『リゾナンターЯ(イア)』 - 2


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都心のとある、高層オフィスビル。
1Fの飲食テナントに行列をなすサラリーマンやOLたち。列の中央にいた管理職らしき中年が、突如掛かってきた携帯を片手
に、自らが手がけたプロジェクトの説明を始める。
先にお目当てのサンドウィッチをゲットした二十歳そこそこの女子社員たちが、エントランスのベンチに腰掛け、昨日の人気ドラ
マの内容について姦しく喋っている。
別のベンチでは、午後の会議に備え、若いサラリーマンが持参したレジュメを穴が空くくらいの勢いで何度も読み返していた。

エントランスの受付に、一人の男が近づいてきた。
受付嬢の一人が、男の顔を見てまたかという顔をする。男は、隣のビルのオフィスに勤めている会社員だった。

「ねえねえ、今暇?」
「勤務中です」
「そんなつれないこと言うなよぉ。俺さあ、この前出張で仙台行ったのよ」
「それが何か?」
「実はさ、買って来たんだよ」

男が、カウンターにみやげ物の袋を置く。
ケーキ生地にカスタードクリームが入った、女子に人気のスイーツだった。

「君のために苦労して買ったんだぜ?」
「まあ、それはそれでありがたく受け取っておきますが」
「その代わりと言っちゃなんだけどさあ、今度の日曜に…」

受付嬢は男の言葉を無視し、袋から箱を取り出す。
ずしりと重いそれは。
袋から取り出した途端に、閃光を放ちながら爆発した。


男も、女も。
目の前で起こっていることについて、1ミリも理解できなかった。
ただ、事実として。
自らの肉体が爆風によってひしゃげ、歪み、破壊されてゆく。
小さな箱から広がった狂暴な力は、瞬く間に建物全体へと広がっていった。

エントランスを覆っていた窓ガラスが、一斉に砕け飛ぶ。
通りを歩いていた人々はその直撃を受け、全身を切り刻まれながら路上に倒れ伏した。
もちろん、建物の中の被害はその比ではない。
爆心地を中心に、猛烈な炎と衝撃波が人々を襲う。
まるでおもちゃのように吹き飛ばされる、老若男女。

ベンチは座っていた人間ごと飛ばされ、肉体と複雑に絡み合いながら床を転がる。
壁に全身を強く打ち付けるもの、天井まで飛ばされるもの、破壊された床の瓦礫の雨に晒されるもの。共通している事はみなそ
の時点で命を失ったということ。

構内は、悉く破壊され、原型を留めない。
掲示板も、椅子もテーブルも、まるで巨大な生き物になぎ倒されるが如く。
その場にいた人たちも、同様だった。

土煙と、肉の焦げた嫌な臭い。
エントランスの受付は隕石でも衝突したかのように大きく抉れていた。
そこにさきほどの男女はいない。爆発により、肉片すら残すことを許されずに全てが消滅していた。


日常。
普通の人たちに与えられた、当たり前の日々。
それは特定の人物の悪意によって、前触れもなく終わりを告げた。





爆発事故から、数分後。
警察や救急隊の正規のルートとは別に、都内の警察組織と懇意にしている能力者たちは現場に急行するよう協力を求められる。
目的は、治癒能力を保持する能力者。現場の負傷者の手当てのため、喫茶リゾナントの店主である道重さゆみは後輩たちに店番を
頼むと慌てて店を飛び出した。

「聖も行きます!」
「ダメ、フクちゃんは残ってて。大丈夫、さゆみだけじゃなくて他の治癒能力者の人たちにも声をかけてるらしいから。お店のこ
とはお願いね」
「…わかりました」

さゆみの能力を普段から複写し使用している聖もまた、協力を求められている能力者の条件に符合していたものの、さゆみは万が
一のことを考え店に残るよう指示を出す。
もし、治癒能力を持つものがいない状態でダークネスの襲撃を受けたら。そんな不安がさゆみの脳裏を過ぎったのだ。

都内のオフィスビルで爆発事故があったらしい。
それだけの情報しか与えられなかったメンバーたちは、自然に店内備え付けのテレビをつけることになる。
テレビはどのチャンネルも、都心で起きた爆発事故のために特別体勢でニュースを報じていた。

「うわ、ひどい…」

画面越しに飛び込んできた惨状に、思わず亜佑美がそう口にする。
瓦礫に埋もれた、事故現場。多くの血まみれの人々が、そこに倒れていた。

再び、カメラがテレビスタジオに戻る。
状況から不慮の事故の可能性は薄いことが、司会者から説明された。
コメンテーターが、最近不穏な動きを見せる近隣国のテロリストの仕業ではないかと発言する。また、犯罪評論家として名を売っ
ている別の男性が、不景気を理由にして鬱屈した人格の人間による単独犯なのではないかと断じた。

