『人喰いの共鳴 -Dream Eater-』


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最近、妙な事件が多発している。
世間では"事故"という認識の方が強いだろうか。
第一の犠牲者は、ある母子家庭の少女が自殺未遂をした。
いつもなら母親を起こしていた彼女が珍しく寝坊している。
不思議がりながら自室を覗くと、手首から血を流して倒れているのを発見。
少女は2週間前から不眠症を患っており、遺書なども見つからなかった為
警察は突発的な犯行と断定。
第二の犠牲者は少女の家から数キロも離れていない場所に一人暮らしの男子大学生。
彼もまた自殺未遂をしていた。
自室の窓からの飛び降り。
高い場所では無かったためと、前日の雨によってぬかるんでいた地面の
おかげで、全治3ヶ月の複雑骨折で事なきを終えた。
その彼も不眠症を患っており、念のために第一の少女との関係を調べたが
何も出て来ず、事件性も皆無と見て警察はまたもや突発的なものと断定。
第三者の犠牲者は、第二の事故が起こった場所から数キロ離れた会社に通うOLの女性。
彼女は会社の寮に住んでおり、同僚の女性とルームシェアをしていた。
その女性の証言では、深夜に大きな音がして目を覚ますと、彼女が
発狂したようにうわ言を叫び、持っていた包丁で襲いかかってきたという。

なんとかその場を抜け出し、近くのコンビニに逃げ込んで事情を説明し、再び
警察と共に寮へ戻ると、彼女は失神していた。

現在彼女は、精神病院に入っている。
ルームメイトの女性は、普段は温厚な彼女が何故、と泣いていたが
ここ最近の状態を聞くと、彼女は不眠症を患っていて、最近になって少し
感情の不安定が激しかったという。
それから2日に1度のペースで犠牲者は増え続けていった。

まるで彷徨う様に。まるで求めるように。伝播は止まらない。
それは街を覆い尽くすように、貪るように喰い尽くす。


第三の犠牲者による事件で警察もようやく本腰を上げて関連性を調べたが
何が原因なのか分からない以上、足取りを掴むのは不可能だった。
そして2週間後の今日、10人目の犠牲者が出た。

 「この街を中心に起こってる自殺未遂に関連付いた事件、ね。
 で、さゆみんはこれが全部同じヤツの犯行っていうんでしょ?」
 「まあここまで足跡を残してくれたら誰だってそこまでは行きつくよ。
 でも普通に行けばそこで行き止まり、当然警察は白旗を立てるしかないの」
 「ふうん、まあこの手のことは私達ぐらいしか分からないよね。
 見える殺人っていうのは大抵トリックとかある訳だし。
 でも最初からタネのないものなんて、いくら考えたって無駄だから」
 「まだ誰も死んでないですよ。で、ガキさんならこいつ、どんなヤツだと思う?」
 「まあ簡単に考えたら、精神的に害を与えるチカラ、なんだろうけど。
 何か腑に落ちないわね、コイツの狙いはなんなのかしら」
 「快楽殺人っていうのが当て嵌まりそうだけど」
 「もしそうだとしても疑問が残る。精神系能力者はね、他よりも負担が大きいの。
 この頻度で考えると、とっくに精神面が狂うほどにね。
 "洗脳"であれば画一的な命令をするなら一度にたくさんの事件を起こせる。
 だけど資料を見るに、相手に危害を加えようとした例は10件中3件だけ。
 と言うことは、争いを仕向けているという事じゃない。
 傷つく姿を見たいなんていうサイコなヤツなら、あまりにも頭の悪いやり方ね。
 もしそいつらが犯人なら被害者は死んでるだろうし、痕跡を残す必要もない」
 「ということはコイツは、なんの理由もなくこんなことをしてるって事?」
 「ううん、きっと目的はあるわ。どんなヤツであれ、動くという行為には
 ちゃんと理由が付きまとうものだもの、それが無意識なものでもね。
 そして、さゆみんが来た理由もこれに当てはまるんでしょ」
 「え?」
 「私を頼ってきたのは、この犯人のチカラが同系で、見解を聞くのも
 あったんだろうけど、同時にこのチカラも必要になった、違う?」
 「…手伝って、くれますか?」


 「なーに?『リゾナンター』から出た私に遠慮でもしてた訳?
 おあいにく様、相変わらずだから、まだ使えるわよ。私」
 「やっぱり…ガキさんには敵わないの」
 「田中っちが来なかったのも、さゆみんの配慮?」
 「いえ、れいなは他のところで調べてもらってます、下の子達も一緒に」
 「愛ちゃんが抜けて私も抜けて、正直どうだったかなって思ってたけど。
 愛ちゃんが言ってた通り、さゆみんは凄いね」
 「…ありがとうございます」
 「でも、こうして頼ってくれたのは嬉しいよ、ありがとね」
 「生田がガキさんに会いたいってうるさいです」
 「アハハ、知ってる」

新垣里沙の視界は包帯で巻かれている。
だが彼女はまるで見えているかのように立ちあがり、歩き出す。
手術すれば元の視力を回復することも可能だが、新垣が首を縦に振らない。
自分の罰のように背負う姿に、道重は胸に微かな痛みを感じる。

『リゾナンター』と【ダークネス】の戦いは現在休戦中だが、道重達が
再び活動した事が知られれば、また争いが始まるだろう。
それまでには新しく結集させたメンバーには強くなってもらわねば。

そして当然のように事件は蔓延している。
【ダークネス】の関与も否定できないが、今回の件に関しては違和感がある。
今回の不気味で怪奇なものでさえ、彼女達にとっては隣合わせに歩いている。
決して相容れない敵と、この世界で共に存在する現実。
それを受け止めながらも、彼女達は、歩き続けるのだろう。

 「それで、私は何をすればいいの?」
 「今日、10人目の犠牲者が出ました、その子を見てほしいんです」
 「…てことは、身内の誰かが?」
 「いえ、うちの子達は大丈夫です、まあ状況的には大丈夫ではないんですけど」
 「?」
 「フクちゃんの友達が、10人目らしくて」
 「ああ、なるほど」

譜久村聖。新しく『リゾナンター』になった少女の一人だ。
生田衣梨奈が話す日常の中にも何度か登場している。
温厚で優しい少女だというイメージがあるだけに、その心中を思うと辛い。
身内の不幸を自分のもののように思うというのは、道重も同じなのだろう。
声のトーンが明らかに落ち込んでいる。

 「そんなこと言われたらこの件、もう後戻りできなくなったわね」

新垣は扉を開ける、久し振りの外だった。
もう見ないと思っていた蒼空は、過去の自分と変わらない自分を見る。
静かなその音を逸らして、傷みを抑えながら新垣は歩きはじめた。