■ セットドキュメントミズキ -譜久村聖- ■



 ■ セットドキュメントミズキ -譜久村聖- ■

「んふー☆んふー☆かわいいよーっ☆」
「えっ?ええっ」
「あゆみちゃんかわいいよぉ☆んふー☆」
「あっあの…譜久村さん?コレって…どういう意味が」
「やだなぁさっき言ったじゃあん☆聖は【複写】するとき、相手のひとと『接触』してなきゃいけないんだよぅ☆」
「いや、それはあの、きっ聞きましたけど、こんな、その抱き合っ……」
抱き合う。その単語を口にした途端、かぁっと耳が赤くなる。
「やだぁ☆あゆみちゃん耳あかぁーい☆あれ?首と肩も赤いよぉっ」
「ちょっTシャツのえりから中をのぞかないでくださいっ!」
「あゆみちゃんも聖のコト、覗いてていいんだよぅ」
「覗いててって、ずっと覗き続けること前提で話さないでくださいっ」
ソファーの上で、じたばたと、もがく。

だが無駄な抵抗だ。
石田亜佑美は、確かに筋肉の塊のような引き締まった肉体ではある。
全身にくっきりと筋肉の凹凸が浮き出ている。
だが、身長150cmジャスト。
まるで小学生のように全てのパーツが『小さい』。
そんな彼女が譜久村聖のボリューミィな肉体の、圧倒的な『質量』にのしかかられ、
両腕をムッチリと抱きかかえられ、両ももをこれまたムッチリと両ももに挟みこまれ、
ふくらはぎがこれまたふくらはぎにムッチリとからみつかれて……
要するに、一切、逃げ場はないのである。

「だからぁこうやってぇ、単語帳カード一枚づつ摘んでぇ、あゆみちゃんと『密着』しながら、頑張って【複写】してるんだよぉ☆」
接触から密着に言葉がすり替わっている。
いったい何を頑張っているのか、もはや石田には、よくわからなくなってきている。

そもそも、このひととは、まだまだ、出会って日が浅いのに、
なんで、そんなひとと、こんな密着して……み、みっ……
「あれぇ?あゆみちゃん、なんか全体的に赤いよぉ☆んふー」


「う"ーっうーっ」
唯一、自由に動く首をめぐらす。
こっこんなこと、ふっ、二人っきりで…って二人っきりじゃないけど。

そう、たしかに二人っきりではないのだが、絶妙な空気感の中で二人っきりになってしまっている。

ここは、リゾナントのすぐ近くにあるアパートメントだ。
石田と佐藤と工藤、3人の仮住まいである。
佐藤と言えば、すぐ目の前のカーペットに、よだれを垂らして熟睡中。
そして、工藤は、先ほどから、お風呂タイムに突入している。

こんなときに限って、長風呂にもほどがあるでしょ!。
早く出てきてほしい、いや待って、今、出て来られると、それはそれで困るような…

もはや、石田も相当きている。

「んふふー☆あゆみちゃぁ~ん☆」
譜久村は侵略の手を緩めない。
石田唯一の牙城、まだ自由な首から上へ、そのふくふくしいほっぺと、空気を吸い込む音がここまで聞こえる鼻が、容赦なく追撃に入る。
譜久村のほっぺと鼻がムッチリと密着せんと石田のうなじから耳の後ろを執拗に、執拗に追いかける。

「あゆみちゃんいい匂い~☆」
「「ふぅふっふっふくぅふぁらさ……だ…だめ……ですって、ふはっ」
「だめじゃないよぉ~聖、あゆみちゃんの【空間跳躍】のカードいっぱい作っていっぱい練習するんだよぉ」
「えっ……え……」

「聖、しってるんだよぉ。あゆみちゃんが毎日フラフラになるまで【跳】んでるの。しってるんだよぅ」
「まだ出会って少しだけど、いっぱい練習してるの、しってるんだよぅ。」
「だから、聖も頑張って『あゆみちゃんを上手に』なりたいのっ!」

日本語がおかしい。


「聖の作るカード、最初はその人の力の半分も再現できないの」
「でも、作ったカードを聖が使い続けることで、次に付与するときに、少しづつ、でも、どんどん強い力で再現できるようになるのっ」
「だから、はやくあゆみちゃんのがんばった、『まんま』の力で再現できるようになりたいっ」

「譜久村さん……」
なんとなく、良い事を言ったような雰囲気が流れ、石田もその雰囲気に流される。
だが、その隙を譜久村は逃さない。
「あゆみちゃんといっしょに練習したいの!だからっ!がんばりすぎないように、こうやって!捕まえてさぼらせちゃうのーっ☆」

日本語がおかしい、いや、もうそれどころではない。
ついに、最後の牙城、石田の頭がソファーの手すり部分に押しつけられ、ムッチリムッチリ固定される。
譜久村のほっぺと鼻が、容赦なく、石田のうなじと耳とを蹂躙する。


詰んだ。


「ああぁっふっふぅ」

――――


譜久村聖:【能力複写(リプロデュスエディション;reproduce addition)】

物品や自分自身、他の生物などに他者の能力を付与する。

■付与される能力の強度・精度
付与された物品や生物を【付与物】と仮称する。
基本的にはオリジナルの5割程度
同じ人物由来の能力を使い続ける(【付与物】から能力を開放)ことで、
その人物の持つ能力の威力、強度の再現度が上がっていく。(オリジナルを超えることもありえる)

■複写から付与までの作業における制限
コピー元の能力者とは付与作業の間、接触し続けている必要がある。
コピー先の相手や物品とも同様に接触し続けている必要がある。
完了までの時間は慣れと相性によって様々。条件が悪ければ数時間、良ければ数分、最速ならばそれ以下の時間で済む。
本人の気力体力の消耗も、慣れと対象との相性に大きく左右される。
回数にすると一日数回から、数十回程度まで、幅がある(一回の時間を仮に2分とすれば1時間に30個の【付与物】が出来上がる事になる)。
慣れない要素が増えれば一回の作業で疲れきることもありえる。
途中で集中が乱されると失敗する。たわいのない内容であれば会話ぐらいは可能。
逆に極限の集中状態であれば、通常ではありえない速さで完了できる場合もあるかもしれない。

■付与する対象への制限
ひとつの対象に一人の能力を一回分付与できる。(例えば二重能力者ならば全部の能力を)
自分自身の能力、つまり【能力複写】を付与することは出来ない。

■付与された物品や生物を使っての能力発動
【付与物】の能力発動にあたっての発動権は『ある程度以上の知能を有する接触者』の中で心理的に「最弱」の者に与えられる。
大人と子供ならば通常は子供に、兄と妹なら妹に、といった具合。
旦那と奥さんだとして、旦那がボクシング世界ランカーだったとしてもカカア天下な家庭ならば旦那に発動権が渡る。
仮に完全拮抗している場合ならば、原則を無視し、同時に複数発動する事になるが、そんな例外はまずありえない。
最初から接触者が一人ならば、問題なくその一人に発動権が渡る。
発動する能力の強度はおおむね聖の練度が基準となる(何割かは接触者の精神的強度が影響)が、
それによる消耗は発動者が受ける(何割かは軽減される)。



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投稿日:2013/11/15(金) 18:10:56.81 0






















最終更新:2013年11月16日 01:38