「いったい、誰がこんなことを」

春菜が、顔を青くしてそんなことを呟く。
リゾナンターとなってから、いや、能力が発現してから。多くの悪意に触れてきたつもりだった。しかしその経験を辿ってみて
も、ここまでのひどい行為を彼女は知らなかった。

「くそ!犯人がわかってたら衣梨がこの手でとっちめるのに!!」

怒りに任せ、衣梨奈がテーブルを叩く。
ただ、現場に行き残留思念を探るならまだしも、画面越しでは到底犯人の目星などつくはずもなく。聖だけではない。他の三人
も、現場に駆けつけたいのは一緒だった。

しかし、彼女たちは常にダークネスという巨大な組織に付け狙われている。
この時間は学校に通っている年少組が、もし組織の人間に狙い撃ちされたら。その危険性を考えると、学校からほど近いこの喫
茶店で待機するのは最善の策と言えた。

亜佑美の携帯が、鳴る。
画面を見てみると、遥からだった。
手に取るや否や、特有の塩辛い声が響き渡る。

「大変!大変なんだよあゆみん!!」
「え、ちょっと、どうしたのくどぅー」

あまりのことに面食らう亜佑美だが、切迫した遥の声が衝撃の事実を告げた。

「まーちゃんが、まーちゃんが攫われたんだよ!!!」



ここは、喫茶リゾナントからほど近い中学校。
リゾナンターの中学生組である里保、香音、優樹、遥は一緒にこの中学校に通っていた。

「さーやしっ!」
「あひゃあ!?」

放課後の教室。
掃除当番だった里保の背後から抱きつくクラスメイトの女子。
本来ならばこの程度の襲撃、気配を感じた時に手にした箒で撃退できるのだが、そんなことを学校という平和な空間で披露する
わけにはいかない。
結果、甘んじて背後を取られさらにくすぐられたりしてしまうわけだ。

「もう、集中して掃除できないよ」
「何堅いこと言ってんの。おっ鞘師いい匂い」
「やめてよー!」

さすがに匂いまで嗅がれるわけにはいかない。
一度、冗談で学校でこんなことされてるんです、とリゾナントで話題にした時のこと。「そんなはしたないこと、やっちゃダメ
!」と言いつつ、凄く羨ましそうにしていたさゆみの顔は忘れたくても忘れられない。

「そう言えばさ。あの後輩の子、今日は来ないの?二人組の片割れ」
「まーちゃんのこと?」
「そうそう。いつもだったら『さやしすーん!』とか言って教室に入ってくるのに。面白い子だよね、あの子」

面白いだけならいいんだけどねえ。と里保はひとりごちる。
リゾナンターいちの「問題児」。その面倒を見ることを強いられている二人組のもう一人、遥の心労たるや。

にしても、いつもの光景が見られないのは違和感がある。と言うより。
何か、嫌な予感がする。
里保は自らに去来する胸騒ぎを抑えられずにいた。



時は少々遡る。
遥のいるクラスより早めに授業が終わった、優樹のクラス。
まるでロケット装置でもついているかのように、優樹は教室を飛び出す。

たなさたん、たなさたん♪

今日はれいなは仕事も特になく、久々に夕方から店のキッチンに立つという。
それを聞いた優樹は自らもれいなの手伝いを買って出た。
早く、喫茶店に行きたい。そのためには、優樹以外の三人ととっとと中学校を出なければならない。下校する時は四人で集団下
校。本来なら一人でまっすぐ喫茶店に向かいたいところだけれど、リーダーの厳命とあらば致し方ない。

となれば、三人の教室に立ち寄って下校を促すのがてっとり早い。
優樹の心は既にここににあらず、喫茶店に向いてしまっていた。

上級生の教室へと続く、廊下。
今は授業中、遮るものは誰も居ない。はずだった。
廊下を駆け抜ける優樹の前に現れた、派手な格好の女性。極彩色に彩られたきらきらとしたそれは、まさにステージ衣装。

「あれ、テレビで見たことある人だ」

優樹が女性に向かって指を指す。
日本に住んでいて、その姿を見たことが無い人間はいない。それほどまでに圧倒的な知名度を誇る、スーパーアイドル。

「えーと、何だっけ名前。そうだ、ばつうらあやさん!」
「微妙に違うんだけど、まいっか。お嬢ちゃんさあ、あたしにちょっと付き合ってくんないかな」

さっきまで決して絶やさなかった笑みが、消えた。
この人、怖い。
本能で優樹はそう感じる。けれど、それはあまりにも遅すぎた。



「時の皇帝、タカーシャイ・ハヨシネマは騎士団を率い、勇敢に戦った。これが201年の出来事な。『ニオイが嫌なの』の語
呂合わせで覚えるように」

歴史の授業。
多くの生徒たちが真面目に授業を聞いている中、机に顔を伏せている少年の頭のようなショートカットが、一人。
工藤遥は、完全に眠りの世界に落ちかけていた。
歴史など兄を救うために敵の本拠地に乗り込んだ海賊の話だけで十分、寝る子は育つのだ。頭の中で狸みたいな鹿が一匹、二匹
と横切り始めたその時だった。

 ・・・まーちゃん?

