『VariableBlade 第五話 「風の刃と黒い案山子」』


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(ぜんかいまでのあらすじ)

わるい奴らからにげてぇ、まーがみんなとジャンプしたんですけどぉ(ブフォ
ゆきのなかに落っこちてぇ、いぬ?人間がたくさんおそいかかってきたんですけどぉ
だーいしとさやしすんがやっつけたんですぅ

で、はるなんがチョコレートを(ブフォ
まほうで出してぇだーいしがチョコまみれになったんでぇ
まーの家でせんたくしたんですよ

そしたらまーの家にとり人間が来てぇ、ちちがけがしちゃったんですけど
だーいしがビビーッ!ってすごいの出してぇ、とり人間をやっつけたんですぅ

そしたらこんどはなんかぁ、だーいしのおともだち?が来てぇ
え?あ?なんですか巻きって?のり巻き?(ブフォ



「やっと見つけた!久し振りダーイシ!」

お前か・・・ドロシーの番犬、いや番狐

"風のフーカ"

私の古巣、ドロシー近衛騎士団の一員。
私より若年ではあるが隊に合格した実力者だ

「わざわざこんなところまで何の用だ?」

何の用かはもう分かっている・・・が、私はわざとらしくとぼけた
"わざわざこんなところまで"という部分は限りなく本音だが

その言葉にフーカは少しイラっとした様子で
キツネ目を更に吊り上げながら声を張り上げる

「いい加減に隊に戻ってダーイシ、ドロシー様も心配してるわ」
「何度も言っているようにこちらでの用が済むまで戻る気はない」

小さな箱庭の平穏が何だというのだ?必要もない番兵が居ようが居まいが関係ないだろう
そんなことよりも私にはやるべきことがある・・・やるべきことが!

「これ以上はドロシー様も黙ってないわ、下手すれば反逆罪よ」
「反逆?私用で暇を貰うことが反逆だというのか?」
「ドロシー様がこの世界への干渉を禁じているのは知っているでしょ?それが反逆よ」

不干渉?この世界から尻尾を巻いて逃げ出しておいて不干渉とは笑わせる
やはり私達の選択は間違っていた。アイツの選択が正しかった
この世界に再び来てその確信はどんどん強いものになっている

過ちのケジメは、私がこの手でつける

「どうしても戻らない?」
「くどい!」

再びの問いに私が答えるとフーカは目を閉じ、ふぅ・・・とため息をついた

「じゃあ仕方ないね。力づくで連れて帰る!剣を抜いて!」
「出来るのか?お前に」

無駄な事を・・・今までの手合わせでお前は私に勝ったことがないじゃないか
やるだけ無駄。でも剣を以って挑んでくる者には剣で応えるのが私の流儀
鞘から双剣、銀牙と月光をゆっくりと引き抜く
頬に風を感じる・・・周囲に遮るものの無い山頂。フーカにはいささか有利な戦場か

「いくよっ!手加減しないからね!」

フーカが手に持った重構造の刃を持つ短剣、風裂剣をシャッ!と振る
特殊な構造の剣を高速で振ることで発生させるカマイタチ現象
それを使った遠距離攻撃がフーカの戦闘スタイルだ。勿論、風裂剣は誰にでも使いこなせるものではない。
風向き、風の流れを読み、それを捉える力
それがフーカの一族、『風狐』が持つ特別な能力であり風裂剣を代々伝承する所以だ。

シャッ!シャッ!シャッ!

遠い間合いから次々に放たれる真空刃
ビッ!、ビッ!、ビッ!・・・私の耳、腰、腿を真空刃が掠め、軽い痛みと共に血が跳ねる。
いずれも斬られたのは薄皮一枚だけ。ここは高所過ぎて風の流れが荒く乱れている。
フーカもどうやらまだここの風を完全には読めていないようだ。
速攻あるのみ!姿勢を出来る限り低くして地面を蹴る
的を小さく、低く、素早く・・・飛び道具を持った相手に対するときの定石
斜め前、反転して逆の斜め、また反転して斜めへ
ただでさえ小さい私が更に小さくなり不規則なジグザグの軌道で走る
博打の要素も強いが恐らくフーカにはこの動きは捉えらないはずだ

