■ ステッポンダライス -飯窪春菜X萩原舞- ■


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 ■ ステッポンダライス -飯窪春菜X萩原舞- ■ 

「ご、ごめんなざいぃ……」
「もう一回」
「ごめんなざいぃ……」
「もう一回」
「ごめんなざいぃ……」
「全っ然、誠意がこもってない」
ローヒールのブーツ。そのかかとでネジネジと踏みにじる。
「ぎひぃ!ご…ごめ…」
「それにさぁ、舞の靴!今だってアンタのヨダレで汚れてんだけど?それも謝って」
「よ、よだれづけてごめんなざいぃ」
「もう一回」
「ご、ごめ」
「最初から!」
「よだれつけてごめんなさいぃ」
「ちがうでしょ!最初、アンタ、舞になんて言ったっけ?」
再び全体重をかけて踏みつける
「ぎ…いぎぎ…」
「え?なに?『二人はわたさないっ!』だっけ?ハァ?
何言ってんの?ハァ?【無能力者】のクセに、素人女が舞に何言っちゃってるわけ?ハァ?」

逃げ込んだ、無人のショッピングモール、そのバックヤード。
ガラの悪い少女の怒声と、啜り泣く、平凡とは言い難いほど高音の、不思議な声が響き渡る。

そう、踏みつけているのはセルシウス、萩原舞。
そして、踏みつけられているのは、平凡なる女子高生、飯窪春菜。
いや飯窪春菜か?
その顔、いやその全身が真っ白になっている。
白い粉だらけだ。顔中、白い粉で、何かコントの殿さまのような事になっている。


傍らには転がる消火器。
萩原舞がその消火器を忌々しそうに睨みつける。
「いやーいろいろやってくれちゃったね。
なに?何投げてきたっけ?椅子と?あとなんかあったね?それとあの消火器の粉ね。
で、最後には何?これ?」
萩原は手にしたそれをぷらぷらと振って見せる。
よく、商店街のおばさんがたが店頭の清掃に使っているような、短い片手用の、小さなホウキ。
「これで、舞を殴って倒そうとか?ねぇちょっとナメるのもほんとカンベン。
ねぇこんなのでやっつけられるとか、そんな舞、弱そうに見えるのかなぁ?ね?そうなのかなぁ?」
「い、いえ…ま、まいざまは、どてもづづづよいでず……」
「そりゃそうっしょ。いや、そりゃそうっしょ。そりゃ、そうっしょ。」
なぜ3回も繰り返すのか。飯窪春菜には、さっぱりわからない。

いや、わからないのは、舞、そう名乗ったこの茶髪のガラの悪そうな少女の力だろう。
飯窪は抵抗した。
投げられる物は片っ端から投げ、消火器を吹きつけ、ほうきで殴りかかった。
だが、
全ては飯窪に向かって跳ね返された。
投げた椅子は弧を描いて飯窪に襲いかかり、消火器の粉は飯窪に吹きつけられ、
ほうきで殴りかかったとたん、飯窪はくるりと反転し転倒、ほうきを取り上げられ、
後ろから殴られ、蹴られ、髪の毛をつかまれて引きずり回され、
そして、顔面を踏みつけられていた。


【慣性歪曲(イナーシアディスト―ション;inertia distortion)】
飯窪の知らぬその能力、その恐怖。

……よりも、萩原舞の、ガラの悪さ。
普段、飯窪が最も相手にしたくないタイプの少女だった。

マンガヲタクで、星の観察と美術館巡りが趣味、そんな華奢な、ちょっと『いいとこの子』気取りのある飯窪にとって
その『ガラの悪さ』は得体のしれない超能力の何倍も飯窪の根源的な恐怖を呼び起こすものだった。

「てゆうかさぁ、そもそも『二人』ってなに?そこからしてイライラすんだよね。舞はさ22号を追っかけてきてるわけ。」
再び、顔面を踏みつける足に力がこもる。
「アンタとかさ、そっちの?なんかアレ?とかどーでもいいわけ。そっちのさソレ、その22号?それだけ回収して帰ればいいの。」
踏みつけながら、手にしたほうきのホズミで飯窪の顔を何度も突きまわす。
その度に、顔から剥がれる白い粉が散らかって、床を汚していく。
「てか、そもそも、そもそもさ。なんで22号だけ持って帰るのってとこからしてわかんないし、
その22号のシェルを運んでた車を急に、これまた味方の戦闘員達が暴走してさ、追いかけまわすわ撃ちまくるわで、
全然わかんないわけ。アンタ知ってる?」
「わがりまぜん…わがりまぜんんん…」
「だよね?舞も全然わかんないわけ。でもいいんだよ。とにかく舞は仕事速いから、22号を追いかけて回収するだけ。
車を見つけて、キーを回して、運転して帰る、そんだけ。なのにさ、シェルは空っぽ、トチ狂った戦闘員は全滅してる。
足取り追ってきてみたら素人女がよくわかんない正義感?だかふりまわして舞に言うわけよ。
『二人はわたさないっ!』って。……もうさ、舞の頭、パンクしそうだよね。」
(ああ、この人バカなんだ……怖い、バカな人、怖い…!)
「でもさ、舞はさ、こういう時決めてるんだ。頭がパンクしそうなときはさ、『何っんにもしない』
そう、めんどくさいから、何っんにもしない。わかる?」
「は…はいよぐわがりまずぅ……」
「だから、22号だけ持って帰る。アンタとそっちのはいらない。だから、この話はここまで!
アンタをどうすんのかは後から掃除しにくる下っ端の連中が勝手になんかすんでしょ?舞にはもう関係ない。」


ここで、萩原舞は、一息つく、そして忌々しげに足元を睨みつける。

「だからさ、アンタさ……」
萩原舞は睨みつける、自分の足を、いや、その足をつかんで、放さない、その……

「その手、放せっつってんだよ」

飯窪春菜の、その、両手を!

「だ…だめでずぅ!だめなんでずぅ!ワダジぎめだんでずぅ!
あの子の名前も知らないげどぉっ、まいざまのご都合もわがりまぜんげどぉっ、でも、
でも、あの子を連れでいがれるのは嫌なんでずぅ……」

「いやだからさ!関係ねーんじゃん!素人女がさ、ウチらの世界に踏み込んでどうしたいわけ?
何も出来ないし、何も関係ないじゃん。いや、てゆうか関係ないじゃん!」

「ご、ごめんなざぁいぃぃ!でも、でも、嫌なんでずぅ…!」

ブチッ!ブチッ!
萩原舞はついにパンクする。
「あっそ、あっそ!ああっそ!じゃ死ねばじゃあ死ねってしねしねしね!しねよじゃあさ」
萩原舞は腰のホルスターに手を伸ばす。そのグリップをつかみ、抜き放そうとする、
飯窪春菜の『片手が』空しく手の平を広げ、宙を泳ぐ。

その時だった。

「ちょぉっと待ったぁ!」

無人のショッピングモールの、そのバックヤード。ひときわ響き渡る、快声。

萩原舞の目が点になる。そして一瞬白目をむく。


「…な、に?こんどはさ……、こんどは、なん…なな、なんな、わけぇ?」

バックヤードの、観音開きの、その扉、その中央。

小さい、というより、背が『低い』。

腰に手を当て、大股開きの仁王立ち。
長い黒髪の、その少女は、『ドヤ顔』だった。



                            【index】





投稿日:2013/10/14(月) 02:51:45.65 0