リゾナンターたちは、互いに共鳴しあう。思念に関しても、また然り。
ここは大勢の人間が集う学校であり、心の叫びがダイレクトに届くような場所ではない。しかし遥は優樹の助けを求めるかすか
な声を、聞いた。

「せっ、先生!はる、トイレに行きたいですっ!」
「しょうがないなあ、漏らすなよ?」

先生の軽口に生徒からの笑いが起こる。
遥はデリカシーのないじっちゃんをひと睨み、脱兎のごとく教室を出て行った。

声が聞こえた方向に、「千里眼」を発動させる。
壁の向こう、校庭の先。真向かいの民家の屋根を、軽快な動きで飛び移り移動する女の姿が見えた。脇に抱えている少女は、間違
いなく優樹。

「まーちゃん!ちくしょう、あいつ!!」

女が何者か。何のために優樹を攫ったのか。
わからないが、阻止すべきことには変わらない。ただ、今から校舎を出て到底間に合う距離ではない。見えるのに、何もできない。
そんなもどかしい思いを汲むものがいた。

「くどぅー、方向はこっちでいいの?」
「鞘師さん、鈴木さん!!」

異変に気づき、駆けつけた二人の先輩。
里保は香音に目配せし、それから壁に向かって走り出した。
香音の「透過能力」により、里保は壁をすり抜けて校舎の外へと大きくジャンプする。

「え、嘘だろ…」

遥が絶句するのも無理はない。
壁の向こうは確かに外だが、ここは校舎の3階。飛び降りて無事で済む高さではない。しかし里保は弧を描くように綺麗に着地し、
人攫いの女を追いかける。

「ほらくどぅー、あたしたちも追うよ。もちろん階段を降りてね」
「は、はいっ!」

香音に促され、遥は慌てて階段に向かって駆け出した。




投稿日:2013/06/07(金) 00:26:04.08 0


☆☆


喫茶リゾナント。
優樹が攫われたと亜佑美に一報を入れた遥だが、攫った人物を追うとしてそのまま電話を切ってしまった。
それと同時に爆発事故の現場を報じていたテレビの画面が、ふっと暗くなる。
次の瞬間にテレビが映し出したのは、煌びやかな衣装を身に纏ったアイドルが歌い踊る姿だった。

「ちょっと、誰ですか!?テレビのチャンネル変えたの!」

しかもこんな時にアイドルの番組だなんて。
亜佑美は先輩である聖を反射的に見てしまう。が、聖は自分ではないと言いたげに首を大きく横に振った。

「この人、松浦亜弥やん」

聖と同じくアイドル好きな衣梨奈が、言う。
チャンネルを変えたのはこっちのKYか。と思いきやそうではなさそうだ。いや、それ以前に。

「おかしいです。どこのテレビ局も爆発事故を報じているはずなのに」

そう言う春菜の指摘は、正しかった。
ついさっきまで、ザッピングしながら他の報道番組を見ていたばかり。いつもは重大な事件が起きているのにアニメを放送している
あの局ですら、特別報道番組に切り替えていたはず。

「それにこの時間はこんな歌番組、やってません」

きっぱりと言い切る春菜。
すると、画面の中でおかしなことが起こる。それまで歌い踊っていた松浦亜弥が、カメラにゆっくり近づき、そしてまるで画面を隔て
たこちら側に向かって話しかけてくるような態度を取ったのだ。

「いやいや、鋭いね。そう、これは喫茶リゾナントだけで見ることができる特別番組」

カメラにアップで映るその顔は、既に国民的アイドルのそれではなかった。
まるで月が雲に隠れるかのように、表情の闇が増してゆく。

「はじめまして。芸能人『松浦亜弥』は世を忍ぶ仮の姿」

ぱちん、と指を鳴らす。
きらきらした衣装は、瞬く間に処刑人のローブへと姿を変えた。
手に持つ桃色の刃を携えた大鎌は、死神のそれによく似ている。

「あたしはダークネスの粛清人、『赤の粛清』」

テレビを見ている全員の背筋に、寒気が走る。
先輩の話でしか聞いた事のなかったダークネスの幹部が、ついに姿を現したのだ。

「まず説明します。あなたたちの仲間を攫った人物は、あたしです」

カメラが、「赤の粛清」がいる場所の背後に焦点を合わせる。
柱に縛られ、ぐったりしている少女は。

「まーちゃん!!」
「そのとおり。ま、気を失ってるだけだからそういきり立たないの」

まるで、こちら側の様子が見えているかのように。
優樹が捉われの身となっている事実に憤る四人を窘める、「赤の粛清」。

「で、ここからが本題ね。これから、あなたたちは道重さゆみと田中れいなを除いた7人で、あたしが待つ
この撮影スタジオに来て貰います」

にこりと笑みを見せつつ、そう説明する粛清人。

「どうして道重さんと田中さん以外で」
「明らかな罠です!!」

敵が提示した条件に疑問を持つ聖に、春菜が強く牽制する。
だが、次に「赤の粛清」が取った行動により選択肢は消滅した。

画面に向け、翳した大鎌の刃。
桃色の刃が、まだらに光る。何かが、滴り落ちている。
刃の上には、毛の生えたボールのような物体が、数個。よく見ると。
それは見知らぬ中年たちの生首だった。

