『超・戦慄迷宮』


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



『超・戦慄迷宮』

〈One 構って欲しくて〉

1-1

「むり~!むり~!みずき~、引き返そうよ~!」
「もう、えりぽん!次の脱出口までは頑張ろう!田中さんに怒られるよ!」
「いや~~ん!」
生田は譜久村の背中にぴったり貼りついていた。
二人はれいなの命令でとあるお化け屋敷に来ていた。
生田と工藤のお化け嫌いがあまりにもひどいため、鍛え直そうという狙いだった。
だが、一緒に来た工藤は泣きじゃくって嫌がり、柱にしがみついて離れなかった。
譜久村はそんな工藤の様子を十分に堪能した後、生田を引きずりお化け屋敷に入った。
「おかしいおかしい!なんでくどぅーは入らなくていいとー?」
「くどぅーはまだ可愛い子供でしょ?
えりぽんは来年高校生になるんだからもうしっかりしないと!」
「もう!くどぅーとは二つしか変わらんのに!」
お化け役の人が物陰から飛び出すたびに、生田は絶叫を繰り返した。
生田が怖がれば怖がるほど、譜久村はそれがおかしくて逆に怖くなくなっていった。

しばらく歩いて行くと、なぜかお化け役の人がぱったり現れなくなった。
不思議に思いつつさらに進むと、廊下の先が壁で行き止まりになっていた。
(おかしいなあ…コースを間違えちゃったのかなあ)
譜久村が首を傾げる。生田は目をきつく閉じたままだ。
(少し「読みとって」みようかな)
譜久村は、能力を使ってみた。


1-2

譜久村には残留思念を感じ取る能力がある。
譜久村は壁に触れ、様々な思念を読み取った。
するとその中に懐かしい思念があるのを感じた。
(あれ?これ、新垣さん?)
譜久村は驚いた。
新垣は数か月前からリゾナンターを離れ、単独行動している。
思念とはいえ、久しぶりに新垣に触れ、譜久村は嬉しくなった。
(新垣さんもここに来てたんだ~。ふふっ、新垣さんもお化け怖がってる。
ん?「カメをたあすけにきましたあ」って、亀井さんもいらしたの?)
譜久村がリゾナンターに入った時、亀井絵里はもういなかった。
しかし、さゆみから写真を見せられた譜久村は、一瞬でその可愛さの虜になった。
譜久村は絵里の思念を捜し当て、恍惚の表情でそれをむさぼった。
(亀井さ~ん、こんなところであなたの心に触れられるなんて、みずき、幸せです~)
「ねえ、みずき~、どうして進まないの~?」
立ち止まって動かない譜久村に疑問を抱いた生田が質問する。
譜久村は絵里の思念を辿るのに夢中で答えない。
「ねえ!何で構ってくれんと~!みずき!みずきー!」
生田に揺さぶられようやく譜久村は我に返った。
そして、口元にたれているよだれを拭いながら生田に謝った。
「ごめん、ごめん。ところでえりぽん、私達、コースを間違えちゃったかも?」
「えっ、みずき、間違えたの~!?」
「間違えてないよ!」
突然、聞きなれない声が響いた。


1-3

「誰!?」
二人が声の方を向くと、行き止まりの壁の前にピンクに光る一人の少女がいた。
少女は意地悪そうな笑みを浮かべつつ言った。
「誰って、お化けに決まってるじゃない。お化け屋敷だもん」
「ギャーーーーー!」
生田が叫ぶ。少女は続ける。
「私、あなたたちを殺さなきゃいけないの、ごめんね」
そう言うと、少女の体が明るさを増す。
同時に周囲の温度が急激に上昇し始めた。
「暑っ…」
「苦しい…」
譜久村と生田の顔が歪んだ。
ふと見ると、少女の近くの壁の張り紙が黒くなり始めている。
少女の体からものすごい熱が発せられているらしい。
二人は少女から遠ざかろうと、進路を逆走した。
10歩ほど進んだ時、譜久村は新垣の思念の中にあった言葉を突然思い出した。
(ギブアップはだめ!)
「えりぽん!」
譜久村が先行する生田の手を掴み引き戻す。
ガラガラッ!
生田の鼻先を掠めて、上から数本の鉄骨が落ちてきた。


