『VariableBlade 第六話 「悪夢の影と死合の礼儀」』


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殺風景なビルの一室、既にテナントは撤退しているらしくがらんとした灰色の風景
対峙する人影、一人は細身、細面で尖った顎の刀を構えた戦士
もう1人は・・・顔は見えない、がやはりクローン兵に似ている

いつもの夢とパターンが違う?

「組織とかさぁ、リゾナンターとか私にはどうでもいいんだよね!」

今回も音が聴こえる
リゾナンター・・・?と言った?

「ただアンタを高橋さん達のところに行かせるわけにはいかないからっ!」

細面の戦士がキッ、とクローン兵?を睨む
クローン兵は微動だにしない

「行くよっ!デク人形!」

細面の戦士の周囲に、次々とシルエットが浮かび始める
全て同じ、細面の戦士と同じ姿・・・分身の術!?
細面の戦士が十数人、いや二十人以上に分裂した!

分身した戦士達が一斉に走り出す
しかしクローン兵?は微動だにしない

「やあーっ!」

一斉に掛け声を挙げて、四方八方からクローン兵?に刀を振り下ろす
 ・・・が、その姿は次々とクローン兵?の身体をすり抜け、次々に消えていく
やはりまやかしの幻影か、しかしあの中に実体が混ざっているはず
幻影に紛れて、一撃を加える作戦かっ
しかし、次々に幻影に斬られているのにクローン兵?は微動だにしない・・・まさかっ!?


「もらったっ!」

ガコンっ!と鈍い音がする・・・やったか!?いや!

「な・・・なんで・・・?」

次々とクローン兵を取り囲んでいた幻影が消えていく
クローン兵は真正面を向いたまま肘鉄を繰り出し
背後から襲いかかった細面の戦士の脇腹を精確に抉っていた

「ガハッ!」

細面の戦士が口から血を吐いた
肋骨をやられたか・・・クローン兵の力は常人のおそらく10倍はある
ただでは済むまい、いや、致命傷ともいえるダメージのはずだ
細面の戦士の身体はまるで羽毛のように舞い、吹き飛んで
ガン!と後方の天井まで叩き付けれ、ドスっと力なく地面に落ちた

プシャーッ!
天井のスプリンクラーに戦士の身体が触れたのか、一斉に水が吹き出し始める
噴きだす水の音だけがビルの一室に響く

倒れた戦士の周囲の水にドロっと赤いものが混ざる・・・血溜まり・・・
クローン兵?は立ったまま微動だにしない。

ピクリ、と戦士の指先が動いた
もうよせ!決着は付いた!本当に死んでしまうぞ!
叫ぼうとしたが声が出ない、身体も動かない、いつもの夢と同じだ!畜生!

「・・・フフっ、フフフフっ」

口から血の泡を噴きながら、戦士が自嘲気味に力なく笑い始めた


「あ~ぁ、リゾナンターを踏み台にして・・・ゲホっ・・・xxxを手に入れたかったんだけどな・・・」

仰向けになって、戦士が力なく呟く。内容はよく聞き取れない。
戦士の目から急速に命の灯が消えて行く・・・なんだ?なんでこんなものを私に見せる!?

「畜生・・・なんか悔しいな・・・だからせめて・・・アンタを連れて行くことにするわ!」

カッと見開いた戦士の瞳に命の灯が再び宿った!
火は消えるその直前にその勢いを増すもの・・・じっちゃんがよく言っていた言葉
これはまさにそれに見える・・・あの戦士の、最後の力!

「うぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

バチ、バチバチバチ・・・青白い光、火花が戦士の身体を包む
その光が周囲の水にも拡がっていく、これは電気!?あの戦士の持つ能力か!?
あっという間に雷光は水浸しの部屋中に拡がり、クローン兵?の身体も包み込んだ

ガガガッ!ガガガガガガッ!
クローン兵?の身体が激しく痙攣する
効いている?奴がクローン兵なら中身はマシン、実は最も有効な攻撃かもしれない
絶叫しながら、なおも戦士は電気を放ち続ける
貴方の最後の命の輝き、しかと見届ける。私にはそれしか出来ない。

クローン兵?が手で頭を抱え、遂に地に膝をついた
その身体のあちこちから、黒い煙が吹き出し始めている

「アハハハハハハハハ!ざまぁ見ろ!ゴホっ・・・アハ、アハハハハハハハハハハハハっ!」

戦士の甲高い笑い声と共に、電気がその勢いを一層激しく増した
電気と水にまみれながら、地面を激しくのたうち回るクローン?兵・・・もう少しだ!


バチーン!と物凄い火花が部屋の中に弾けた!
一斉に部屋中の蛍光灯が弾け、辺りが真っ暗になる
灯りが消えるとほぼ同時に膝をついたクローン兵がガシャっ、力なくと糸の切れた人形にように崩れ落ちた
放電は止まり、スプリンクラーの水の音だけが静かに部屋の中に響く

暫しの静寂・・・全てが終わったのか
戦士よ、どうか安らかに・・・

「フフっ・・・フフフっ・・・」

えっ!?

「フフっ・・・生きてんじゃん、さすがアタシ・・・勝った!あのバケモノに勝った!ミラクルじゃん!アハハハハハハ!」

戦士の命の灯は未だ消えていなかった
偶然とはいえ部屋を水浸しにしたのは技あり、というべきか
運の強い戦士だ・・・

ウィーン

何っ?

「!?」

暗闇の中、立ち上がるシルエット・・・そんな!そんな!
赤外線で紅く光る目が、戦士を見据える
ザッザッザッザッ
素早く、なめらかに、スムーズに動き始める影
一定の機械的なリズムじゃない、まるで豹のような動き
違う・・・奴はクローン兵じゃなかったのか!?

クローン兵?がグッ、と戦士の胸倉を掴んだ


「あぁ・・・あぁぁ・・・」

信じ難い光景に震える戦士・・・言葉が出ない。無理もない。
しかし、それ以上に信じ難い光景を私は見ることになった。

「こぉんの!!!クっソガキゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

クローン兵?の顔がその瞬間ハッキリと見えた。
やはりクローン兵と同じ顔、しかし人間のように表情がある、感情、いや激情に溢れている。
瞳の光もクローン兵のどんよりとしたそれではなく人間、のそれだ
そして何よりも驚きなのは・・・クローン兵が声を発したこと!
普通に・・・人間みたいに喋ってる!

クローン兵は拳をググッ、と握り・・・戦士の顔に勢いよく振り下ろした。

グシャッ!鈍い音と共に飛び散る血潮・・・その残酷な光景に私は思わず目を覆う。

「よおっしゃあ!やっと”自由”になったぜ!i914っ!テメーは必ずブッ殺す!!!」

なんだ・・・なんなんだこの夢は・・・何かとてつなく恐ろしいものを見てしまった
早く!早く夢から醒めてくれ!


「サヤシ!サヤシ!起きて!もう朝だから!」
「ん、んんっ・・・飯窪博士!貴方は一体何者なんですか!?むにゃむにゃ!」
「私、博士でしたっけ?」
「あ、気にしないで下さい、たまに変な寝言言うんですよこの子・・・オラぁ!起きろー!」
「かのんちゃん、足音がドタドタうるさいんだけど?もっと女の子らしく歩いたらどうなの?」
「うるせー!寝言なのか本気のイヤミなのかわかんねーけどとっとと起きろー!うぉー!」

バシンバシン!いつもより平手打ちに力が入る

「あーっ、うっせーなもう!どうせ暇なんだからいいじゃねぇか」
「また退屈な一日の始まりっちゃね・・・」

そう、ダーイシとマサキちゃんが服を替えに行ってからもう一週間近くが経過していた。
一体どこに行ったんだろうね?

