■ アアミスティスモー二ング -工藤遥- ■


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 ■ アアミスティスモー二ング -工藤遥- ■ 

なんだ…?ううう…?息が、できない……
く、苦しい、息が、息が!ぐ、ぐ、ぐ。

息が出来ない!いったい!どうして!
はる、どうなってるんだ?

目を開けると、はるの視界いっぱいに『顔』が広がってた。
真ん中分けの真っ黒のクセっ毛、真っ黒い眉毛、真っ黒い目玉。
その目玉が、はるの目と合った。
とたんにその目が真一文字に、にひーって笑う。
さらに下に視線を移す、でっかい顔の下から、そいつの手がにゅーっと伸びてる。
にゅーっと伸びた、その手が、その指が、はるの……、
そうだ、コイツの指が、はるの、ハルの鼻の穴に、ぶっすりと!

「ぬぉー!や、やめろー!」
そのクセっ毛を蹴り飛ばす。

「ぬきゃー!おしゃかなしゃんおきたー!」
そいつが素っ頓狂な奇声をあげて吹っ飛んでいく。

「はぁ!はぁ!なんんだコイツ!鼻っ痛ってえ!なんでハルの鼻ふさいでんだ!しんじゃうだろっ!」
「えーまーちゃんちょっとためしてみただけですけどー?おしゃかなしゃんいきしなくてへーきかーためしただけですけどー?」
「息しなくて平気なわけあるかっ!お魚ってなんだよっ!ハルは人間だぞっ!」
「えーでもお水の中、平気でしょー?まーちゃん知ってますよーだ」
「お水っておま、お水って、あっ!お前、そうか!あの時の!」

白いカプセル、振動、幼い少女。


「おっ前かっ!」
「おまえじゃないもーん!まーちゃんだもーん!おしゃかなしゃんをつかまえたのはまーちゃんだもーん」
「お魚じゃないっ!ハルは…工藤遥って名前があるんだっ!」
「くどは、る?え?え?おしゃかなしゃんじゃないの?!」
「なかわけあるか!工藤遥!くどうはるか!」
「くどはーる?くどるーか?」
「なんでそうなるんだよっ!く・ど・う!」
「くどぅー?」
「く…まぁいいや、ってかお前誰だよ!あとここどこだ!」

バァン!そのとき、出入り口の引き戸が勢いよく開け放たれる。
カンカンカン!けたたましい金属音!

「うーるーさーい!しぃーずかにでぇきないのぉ?」

瞬間、反射的に工藤遥は『まーちゃん』の手を取りひねりあげる。
「むきゃー?」
背中に回り込み首を固める。
左ひざを立て、右足はまーちゃんの右腿に絡め動きを封じ、
同時に左手の親指を瞼にめり込ませる
「ひゃー?なにー?くどぅー?」

扉の前には一人の女性が立っていた。
右手には金属製の武器(オタマ)、左手に円形の盾(鍋のふた)を装備。
たいした武装じゃない、だが出口をふさがれてる。

「ほぉあ?おいおいちょっとちょっと」
「うごくなババア!うごくとコイツの目ぶっつぶすぞ!」

状況はわからない。
とりあえずここから脱出しよう。敵はこのババアだけか?
コイツ仲間は?いや、まずはこの部屋から……。


「ねぇずいぶんじゃないの?ちょっとだけ傷ついちゃうよもー」

あれ?
ハルいつの間に正座?

「まあねー。急に知らない部屋で目が覚めたらねー、そりゃびっくりしちゃうよね。」
「まーちゃんはびっくりしませんでしたよーっ☆くどぅーはこわがりさんだなぁイヒヒ」
『まーちゃん』とかいうやつがハルの頭の上に乗っかってきやがった。くびおれるー!重いだろっ!どけーっ!

「えーとね、ちょっとだけ聞いてね。私は新垣里沙っていいます。おばちゃんでもなんでもいいけど一応そういう名前。」
あれ?ハルなんで動けないんだ?いや別に動けないわけじゃないけど、なんだか動きたくないような気が…

「でね、あたしも詳しい経緯はまだよくわかんないけど、あなたを助けてくれたのが、そこのまーちゃん」
「はーい!まーちゃんでーす」
「いずれは私達の事も説明するし、あなたの事も聞きたいのだけど、まずは休戦協定しましょう。」
「休戦協定?っすか?」
「そう。あなたみたいなタイプの子にいきなり『味方だから安心して』なんて言ってもだめでしょー?ね?」
「は、はぁ……」
たしかにそうだ。そんな事言う奴は信用できない奴に決まってる。

「あたしたちが敵なのか味方なのかは、あなたが決めることで私が決めることじゃないわけだからね」
このババア、話のわかる奴だな。うん。にいがきっていったか?

