■ ピュアグレイ -工藤遥- ■


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■ ピュアグレイ -工藤遥- ■

銃声、軍靴、轟音。
土埃の味、ガンオイルの味、砂利の味。
ストップウォッチ、マンターゲット、灰色の、壁。

遅い!1003!
もう一度やり直し!

「ハァハァッ!うっ!ハァ!」

何やってる!1003!1003!1003!……

……1003!

「うわっ!はいっ!」

担架、そして毛布、額には清潔な濡れタオル。

「はっはーまた倒れちゃった?1003」
「教官…岡井教官…」
「1003はまーじですぐ寝ちゃうんだからなーwアタシしごき過ぎかなぁ?」
「そっそんなことないです!教官はっ!岡井さんはっとっても素敵です!」
「ん?素敵?やだなぁなにいっちゃってんの1003wちょっと照れるじゃんかもーやめてー」
「やっ!そっ!そういう意味じゃなくて!えとえといやそういう意味で!」

「よかった。元気戻ってきたみたいじゃん。」
「え…はっはいっ!」

「よーしっ!」
岡井教官、セルシウスの岡井千聖は勢いよく毛布をはぎ取る。

「じゃあ訓練に復帰だぁ!とりあえず、腕立て1000回だあっ!」

「はっハイっ!」


研修生。
組織により新設された、下部組織。
その中でも能力覚醒前の子供たちへの戦闘訓練教官を岡井は引き受けていた。

工藤遥はそんな『無能力者として』研修生の最底辺にいた。
ほんの数か月前までは普通の小学生であったはずの彼女。
二人の弟とエキセントリックな父、元気な母に囲まれた幸せな日常。
今となっては、ほとんど思い出す事もない。
もう、何十年も前の事のように思える。

自分はなぜここにいるのか?
そんなことすら考えるヒマもないほど、過酷な訓練の日々。

だがそんな過酷な日々を、正常な精神のまま耐え忍ぶには苦痛や恐怖による強制だけでは不可能だ。

(岡井さん……)

工藤は岡井千聖に恋をしていた。
尊敬し、憧れていた。

彼女は美しかった。
訓練は厳しかったけど、笑顔が素敵で、
一本気で、かっこよくて、男らしくて、かわいくて……
そして強かった。

リジェネレイター
他の教官達がそう呼んでいるのを聞いたことがあった。
それが岡井千聖の異名。
どのような傷も、またたくまにふさがり、完治する。
ナイフで刺されても、銃で撃たれても、
腕が千切れようが足がもげようが、まるで意に介さず戦い続ける狂戦士。
それが岡井千聖、特殊攻撃部隊『 Celsius 』の、まさに切り込み隊長。

いつも灰緑色の迷彩服を着くずし、上半身を黒のタンクトップで締め付けていた。
浅黒く逞しい上腕の、そして、
たわわな胸の艶やかな光沢が、いつもまぶしかった。

どんな過酷な訓練も岡井さんが見てくれていれば耐えられた。
どんな疑問も絶望も岡井さんが見てくれているなら考えずに済んだ。

いまの工藤遥にとって、岡井千聖が希望だった。

いや、今の彼女にはもう、名前などない。
1003、ただの1003だ。

身長143cm。11歳。ただの、1003。







投稿日:2013/09/28(土) 03:56:26
改訂版:2015/05/02(土) 01:25:34