■ コールドシー -和田彩花- ■


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 ■ コールドシー -和田彩花- ■

日本海の波は荒く冷たい。
和田彩花は、岸壁にたたずんでいる。
足元には、何もない。
ふと、たわむれに足で砂利をかき集めてみる。
小さな山。
ためいきをつく。

やがて、暇を持て余したのか、和田彩花はその場を離れ、歩き出した。
高台をぐるりと下りていく。
再び、眼前に海が広がる。
ふと海岸沿いの桟橋に目を止める。

ずいぶんと長い桟橋。
両脇に、堆く積まれた消波ブロック。
コンクリートの、冷たい一本道。
その先端まで歩き、海をみる。

波と、漁船と、海鳥以外には、何もない。

遠くにエンジン音、続いて、ドアの開閉音。
少女は振り向く。

8人?9人?
車両から降りたロングコートの一団が桟橋いっぱいに広がり、歩いてくる。
無個性、人数すらあいまいな集団。
互いの顔が良く見えるほどの距離でロングコートの一団は足をとめた。

無個性の一人が一歩、歩み出る。
同時に残りの無個性がコートの中から、突撃銃を取り出し、その銃口を和田へと向けた。


和田に、感情の変化はない。
特に語る事もなく、和田がふわりと浮きあがる。

が。

どさっ。
尻もちをつく。
ほんの少しだけ浮き上がった和田彩花が、急に浮力を失い、落下したのだ。

「情報ドオリダナ」
歩み出た無個性が口を開く。
「貴様ノ能力ハ封印サセテモラッタ。私ノ【能力封印】デナ」

【能力封印】?それによって和田の能力が消失したのか?

「今ノ貴様ハ無力ナガキ二過ギナイ。大人シク我々ト来テモラオウ」

尻もちをついた和田が力なくうなだれている。
その様子に無個性達がふっと安堵する。

「そうですか、情報通り、ですか。なるほど、よくわかりました。」
「ナニ?」
「今の対応で、こちらの『知りたい事』を『知らない事』が、よくわかりました、という事です。」

この口調……本当に、彼女は、和田彩花……、なのか?

「やはり、『私の事を知っている』のは組織だけなのでしょうかね。」
「ナニヲイッテイル?聞イテイナカッタノカ?我々モ貴様ノ情報ハ把握シテイル【二重能力者】」

無個性は続ける。


「貴様ガ倒シタ【能力阻害】ト違イ、私ノ【能力封印】ハ集中シ続ケル必要ハナイ。
一度カカッテシマエバ私ノ命尽キルマデ永遠二ソノママダ。
【二重能力者】デアロウガ、根コソギ【封印】スル。
オ前ノ能力ヲ事前二把握シテイタカラコソ私ガ選バレタ。オ前ハ終ワリダ。」

和田彩花が立ち上がる。

「勝手二動クナ。撃チ殺サレタイカ?」

無視。お尻についた砂を払う。
「そりゃそうでしょう。あなた達が見たであろうその情報は『私たちが流した』のですから」

「ナニ?ヲ…言ッテイル?」

「もしも、あなたたちの取る対策が、もっと別の…
そう、ちゃんと『私の事を知っている』上で立てられた物ならば、
このまま、あなたたちに同行してもいいと思っていました。
ええ、それならば、お互い有意義な情報交換が出来そうですからね。」

いったい彼女は何を言っているのだ?
現実に彼女の能力は【封印】されてしまっているのではないのか?

「でもあなたたちには『情報を正しく理解』できるだけの、本質的知識がなかった。」

「ナニヲイッテイル?ハッタリノツモリカ?能力ヲ【封印】サレタオ前二何ガ出来ル」

和田彩花は顔を上げる。
まるで、物わかりの悪い子供を憐れむような眼で無個性達を見渡す。


「たしかに、あなたは『私の能力』を封印した。
ですが、それがどうかしましたか?
そんな程度の事で本当に私を捕まえられるとでも?」

一歩

「『勝てる』と思ったんですか?
私の『能力を封じたぐらい』の事で、本当に『勝てる』とでも?」

和田彩花が、歩きだす。

波が打ち、海鳥が啼く。

その歩みが無言の鬨を、上げる。



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投稿日:2013/10/29(火) 19:20:27.41 0