「今、なんて……?」
聖は、目の前にいる相手の言葉に耳を疑う。
おかっぱ頭で、前髪を切りそろえた、色白の華奢な女の子。
「もう一度だけ言いますよ。ダークネスは、私たちが潰しました」
黒目がちな瞳を細め、柔らかく笑う。
普通なら、かわいらしい顔。そんな印象を抱くような顔つきなのに。
怖い。黒目の黒い部分が、まるで彼女が抱える闇であるかのように聖には感じられた。
「だってあのオバさんたち、弱いんですもん。私たちの新しい力には、誰も敵わなかった」
彼女の言うことが真実なら。
氷を操る魔女も時の支配者も未来を見渡す賢者も、倒されたということ。
それだけではなく。天使や悪魔さえも、屈服させたというのか。
「ありえない、そんな顔してますよ?じゃあ、見せてあげますね。『喚び出すりん♪』」
しなを作りつつ、地面にしゃがみ、右手を地に添える。
その瞬間、少女の瞳の闇が大きく溢れ出した。
解放された闇は無軌道に四方八方を彷徨い、やがて導かれるように少女の右手に吸い込まれてゆく。
そして、「何か」を引っ張り出すように、立ち上がった。手のひらに引き出されたのは。
聖の、よく知っている人物だった。
「そ、そんな」
絶句。
彼女が、ここにいるはずない。彼女は今頃仲間たちと、黒目の少女の別動隊と戦っているはず。
「カムオン、リオン!!」
けれど結果は紛れもなく、聖の考えを否定する。
Dシステム。聖の知る少女にしか使えないはずの、能力。
青ざめた顔、うつろな表情をした石田亜佑美が幻獣の僕を従えて立っていた。
「どうです?『お仲間』に牙を向けられる気分は」
少女が瞳の闇を細める。
間違いない。この少女はダークネスを潰し、そして成り代わったのだ。
絶望する聖をあざ笑うかのように、青き獅子が雄叫びを上げた。
投稿日:2013/11/14(木) 01:21:09.90 0
最終更新:2013年11月14日 23:36