「安心して。スタジオの責任者のおじさんたちはもう口が利けません。堂々とスタジオに乗り込んできてく
ださい。でも、あたしの誘いを断わったり、先輩たちにこのことを知らせた場合」

「赤の粛清」が、鎌を背後の優樹に向ける。
勢いで生首が転げ落ち、バウンドしながら床に赤い染みを作った。

「生首がひとつ、増えることになるけどね」

その台詞が、最後まで語られることはなかった。
衣梨奈が、手にしたピアノ線をテレビに巻きつけ粉々に破壊したからだ。

「行こう、聖」
「うん」

衣梨奈の呼びかけに聖が、力強く頷く。
最早一刻の猶予も無い。罠だろうが、何だろうが、手をこまねいていては優樹の命が危ない。

「道重さんや田中さんには…」
「優樹ちゃんのことを考えるとそれはできないよ。大丈夫、優樹ちゃんを助けたら逃げればいい」

春菜の提案を、やんわりと否定する聖。
相手はダークネスの幹部だ。普通に考えればとてもではないが太刀打ちできる相手ではない。
ただ、相手の虚を突きその隙に場を離脱することくらいなら可能なはず。

さゆみ、れいなに続き聖はリゾナンターでも三番目の年長者になっていた。
状況を考え、最善の手を打つという考え方は、新しいリゾナンターたちのまとめ役である彼女の中にも育ち
つつあった。

ただ、それでもやはり聖の考えは甘かったと言わざるを得ない。




まるで忍者漫画に出てくる忍者のようだ。
人攫いは民家の屋根を飛び、電信柱を足場にして、さらにマンションの屋上へと飛び上がる。
しかし、追いかける里保もまた、「水軍流」によって鍛えられていた。故郷の切り立った崖や谷に比べれば、
都会のコンクリートジャングルなど比ではない。

追跡していた赤いスカーフが、大きな建物に入る。
建物の玄関に降り立った里保はそこが、テレビ撮影に使用されているスタジオらしき場所であることに気づく。

誰か人がいるかもしれない。

しかし、躊躇している時間はない。
里保は息を大きく吸い込み、それから意を決してスタジオの中に乗り込んでいった。

実に奇妙だった。
受付、建物の中。まるで人の気配がしない。そもそも、こういった類の場所の玄関ににいそうな警備員すら見当たらなかった。
既に敵の手がこの建物に伸びている、と考えるのが自然。とすればこれから先どんな罠が張られているかわからない。
里保は自戒の念を込め、ゆっくりと探るように建物の内部に入ってゆく。

「こっちだよ」

不意に、声が聞こえてくる。
第五スタジオ、と書かれたスタジオの入口が開放されていた。
周囲に最大限の注意を払いつつ中に入ると、声の主が大鎌を立てかけて待っていた。

「あたしの足について来れるなんて。なかなかやるじゃん」

頭上の照明に照らされているその顔に、里保は見覚えがあった。あのTVによく出ているアイドルか。
ただ、今はそんなことはどうでもいいことだ。

「まーちゃんは?」
「そういうのってさ、お約束でしょ」

言いつつ、大鎌の切っ先を里保に向けた。
力づくで聞けか、ならば望むところだ。
腰の刀の鍔にかけていた親指を弾き、ゆっくりと刀を抜いた。

「お、水軍流ってやつ?見せてよ」
「言われなくても!!」

両手に構えた愛刀「驟雨環奔」を片手に持ち替え、空いた手を懐に忍ばせる。
水の入ったペットボトルの封を切り、あふれ出した水でもう一本の刀を作り出した。

二刀流。
本来ならば里保の切り札である流法を真っ先に出した理由は、相手の得体の知れなさ。
誰にも気づかれずに、優樹に接触し、攫ったやり口。侮れない。
走りながら刀を交差させ、ぎりぎりまで溜めた力を相手の前で解放する。

「さすがリゾナンターの次期エース。けど、ダークネスの幹部を相手にちょっと舐めすぎなんじゃないの?」

交差した刀の先には、大鎌。
行き場のなくなった里保を、前蹴りで弾き飛ばした。
その威力を最小限に抑えるかのように、後ろに飛び、再び間合いを取る里保。

この人、ダークネス。それも、幹部って言ってた…

心臓が跳ね上がりそうになるのを、努めて冷静に抑える。
普通に考えれば、到底自分が相手になるような状況ではない。
ただ、そんなものは実際にやり合わないとわからない。能力の相性もあれば、戦略の有利不利もある。
名前で物怖じするなど、水軍流の名前に泥を塗る行為に他ならない。

