『傷だらけの太陽』


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「ん?あれ、生田からやん。珍しい」

通話ボタンを押すれいな。

「はい、なに?」
「…」
「生田?」
「…」
「ちょっと、生田?」
「…」

電話の向こうからは何も声は聞こえない。
おそらく、持ち歩いているうちに何らかのはずみで電話がかかったのだろう。
そう思い、れいなは電話を切った。

カランコローン

「こんにちはー!」
「おー鈴木!」
「ねー田中さん、さっきえりちゃんから変な電話がかかってきたんですよ」
「変な電話?」
「そう、何も言ってこないんです。いたずらかとも思ったんですけど、えりちゃんだって分かってるのに無言電話するのもおかしいし」
「えー、さっきそれれーなもかかってきたとよ」
「え!?本当ですか!?何してんだろえりちゃん…」
「きっとあれよ、何かの拍子でボタンが押ささったんよ」


~♪

その時、またれいなの携帯が鳴った。

「…生田や」
「あ、間違えてかけちゃったからゴメンなさいの電話じゃないですか?」
「そうよね」

ピッ

「はい?」
「…」
「生田?」
「…」
「あれ、またですか?」
「そうみたいやねw」
「じゃあこうしません?」
「何?」
「このまま繋いでおきましょうよw いつか電話をとるから、その時に大声出してえりちゃん驚かせましょうw」
「ええねw どうせ電話代かかるの生田やしw」

スピーカーホンにして、衣梨奈の声がするのを待つ2人。
数分後、やや大きな物音がした。

「あ、きっと電話持ちましたよ」
「そうやね、そろそろやねw」

聞き耳を立てる2人。
ところが、衣梨奈の声はしない。ただ、何らかの物音は聞こえてくる。音量を最大に上げる。
継続的に聞こえる、鈍い衝撃音。その間に漏れ聞こえる、悲鳴とも呻き声ともつかない女性の短い声。
その声の主が衣梨奈だと分かるのに、時間はかからなかった。

「生田!!何しとう!?」
「えりちゃんどうしたの!?」

大声で電話の向こうに呼び掛ける2人。
鈍い衝撃音が止む。

ブツッ プー プー プー

そして、電話は切れた。

「鈴木!今日生田がどこに行くかとか知っとう!?」
「えっ、分からないです…。どうしよう田中さん、えりちゃんが…」
「とにかく、生田がどこにおるか!集中して!共鳴を感じて!」

数十分後、2人は雑居ビルの非常階段を上がっていた。
そしてその屋上には、横たわる衣梨奈の姿があった。

「生田!」
「えりちゃん!!大丈夫!?しっかり!」

衣梨奈は気を失い、応答はない。
またその身体は、ひどく痛めつけられていた。

「ヒドい…」
「鈴木!生田を連れて、すぐさゆに連絡して!」
「えっ!?田中さんは?」
「…近くにおる。やっつけてやらんと、気が済まん」
「田中さん、それなら私だって…」
「じゃあ誰が生田を連れて行くと!? …見守ること、寄り添うことも戦いやからね」
「…はい」
「よし、じゃあ生田を頼んだとよ」

衣梨奈を連れた香音は、物陰に潜んだ。

「ん…うん…」
「えりちゃん!気がついた!?大丈夫!?」
「あれ…?香音ちゃん…?」
「もう大丈夫だよ。田中さんも来てくれてるし、もうすぐ道重さんも来るから」
「そっか…よかったぁ… グスッ」
「え!?ちょっと、えりちゃん泣いてんの?」
「怖かったと…。それに、誰も来てくれないんじゃないかって…」
「え~?何言ってんのさw」
「衣梨奈ね、こないだ失敗したっちゃん」
「あぁ…、あったね」
「だからさ、何とか挽回したいなって…」
「1人で抱えないでほしいなー」
「え?」
「みんな同じ人間だから共感できたりする人は必ず居ると思うよ。…私だってさ、うまくいかない事ばかりだったことあったし」
「…。」
「田中さんも道重さんも、他の先輩達も、私達も聞いてないような、色んなことがあったと思うんだ。だけどさ、私達にはああして笑顔で優しく、時には厳しく、けじめはしっかりしてるなぁって」
「…。」
「なんか私が言えるような立場じゃ無いと思うけどさ、そういう人になりたいし、ならなきゃって思う。身体も心も、いっぱい傷ついてきてると思う。だけど、優しさで照らしあって、太陽のように強くなってきたんだなって思うんだ」
「うん。良いこと言うね香音ちゃん」
「そう?へへへ」


「あ!生田気がついたと!?」
「田中さん!」
「田中さん大丈夫でしたか?」
「全っ然。なんで生田あんなのにやられたと?」
「え~~?」
「生田はまだまだ隙があり過ぎるっちゃん。まだまだ鍛えてやらんといけんね」
「ええええ~~~~!?」
「そこはお願いしますでしょ、えりちゃんw」
「え~~?香音ちゃんまで~~w」
「そういやえりちゃん、なんで私と田中さんに電話くれたの?」
「それはもちろん、頼りにしてくれとるからやろ」
「いや~、それはその~、適当に誰でも、たまたまかかったっていうか…」
「は?」
「は?」
「あ…」
「行こ、鈴木」
「はい」
「え~~!ゴメンなさいゴメンなさい!待って下さ~い!」



投稿日:2013/05/13(月) 07:06:22.88 0
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