■ ナイトアンドチワワ -工藤遥・佐藤優樹- ■
膝を抱え、佐藤優樹がすわっている。
耳をふさぎ、キッと引き戸を睨みつける。
【振動操作】を持つ優樹にとって、こんな引き戸など何の意味もない。
工藤のその位置、その姿勢、その身体から発するありとあらゆる音が、すべて聴こえてしまう。
耳などふさいでも意味は無い。
彼女は音を、全身で、心で、『感知』してしまっている。
でも、塞がずには居られなかった。
どぅーは、まーに、泣いてるところ、見られたくない、聴いて欲しくないんだ。
でも、考えずには居られなかった。
なんでないてるんだろう?なんでなんだろう?
まーのせいかな?まーがおふろしつこくはいりたがったせいかな?
なんでかな?まーがわるいのかな?
おなかいたいのかな?まーがさすってあげたい。
まーのくどぅーがないてる。
なんでかな?
わかんない。
やっぱり、わかんないよ。
んーん、わかっちゃいけない。
そうだ、わかっちゃいけない。
わかっちゃったら、きっとまた、どぅーはおこるから。
おこって、それから、また、ないちゃう、から。
でも、一つだけ、わかっていること。
どぅーのことはわかんないけど、まーにはわかってること。
どぅーのことは、まーが守ってあげないとだめなんだ。
佐藤の中で、それだけは、もう、決まっている。
だって、どぅーは、まーちゃんのものだから。
石田が静かに、佐藤に寄り添う。
その背中に、背中を合わせる。
佐藤は動かなかった。
まるで、姫の居室を守る、騎士のように。
そんな三人を、譜久村が見守る。
ふと、立ち上がり、キッチンへ……
うん、熱いお茶を、いれよう。
投稿日:2013/12/31(火) 04:05:10.70 0
最終更新:2014年01月03日 01:23