「なぁ、もうそろそろ諦めね?アイツ絶対どっかテキトーにジャンプして遊んでんだよ」
「そうでしょうか?ダーイシも一緒ですからそんなことは・・・あ、朝ご飯出来ましたよ」

 ・・・またこれか
チョコレートハニートースト

確かに美味しい、美味しいんだよ、うん。
でも7日連続これだとさすがに正直胃もたれがするんだよね・・・

「またこれかよー!他のもん作れないのかよ!」
「ハニーピザなら」
「それは昼飯だろ!で、夕飯はチョコレートフォンデュなんだろ!」

言うな・・・言うなお頭、もうみんなわかってることなんだから!
イイクボさんはチョコレート属性とハニー属性の魔法しか使えないんだ
しょうがないじゃないか、ラブベリーナ魔法学院家庭科部パティシェ課の人なんだから!
最初のうちは『チョコレートだけじゃなかったのかっ!』とか感心したんだけどね


「決めたっ!」

いきなり勢いよくKYが立ちあがった!

「えり、やっぱり肉が食べたいっ!狩りばしてくるとね!」

そう、コイツは5日前ぐらいからずっと『肉が食べたか・・・』と言い続けていた。
遂に限界が来たか・・・

「おおっ!いいね!俺も行くぜ」

お頭も立ち上がった。
正直、私もそろそろ他のものが食べたい・・・でも・・・

「こんな雪山で狩りは大変ですよ~」

イイクボさんの言う通り、この環境での狩りは極めて難しい。
保護色の白を纏った動物は極めて見つけにくいし
そうでない動物・・・たとえば熊とか
はそれなりに強力な力を持ってるし何より・・・熊の肉とか食べたくないし
何より、雪崩が怖くて銃が使えない。狩りが成立しないと思う。

「えりに考えがあるっちゃ!サヤシ、起きぃ!狩りの手伝いして欲しか!」
「う、うぅん・・・なんか・・・嫌な夢見たような・・・」
「オラっ!行くぞサヤシ!」

KYとお頭に両脇を抱えられて、サヤシが引き摺られていく
行ってらっしゃい・・・ウチは・・・寒いからチョコレートハニートーストでいいや
KYの考えってろくなもんでも無さそうだしね

「あ、かのんさん。いつも通りハニーマシマシでいいですか?」
「う~ん、今日はチョコマシマシなんだろうね」


「さぁ、りほ!やるっちゃよ!」

寒空の下連れてきて何をさせるのかと思えば・・・

”樹を切れ”

いや、御神刀は斧じゃないんですけど

「いいからやるっちゃよ!」
「晩飯がかかってるんだ!」

まぁ確かにそろそろ甘いもの以外が食べたいのは事実だ
ご先祖、光の戦士、すみません。初めて御神刀を私事に使います。
むっ、はっ・・・こんな感じかな?御神刀を斧のような形に形成する。
実のところ、昔よく薪用に樹を切っていたことはあったのでこの手の仕事は慣れている
もっとも、御神刀を斧に使ったことはなかったけど
手を合わせ、樹にも一礼をする・・・すみません、使わせて頂きます。

カーン!
ぶわさっ!
ぶっ!・・・枝に積もっていた雪がモロに落ちてきた
雪まみれだ・・・

「りほ!何やっとうと!」
「ウケルー!」

あああっ、煩い外野っ!気を取り直して、再び樹を切りに掛かる

カーン!カーン!

何故木材が必要なのか?それは狩りの道具、”弓”を作る為
KYの超視力は保護色の動物の動きをも捉える・・・あとは飛び道具があれば狩りが成立するのだ。


ギッ、ギギギギギギッ・・・切れ目から軋みを上げて樹が倒れてくる
弓を作る程度なので細い樹だ、そんなに手間はかからなかった。

「よーし!よかよ!こっから先はウチがやるっちゃ!」

KYが懐から軍用ナイフを取り出した
KYは器用に樹の幹を削っていく
ハンター要請養成で弓の作り方を習っていたらしく、あれよあれよという間に弓の形が出来ていく

「うん、よし。後は弦になる蔦を探すっちゃよ」

この雪山で蔦探しか・・・斜面とかにぶら下がってるんだろうか?

