■ スモガットライアングル -飯窪春菜・石田亜佑美X萩原舞- ■


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 ■ スモガットライアングル -飯窪春菜・石田亜佑美X萩原舞- ■

背が『低い』

大股開きの仁王立ち。
長い黒髪の、その少女は、『ドヤ顔』だった。

ゴッ

その『ドヤ顔』に両面からドアがぶつかる。
バックヤードへの扉というのは、放っておけば自然と閉じるものである。
出入り口と、2枚の扉と、『ドヤ顔』の少女。
異質なる者たちで作り上げる、美しい二等辺三角形。

バァン!
再び、扉を叩き開け、今度はもう一歩、中へ踏み出す。
その後ろをゆっくりと、扉が閉じていく。

少女は、何事もなかったかのように再び、仁王立ち。
『ドヤ顔』で。

ちょっと煤けたスニーカー、膝下丈のステテコ、よれよれのTシャツ。手首にヘアゴム2本。
どう見ても、「起きぬけにコンビニ行ってくる」時の恰好である。
奇しくも右分けにした前髪の分け目から、『ぴょこん』と長いアホ毛が立ち上がっている。
実際に寝起きなのか?

「な、なんなわけ?アンタさ、なんなわけ?」

答えず、大股のまま、『ぴょこん』と片足を上げる。
必然、身体が傾き、萩原舞越しに、アホ毛と顔が『ぴょこん』と覗く。
目が合う。


「感じましたか?」
期待に満ち溢れた、これ以上ないほどキラキラと輝く、茶色の瞳。
(な…何を言い出すの?この人)
飯窪には彼女の言いたい事がさっぱりわからない。
わからないが、その目にはYES以外の回答を許さない、なにか迫力のようなものがあった。
「も、もちろんです!ビンビンです!」
「やっぱり?やっぱりですか!コレですね!コレがそうなんですね!」
「そ、そうです!コレですよ!」
『ドヤ顔』の少女は満足そうにコクリとうなづく。
そしてニカッ!と笑う。真っ白な美しい歯が光る。
「よくがんばりましたね!もうだいじょうぶ!すぐにこの人ぶっとばして助けてあげますからね!」
いや、元気だ。とても頼りがいがありそうだ。
でも、待って、ちがうの、この舞って人は、この人は危険……。

「ちょっとなに?シカト?舞の事シカトしてるわけ?なに?すぐにぶっとばすって、舞の事?それ」

ばっさー!
黒髪をひるがえす。

「そうっ!」

『ドヤ顔』で。
「いま!すぐにっ!」


――――



「で、いつ、ぶっとばすのさ?」

飯窪春菜のすぐそば、その少女―石田亜佑美が―伸びていた。
(こ、この人、何しに来たのぉ?)

萩原舞の【慣性歪曲】によって、石田亜佑美の攻撃はことごとく空を切った。
どれほど素早く動いても、どれほど鋭く攻撃しても、その『制空権』に踏み込んだ瞬間、
くるりと反転してしまう。
そして隙だらけとなったその背中に、容赦ないドカ蹴りが炸裂する。
なんとも地味な、だが絶望的なワンサイドゲームが続いた。

何度目かの不毛な攻防を経て、ついに後頭部に喰らった一撃。
石田亜佑美は昏倒した。
――――


「ちょっと、ちょっと、大丈夫ですか!アナタちょっと!」
石田の肩を必死で叩く飯窪。
「ん…んー…ハッ!だっだいじょうぶです!全っ然!」
がばっ、思い切り立ちあがる。が、真っすぐ立っていられない。
ひざがかくんと落ち、ととっとよろけていく。

「いや、普通に気絶してたし、ってかどっち向いてるわけ?舞はこっちですけど?」

「いや!まだまだこれから!ウチはここから2段階の奥の手を隠し持っていますからね!」
(ハー!ダメだ!この人ダメだ!このセリフ!完全に負けちゃう敵キャラのセリフだ!こういうシュチュ読んだことある!)
頭を抱えるマンガヲタクの飯窪。
奥の手があるのは結構だが、なぜそれを先に言う?なぜ得意げに言ってしまうのか?
飯窪にはさっぱり理解できない。
だが、そんな飯窪の不安をよそに、『ドヤ顔』少女は再び、しっかりと立ち上がり、萩原を見据える。
方向が、まだちょっと、ズレてるけど。
(はーどうしよ!変な人はいってきちゃったどーしよー!これじゃあもう……)
頭を振る飯窪。

(!…?)