「ただね。さっきみたく、乱暴はいけないよ。
そこのまーちゃんに、キミはなにやっちゃたんだっけ?キミの命の恩人なわけだから」
「う…」
「そういうときは、なんていうの?」
「…ごめんなさい…」
「アタシじゃないよ。はい、まーちゃんこっち座って、はい向かい合って。ハイどうぞ!」
「まーちゃん、ごめんなさい」
「ハイ!まーちゃんはそれでゆるしてくれるのかな?」
「はーい!まーちゃんゆるしまーす!」


……なんだか、全然ペースがつかめねえ

「ところで、キミのさ、名前は聞いてもいいかな?」
「くどぅーでーす!」
「ん?くどぅー?」
「なんでお前が答えるんだよっ!くどぅーじゃなくて工藤!工藤遥!」
「そ、くどうはるかちゃんね。よろしく。」
ババ…新垣…さん、が握手を求めてくる。
ついこっちも手を出す。
「ハイ!握手!これで協定成立ね!」
え?
「まーちゃんもせいりつー!」
二人の握手の上からまーちゃんがのしかかってくる。
「あだだだ」
あれ?あれ?
――――


その後、部屋には2人の女が入ってきた。
白いのと黒いの。
チビとノッポだ。
まーちゃんは二人の事をもう知ってやがった。
ハルたちを助けてくれたんだって。
つまりハルはまーちゃんに助けられて、
まーちゃんとハルはこの二人に助けられて、
ハルたち4人はこの新垣さんにって事らしい。
ややこしいわ。
チビは石田亜佑美。ノッポは飯窪春菜って言うらしい。
少し遅れて、もう一人白いのが入ってきた。みちしげ?変な名前。
――――
「ハイじゃあお互いこれで自己紹介は済んだと」
「はーい。」

ハルはいつの間にか普通に動けるようになってた。
てか最初から動けなかったわけじゃないんだけど、なんか動きたくなくなってたんだよな。

「じゃあそろそろ、下行きましょっか。朝ごはん出来てるから。」
やった!朝ごはん!おなかすいた!……って何ハル、テンションあがってんだよ。
「うわぁ!朝ごはん!」
なんだよびびるな。急に大声出すなよ白チビ、ああ石田だっけ。
「わぁーあゆみんはリアクションがほーんとにかわいらしいよー」
なにむりくりなヨイショしてんだ黒ノッポ。おまえ白チビに弱みでも握られてんのか。

ま、朝ごはんぐらいくってやってもいっか。休戦協定したしな。
ハルたちは下に降りてった。
朝ごはんは、オムレツとか、なっとーとか、なんかお肉の巻いた奴とか、いろいろだ。
なんだっけ?大阪弁のやつがキッチンからちょっとだけ顔出してたけど、そいつが作ったらしい。
マジ美味めぇじゃねえか。ハルと結婚しろ。


朝ごはんを食べ終わると、ハルたちは片づけを手伝った。
別になじんでるってわけじゃないけど、休戦協定してるからな。

着替えとか歯ブラシとか全部大阪弁が用意してくれてた。
気が効くじゃねえか。やっぱハルと結婚しろ。

歯磨き中にまーちゃんが何回もちょっかい出してきてめっちゃ磨きにくかったんだが。
「まさきちゃん!やめなさい!」
うわ怖ぇよコイツ。白チビめっちゃ怖ぇ。隣のハルまでちょっとびびったぞ。
まぁ助かったぜ白チビ。
ん?並んで鏡でみてみると、ハルより白チビのほうがちょっと大きいのか?まコイツ年上だしな。
そこをひいたらハルの方がおっきいわ。

歯磨きが終わると、新垣さんが他のメンバーがこれから集まるから紹介するって言った。
「じゃ一階に…『リゾナント』に降りましょう。」

リゾナント…。それは、ここの一階にある喫茶店の事だった。


ハルたちが降りていくその階段からして、とってもいい匂いがした。
コーヒーとか紅茶とかの、とってもいい匂い。
甘いお菓子とかおいしそうなゴハンとかの、とってもいい匂い。
古い木のテーブルや椅子や床のワックスの、とってもいい匂い。

喫茶リゾナント。
そこは、すごく綺麗で、すごくいい匂いの場所だった。

カウンターに一人、また女が座ってた。
こいつも白チビぐらいの大きさだった。
向こう向いてて顔が分らないけど
なんか頬杖ついてて不機嫌そうだった。

ハルたちが階段を下りてくると、そいつがこっちをふりむいた。

……か、かわいい……

その人は、少しカールした髪の毛を二つ結びにして襟足だけ垂らしてた。
つまんなそうな目はめっちゃおっきくてくりくりしてる!
はなとかちっちゃくてほっぺつるつる!
くちびるもぷいってつきだしちゃってやべえ!超ハルの好みのタイプ!


しかも、服とか!めっちゃおしゃれ!
え、水色の豹柄とか、紫色のニーハイとか、この人にしか絶対似合わないんですけど!
やべぇ……この人、マジかっこいい!

このかっこいい人は田中れいな様!って言うんだって!
新垣さん!その情報マジありがてえ!

た、田中さんはハルたちを一瞥するとぷいってむこう向いちゃった。
クールだ……超かっこいい!
ああ、もっと顔見たかった。

それから、あと、次々にリゾナントに人が集まってなんだかわいわいしてきたけど
ハルはもう田中さんに夢中でよくおぼえてねーんだわ。

だから、いきなしだけど、今日はここまでなっ!



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投稿日:2013/10/20(日) 00:08:28.41 0