ガサガサっ!物音?
 ・・・ん?何かあっちの茂みで動いたような?

サッとKYとお頭も身構える
何か居るのか?・・・もしかしたら獲物かもしれない
そっと御神刀を構え、一気に茂みに刃を伸ばす・・・動物だったらゴメン!今夜のおかずにするっ!

サクっ!手応え!
同時に、けたたましい大声が雪山に響く

「痛ったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!いきなり刺すなぁ!!!」

茂みからから勢いよく人影がお尻を押さえて飛び出した!
人間?だった!ごめーん!こりゃ大変だ!・・・てゆうかあの軍服、正規軍かっ!

「テメェらなぁ!手ぇ出すなって言われてたけどもう我慢できねぇ!この糞寒い中ず~っと監視とかやってられっか!!!」

 ・・・ベラベラと自分から喋っていいのか?そういうことを
茂みから飛び出したツインテールのミニスカ軍服の少女はビシッ!と中指を突き出して私達に堂々と宣戦布告した。


「その制服・・・お前っ!S/mindageのっ!」
「知っているのか雷電っ!?じゃなかったお頭!」

どうやらお頭はあの少女を知っているらしい

「ええっと・・・あの・・・S/mindageの・・・誰だっけ?」

ズコーっ!その場に居る全員がズッこける

「知っとるんじゃなかったと?」
「いや、あんまり付き合い無かったんだよアイツらと」

付き合い無かったんだ・・・じゃあしょうがないよね
しかしツインテールの少女の方はワナワナと肩を震わせていた

「EGGの三下風情がS/mindage様を知らねぇとかふざけんなっ!」

なんか怒ってる・・・でもS/mindageって何?

「悪ぃ悪ぃ、俺、途中でEGG抜けたからさ。1期のダワさんとかニョンさんぐらいしかよく知らないんだわ」

極めてクールにお頭が返す。まぁ正規軍にも何期とか色々あるんだね。

「だぁあああああああああああああああっ!!!どいっつもコイツもっ1期!1期!1期っ!」

ツインテールの子が頭を掻きむしってドタバタと地団駄を踏む
なかなか感情豊かな子だなぁ・・・

「知らねぇなら教えてやんよ!俺はS/mindage2期製、タァムラだぁ!」

すっごい巻き舌・・・タァムラさん、っていうんだ、ふ~ん・・・とりあえず


「ゴメンっ!」

私は姿勢を正して頭を下げた。確かに彼女は敵?かもしれない。
でもよく確かめもせずいきなり刺したのは悪かった。だから、ゴメンっ!

「InvisibleBlade・・・」

アレ?何か変なことした私?何かシーン、としてるんですけど?

「なんで謝んだよテメェ!テメェは敵なんだろ!?何ビシっと礼とかしてんだよ!」
「死合は礼に始まり礼に終わるものだっ!いきなり刺したのは礼を欠いた。だから謝る!ゴメンっ!」

ヒュー・・・寒風が吹き抜ける。アレ?また何か変なこと言った私?

「・・・あああっ!なんか調子狂うな、もうっ!」

またタァムラさんが頭を掻きむしっている

「今日のところは見逃してやらぁ!だが必ず”箱”は返して貰うからなぁっ!とうっ!」

タァムラさんが地面を蹴ると同時に周囲の空間が歪む・・・アレは、マサキちゃんと同じ”ジャンプ”!
ぴょい~んという音と共にタァムラさんは跳んでいき、あっという間に見えなくなった。

 ・・・静寂が再び山を包む
最初に口を開いたのはKYだ

「・・・アイツ、何だったと?」
「さぁな、・・・でもある意味ラッキーだったかもな」
「ラッキー?」
「アイツがS/mindageならS級・・・つまり最強クラスの人工能力者だ。やり合うことにならなくてラッキーってことさ」

最強クラス・・・何だか面白い子だったけど強敵?なのかなぁ。まぁいいや、とりあえず蔦でも探そうか