『ハルが産まれた日』 前篇


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



私はK1027、EGGで産まれEGGで育った生粋のEGG謹製の第10世代人造能力者。
EGGのトレーニングセンターで同じEGG製の仲間達と遊び、学び、訓練し、育ってきた。
外の世界には出たことない。でも『大厄災』で世界が荒廃してることは学習で知ってる。
私達EGGの使命はここで訓練した後に正規軍に入り、その能力を駆使してこの世界に蔓延る脅威
~反逆者、獣人達、他の世界からの侵攻勢力~に対抗すること、そう教えられてる。

思念が近付いてくるのを感じる。よく見知った思念、Kシリーズの先輩、K0701の思念。
Kシリーズの特性はマインド、思念や精神に絡む感覚系の能力。まだまだ私も修練が足りないけど
同じ特性のこの先輩の思念はシンクロし易いのか、他の人よりより近く、深く感じられる。
今のK0701の思念から漂うのは・・・緊張。何か新しい知らせが『上』からあったのだろうか
ウィーン、と休憩室のドアが開く。K0701の面持ちはやはり強張っていた。

「みんな、召集よ。ミーティングルームに集まって」
「召集!?誰か昇格なの!」

嬉々として高い声を挙げたのはm1201だ。こいつは念動、その他戦闘系のmシリーズ。
念動を更に一歩進めた火炎を操る正規軍昇格の有力候補だ。いつもいつも昇格を心待ちにしている。

「半分当たりだけど半分違うわ。話はミーティングルームでする」 (大変なことになりそうよ)

m1201に話しながら、私に思念でK0701が話し掛けてきた。
大変なこと、何となく予想出来るけど兎に角今はミーティングスペースに行こう。

ミーティングスペース、10数名のEGGメンバーが一同に会している。現在のEGGでの一番の古株が先達のK0701。
その次がm1201。『能力』の発現を認められた順にEGGへの加入が決まる。
『能力』が発現しなかったプロダクトに関しては外の世界に出され、一般人として生きることになるという話だ。
トレーニング部門ではあるけれど私達EGGは選ばれしエリート、というわけ。
逆に、一般人だけど能力が発現した子がEGGに入ってくるケースもある。これは極稀だけどね。

「みんな集まった?じゃあ始めるね」

大モニターに文字が写し出される~『合同野外演習』~・・・野外演習?外で演習するってこと?合同って?


「私達としては初の野外演習になるわ。場所は、監獄島の軍演習場。集合は来週のAM0800、出発はAM0900よ」
「はいはいは~い!」

m1201が手を挙げる。好戦的なコイツからは『演習』の言葉で早くも昂揚した思念が伝わってくる。

「合同ってあるけど誰と合同演習するんですか?」
「合同の相手は・・・」

言いかけると同時にK0701から思念が伝わってきた・・・嘘だろ!?ヤバいじゃん!

「S/mindageの4人よ。彼女達4人と私達全員で対抗戦形式の演習をします」

S/mindage・・・肉体改造による能力増幅装置『S機関』の搭載により能力ランクをS級にまで高めた戦闘集団。
ただその手術の成功確率は極低く、失敗すればS級の能力が得られないばかりか最悪死亡の可能性もある。
手術を受けたのは私達EGGの先輩達4人。今ではそれぞれコードネームを名付けられて正規軍期待の星と呼ばれているらしい。
S級能力者が4人・・・あの4人の特性がS級になった姿を想像すると私達全員が束になっても勝てるとはとても思えない。

「あれ~?S/mindageって9人になるんじゃないんですか?」

そうだ、2ndプロダクトとして更にS機関搭載手術を受けた子らが居たと聞いている。
その中にはやはり私達の先輩であるT1123やK0406が居たはずだ。彼女達はどうなったのか・・・

「どうも彼女達はまだS2機関の動作が安定してないらしいわ。調整次第で個別に参加も有り得るとか有り得ないとか聞いてるけど」

S2機関というのはS機関の改良型らしい。新型になって手術の成功率も前よりは上がったらしいけど
それでもやはり動作が安定しないというのはS機関というのはかなりリスキーな代物なのだろう。
個人的にはT1123にだけは出てこないで欲しい・・・あの人はがさつな思念も含めて結構苦手だ。

「この演習の査定次第では昇格もあるって話よ。但し実戦演習だから命懸け、事故も充分有り得るってことは覚悟して」

ざわざわざわざわ・・・ミーティングスペースがざわつく。恐怖に押し潰されそうな念、やってやる!という攻撃的な念
様々な念が混じり合って頭の中に入ってくる・・・あぁ!頭がゴチャゴチャ!頭痛い・・・うぅ・・・


(大丈夫?)

K0701の思念の声、その声で私は私を何とか保つことが出来た。色んな人の思念が入ってくると頭がごちゃごちゃになる。
そして自分が誰なのか?自分が何なのかすらもわからなくなる時がある。もっとコントロールできるようにならないと・・・

(貴方は私よりも感度が強いからね。ここから離れた方がいいわ)

同じ能力を持つ先輩。同じ苦しみを分かち合い、いつも私を助けてくれる。
私は彼女の助言に従ってミーティングスペースを後にした。

決戦の朝、AM0500・・・早く起き過ぎた。胃がキリキリする。本当に大丈夫なんだろうか・・・いや、考えても仕方が無い。
EGG魂を、EGGのみんなを信じて一緒にやるしかない!それに、この一週間は感覚の調整に殆どの時間を費やした。
戦場では色んな念が混じり合うことだろう。でも今はそれに惑わされないで自分を保つ自信がある!