再び、「赤の粛清」に正対する。
体を半身にし、「驟雨環奔」を持つ手を相手に向ける。俊敏さを優先した、水軍流剣術の構え。

「いいね、その表情。ぞくぞくするよ」
「いざ、参る!!」

里保が飛び出した。
「赤の粛清」が、向かってくる相手の首を薙ごうとその凶刃を振り上げる。
勝負は一瞬。鎌の軌跡が自らに届くより前に、相手を斬らなければならない。

桃色の刃が、弧を描く。
その軌跡上を、里保が駆け抜けた。

「ぐあああああっ!!!!!」

叫び声とともに、得物を取り落とす音。
斬られたのは、「赤の粛清」だった。
胸を十字に斬られ、鮮血が赤いスカーフをさらに赤く染め上げる。

あっけない結末。
相手の奢りがあったからか。それとも里保の実力が上回るほどに成長していたのか。

「くっ…舐めてたのは、あたしのほうだったか」

大鎌を拾いあげ、息も絶え絶えに「赤の粛清」が言う。
その表情にはもう、余裕はない。

必死の形相で襲いかかる粛清人。
鎌の持ち手を短くし、斬撃のストロークを短縮する。
だが里保もふた振りの刀を器用に使いこなし、凶刃を捌く。
左からの刃を「驟雨環奔」で弾き、返す刀をさらに水の刃で止める。

鎌の一撃をかわしながらも、里保の本能が必死に訴えかける、違和感。
何かがおかしい。
足元を掬う鎌の刃をジャンプで回避した時に、それは起こった。

「もう、いいよ。大体『わかった』」

「赤の粛清」が発した言葉ではなかった。
むしろ彼女自身、声の主を探そうと、スタジオの方々に首を向けていた。

「誰?出てきなよ!」

「赤の粛清」が睨みつけた先の空間が、歪む。
暗黒の虚、ゲートの出口から出てきたのは。

「だから言ったじゃん。大体わかったんだってば」

里保は目を疑う。
そこには、「赤の粛清」に寸分違わず同じ造形をした、「赤の粛清」がいた。

「あんた…クローン?」
「いいから。あんたの役目は終わったの。さっさと交代」
「クローンの分際で生意気な!!」

赤き粛清人の言葉は、そこでぷつりと途絶える。
いつの間にか首を攫われていた「赤の粛清」は、自分が何をされたかすらわからないまま、永遠に意識を失った。

「はい、ご苦労さん。て言うかあんたがクローンでしょうが」

目にも止まらぬ動きで、たった一撃で相手を死に至らしめた。
先ほどから里保を襲っていた違和感。今なら理由がわかる。
後からやってきた女性こそが、本物の「赤の粛清」であると。




投稿日:2013/06/11(火) 10:47:05.96 0


☆☆☆



一方、ここは爆発のあった都心のオフィスビル。
建物の周囲は関係者以外立ち入り禁止のテープで囲われ、さらにその周りを野次馬やマスコミたちが取り囲
んでいた。
そんな喧騒を余所に、建物内では必死の救助活動が行われる。

警察関係者である「瞬間移動」の能力者の手によって、次々と現場に送り込まれた治癒能力者。
数はさほど多くはないが、すぐに駆けつけることができた人数としては妥当なところ。救急部隊が到着するまで、
数分の時間差がある。さゆみたちの仕事はそのタイムラグの間に落としてしまう命を、救うことだった。

崩れた壁、粉々になった窓ガラス、そして血まみれで倒れている人々。
まだ先代リーダーの愛が在籍していた時。さゆみはニューヨークのとある場所で発生した爆弾テロ事件の負傷
者を治療する機会があった。あの時は異国の地ということもあり、状況をいまいち呑み込むことができなかった。
しかし、いざ自分と同じ日本人が血を流し苦しんでいるのを目の当たりにすると。その凄惨さはよりリアルに、さ
ゆみの心に刻みつけられるのだった。

フクちゃんを連れてこなくてよかった…

さゆみは心からそう思う。
いかにリゾナンターとは言え、彼女はまだ16歳だ。もちろん、さゆみやれいなを含めたかつてのリゾナンターた
ちも同じような年齢でこの世界に飛び込んでいるという事実はある。しかし、その経緯やアフターケアなどは今
とは比べものにならないほど劣悪だったのもまた、事実。免疫の少ない聖、いや今の若いリゾナンターたちを
できればこのような現場には連れて行きたくはない。

さゆみの目の前に倒れている女性の肩口の傷に手をかざしながら、過去のことを思い出す。
運命に導かれ、集うこととなった9人の仲間。それぞれが抱えていた心の傷は、容易には癒せないほど深かっ
た。愛に声をかけられるまで、各々が過酷な道を歩んできた。中には、その手を血に染めたものも。

