(91)67 名無し生誕記念。。。(枕投げの後で)


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日々ダークネスとの戦いに明け暮れるリゾナンターたちも、たまには骨休め。
店主さゆみの知り合いであるというきのこ頭のおじさんに店番をしてもらい、一行は関東近郊の旅館に一泊二日の小旅行。

「うわぁー、ひろーい!!」

旅館の部屋に入るなり、優樹が部屋を走り回る。
まーちゃんは子供だなあ、などと言っていた遥もいつの間にか一緒に走り回る。
埃がたつからやめなさい、というさゆみの一喝があるまで部屋の中のかけっこは続く。

和室の落ち着いた内装、大きく取られた窓からは緑豊かな景色が広がる。
窓際に荷物を置いた亜佑美は、外を眺めながら何とはなしに故郷である仙台のことを思い浮かべていた。
そんな中で、何かがひっかかる。

あれ?何か、大事なことを忘れてない?


「亜佑美ちゃん、どうしたの?」

窓辺に立ち思いにふける姿は、何かに悩んでいるように見えたのか。
先輩の聖が声をかけた。

「や、別に、何でもないですよー」
「そっか。あのね、ルームサービスで人数分のおしるこがただでもらえるんだって」
「え!あれですよね、大根とかおもちとか入ってる。おしるこ?お雑煮?どっちでしたっけ」
「もうわけわかんないよ。フロントでもらえるみたいだから。いこ?」
「は、はい」

食べ物の話でテンションMAX、大事なことは遥か遠くへ飛んでいってしまった。


そして夜。
温泉に入り、郷土料理の鍋に舌鼓を打った後。
明日は早く出発しなければいけない関係で、早々と就寝の用意をすることに。
妨害する優樹、踊り歌うさくら、そしてなぜかでんぐり返しをはじめる香音。
そんなこんなで、無事に人数分の布団が敷きあがった。

「じゃあ明日は早いから、もう寝るよー」

さゆみの呼びかけにより、めいめい布団の中に潜り込む。
しかし。

「まくら投げとかやってみたいな…」
「鞘師さんがまくら投げやりたいって!!」

ぽつりと呟いた里保の一言をすかさず拾う亜佑美。
明日は早い、など何のその。あっという間にまくら投げは是であるという空気が流れる。
修学旅行の代表行事であるかのようなまくら投げ。そのキーワードは、その出自から修学旅行にまったく縁のなかったメン
バーたちの心を一気に鷲掴みにした。もちろん、さゆみとて例外ではない。


「めしくぼぉ、おりゃー!!」

さっそく優樹の一撃が、春菜の顔面を直撃。
それを合図に、右から左から枕が飛び交う。
そんな中、里保の鋭角からの枕が衣梨奈を襲った。水軍流において、就寝時に敵の襲来を受けた際に丸腰だった場合。枕を
投げ敵を撃退したという。そんな水軍流の極意の餌食になりそうだった豹柄パジャマの少女だったが。

衣梨奈は軽やかな動きで、枕をかわす。
標的を失った枕はまたしても春菜の顔面に直撃した。

「えりはいつでも臨戦態勢やけんね」
「…やるなえりぽん」

たかがまくら投げ、されどまくら投げ。
至る所で白熱する投げ合いを、一人どや顔でスマホ撮影するものがいた。


ふふ、みんな熱くなっちゃって。

旅の思い出を、形に。
日ごろは悪との争いでこんなことをしてる暇はないからこそ、こういう何気ない風景こそが愛しく思えるもの。そんなことを
考えながら撮影してる私って大人。というちょっと寒い思惑でカメラマンを買って出た亜佑美。

が、急に部屋が暗くなる。
とともに、次々に枕が亜佑美目がけ飛んできた。

「いたっ、ちょ、やめ、って、言うかっ、枕っ、多すぎ!?」

まるで亜佑美以外の全員が、亜佑美に集中砲火を浴びせているような。
これは何か、寒いどや顔をしてみせた私に対する罰か。そんなことがこの法治国家で許されていいのか。
枕を投げつけられている、というよりもみくちゃにされている。

ひどい、あんまりだ。
泣きそうになったところで、部屋の照明が再びつけられた。


「…あれ?」

布団の上には、いつの間にか置かれたテーブルと。
「あゆみん 誕生日おめでとう」の文字の入ったケーキが。

はっぴばーすでーとぅーゆー はっぴばーすでーとぅーゆー
はっぴばーすでーでぃあ あーゆみーん はっぴばーすでーとぅーゆー

歌い終わった後に、メンバーたちが派手にクラッカーを鳴らす。
クラッカーから飛び出たリボンまみれになりながら、亜佑美は思い出した。

「あゆみーん!おめでとー!!!」

そうだ。今日は私の誕生日だったんだ。

ダークネスとの戦いの毎日で自分自身が忘れていた。
今日は亜佑美の17歳の誕生日。


「そっか。あれからもう2年以上経つんだ…」

亜佑美が、喫茶リゾナントのドアベルをはじめて鳴らしたのは14歳の秋。
それがもう、2つも年を重ねている。改めて自らの歩んだ道の距離を感じる。あっという間だったような気もするし、果てし
なく長かったような気もする。そもそも、時間なんて感じなかったような気さえする。

ただ一つだけ言えるのは。
これからも、その険しく辛い道を歩んでゆく。今、目の前にいる仲間たちと。
うれしさで滲んでゆく視界を拭いながら、亜佑美はそう確信していた。





投稿日:2014/01/07(火) 00:03:06.19 0