(76)704 名無し予告編(飲むものと飲まれるもの)


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「飲む者と飲まれる者」


突然新たな能力に目覚めたさゆみ。
それは生物以外に変身する能力だった。

ある日、里保宛てに届いた一瓶のサイダー
送り主はさゆみ、ラベルには手書きの"おいしく飲んでね"とのメッセージ。
訝しむものの喉が乾いていたこともあり
メッセージ通りおいしく頂く里保だったが8割ほど飲んだところで
ラベルに文字が浮かび上がっていることに気付く

"も……もうだめ…"


次回「飲む者と飲まれる者」

"らめぇ!それ以上飲んだらさゆみ逝っちゃう!"






「涙味のサイダー」


ピンク色のサイダーは普段飲んでいるものに比べ
炭酸はやや強く、甘さの中に若干の塩味を感じた。
これは去年の夏流行っていた塩スイーツの一種なのだろう。
なかなか粋な事をするがいったいどこのメーカーなのか。

しかしラベルにはやや雑な字でサイダーと書かれているだけ
生産地の情報どころか成分の記載さえ無い。
明らかに怪しいが、里保は珍しい味わいに夢中になり
浮かび上がってきた文字に気付いたころには既に残りは僅かになっていた。

「な、なんなんだ。もうだめって……」

ラベルを見つめているうちに文字は"それ以上飲んだら逝っちゃう"に変わった。
困惑する里保の耳に聞きなれた着信音が届いた。
ゴッドファーザーのテーマだ。

待たせると機嫌を損なう相手である。
どういう原理かは分からないがラベルの文字が変わる仕様なのだろうと
強引に結論付け携帯を手に取った。

『おー鞘師?さゆと連絡つかんっちゃけどそこにおる?」
「え、道重さんですか?ここにはいませんよ」
『おっかしいなー。鞘師の名前叫びながら出てったんやけど』
「……叫びながら…ですか」
『なんか夢がかなうとか、鞘師とひとつになるとか……アッハッハ』

その時の様子を思い出したのか笑い出した先輩と対照的に
里保は段々と自分が臨戦態勢になっていくのを感じた。
敵は今日こそやる気なのだ、今にもあの窓を突き破って来るかもしれない。全裸で。

『まあ、もし来たら早く帰ってこいって言っといて』
「はい。縛り上げてご返送します」
『アッハッハ』

携帯を切ってから里保はドア前に棚を置きカーテンを閉めた。
この部屋の周囲に人の気配はないが、いつやってくるか分からない。
侵入経路と撃退方法を検討しながらサイダーのビンを手に取った。
残りを一息に飲もうと傾けた瞬間、またしてもラベルの文字が変わり
里保はため息をついた。


"ついに来た!ひとつになる記念の瞬間!"

「……罠か」

やはりこのサイダーはおかしい。
恐らく中の液体の量に合わせ、幾通りかのメッセージが出るよう細工されているのだろう。
自分を油断させるためにこんな手の込んだ小道具を送りつけてくるとは……
里保は呆れつつカバンの中からいつものサイダーを取り出した。
ビンの飲み口にペットボトルを寄せ中身を移そうとすると、またしてもラベルの文字が
今度はあわてたように何度も変わった。

"やめてぇ!"
"りほりほ!"
"混ぜないで純度100%で味わってほしいのに"

「……」
ビンを左右にしゃばしゃばと振ってみる。

"いやぁ抜けちゃう!さゆみのヤル気が抜けちゃう!"
"せっかくサイダーになったのに!"

「……」
机に置きラベルを見つめる。

自らが能力者のため超常現象の類には慣れていた里保だが
今回ばかりは半信半疑にならざるを得ない。
周囲の気配に気を配りながらビンに問いかけた。

「いったいどういう事なんですか、道重さん」


次回「涙味のサイダー」

"らって りほりほと一つになりたかったんらもん!"