― リゾナンターは、殺人集団やないんやよ ―

愛がかつて残した言葉が、いつまでもさゆみの胸の奥には残っている。
ダークネスとの争いが激化する中、思いがけず敵の命を奪ってしまうこともあった。若い小春や、秘密組織に身
を置いていたリンリンやジュンジュン、そして甘さが死を招くような環境にいた里沙は「仕方ない」と割り切った。
それを覆したのが、先の愛の言葉だった。

自らの内包する「i914」と戦い、打ち克ったものの、同時に「i914」の犯した過去の罪を共に背負うこととなった愛
だからこそ、その言葉は誰が発するものよりも、重かった。

「…あの、大丈夫ですか?」

不意に、声をかけられる。
見ると、自分より5、6歳は年下のように見える少女が傍らに立っていた。
黒髪の、色白な少女。黒目がちな瞳と首のほくろが印象的だ。おそらく警察関係者が招聘した治癒能力者の一人な
のだろう。

「あ、ごめん。考え事してて」

手当していた女性の傷口は既に塞がっていた。過剰な治癒は、肉体を傷つける可能性がある。
さゆみは慌ててその場を離れ、近くに倒れていた人のところへ移動する。

が、間の悪いことにその人間は一目見て死んでいることがわかるくらいに、損傷が激しかった。
爆風で飛び散った瓦礫をまともに受けたのだろう。無事なのはすすけた顔のみで、その下は首や胴体が千切れかけ
ていた。

「…こんな若い子まで」

浅黒い肌に、意志の強そうな顎。
生前はきっと活発な少女だったのだろう。
亡骸に手を合わせていると、

「もう、いい加減にしてよ!」

と、特徴的な声が。
先ほどさゆみに声をかけた少女だった。

「え?どういう…」
「ごめんなさい。この子、うちの子なんです」
「うちの子?」

意味が呑み込めないでいるさゆみを尻目に、少女が遺体に向かって話しかける。


「ほら、お姉さんが困ってるでしょ!早く起きて!!」

すると、死んでいたと思っていたその肉体がやおら動き出す。
千切れかけていた首や胴体が、急速に成長する血管や筋組織によって繋がれ、再生してゆく。そして常人と変わら
ぬ状態で、少女がゆっくりと起き上った。

「憂佳は頭固いなぁ。もうちょっと『死んで』たかったのにさ。被害者だったのは事実なんだし」
「だって紗季ちゃんが『死んでる』と紛らわしいでしょ。お仕事の邪魔になるし」

さゆみの頭が混乱する。
あれ?ちょっとこの子さっきまで死んでたよね?何で起き上れるの?ゾンビ?って言うかもう一人の子かわいいな
あ。色も白いしお人形さんみたい。どさくさに紛れて抱きつこうかなでもこんな場所でそんなことしちゃだめ…

「あの、お姉さん?」
「えっあっ別にやましいことなんて全然考えてないよ!!」
「何のことですか?まいいや、自己紹介しますね。この子は、小川紗季。そして私は前田憂佳。警視庁が新設した
能力者部隊の一部署『スマイレージ』のメンバーです」

能力者部隊「スマイレージ」。聞いたことのない名前。
さゆみはしばらく二人の顔を交互に見て、それからまた混乱するのだった。




圧倒的な絶望感。
里保自身、ダークネスの手のものと相対することは初めてではない。
しかしながら、「幹部」という肩書きがついただけでこれほどまでに差があるものなのか。

「ごめんね鞘師ちゃん。時間調整が必要だったからさ」

里保の恐れなどどうでもいいとばかりに、そんなことを言う「赤の粛清」。
すると、後ろから複数の足音が押し寄せてきた。

「里保ちゃん!!」

指定されたスタジオへとやって来た聖、衣梨奈、春菜、亜佑美。それに、途中から合流した香音と遥だった。

「予想以上に鞘師ちゃんの動きが早かったからさ。クローン使って時間稼ぎをしてたってわけ。他の子たちが到着
するまでのね」
「何言ってるかわからないけど、まーちゃんをどこへやったんだよ!!」

相手の都合などどうでもいい。
まずは優樹の安否、と遥が大声で叫んだ。

「あの子なら無事だよ、ほら」

「赤の粛清」が頭上を指す。
照明のケーブルに絡め取られているかの如く、優樹が天井から吊るされていた。
そこには、聖たちが喫茶店のテレビで見た、そして里保が「赤の粛清」を追跡している時に見た優樹。ただ。

「まーちゃん…?」

吊るされていた体が、二つ。
まるで双子のような優樹「たち」が、気を失ったまま縛られていた。

「どうしてまーちゃんが二人も」
「大丈夫はるなん、片方はきっとクローンだよ」

動揺する春菜を、里保が落ち着かせる。
里保は目の当たりにしていた。さっきまで本人と見分けのつかないくらいに酷似した粛清人のクローンが、自分の
前に立ちはだかっていたのを。だが、その推測を否定するように「赤の粛清」は空っぽの笑みを見せた。