「くうっ!相変わらずちょこまかとぉ!」

ザッ、ザザッ!・・・ワンテンポ遅れで逸れた真空刃が私の脇の地面を削っていく
今はいい。が、あまりに接近し過ぎればさすがに真空刃を正面からマトモに当てられてしまうだろう
駆けながら、銀牙と月光と柄の尻の部分で連結させる・・・
ここは道場ではない。手加減は出来ない。かつて共に修練を積んだ妹弟子を殺めるのか?
 ・・・今更私は何を迷っている?そんな覚悟はとうの昔にしてきたはずだ。
真剣勝負は迷った方が負け。ここで私は・・・負けるわけにはいかないっ!
覚悟を決めて足を止め、連結した銀牙と月光を大きく振りかぶる
ビシッ!鋭い痛みが走る。真空刃が左の上腕を掠め、大きく抉った。迸る鮮血
だが惜しかったな、フーカ

「終わりだっ!」

右手で連結しブーメラン状に変形した銀牙月光の投擲姿勢に入ったその時、私の視界に意表を突く光景が飛び込んできた
風裂剣を構えた姿勢からゆっくりと糸の切れた人形のように膝からガクッ、と崩れ落ちるフーカの姿
そしてフーカが崩れ落ちた背後に姿を見せた人影

「貴様っ!何のつもりだ!?」

右の掌を前に突き出しているその人影・・・サトウマサキ
奴が跳躍(ジャンプ)でフーカの背後に回って延髄を一撃し、昏倒させたのだ

「あゆみんさぁ・・・」

マサキがいつもとは異なる神妙な表情で口を開いた
 ・・・って、あゆみん!?なぜその呼び名を知っている?コイツ、まさか!!!

「お友達と殺し合うなんて悲しすぎるでしょ~」

 ・・・”ちち”がその能力を持っている時点で気付くべきだった。
読まれた・・・こいつには全部読まれていたのだ。私の目的も、迷いも、素性も全て・・・な、なんてこったい!!!


嘘だっ!嘘だね!絶対嘘だ!
あーあーあー信じない!信じないぞー!コイツに全部読まれていたなんて絶対に認めないっ!!!

「信じないのは勝手だけどさ。現実見ようよ、あゆみん」

妙に醒めた表情だったマサキの口元がニヤリ、と動いた
あぁ・・・あぁぁ・・・もうダメだぁ!
私は膝を落とし、ガックリと項垂れる

「大丈夫あゆみん?今日がつらくても明日はハッピーだから」

 ・・・プチっ
その一言で私の中で何かがキレる音がした

「何がハッピーだ!貴様に私の何が分かる!!!」
「わかるよ」

その声にぞっ、と私の中に寒気が走った。
なぜかはわからない。普段のコイツとは違うトーンの低い声だったからか

「あゆみんがとんでもないからまわりをしようとしてることだけはわかるよ」
「かっ・・・何だと!?」
「でも安心して。まーがあゆみんを止めるからさ」

空回り?私のしようとしていることが空回りだと言うのか?
確かに大昔の、もはや誰も覚えていない話、ドロシー達も放棄した過ち
だが・・・

「私はやるぞ!たとえたった一人でも。誰にも邪魔はさせない!」
「ダメだよ。それ以上その剣はよごさせないから」

どうあっても私を止めるというのか?ならばコイツも・・・

銀牙月光を握る手に力を込めたその瞬間、またも空間が歪んだ

「あゆみん危ないっ!」

瞬時に私の目と鼻の先にマサキ(と倒れているフーカ)が現れ、更に空間が歪む
また跳躍!?

どさっ!ガツッ、痛ってえええええええええええええええええ!
顔面から岩肌に落とされた!!!

「貴様っ!いい加減に・・・」
「あゆみんゴメン!急だったから!ほら、アレアレ」

ドーン!という爆音と共にマサキが指差す方向を見て私は愕然とした
もうもうと黒い煙を上げる山・・・とてつもなく焦げ臭い匂い

対面の山の頂きが丸丸半分消滅している
アレはマサキの家のあった・・・私達が先程まで戦っていた場所か!?

「あいつだよ!あの人形が!」

またもマサキの指差す方向を私は見上げた
宙に浮かぶ黒い十字架のような姿・・・私はそれに見覚えがある

スケアクロウ・・・ドロシーの操る魔人形。奴までこっちの世界に来ていたのか!

「ダ、ダーイシ・・・」

昏倒していたフーカが目を覚ました

「フーカ、どういうことだこれは?」
「逃げてダーイシ・・・アイツは貴方と・・・ンを殺しに来た・・・」

 ・・・ン?掠れた声でフーカの言うことが聴き取れない

「ヤバい!またくるよあゆみん!」

スケアクロウがこちらに気付き、ゆっくりと身体を旋回させて
腹話術人形のようなその口を開いた
マズい!口の中が紅く光っている・・・先程山頂を消滅させた熱線を放つ気だ

更に、スケアクロウの身体から無数の黒い影が放たれる
黒い鎌のようなそれは明らかにこちらに向かってクルクルと飛来していた

「やっば!あゆみん!アイツ心が読めないんだけど!」
「当然だ!奴には脳味噌がない!ただの操り人形だ!」
「あああっもうダメだよ!遠くに跳ぶよあゆみん!ウールートーラー・・・」

コーン!