〈Two 触って欲しくて〉

2-1

少女が感心したように言う。
「ふーん、罠に気付くとはなかなか勘が鋭いみたいね」
「みずき、サンキュ」
「うん。…でも、みずきたち、閉じ込められちゃった」
折り重なった鉄骨は完全に退路を塞いでいた。
二人が戸惑っているその間にも少女の放つ熱は激しさを増す。
命の危険を感じたせいなのか、それとも「キレた」のか、生田の目つきが急に変った。
「みずき、二人であのお化けを倒すしかないっちゃ!」
生田の能力は精神破壊。
リゾナンターに入る前、生田はその力を無差別にまき散らすだけだった。
しかし、精神系のスペシャリスト新垣との鍛錬が生田を成長させた。
今では破壊する方向をある程度制御できるようになっている。
「えええい!」
生田は目の前の少女にありったけの精神破壊波をぶつけた。
しかし、少女には何の変化も起きない。
「あれ~、効かんと!?」
「えりぽん、お化けにそういう攻撃は効かないのかもしれない」
おバカ、もとい天然な譜久村は目の前の少女をお化けと信じてきっている。


2-2

二人は顔を見合せ、無言で頷いた。
こうなったら高橋やれいなに鍛えてもらった体術で勝負するしかない。
打撃程度の接触なら、少女の熱にも耐えられるかもしれない。
生田と譜久村は少女へ突進した。
だが、その考えは甘かった。
二人の攻撃は当たらない。
いや、当たっているはずなのだが、全く手ごたえがなかった。
その間にも猛烈な熱さが二人の体力を急速に奪っていく。
力尽きた生田がその場に倒れた。
「ハアハア、…。」
譜久村ももう限界に近かった。
その場に膝をつき、コンクリートの床に手を付いた。
その時、コンクリートから新垣の思念が譜久村に入り込んだ。
(お化けは触んないよ。絶対に、絶対触れない約束になってるから!)
確かに少女のお化けは一度も直接攻撃してこない。
譜久村たちが今受けているダメージは彼女の発する熱によるものだ。
「こっちの攻撃が当たらないだけじゃなくて、向こうも触れないってこと?」
その時、譜久村の脳裏に疑問が浮かんだ。


2-3

物に触れないお化けが、なぜ鉄骨を落とすことができたのか?
鉄骨を落とすには、何かに触れなければならない。
ということはこのお化けには仲間がいるんじゃないか。
物に触れることができる、お化けではない仲間が。
その仲間を倒せば、何か攻略の糸口が見えるかもしれない。
譜久村はポケットから一枚の生写真を取り出した。
譜久村の持っている生写真には一枚一枚先輩たちの能力が染みこんでいる。
譜久村はその能力を読み取って、性能は劣るが一時的に使用することができた。
いま譜久村が手にしたのは高橋の生写真。
瞬間移動の能力は、譜久村にはまだうまく使いこなせない。
読み込んだのは精神感応の力。譜久村は外で待っている工藤に語りかけた。
(くどぅー!聞こえる?)
「ん?譜久村さん?」
工藤が、ポップコーンをほおばる手を止めた。
(くどぅー、今、お化けに襲われてて大変なの!助けて!)
「えーーーっ!お、お化けですか!ど、ど、どうすればいいんですか?」
(くどぅーの能力を使って見てほしいの。
 みずきのいる場所の近くに誰か人が見えない?)
工藤の能力は千里眼、離れた場所を「見る」力だ。
譜久村の口調に緊迫したものを感じ、工藤は何とか勇気を振り絞った。
泣きはらして腫れぼったくなった目を閉じ、譜久村の周囲を探った。
「えっとー……、あっ、見つけた!
譜久村さんのいるところの天井裏に女の人がいます!」
(くどぅー!ありがとう!)


〈Three 笑って欲しくて〉

3-1

お化けじゃないなら倒せる。譜久村は生田の肩を掴んで叫ぶ。
「えりぽん、起きて!」
しかし、生田は生気を失った表情で、ぐったりとしたままだ。
譜久村は新たに生写真を一枚取り出した。それはれいなの生写真。
れいなの能力は共鳴増幅。
譜久村は自らの能力を増幅させ、新垣の思念を自分の体に染みこませた。
譜久村の顔つきが変わる。
そして、新垣そっくりな声色と口調で叫んだ。
「コラー!生田ー!こんなところで寝ない!」
「えっ!新垣さん!」
生田はパッと飛び起きる。
意識は朦朧としているが、満面の笑顔できょろきょろ周りを見渡す。
「新垣さん、えりなを助けに来てくれたんですか!?
 やっぱり、二人は固い絆で結ばれてるんですね!」
譜久村は新垣の声で続ける。
「生田ー!天井に向かってKYパワーを放出しなさーい!」
生田はその声が譜久村のものだと気付いていない。
「はいっ!ぐふふふっ…」
生田は気持ち悪い笑い声を漏らしながら真上を向いた。
「新垣さんとえりなの愛のコラボレーショーン!!」
生田は両手を上に広げて「愛」とは程遠い恐ろしい能力を解き放った。
「ギャーーー!」天井裏から響く断末魔の声。
同時に、ピンク色に光っていた少女のお化けの姿が消えた。


