき、2人の頭部を確認してみたが、特に外傷はない模様。
念のためさゆみにはヒーリングを受けたが、春菜は気分が優れないようだ。

「今日はやめにしよっか。はるなん一応病院行きなよ」
「うん、そうする…」
「それにしてもまーちゃん遅いね」
「あ、ちょうど電話来たよ…はーい、もしもし。え!?はぁ!?ふざけんなし!まあいいや、はるなん具合悪いみたいだから、今日は中止だから。明日ね」
「どしたの?」
「今起きたってさ…」
「フハハw」
「でさ、さっきの話だけどさ。本当に覚えてないの?」
「うん…それ、本当に私がやったの?」

亜佑美は、先程スプレーのフタを遥に投げつけたことを、全く記憶にないという。
また、今現在の亜佑美は普段通りで、嘘を言ってるようにも見えない。
まるで先程は、何かにとりつかれていたかのように――


――そして翌日。

「ねーこれ知ってる?新しいアプリ」
「なになに?」

昨日と全く同様に、一番乗りは亜佑美、続いてやってきた遥。
あと2人の到着を待つ間、亜佑美が見つけたアプリで写真を撮ってみることにした。

ガシャガシャガシャガシャガシャ

連写の音が響く中。

「…。」
「うわあッ!?」
「なにはるなん!?いつ入ってきたの!?」
「…ん?あ、あれ?私いつの間に…?」
「もう~ビックリさせないでよ~」
「具合はもういいの?」
「う~ん…具合が悪いっていうよりは、なんかふわふわした、変な感じ…」
「病院も行ったんだよね?」
「うん、でも異常はないって」
「何なんだろね。あ、そうだ、今の写真」

亜佑美は携帯を確認する。
しかし、その撮影結果に目を疑った。

「!!?」












「な、何これ…」

生気の感じられない表情で、物音をたてることなく急速に移動した春菜を捉えた写真。

「やだはるなん、やめてよ…」
「冗談キツいよ!」

そう言って2人は春菜の方を振り向く。
するとそこには、春菜が写真と全く同じ表情で佇んでいた。

「…。」
「ヒッ!?」
「やめろよはるなん!ふざけんのもいい加減にしろよ!」

遥は春菜の両肩を掴み、激しく揺さぶる。
それでも表情を変えることのない春菜に、ただ事ではないと感じ取った遥は手を離した。
その瞬間のこと。

ケタケタケタケタ

突如として春菜が笑いだした。
しかしその声は、春菜のものではなかった。


“体ダ!体ヲ手ニイレタ!私ノ肉体ダ!”
「な、何言ってるの…?」
“コノ体ハ居心地ガ良イ、貴様ラノ体ハ獣ノ気配ガスル、好カン”
「どういう事!?お前は一体何なんだよ!」
“私ハ…貴様ラニ殺サレタ…能力者ダ。貴様ラニ復讐スル為、地獄カラ甦ッタノダ”

そう言うと、2人の首を左右それぞれの腕で掴み、締め上げた。
普段の春菜からは想像できないほどの力だ。
2人は足をばたつかせて一撃を見舞うことで、ひとまずその場を切り抜け、距離をとった。

「ゲホッ…、そうか、昨日あゆみんの様子がおかしかったのもお前のせいだな!」
“ソウダ、最初ハソイツニ取リ憑コウトシタ。ダガ、コイツニハ獣ノ気配ガシタ。貴様モ同様ダ。”
「獣の気配…」
“ソコニコイツガ現レタ。コイツハ獣ノ気配ガ無イ。私ノ新タナ肉体トスルニ相応シイ”
「そんな勝手な事、させるもんですか!」
「お前なんかさっさと追い出してやる!」
“フフフ…ドウヤッテ追イ出スト言ウノダ?”
「どうやって…。そうだ、生田さん呼ぼう!生田さん前に、鞘師さんが憑依された時に…」
「そいつは生田さんじゃダメだよ」

そう言ったのは、部屋の入り口に立っていた優樹。


「まーちゃん!いつからいたの?」
「生田さんじゃダメって何で!?」
「生田さんの力は人間にはきくけど、そいつ人間じゃないもん。キツネだもん」

優樹の言葉に、顔をしかめる“春菜”。

“チッ…マサカ、ソウイウ事ガワカル奴ガイルトハ…”
「キツネ?それで獣の気配がどうとか言ってたんだ」
「ふんっ、じゃあ私達がやっつけたってのは嘘ってことか」
「こいつは、キツネ持ちが使うキツネだよ。やっつけた人の仲間がそのキツネ持ちなのかも」
“ソ、ソウダ!私ハ京都伏見稲荷ノ御狐様ダ!貴様ラナド全然怖クナイ!”
「ウソウソ。おいなりさんになれなかったキツネでしょ」

自身の正体を優樹に次々と見破られ、次第に焦りを見せる“春菜”。

「あぬみん!まさと一緒にあいつの腕と体を押さえて!どぅーは足押さえて!」
「う、うん!」
「わかった!」

体を横たわらせ、押さえつける。
“春菜”は激しく抵抗する。


“クソーッ!離セーッ!”
「ちょっと!こんなのずっと押さえてらんないよ!」
「まーちゃん、これからどうすればいいわけ?」
「んじゃあぬみん、ライオンさん出して!そんで、はるなんの口に入れて!」
「く、口に!?リオンを!?」
「ライオンさんにキツネ食べてもらうから」
“!!!! ヤ、ヤメロ!ヤメロ!”
「あゆみん早く!こっち1人じゃもう無理!」
「あ、うん!リ、リオーーーン!」

姿を現した青き獅子は、“春菜”の口の中へと入っていく。
その腹部が激しく蠢く。

「すごい…はるなんの体の中で戦ってる…」
「話しかけないで!お腹を食い破っちゃう!」

これまでと全く勝手の違う戦いに、困惑しながらも集中している亜佑美。
固唾をのんで見守る優樹と遥。
そして――


“ギャーーーーッ!!!!!!!!”


“春菜”は断末魔の声を上げ、そして気を失った。
役目を終えた獅子は、亜佑美のもとへ戻り、消滅した。


その後、正気を取り戻した春菜。

「それでですね、あゆみんが『チューしよ』って…」
「キャー!!言わないで言わないで!」

亜佑美から狐が春菜に乗り移る為にキスを迫ったことを、しばらくネタにされる亜佑美であった。






だーいし話というよりは10期話になってしまいました
祝ってる感は全くありませんがだーいしおめ




投稿日:2014/01/07(火) 17:10:04.71 0