「ちょ!?」

回転して死角から飛んできた”鎌”の一つがマサキの頭を直撃した

「ジャ・・・がびんぼよーん」

くるくると回転しながらバタン、と倒れるマサキ
おおおい!何が不干渉だ!完全にこっちの人間を巻き込んでるぞ!
幸いにしては”刃”の部分は当たっていないようだが・・・ジャンプを封じられたっ!

 ・・・えええいっ!もうやるしかないっ!

「銀牙!月光!」

チーン、と銀牙月光の柄の音叉を打ち合わせ共鳴させる
間に合え!

「共・鳴・剣!」

スケアクロウの口の紅い光がどんどん大きくなっていく
マズい!こちらの共鳴増幅より向こうのチャージが僅かに先か!

ザクっ!ザクっ!

痛っ!次々と身体に”鎌”が突き刺さり、血が噴き出す・・・
でも共鳴が完成するまでは動けない
マサキを、こっちの世界の人間を巻き込むわけにはいかない
刺し違えてでもコイツは倒すっ!!!

「風・裂・剣!疾風千刃(Vortex Blade)!」

フーカ!お前何を!?
立ち上がったフーカが滅茶苦茶に風裂剣を振り回し次々と鎌鼬を放ち続ける
四方八方から飛来する黒い鎌が次々と鎌鼬で真っ二つになっていく

「フーカ!」
「ごめんなさい、私がちゃんとダーイシを連れ帰れればこんなことにはならなかった」
「バカな真似はやめろ!お前までドロシーを敵に回すことはないっ!」
「鎌は私が何とかするから!共鳴剣をっ!」

銀牙と月光の咆哮が重なり合い、ハーモニーを奏でる
もうすぐ共鳴が完了するっ!!!

しかし、顔を上げた私が見たのは絶望的な光景だった

顔を照らす真っ赤な光
既にスケアクロウの口から放たれた熱線が目前まで迫っている
間に合わなかった!これまでか!畜生っ!!!

「風・裂・剣!爆風烈波(BlastWave)!!!」

突然の衝撃・・・横殴りの凄ましい風が、私とマサキの身体を宙に舞い上げ、吹き飛ばした
フーカが風を集めて放った爆風・・・あいつ!!!

「フーカ!!!」

爆風で宙に投げ出された私達の身体はスケアクロウの熱線の射線から逸れ
私の目の前でフーカは

「さよなら、ダーイシ」

笑顔・・・なんで・・・
フーカは熱線に飲み込まれ
熱線の爆発が私達の身体を更に遠くに吹き飛ばした

「うぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

私の咆哮が銀牙と月光の咆哮と混ざりあう

ヴォン!双剣、そして私の身体を蒼い光が包んだ
吹っ飛ばされながら全力でエビ反りの姿勢になって、戻す反動で無理矢理身体をスケアクロウの方へ向ける
カカシ野郎・・・ドロシー・・・絶対に許さないっ!!!

「うおおおおおおおおおおっ!!!共・鳴・剣!!!HowlingBlade!!!」

銀牙と月光を交差させ全力で振り抜き、蒼い光を纏った咆哮をカカシ野郎に向かって放つ
私は宙を崖下へと落下しながら放った音速の蒼い咆哮がカカシ野郎の身体を貫いて粉々に四散させるのを見届け、静かに目を閉じた

フーカ、仇は取ったぞ・・・
背中から全身に感じる大気の摩擦
凄い勢いで崖下へと落下している

即死、しなければ私の身体なら回復の目はあるが
恐らくこの高さから地面に叩きつけられれば一瞬で身体は粉々になるだろう
 ・・・ここまでか

マサキはどうしただろう、無事だろうか?
目を開けて宙を見回すが、それらしい姿は見えない
目を覚まして跳躍しているといいが

再び、目を閉じる・・・意外と長いな
あの山はどんだけ高かったんだ

瞼の裏にぼんやりとアイツの顔が浮かぶ

(後ヲタノムダ)

アイツの声・・・幻聴か?
済まない、約束は守れそうにない

全く嫌になる・・・自分の無力さが
こっちに来て結局何が出来た?
私は未だ何事も為せていない

 ・・・まだだ!

私は再び目を見開き、最後の賭けを試すことにした

「頼む!銀牙、月光!」