3-2

生田は攻撃を止めない。
天井裏の誰かがのた打ち回る音がバタンバタンと響いていくる。
バリバリッ!ドサッ!
暴れる衝撃に耐えきれなくなったのか、天井板が割れ、少女が落ちてきた。
「えりぽん、もういいよ!」譜久村に制止され、生田は攻撃を止めた。
少女は落下の衝撃で意識を失ったようだ。
「…あれ…みずき!新垣さんは?」
「新垣さんはいないよ。あれはみずきが物まねしただけ」
「えー!新垣さんいないの~?助けに来てくれたと思って超嬉しかったのに~!!」
「それよりえりぽん、みずきたち、何だかよく分からないけど勝っちゃったみたい」
「ホント!?やった~!イエーーイ!」
お化けの少女が居なくなったことを確認し、生田は譜久村と飛び跳ねて歓喜した。
落ち着きを取り戻すと、二人は改めて目の前の少女をよく見た。
その少女は先ほどまで戦っていたお化けと全く同じ姿をしている。
「みずき~、これ、どういうことかいね?」
「う~ん、多分だけど、これ、生霊ってやつじゃないかな。」
「いきりょう?」
「うん、みずき、前に聞いたことあるんだけど、
生きている人でも恨みが強いと、幽霊になることができるんだって」
「じゃあ、えりなたちが戦ってたのは、この人のいきりょうってこと?」
「たぶん、間違い無いと思う」
「ふ~ん、みずきは物知りっちゃねえ」
生田は尊敬の眼差しで、照れながら少しドヤ顔をしている一歳年上の同期を見つめた。


3-3

「大間違いだよ!」
カメラとマイクでこの様子を監視していた白衣の女性が突っ込む。
「生霊なんてあるわけないでしょ!
 自分の分身を作り出せる能力者がいることぐらい想定できないの!?
 比較的まともそうな譜久村って子でもこれかあ…。
 新生リゾナンター、これから大丈夫なの?
 まあ、私が心配することじゃないんだけど…」
白衣の女性はコーヒーを一口飲み、独り言を続けた
「…それにしても、この子もミッション失敗かあ。
 三人とも中々の能力を持ってるし、良い所までいったんだけど、
 詰めが甘いというか、運がないというか…」
「今回もダメですかー?」
「小春?もう!入る時はノックぐらいしてよね!」
「ほーい。でも今回はかなり周到に準備してましたよね~
 あの子たちがお化け屋敷に行くって話しているのを盗聴して、
 前もってお化け屋敷のコースにも細工して…」
「うん、あれだけバックアップしてあげても勝てないってことは、
 やっぱりあの子たちは使えないってことかもね」
「あと四人残ってますけど、上はどうするつもりなんすかね~。
 …でも、どうして自分でお化け屋敷に行って監視しなかったんすか?
 面白い能力だって興味津々だったじゃないっすか?」
「…私、前にあそこねぇ、行ったんだけどねぇ、泣いて入口に戻って来たよ…」
「…そーっすか…。その気持ち…、すんごくよく分かります…」

〈Endingでーす〉

決着がついた直後、三人の様子を見にれいなが工藤の前に現れた。
工藤が状況を説明していると、譜久村が高橋の能力を使いそこに加わってきた。
事情が分かると、れいなは金魚のフンのようについてきていた佐藤に指示した。
おかげで譜久村と生田は容易に外に出られた。
「生霊!?何それ、こわっ!」
「たなさたん、むしだけじゃなくて、おばけもこわいんですか~?ぷふっ」
「うるさいなあ!本物のお化けやろ?佐藤だって本物は怖いっちゃろ」
「まーちゃんもこわいですよ~、でもまーちゃんはくどぅーよりおねえさんだから~」
「なんでよ!同い年でしょ!」
精神年齢が近い三人の言い争いをよそに、譜久村と生田はお化け屋敷を眺めていた。
「新垣さんもここに来てたっちゃね」
「うん。先輩たちの思いに触れて、みずき、なんかすごく安心したし嬉しかった」
「えりな、新垣さんたちがおらんくなって、どうなるんかなって思ったっちゃけど、
 何てゆうとかいな、先輩たちがいてくれたっていうことで頑張れる気がするんよ。
先輩たちにいろいろ教えてもらったことだけじゃなくて、
先輩たちもうちらみたいに一生懸命頑張ってたんだなって思えることが、
自分の力になっとる気がするっていうか…」
「そうだね…、それがリゾナンターの「歴史」っていうものなのかもね……」
「フクちゃーん!生田ー!ドドンパ乗りに行こー!」
「「はーい!」」
れいなの呼び声に、二人は笑顔で返事をし仲間のもとへ駆けだした。

―おしまい―



以上、『超・戦慄迷宮』でした。パニック娘最高!
なお、敵の少女のモデルは(仮)の暑苦しい人です。