『米』 第四話 


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「私の名前はフクムラミズキ。2021年、未来から来たリゾナンターです」
唐突なその告白を聴き、何が面白いのか笑い続けている佐藤ですらも黙り込んだ
「に、2021年?」
「そう、私はダークネスによるテロを防ぐために未来から来たリゾナンター
 私のいた時代には光井さんを除いて初代リゾナンターは行方不明に・・・
 地上に安らぎの場所はどこにも残っていません。希望はなく、地上に残されたのは絶望と破壊のみ。
 そんな世界を変えるためにリーダー光井さんの手によって過去へと送られてきたんです!」
仲間たちがどのような反応をするのか確かめようと真剣なまなざしで語る譜久村の作りだした沈黙に対してある人物が経ち向かった

「・・・2021年って、びみょ~に近い未来っちゃね
 すごいのか、すごくないのか、とにかくびみょーやね」
ほぼ全員の視線が生田に注がれ、譜久村と佐藤を除く全員が思った
*1 )))
そんな凍りかけた空気に気付かず生田の無自覚な毒が滑らかに唇からこぼれる
「あとたった8年先っちゃろ?最低でも100年後の未来とかじゃないと驚きも・・・(もごもご)」
それ以上言わせまいと鞘師が生田の口元を慌てて塞いだ

あわてて飯窪がやや表情が固まっている譜久村の手を取った
「そ、そうなんですか!譜久村さんはそんな大きくて立派な目的のために戦っていたんですね!感動しました!
 きっと、未来人ということを仲間の誰にも打ち明けられなかったんでしょう
 世界を守るということに加えて、希望を未来に作るために戦うなんてヒーローの鑑ですね!!
 譜久村さんの世界の光井さんも喜んでいらっしゃるに違いありませんよ!!
 譜久村さんと一緒に戦える仲間はさぞかし幸せなんでしょうね、羨ましいです」
口元を押さえられて暴れている生田を横目に仲間達は飯窪がいて本当によかったと心の底から思った

更に気まずい空気を払おうと工藤が譜久村の元に駈け寄り問いかけた
「そ、それよりさっき譜久村さん、私に能力はないって言いましたよね?
 じゃあどうやってこれまで戦ってきたんですか?それにさっき、あのロボットの動きを止めましたけどどうやったんですか?」
鞘師はその場面を思い出した


そう、まるで次に何が起こるのかをわかっているかのようにあの時、譜久村は冷静だった
(光井さんのように未来を視ているようなのに、能力がないってどういうこと?)

「未来予知みたいでしたよ。動かないことわかってたんですよね?」
「いいえ、あれは未来予知なんかではありませんわ。光井さんだけです。未来が見えるのは
 ただ・・・私が体験したことは視えると言うか、覚えているんです」
「??? どういうことなのかさっぱりわからないんですが」
仲間達に同意を求めるように工藤は振り返る

「そうですね、例えばみんなが今の知識のまま10年前に戻ったとします」
「はい」
「2011年に大きな地震があったことを皆さんご存知でしょう。そのことを2003年の人に伝えたとします
 それは私達、2003年からみた未来人にとって『事実』ですが、その時代の人にとっては『未来予知』になりますよね
 ただ、それが本当に起こるのかどうなのか、2003年の人にはわかりませんが」

「じゃあ、例えば未来に起こる出来事を変えようとしたらどうなるの?」
「もともと、私は未来を変えるためにやってきたリゾナンターです
 すでに出来事が起こった未来からやって来たので、現代から観た未来を変えることは世界の理に反しています。
 おそらく私のいる世界を変えた時、私、そのものの存在が消えることになるでしょう
 もちろん、私はそれを承知のうえで未来からやって来たわけですから、覚悟はできています」
「かっこういいですよ!譜久村さん」
「ありがとうはるなん。だから、もし私が未来を変えたり、捻じ曲げれば、その分私は傷を負います
 時がそう定めているので、避けることができませんが、それは未来が変わった証となり誇らしいこと
 さっき、まぁちゃんとあゆみんを部屋から救うために、ロボットが止まると言う未来を決定づけさせました
 きっかけは未来人の私が『知っている』と認識すること。その内容が重ければ重いほど私に大きな負荷がかかります。
 さっきは・・・ロボットを数秒だけ足止めするだけですから、鼻血程度ですみましたわ」

生田が眼に涙を浮かべ、なぜだか羨ましそうな視線で譜久村を見つめる
「みずき、格好いいっちゃね。でも、それって十分すぎる能力っちゃない?
 なんならえりが名前つけてあげようか?えっとね、えっとね、『未来確定(プラニング)』とかどう?どう?」
「え?い、いいんじゃないかな?」