「ちょっと違うんだよね。ま、さっきのを見たらそう思ってもしょうがないかな」

言いながら、手にした大鎌を。
天井の優樹に向けて投げつけた。

誰も、動く事ができなかった。
里保の洞察力でも、春菜の超聴覚を持ってしても、彼女の行動を読むことはできなかった。
結果。鎌の刃が、優樹の胸を刺し貫く。

拘束していたロープごと断ち切られたせいで、ずるりと、落下してゆく優樹。
そこではじめて亜佑美が走り出す。間一髪で床面に墜落するのを防いだものの、傷口から噴き出し、着ていた制服
を染め上げる血の量が命に関わる傷を負っていることを証明していた。

「まーちゃん!!」
「そんな…約束が、ち、が…う…」

腕に抱きかかえられた優樹はそれだけ言うと、糸が断たれたかのように事切れた。

「…嘘でしょ」

悪夢のような出来事。遥は、目の前で展開された事態が呑み込めない。
しかし亜佑美は仲間たちの懸念を払拭する。

「この子、まーちゃんじゃないです」

その言葉のとおり、少女は優樹ではない見知らぬ少女だった。
胸に刺さっていた大鎌が独りでに引き抜かれ、再び「赤の粛清」の手に収まる。

「その子は、擬態能力者。さすがにあんたたちのクローンはまだ作れないからね。譜久村ちゃんたちが見たあの映
像あるじゃん。あれ、あたしのクローンとその子だったんだよ」

ダークネス。心を闇に食われたものたち。
さゆみから、そしてれいなから。遡れば、里沙や愛佳、そして愛から。どんな連中かは、聞いてはいた。だが、聞
くのと実際にその所業を間近でみるのとでは、わけが違う。

人が簡単に、死んでゆく。
用済みとあらば、何の躊躇もなくその命を奪う。
春菜と遥は、元々は能力者を教祖とした新興宗教組織に攫われた子供たちだった。後にその組織自体がダークネス
の息がかかった存在だと知るが、その悪辣な教義、行動原理。
今となれば納得できる。

「てめえ、何か昔のことを思い出してムカつくんだよ」
「あなたのしたこと、許すわけにはいきません」

ずっと育ってきた組織の中で日々体を蝕んでいた、不快感。
それは、目の前の女が放つ闇の吐息と寸分違わず重なっていた。

「にゃはは。ボルテージ、上がってきた?いいよ、全員でかかっておいで」

二人が放つ敵意を、そよ風を受けるが如く気持ちよく受け流す「赤の粛清」。
亜佑美が体勢を低く構える。香音と聖が全員のバックアップのために後方に下がる。衣梨奈が両手から伸びるピア
ノ線を靡かせ、里保が愛刀を握り直した。

「みんな、優樹ちゃんを確保して、逃げるよ!!」

聖の叫び声。
そう、最初から戦うつもりなどなかった。
まずは、全員無事でリゾナントに帰還すること。聖はそのことを最優先としたのだ。

衣梨奈が、相手の大鎌にピアノ線を巻き付ける。さらに高速移動の亜佑美と素早さを持ち味とする遥が相手の目を
撹乱。その隙に、聖が屈み床に手をつける。床張りのリノリウムが大きく裂け、飛び出してきたのは太く堅い木の
根。聖が自分達を付け狙っていた能力者の一人から複写した植物操作能力だ。

俄かに作られた足場を器用に辿り、里保が天井に吊り下げられている優樹を拘束するロープを一閃のもとに断ち切
る。落下地点には香音が。

「みんなに透過の力をかけたから、壁をすり抜けて脱出して!!」

優樹を抱え、最初に壁をすり抜ける香音。
だが。

勢いよく壁に突入した香音が”何か”に阻まれて、壁から弾き出される。
床に転がり、蹲る香音。その顔には、血の気がまったくない。

「ダメだよ、逃げちゃ。あたしがこの状況をお膳立てするのにどんだけ苦労したと思ってんの。どっかの知らない
オフィスビル爆破までして、あんたたちと先輩二人を引き離したのに。そうだ、ちなみに壁の中は零度以下の超低
温になってるらしいよ」
「入ると、その子みたいに全身凍傷になるから」

その声と共に姿を現す、ゴスロリファッションの女。
「氷の魔女」が、底意地の悪い笑みを浮かべる。

「ここに誘い出された時点で、あんたたちの命運は決まってるの。だったら、精々全力出してさ、あたしを楽しま
せてよ」

血をたっぷりと吸った鎌の刃を、「赤の粛清」が突きつける。
何もかもが、全てが綿密に仕組まれた、策略。
聖は自らの至らなさを、激しく後悔した。




投稿日:2013/06/19(水) 10:30:21.36 0


☆☆☆☆


さゆみの前で、死んでいたはずの少女、小川紗季。
偶然現場に居合わせ、そして爆発に巻き込まれたのだという。彼女が持つ「不死能力」がなければ本当に死んでいたところだ
った、と当の本人はあっけらかんと話した。