みんなももう起きているようだ。うっすらとみんなの思念を感じる・・・色々あるけどみんな想いは同じようだ。

(頑張ろうね)

先輩・・・みんなも一緒にEGG魂、見せてやろうぜ!

定刻通り大型輸送機『マンパワー』に搭乗した私達は、大空へと飛び立った。Take off is now!
窓から見える景色に、全員が歓声を挙げる。初めて見る外の世界、眼下に拡がる風景・・・あれが私達の居た地上か!
世界って、どれだけ広いんだろう?
いつかは私も、この世界に翔ばたけるのかな・・機体は雲の上を抜けて陽光溢れる青空へと到達した。空も、広いな。

1時間程で機体は降下を始めた。再び雲を抜けて眼下に拡がるのは・・・海!・・・海・・・
あれ?私海見たことないけど見たことあるような?ん~?また誰かの思念混ざっちゃってるかな・・・

「あれだー!」

誰かが窓から下を指を指した。移動している島・・・あれが、監獄島!・・・ってアレも何か見たことあるような・・・
いや、教育資料の写真かな。そうだ、だから見たことあるんだ。そういうことにしとこう。


着陸した私達は、演習場のEGG側の拠点となる建物に案内された。早速、演習開始時刻が告げられる。
1200・・・正午、1時間半後だ。K0701がみんなを集め、作戦会議が開かれる。

「相手はS級、あんまり分散するのは危険だと思うけど、みんなはどう思う?」
「私は勝手にやらせてもらうりんっ!全員りんの炎で焼き払ってやるりんっ!」

m1201・・・相変わらず勝手な奴。でも一応、今回は理にかなってるかも知れない。
彼女の広域攻撃には味方は邪魔だろう。自由にやらせた方がいい。

「他に意見は?策敵は私とK1027で何とかするけど」

私達の役目は明確、敵を『感じる』こと。他のメンバーは・・・

「じゃあK1027は私に敵の位置を送って。そこにブリザードぶっ込むから」

口を開いたのはT0421、m1201と並ぶ戦闘系能力者だ。m1201とは正反対の低温系能力。
直接的なダメージソースを出せる彼女の存在は心強い。

「あーピンチのときは合図して目晦ましして逃げるから。みんなよろしく」

T1110・・・こいつも戦闘系、と言いたいところだがその『光』の力はまだ完全には発現していない
今のところ軽い目晦ましのフラッシュや自分自身を短距離光子テレポートできるだけだ。
戦力としてはハッキリ言ってあんまし期待できそうにない・・・
何より向こう側に同系統の能力の持ち主が居るというのがなかなか厳しい。

「私にも位置教えてくれる?こんなもんが通用するとも思えないけど」

小石を弄びながら言うのはO0403、反乱軍からEGGに入ってきたとい変わり種の能力者だ。
物体を加速して射出し、ターゲットに命中させる遠距離攻撃能力
その射出の構えは太古の昔あったゴルフというスポーツに似ているらしい。
コイツの手に掛かれば小石だろうが何だろうが凶器と化すだろうが相手が相手だ。
通用するかどうかは確かにわからない。


「あの・・・もし怪我されたら癒します。治るぐらいの怪我ならですけど・・・」

控え目に言うのはEGGに入りたてのO0327。
治癒系の能力は心強いが彼女の能力はまだそんなに強力なものではない。保険程度のレベルだろう。

他にも何人か居るがまだ幼かったり能力の発現が不十分だったりする。通用するのはここまでの面子だろう。
そうこう相談している内にもう開戦10分前、外に出るというK0701の合図でみんな外に出て、各々の配置へと付いた。

「ねぇK1027・・・」

神妙な面持ちでK0701が私の顔を見つめる。

「もし私が死んだら貴方が皆を仕切って。敵の位置が見えるのは貴方だけだから」
「ちょ!何言ってるんスか!死ぬとかやめて下さいよ!」

冗談じゃない!いきなり死ぬこと考えるとかネガティブ過ぎだろ!
いい人なんだけどここ一番で弱気なんだよな、この人

「向こうも私の能力知ってるから多分私から潰しに来る。そうなったら貴方が頼りよ」

ファーン!ファーン!サイレンの音が鳴り響く

『これより演習を開始する!演習時間は1時間。勝利条件は相手全員を戦闘不能にすること』

無機質な声のアナウンスが響く

『EGG側参加メンバーは12名、S/mindage側参加メンバーは・・・7名』

一瞬、EGGメンバーがざわつく。2機製が2人、調整完了している・・・一体誰なんだ!?

『演習開始、カウント10、9、8、7、6・・・』


ああ、もう何だか!気持ちの整理がつかないままカウントが始まった!

『5、4、3、2、1』

ブーッ!開始音!それと同時に眩い光が遠くの山の頂上で煌めくのが見える
まさか!?

「来るわ!みんな!伏せてーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

その煌めきは私達が伏せるか伏せないかの内に、私達の真上を覆い尽くした
ヤっベえ!!!いきなりかよ!
光の奔流に飲み込まれたEGG側の拠点の上層階が一瞬にして光となって霧散する

大昔、政府に反乱を起こした能力者の集団が居たという。
そのリーダー、複合能力者i914が持っていたという力の一つ、光子を操る力。
近年の解析でやっとその力を再現出来る能力者が製造され始めた。

その1人、m1228~正規軍に入り新たな名前を与えられたマエダユウカ

彼女が放った光と共に、演習というには厳し過ぎる戦いが幕を開けた。






投稿日:2013/10/28(月) 02:36:30.06 0