「ところで、未来の世界で聖ちゃんはどうやって戦っていたの?『未来確定』が使えるのはこっちに来てからなんだよね?」
「未来は暴力が支配する世界でしたので、護身術はお父様に叩きこまれました
 この時代に来てからは高橋さんや田中さん、あと里保ちゃんから水軍流をちょっとね」
未来を懐かしむように涙を浮かべる。お父様との厳しくも楽しい日々を思い出しているのだろう
「え?私が教えているの?」
「そうよ、いつもありがとう」
そういい譜久村は鞘師に優しく微笑みかけた

「なんか、フクちゃんの表情がいつもと違うんだろうね。なんというか純粋な笑みというか」
「まさもおもいました!ふくぬらさんが綺麗にさやしすんに笑ってみせたの久々です」
「あれ?皆さんもですか?私も、なんというか・・・
 ねえ、譜久村さん、ケーキと里保ちゃん、どっちが好きですか?」
「え?何、その質問。おかしいよ(笑)だって、里保ちゃんは仲間だよ。
 好きは好きだけど、比べる対象が違うじゃない」
数人が強く思った。自分の知っている譜久村に眼の前の譜久村の爪の垢を煎じて飲ませたい、と
「鼻血も興奮したからじゃないんですね」
「? ? ? なんで興奮するの?むしろあんな時だからこそ落ち着かなくてはならないのに
 興奮だなんてとんでもありませんわ!」
聖人だ。この譜久村は間違いなく聖なる人だ、鞘師も強く感じた

「自分を犠牲にしてまで未来は変えなくちゃいけないんだ」
そう、とでもいうように首を力強く縦に振った
「でもさ、その割にフクちゃん、どこも怪我していないよね。道重さんに治してもらったから?」
大きな傷ですら道重はすぐに直すことはできるのだから当然と言えば当然であろう
「それもありますね。戦闘の際の怪我と偽って時の裁きを直していただいたことは多々あります
 ・・・ただ、傷じゃないところに負荷がかかることもありまして・・・」
「それってどこ?どこですか?こころの傷とか関節の痛みとかですか?テーピングの巻き方なら任せてください」
ここ最近、成長痛に苦しめられている工藤に、譜久村は深くため息をつき首を振った


「最初はなんてことない大きさだったのに、未来を変える度に大きくなって・・・
 動くたびに痛くて、痛くて。それから戦闘服のサイズが合わなくて、からかわれるんです
 もちろん移動の邪魔になったり、狭い隙間を通れなかったりと本当に迷惑なんです」

「それは大変っちゃね(棒読み)」
「あ、そう」
「ふ~ん」
「そう、困りますね」
「そうっすか(棒読み)」

「なんか、みんな冷たくないですか?」
驚いた表情を浮かべる譜久村に対して5人は共通した思いを抱いた
「「「「「べっつに~」」」」」
前言撤回、聖なる人は盛成る人だ。悪意がないだけ始末が悪い、鞘師は奥二重の眼の奥で静かに熱く怒りを燃やした

「ね~そんなことより~まあちゃんは~」
鞘師はそんなこととは何事だ、そんなこととは、確かにキミはいいかもしれないが、と思いながらもその声の持ち主へと顔を向ける
「おなかすいた。のどかわいた~」

すっかり忘れていたものの、ここにきてからそれなりの時間が経っていた
時計は設置されていないとはいえ、少なくとも数時間は立っていると自身の喉の渇きから推測される
ただ、残念なことに・・・
「ごめんね、まさきちゃん、ごはん、みつからないの」
「え~そんなのやだ~おなかすいたの~まさ、おなかすいたの~」
佐藤が目覚める前に建物を探し回ったのだが、食料は一切見つからなかった

「困ったなあ、まあちゃんの願いはキタキツネ様に仕える身として可能な限り叶えてさしあげたいんですが、こればっかりは」
「何か食べないと力もつかないんだよね」
佐藤のように口から出さないまでも、各自空腹と渇きに堪えているのだ


「あ!! そうだ!! ニシシ・・」
いいこと思いついたとでも言うように笑いだした佐藤はとことこと鞘師の前にやってきた
「?」
鞘師の前で両腕を揃えて伸ばし、満面の笑みを浮かべた
「さ~やしさんっ おみずくださいっ!!」

「!! ダメっ、まあちゃん、それだけはダメ!!」
慌てて佐藤の傍に駈け寄り腕を掴んだ
「鞘師さんの水だけはだめ!」
「え~なんで?ペットボトルのお水あるのに。まさにおみずください」
「鞘師さんにとって水は武器なの!あれがなくなったら鞘師さんは戦えなくなるでしょ!」
「戦えるもん。鞘師さんは鞘師さんだもん」
再び伸ばされる両腕と悪意のない笑顔