「そうなんだ。あなたたちが、『エッグプロジェクト』の」

道重さゆみは、爆発事故で偶然出会った二人の少女。紗季、そしてもう一人の前田憂佳から話を聞き、そのプロジェクトの名
前を思い出した。

確かPECTの任務遂行能力に限界を感じた警察の上層部が、若い能力者を集めて育成するプロジェクトだったはず。

そういう動きがあることはさゆみも知ってはいたが、まさか実戦投入されるまでになっていたとは。警察も、各地で犯罪者の人
材バンクと化している反社会的能力者集団への対策に本腰を入れ始めたということなのだろうか。

「私たちも道重さんのこと、知ってますよ。リゾナンターって有名じゃないですか」

活発そうな少女・紗季が、笑顔で言う。
後ろでもう一人の少女である憂佳が、失礼だよぉ、と嗜めた。

「でも、憂佳たち、研修期間中ずっと聞かされてたんです。リゾナンターさんたちは、たった9人でダークネスに立ち向かった英
雄だって」
「そんな、英雄だなんて」

憂佳の言葉に、さゆみは照れくささと同時に居たたまれなさを感じる。

確かに自分達はダークネスという巨大な組織に対抗してきた。たった9人の能力者に対して、数百、いや末端組織まで含める
と数千の戦闘要員を抱えるダークネス。まるで巨象に立ち向かう小動物のような状況。それでも、諦めず、戦ってきた。

全ては、二度と自分達のような悲しい人間を生み出さないために。

「でも、『銀翼の天使』には負けちゃった」
「ちょっと紗季ちゃん!」

鋭い、紗季の一言。
闇に抗う意思が、砕かれたあの日。
一度は、目的を見失った。絵里が倒れ、小春や愛佳が能力を失い、ジュンジュンとリンリンが故郷に帰っても。リゾナンター
が解散しなかったのは、リーダーの愛の存在があったからだ。
その意志は、受け継がれる。

「そうだね。確かに負けちゃった。けど、1回の負けなんかでさゆみたちは終わらない」

さゆみは言いながら、強い光の宿る瞳で二人のことを見つめた。

「なるほど。さすがはリゾナンターのリーダーですね」

憂佳が、得心したように言う。そして。

「でも。ダークネスを倒すのは私たち『スマイレージ』ですから」

さゆみの視線を、挑戦的な態度で返す、紗季。
あえて言うなら、それは敵意にも似ていた。

「紗季ちゃん、ほら、お仕事お仕事」
「忘れてた。それじゃ私たち、負傷者の治療の続きをしてきますね」

展開された空気を収拾するように声をかける憂佳に、何事も無かった風な口調で紗季が挨拶をして立ち去る。それが逆に、先
ほどの時間の異質さを際立たせていた。

なんなの、あの子たち…

さゆみの胸に、いつまでも違和感が纏わりつく。
それを振り払うように、再び負傷者の救護活動に専念するのだった。

「もう紗季ちゃん、あんなこと言わなくてもいいのに」

崩壊したロビーの瓦礫の陰。
非難めいた憂佳の言葉だが、紗季はものともしない。

「かにょんだったらきっともっとひどいこと言ってたと思うよ。それに、どうせいずれは敵対することになるんだから」
「それはまだ、わからないよ」

憂佳は否定するが、その表情には暗い翳が差していた。

「そう言えばさ、『エッグ』の落ちこぼれたちがリゾナンターの子たちにちょっかい出したんだってさ」
「ほんとに?でもなんで…」
「さあ。どうせ手柄あげて復帰でもしたかったんじゃないの?みっともない話だよね」

紗季の、明らかに悪意のある口調。
「エッグ」と名づけられた若い能力者集団は、警察組織に登用されるに当たって、一種の篩い分けをされた。結果、紗季や憂
佳は残留し、7人の少女は組織から切り捨てられた。リゾナンターに奇襲をかけたのは、再評価してもらうための一手だった
のだ。

「よしなよ。昔の仲間のことを悪く言うのは…」
「憂佳は綺麗ごとばっかり。つまんないよ」

顔を顰め、苛立ちを見せる紗季。だが、すぐに笑顔になる。

873 自分:名無し募集中。。。[sage] 投稿日:2013/06/25(火) 08:10:28.89 0
「でも、これからはきっと面白くなる。名ばかりのリゾナンターなんかよりも先に、あたしたちがダークネスを倒すから。邪
魔をされたら、あいつらごと潰せばいい」

言いながら、紗季は足元の瓦礫を思い切り蹴飛ばす。
砕け散った建材の破片が、耳障りな音を立てて飛び散っていった。




投稿日:2013/06/25(火) 08:07:18.57 0