幸せの定義


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光井が地下室のドアを開けると亀井が一人で立っていた
「な、なにしてはるんですか、亀井さん?」




「・・・」
しかし亀井は微動だにせず、光井の存在に気付いた様子もない

「どうした、愛佳?早く部屋に入るなら入りなさい。開けたら閉める!」
新垣もやってきた
「あの、新垣さん、亀井さんが変なことしはってます。ずっとあの姿勢で立ってるんですよ」
「ああ、あれね。大丈夫よ。愛佳、もう少ししたら元に戻るから。」

「・・・」
うつろな表情で無言のまま微動だにせず立っている亀井を見て光井も意図せず無言になる
「何しているのか気になるの?」
「・・・はい」
新垣は光井の手をとり優しく手を握った。その途端光井の頭の中に声が響いた

   『…大丈夫、一人じゃないですよ』   『…頑張らない!無理しないのが私らしいよ』

「新垣さん…これはなんですか?」
「愛佳に聴かせたのはカメの心の声」
「亀井さんの?」
「そう。カメの」
そう会話する二人の前には心ここにあらずと言った雰囲気の亀井の姿

ちらっと亀井の方を見ながら新垣は光井相手に語り始めた
「ああ見えてもカメって色々考えてるんだよ
 普段、ポケポケしちゃって変なことばかりしているけど、芯は意外としっかりしているんだよ」
光井は口を開けっぱなしの亀井を見返しながら新垣の話をしっかりと耳に入れる

「カメは今はあんなに元気だけど、本当は体が弱いじゃない。
 病院にずっと入院しなくちゃいけないからわたしや愛佳と比べても幸せを感じることって少なかったの
 でもね、カメはいつも笑っているじゃない。なんでかわかる?」
「・・・今の生活が楽しいからですか?」

ふふっと笑い新垣は光井に微笑みかけた
「それだけじゃないよ。ほら手を握って、カメの声を聞かせてあげるから」
光井は新垣の手をぎゅっと握った。再び頭の中に声が響いてきた

   『…幸せになりたい幸せになりたいってずっと思ってると
        幸せになりたいってだけで終わっちゃうんです
      幸せだなぁって思ってるとずっと幸せのまま過ぎていくんです』

「・・・」
「わかった?カメはね、幸せになることにかけては天才なんだよね
 幸せになりたい、そんなことを考えていたら幸せになれない、そんな真実を知っているんだよね
 だからカメはいつも笑っているし、笑わせようとしてくれるの。幸せを感じるためにも」



相変わらず立ちっぱなしの亀井を前にして新垣の演説は続く
「きっとカメがあの結論に至ったのはずっと昔だったんじゃないのかな?
 いつ治るとも分からない病気との闘いの中で見つけ出したんじゃない、幸せが何かって
 カメは気付いているんだよ、幸せが手元にあることに気付けることが幸せになることに」

「それならなんであの姿勢なんですか?」
「昔のようにぼうっとしていることでカメはそれを自分の中で噛み砕いて再認識させているんだと思うな
 まあ、芯は強くても外地はポケポケのカメだからねそこまでは理解できないさ」
軽く笑い声を上げながら新垣が亀井に近づいていく

「おはよ、カメ。紅茶入ったよ」
そういってポンと肩を叩くと亀井はハッと意識をとりもどしたようにキョロキョロと辺りを見渡す
「エヘヘ…ガキさ~ん、いたんですかぁ~、あ、みっつぃも。ん~なにしてるんですかぁ?」
「・・・」

「ほら、カメ、早くしないとホットがアイスになっちゃうよ。早くおいで」
「あ~待ってくださいよぅ」
光井の横をどたばたと亀井が大きく足音を立てて通り抜けて行った
そんな亀井を見ないで光井は先ほどまで亀井が立っていた場所をじっとみていた

「・・・」
二人が遠くに行ったのを確認すると、光井は亀井のように目を閉じてボゥっと立ってみた
(幸せであるために今を幸せって感じればええんやろうな…)
考え込んでいた愛佳に向かって声が投げかけられた

「ねえ~みっつぃも一緒に紅茶飲もうよ。今日のケーキもおいしいよ~絵里が作ったんだけどね
 エヘヘ、幸せ♪」





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