そのとき、飯窪は、視界の隅に『それ』を捉える。

(あれは、いったい?)

そして、目の前のフラフラの少女の背中を見る。
視界に写った『それ』を直視しないよう、あえて『前だけ』を見る。
(もしかして……もしかして、この人……)

「ウチの奥の手、それはっ!これだぁッ!」


――――



「いや、だからさ、奥の手って、なんなのよ?」

飯窪春菜のすぐそば、その少女―石田亜佑美が―伸びていた。
(はわぁああ!もう!なんなの、この人!いろいろ驚きすぎてもうなにがなにやら……)

【空間跳躍(ショートテレポート;short teleportation)】
少女の奥の手、それは瞬間移動……いわゆるテレポートと呼ばれる超能力だった。

「ウチの奥の手、それはっ!これだぁッ!」
叫ぶが早いか、石田はその場から一瞬で消え去り
同時に萩原舞の真後ろ、後頭部上空に出現した。
そのまま空中でサッカーボールキックを放つ。
だが、案の定というか、なんというか、
そのキックを振り抜こうとしたその瞬間、クルリと身体が反転し、キックは空を切る。
落下していく石田に萩原舞の蹴りが飛ぶ。
その蹴りを受けながら、再び【空間跳躍】、同時に、またも萩原の後方、今度は足元を大きく払い蹴り。
こりゃだめだ。
飯窪にすらわかる。
やっぱり案の定、キックの軌道がくるりと反転。
そして、その側頭部に萩原舞の膝蹴りが直撃する。
バランスを崩した石田の腹を容赦なく踏みつける。
「げほぉ!」
くの字に身体を折る石田の頭部に、今度は萩原がサッカーボールキックを叩きこむ。
倒れる石田に連続して踵を踏み下ろす、そのまま2発、3発、
4発目、反転した石田がガードと共に脚を担ぎあげるようにしてタックルに出る。
だが、その瞬間、またも縦にくるりと回転させられ、堅い床に頭を打ち付ける。


床に激突した瞬間、再び【空間跳躍】、飯窪の隣に出現、そのままうつ伏せに倒れ、昏倒した。

まず、『この人も超能力者だった』事の驚き
次に、『どう考えても無理でしょ』という奥の手のしょぼさ
その他、言葉にならない、もろもろの驚きに飯窪の目の前が真っ白になる。

「ちょっと、ちょっと、大丈夫ですか!アナタちょっと!」
石田の肩を必死で叩く飯窪。
「ん…んー…ハッ!だっだいじょうぶです!全っ然!」
もーまたこのやり取りなの!だが、飯窪は考え続ける。
この人は【テレポート】が使える。
よくマンガで出てくる設定では、いくつかのパターンにわかれている。
もし、この人の【テレポート】が、あのパターンなら……。
さっきのあれをもう一度、今度はこの人に渡して?……
いやだめ、きっと間に合わない、そう、もっと確実に……。
ガバッ!少女は再びワンパターンに立ち上がろうとする。
その腕を強引につかみ、小声で耳打ちする。
『立たないで!まずは座ったまま回復を待ってください!』
「え!なんですか!」
『しーっ!しーっ!声が大きいです!』
だめだ、長々と話している余裕はない。
必要な事は本題と、それを実行するにあたって必要な情報だ。
『私の名前は飯窪春菜です!はるなです!あなたは誰ですか?』
「ウチ、私は石田亜佑美です!今は名乗ってる暇は無いと思いますけどね!」
無視して続ける。
『石田さん!あなたのテレポートは私を運べますか?』
「もちろん!でも一人が限界ですね!精度も落ちますし距離も短くなります!
でも、これからもっと練習していけば!」
『しーっ!しーっ!もういいです!いいです!もう一つだけ教えてください』

飯窪は最後のピースを確認する。


「そうです!私です!」

ピースは、全て揃った。

椅子は跳ね返される。消火器は跳ね返される。ほうきでは殴れない。だが……。

勝てる!勝てるよ!まーちゃん、絶対に、あなたとあなたのお魚さんを逃がしてあげるから!



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投稿日:2013/10/15(火) 00:30:45.48 0