ここにひとかけらでも悪意や後悔の念がみえるのであれば、強くNOと言えたのだろう
しかし佐藤の表情にはそういった類の感情は全く伺えない

おそらく単純に水が欲しいのだろう。それ以上でもそれ以下でもない
鞘師が水なんてなくても戦える、そう信じているのも嘘ではないのであろう
とはいえ、鞘師は不安だった
(もし、何かあったとして、私は自分自身を、みんなを守れるのだろうか?)
自分の中で既に結論は考える必要もないくらいに見出しているにもかかわらず、あえて問いかける
否、守りきれないであろう

とはいえ・・・
鞘師の手はペットボトルへと伸びる。

どうしてこのキラキラ輝く無垢な存在を無視することが出来るのであろうか?

「はい、まさきちゃん。大切に飲んでね」
驚いている仲間達の視線を痛いほど浴びながらも、キャップを外し、佐藤の前に差し出した


「ありがとうございます」というと同時に佐藤はペットボトルに口を付け、一気に飲みほした
喉の渇きから解放され嬉しそうに眼を細める佐藤からは幼さを感じずにはいられない

「いいんですか?鞘師さん」
「大丈夫。まあちゃんのいうとおり、水くらいなくったって、私だよ?心配ないって」
あえて淡々と言葉を選びながら、空になったペットボトルホルダーを腰に戻した
(それに、断るだけの勇気が私にはないんだよ)
鈴木が鞘師の肩を何も言わずに軽く叩く
そう、わかっているよ、とでもいうように

「でも本当に水も食べ物もないのは問題ですわ」
そう、佐藤の喉の渇きが一旦収まったのみで根本的な解決はしていないのだ
暫くすればもう二度と佐藤の喉の渇きは潤すことはできないのだ
「それに・・・もしさっきみたいにロボットが現れてたりでもしたら里保は戦えんわけやろ?」

「大丈夫ですってなんとかなりますよ」
そんな中、石田は比較的元気そうだ
「一日や二日や三日くらい食べなくても死にませんよ」
「・・・なんか、経験したことあるみたいに自信満々っちゃね」
殊に食べることが大好きな鈴木の視線が痛いながらも、なぜかドヤ顔で石田は「それに」と続ける

「いつもこうやって私達『8人』でいろんなピンチ乗り越えてきたじゃないですか!
 きっとまたなんとかなりますよ」
「なんとかなるって・・・せめて、道重さんとか田中さんがいれば・・・」
ついつい出てしまった飯窪の本音に影響され、鞘師の脳裏に頼りがいのある先輩達の姿が浮かぶ

勇猛果敢に何事も恐れずに、幾度となくピンチを跳ねのけてきた田中
状況を把握する才能に長け、時に優しく、時に厳しく包み込む道重
それから高橋、新垣、光井・・・会ったことはないものの多くの逸話を残し、導く様に出会った9人の戦士達


仲間達も頼りになる先輩方の名前が出たことで不安になったのだろう
「新垣さん・・・」
「光井さん・・・」
と信頼する先輩の名前を弱弱しく呟く

そんな中、『ある人物』が明らかに他の7人と違う感情を抱いていた
それは・・・

「どうしたんだろうね?さっきまであんなに元気だったのに、やっぱりお腹すいたんだ?」
「・・・鈴木さん、質問いいですか?

新垣さんとか光井さんとか・・・一体誰ですか?」

鈴木はその言葉に『嘘』がまじっていないことを聴いた
今日、何度目かの沈黙が8人を包んだ

★★★★★★

その言葉を聞いた彼女はにやりと笑みを浮かべ、呟いた
「石田、ええで」
ゆっくりと画面操作のボタンを切り替え、大きく映し出された一人一人の驚きの顔をゆっくりと確認する
「全員ええ顔しとるな。
 そりゃそうやろ、導かれし者と信じている自分達を導いた先輩を知らんのやから」
7人の驚きの顔を確認し終えると、8人を俯瞰する画面に切り替わる

「違う世界から来た、とはいえここまで違うとは想定しておらんかったやろうし
 さて、どう石田に説明するか見物やな。それに」

更に切り替わる画面
「こいつらの意味を理解するときがくるんか。そこに未来があり、そして、時は動きだす」
映し出されたのは一枚の金属プレート。刻まれた『/』の文様が意味ありげにシャンデリアの光を浴び輝いた





投稿日:2013/10/06(日) 17:13:44.02 0


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